紬「ねぇ、さわ子先生って覚えてる?」

澪「そんなに過去の人でもないよ?」

紬「あの人、よく合宿に来たりロンドンまで来てくれたりしたけれど…」

紬「同世代のお友達いないのかしら」

律「いないんだろ」

唯「決めつけちゃった」

澪「多分、私達といると楽しかった学生生活を思い出せるんだろうけれど」

律「いつまでも卒業しきれていないというか」

唯「でも、さわちゃんはいい人だったよ!」

紬「いい人どまりでは、いつまで経ってもお友達は出来ないものなのよ」

唯「そっかぁ」

澪「お友達作るのって、そんなにハードル高いのか…」

律「アタシさ」

唯「うん」

律「学校卒業しても澪とは連絡とりあうと思う」

澪「ありがとう」

律「実家も近いし、盆とか正月休みにちょっと会うとかリアリティあるだろ」

唯「あるある」

律「だけど…」


律「唯はあやしい」


唯「がっ!?」

澪「うぉっ!?」ビクッ

紬「唯ちゃん、急に『がっ』とか叫ばないで」

紬「恐いから」

唯「だって…」

律「ごめんごめん」

澪「唯とは連絡とらないのか?」

律「だって唯ん家とアタシんち、微妙に距離あるし」

唯「私とりっちゃんちゃんの間柄にも、微妙な距離が生まれたよ」

紬「かわいそうなりっちゃんちゃんちゃん」

唯「かわいそうなのは私の方だよ~!」

紬「それもそうね!」ムギュッ

澪「なんで今ムギュッて言ったんだ」

紬「……」



紬「かわいいから」


律「もし唯がアタシより給料高い仕事についてたら会わない」

唯「そんなぁ…」

澪「唯は教師を目指してるんだよな」

紬「教師ってカツ丼屋さんより儲かるのかしら」

唯「知らない」

澪「というか何故カツ丼屋さん?」

紬「りっちゃんはカツ丼になるのが夢なのよね」

律「ならねーよ!?
仮にカツ丼屋になる可能性はあっても
カツ丼にはならねーよ!?」

唯「カツ丼になってもお給料もらえないもんね」

律「おうよ」

澪「まるで給料もらえないことだけが問題であるかのような」

唯「カツドンがあるならマケドンがあっても
おかしくないよね」

律「なんだいマケドンって」

唯「勝つ丼、負け丼」

澪「なるほど」

紬「負けというくらいだから、何かガッカリな丼なのかしら」

律「澪しゃんはご飯に何がのってたらガッカリする?」

澪「私はご飯に何がのっていても、ありがたくいただくよ」

唯「カ、カマキリがのってても?」

澪「食べ物の話をしてるンだよ!?」

律「メシとムシって似てるもんな」

紬「りっちゃん天才的」

律「へへっ」

唯「そういえば昔、和ちゃんちに行った時の話なんだけど」

紬「和ちゃんち?」

律「何かガッカリご飯でも出てきたのか?」

唯「炊き込みご飯の中からセミの幼虫が2匹出てきて吐いた」

澪「ウワァアァアァアァアァアアアァァアァア!!!!!!!??????」

唯「しかも羽化して羽ばたいていったよ」


律「むしろすげえ」

紬「い、生きた幼虫だったの?」

唯「まぁウソなんだけどね」

澪「」

律「バカっ!和ならありうると、ちょっとだけ信じちゃっただろ!?」

紬「どうしよう、和ちゃんのケータイ番号とメアド、勢いで消去しちゃったわ」

唯「わっ、ひどいよムギちゃん」

唯「セミを食べる和ちゃんとはお友達になれないんだね!?」

唯「あんまりだよ!ひどすぎるよ!」

紬「唯ちゃんには、もういいモノあげない」

唯「あっ、だめだよ!いいモノほしいよ!」

紬「どうしようかしら」

律「しかし女子大生と化したアタシらにとって
いいモノとはなんなのだろうな」

唯「確かに」

紬「ねぇ、澪ちゃんが求めるいいモノってなぁに?」

澪「漠然とした質問だなぁ」

澪「う~ん…」



澪「あっ、お友達!」

紬「プレゼントの箱の中にはバラバラになったりっちゃんが?」

律「ひどい…」

澪「なんの話をしてるんだよ!?」

唯「そういえば友達を作るとかそういう話だったね」

澪「そうそう」

律「でもオマエあれじゃん」

律「最近、林さんってコと仲良いじゃん」

澪「ええぇ~~~っ、いやぁあ~~そうかなぁ~~~」

唯「隊長!澪ちゃんがニタニタしています!」

律「くそっ、気にいらないツラだ」

紬「あらまぁ、りっちゃんヤキモチ?」

律「リョナって知ってる?」

唯「ほぇ、なに?」

紬「りょな?」

律「知らないならいいが、とにかくアタシは
澪の恐怖にひきつった表情に性的興奮を覚えるのであって
澪の笑顔は滅茶苦茶に引き裂きたい」

唯「私もりっちゃんの発言を聞いて恐怖にひきつっちゃった」

律「あっ、その顔いただき!」

紬「コレがりょななのね?」ハァハァ

唯「ところで澪ちゃんさんは林さんちゃんのどんな所がいいと思いますか」

澪「変態じゃないところ」


律「きゅきっ」


おわり





─45─

唯「今日、街で外国人のキリスト教の牧師ングに
キリスト教を信じないと地獄の業火に焼かれるって脅されたので怖かった」

紬「まぁ怖い」

唯「ムギちゃんは神を信じますか」

紬「そうね…」


紬「世の中、金よ」


唯「さっすが~」

澪「ときにムギよ」

紬「なにかしら」

澪「『お金持ちだからといって幸せとは限らん』みたいなアレがあるけれど」

澪「ムギもそういう葛藤とかあるの?」

紬「そんなこと考えたこと無かったわ」

紬「考えたことすら無かったわ」

唯「じゃあムッたんは悩んだ事とかないのー?」

紬「ムッたん?」

唯「あずにゃんギターