〜がっこ〜
………軽音部
………ソファー付近
唯「あずにゃんに抱き付くのに理由なんていらないよね」ぎゅっ
梓「あついです唯先輩」
唯「むっ!」
律澪紬「!!?」
唯「前から思ってたけど、あずにゃん髪キレイだね〜」
梓「そうですか?」
唯「ツヤツヤで気持ちいいよお」
澪「私だって負けてないぞ!」ブンッ
ベヂンッ
律「ぁいだァッ! 髪を振り回すな!」
梓「………まだまだですね澪先輩」
澪「なんだと!?」
梓「結っていないことを考慮しても、
その髪使いはまったくなっていません」
律「かみつかい? なんだそりゃ」
澪「おのれ! 言わせておけば! こいつッ!」
澪は椅子に立ち、梓に飛び掛かる。
唯「うわあ! 澪ちゃん!?」
梓「ならば見せてあげますよ。 これが本当の髪使いです!」
グンッッッ!
梓にゃんは体をくねらせ、首をひねる。
すると、ツインテールはうなりを上げ、空を切り、そのパワーは澪と唯を弾き飛ばした。
澪「おおおおおおおおお!?」ガシャーン
唯「わああ」どてっ
律「わーっ! な、なんだ今の! てか大丈夫か澪!」
紬「あら、ティーセットが……」
澪「う、ぐぐ、ま、まさか…… こんな……」ピクピク
梓「思い知りましたか澪先輩。 私は澪先輩を心より尊敬していますが、髪においては私の方が完全に上なのです」
律「尊敬する先輩をフッ飛ばすなよ……」
唯「いくらなんでもヒドイよあずにゃん! 澪ちゃんに謝って!!」
梓「あっ」ジワ〜
律「確かにな。机もティーセットもメチャメチャだ。
ムギにも謝るべきだぞ」
梓「……」うるうる
紬「私は大丈夫だけど…… 澪ちゃんにはちょっとやりすぎだと思うわ……」
梓「………み、澪先輩」
澪「くそー! 梓! こうなったら決闘だ!」
梓「 はい?」
澪「勝負は二週間後! この部室で!」
唯「澪ちゃん? なんで決闘なんか……」
澪「梓とはどうしても正々堂々! この手(髪)で決着をつけたくなった!」
律「み、澪のやつ、本気だな……」
梓「……けど澪先輩。 いいんですか? 勝ち目はありませんよ?」
澪「自惚れるな。 お前に明日はない」
律「決闘は二週間後だろ?」
澪「やかましい」
唯「そもそも決闘って? ケンカはよくないよ」
梓「心配はいりませんよ唯先輩。 ケンカじゃありません。 まあ、軽いお遊びってところです」
澪「……」ビキビキ
唯「そうなの?」
梓「はい。 二週間後を楽しみにしててください。
髪の技術の真髄をご覧に入れます」
唯「ほええ……」
澪「 こ い つ 」
紬「澪ちゃん抑えて。 その気持ちを決闘に活かすのよ」
澪「……ムギ?」
紬「その決闘、全面的に援助するわ」
律「えーっ。 なんでまた……」
紬「だって楽しそうじゃない♪」
唯「ムギちゃん……」
紬「全面的とは言ったけど、私はどちらかというと澪ちゃんに協力するわ」
梓「むっ」
澪「本当か! わあい!」
紬「だってこのままじゃ勝ち目がないんでしょう?」
梓「……はい。 現段階の澪先輩では私の足元にも及びませんね」
澪「こォいつッ!」
律「澪! ストップ!」
紬「だったら少しくらい澪ちゃんが強くなってくれた方が、梓ちゃんとしても楽しめるんじゃない?」
梓「はあ………確かに、その通りです。
さっきみたいなお粗末な戦いより、血湧き肉躍る戦いの方がいいに決まってますね。
分かりました、ムギ先輩にお任せします」
ムギ「ふふ、期待しててね♪」
澪「ムギ……ありがとう!」
ムギ「いいのよ〜♪」
梓「せいぜいトリートメントをしっかりやることです。
それでは二週間後のこの場所でまた会いましょう」ザッ
澪「なんて不遜な後輩だ……!」
ムギ「うふふ……さあ澪ちゃん。うちへ招待するわ。
早速修業を始めましょう」
澪「ああ! 頼むよムギ!」
ガチャ バタン
律「…………」
律「唯、アイス屋行くか。 おごってやるよ」
唯「えっ、 やったあ!」
………
………次の日 放課後
………研究所
ムギ「これが今の澪ちゃんの髪ステータスよ」ピッ
澪「えーっと…… ?」
ムギ「見て、潤いが少し低い。 あとしなやかさも足りないみたいね」
澪「くそー。 梓のやつはどうなんだろう」
ムギ「きっと神ステータスでしょうね。
それを保つために梓ちゃんは髪を結って風が当たる面積を小さくしてると思うの」
澪「なるほど…… 梓が結ってない云々言ってたが、そういうことか?」
ムギ「それもあるし、結うことで髪に一体感と『重さ』もたせられるのが最大の利点なのよ」
澪「あの細く細く凝縮されたツインテールが、
鉄のムチのような破壊力を産んだのか……?」
ムチ「だから澪ちゃんも髪を結うのよ。
それは梓ちゃんに立ち向かう上での大前提」
澪「ふーむ…… ようし! 私はポニーテールでいくぞ!」ぎゅっ
ムギ「澪ちゃんかわいいわ〜」
………
………中野邸
梓「澪先輩なんて余裕!」ムシャムシャ
憂「梓ちゃん、食べながら話すのはお行儀悪いよ〜」
梓「憂! 憂も私の勝利を信じてるよね!?」
憂「へ? う、うん。 私は梓ちゃんを信じてるよお」
梓「えっふふwwww吉報を楽しみに待っててね」
憂「?」
………
………音楽室
唯「みんな来てくれないねぇ……」
律「ああ…… 取り残されたアタシらはあいつらを待つことしかできないんだ……」
唯「無力だね……」
律「所詮ショートには到底追い付けない境地なんだよ……
あいつらのいるとこって……」
………
………
研究所………訓練室
澪「うあああっ!」ブウンッ
バッシィィン!
ムギ「すごいわ! アルミ缶が吹っ飛んだわよ!」パチパチ
澪「まだまだ。 梓は人を動かせるんだ、こんなもんじゃだめさ……」
ムギ「じゃあ次は半分水が入ったアルミ缶ね」
澪「よし!」
………
………
………
………三日後
澪「ダ、ダメだ! どうしてもタイヤが動かせない!」ガクッ
ムギ「諦めちゃダメよ! また梓ちゃんに負けてもいいの!?」
澪「うーっ! いやだ!」ぐああ
ムギ「その意気よ!」
………
………中野邸
憂「梓ちゃん。 またケーキ作ってきたよ」
梓「ありがとう憂! 食べさせて!」
憂「はい、あーん」
梓「……うまい! 憂はプロのパティシエになれるよ!
ていうか唯先輩羨ましい!」
憂「そういえばお姉ちゃんに聞いたけど。
今度澪さんと髪の……キレイさ? で勝負するんだって?」
梓「あ、うん、そんなところ。
まあ私が勝つに決まってるんだけどね」
憂「確かに梓ちゃんすっごい髪キレイだもんね〜」
梓「世界一を自負してるよ。 誰にも負けない!」
憂「梓ちゃん将来モデルさんになったら? CMにも出演するの」
梓「あー! いいね! それいい! 私の夢はそれで決まり!」
憂「あはは……」
………
………
………
………一週間後
澪「シャアアアア!」ゴオォッ
バゴン!
紬「発泡スチロールが粉々よ! すごいわ!」
澪「えへへ……」
紬「ご褒美は卵プリンよ!」プリン
澪「やったー!」
………
………さらに二日後
平沢家………風呂場
梓「トリートメント、トリートメント〜……」ぬりぬり
梓「……」ぬりぬりぬりぬりぬりぬり
梓「……」ぬりぬりぬりぬりぬりぬりぬりぬりぬりぬり
唯「あずにゃ〜ん、入ってい〜いー?」
梓「あ、どうぞー」
唯「うっへへ」がちゃ
唯「うわああああああああああ!!!」
憂「お姉ちゃんどうしたの!?」どたばた
唯「あずにゃんがサダコに見えた!」
梓「失礼ですよ唯先輩!」
憂「わ〜…… 梓ちゃん、すごいねそのリンスの山……
うちに来たときの荷物ってそれだったんだ」
梓「うん、全部一級品。
いくつかは私が調合したオイルもあるんだ」
唯「へぇ〜 あずにゃんは本当に髪を大事にしてるんだね」
梓「はい。 澪先輩との戦いも近いので今日は特に気合を入れてますよ」ぬりぬり
唯「……私もやるー!」
梓「それはありがたいです!
じゃあそこにある中野スペシャル0082を左側に塗ってください」ぬりぬり
唯「ど……どれ……?」
………
………琴吹家
………風呂場
紬「あとはトリートメントね」きゅぽん
どろどろどろっ
澪「ヒャア! 冷たい!」
紬「澪ちゃんじっとしててね〜」ぬりぬりぬり
澪「フヘヘwww い、いつにもまして効きそうだな!」
紬「最高級のリンスよ。 きっと梓ちゃんにも負けないわ!」
紬「もう技術面でやることは全てやったから、
あとは髪質の向上に励もうね〜」ぬりぬり
澪「アフッwwww お、おう」
………
………そして
………ついに決戦の日!
〜桜が丘女子高等学校〜
………音楽室
澪「………」
梓「………」
律「久々にこのメンツがそろったな〜」
唯「恋しかったよ〜」
紬「お茶にしたいけど、まずは……」
梓「ムギ先輩の力を借りて、少しはマシになったみたいですね。
それでも悲しくなるほどの差がありますけど」
澪「ほざけ、思い上がるのもいい加減にしろ」
梓「何のことですか? これは余裕というもんです」
澪「ふん……」
唯「怖いよ二人とも……」
律「ムギ、ポップコーンくれwww」
紬「はいどうぞ〜」
梓「じゃ、さっさと始めましょうか。 そんでもって練習しましょう」
澪「もうお前を後輩とは思わん。
この
秋山澪、全能力を注ぎ込んで、倒してやる!」ぎゅっ
梓「こいです。 澪先輩!」
澪「うおおおおおおおおお!!」ブウンッ
ゴォォォォォ
唯「ひゃああ!? か、風が!」
律「なんだこりゃ! ポップコーンがァ!」バラバラ
紬「澪ちゃん…… 本気ね……」
梓「へえ……これほどまでの風圧を起こせるとは。
しかし!」ブウンッ
ひゅうううぅぅぅぅぅ……
唯「あっ、風が止んだよ?」
紬「おそらく梓ちゃんは、澪ちゃんを上回るパワーで風を起こして、澪ちゃんの旋風を打ち消したのよ……」
唯「へぇ〜…… すごいや……」
梓「……」グインッ
梓「ふん、いかがですか? 私が軽くやっただけで
ジョギン!!
ぱさっ……
唯律紬「あっ!!」
梓「」
澪「……」カチャ
梓「」
律「な…… み、澪が梓の後ろに……しかも、あれはハサミ!?」
唯「そんな……あずにゃんの髪が……」
紬「あ あ あ」
澪「フン! くだらんなあ〜〜〜 正々堂々と決闘なんてなあ〜〜」
梓「」
澪「この私の目的はあくまでも『勝つ』こと!」
澪「梓のような髪使いになるつもりもなければ、
ロマンチストでもない………」
梓「」
澪「どんな手を使おうが…………最終的に……」
澪「勝てばよかろうなのだァァァァッ!!」
ジョキーーン!
ばさっ!
梓「」
唯「あ、あずにゃんのツインテールがなくなっちゃった……」
………
………
………次の日
………
………
唯「今日のお菓子はなにー?」
紬「梓ちゃんがティーセットを割っちゃったから今日はカツ丼よ〜」
澪(ポニテ)「や、やったwww」
律「うめえええ!」バクバク
唯「あずにゃんまだかなあ」
ガチャ
ボブにゃん「すみません! 遅れました」
律「お、来たな梓ー」
澪(ポニテ)「なかなか似合ってるじゃないか、その髪型」
唯「ショートのあずにゃんすっごくかわいいよぉー!」ぎゅうっ
ボブにゃん「そ、そうですか……? ウヘヘ……」
紬「あら、梓ちゃん泣いてるの?」
ボブにゃん「いえ、そんなことありませんよ」
紬「そう? それならほら、カツ丼あるわよ、食べて食べて」
澪(ポニテ)「絶品だぞ!」
ボブにゃん「はい、では」カチャ
ジョキッ
(ポニテ)バサッ
澪「」
律「うおわあああああああああ!?」
唯「あ、あずにゃんっ!? も、もしや復讐を!?」
ボブにゃん「いえ。 澪先輩の髪、流石に伸び過ぎだと思ったので私がカットしただけです」
紬「腰まであったもんね。 確かに伸び過ぎかも……」
律「ムギ、お前もだ」
澪「」
唯「どーするの? 澪ちゃん昨日のあずにゃんみたいになってるよぅ」
ボブにゃん「明日になれば元に戻りますよ。
それよりもカツ丼食べましょう」ガタ
律「そだな。 澪、食わねーなら肉もらうぞー」ヒョイ
ボブにゃん「唯先輩、タマネギ食べてください」ヒョイ
唯「うわあ、あずにゃんったら、おいしいのにもったいないよ……」しゃくしゃく
ボブにゃん「別に嫌いなワケじゃありません。
デカイやつの歯ごたえが嫌なんです」もぐもぐ
澪「」
紬「澪ちゃん……大丈夫……?」
この後、澪が暴れ出してムギの髪を無理矢理カットし、
軽音部は晴れてショートヘアのみの部活動になった。
おしまい
あとがき
ボブのあずにゃんはかわいいだろうなと思って書きました。
最終更新:2014年04月16日 12:49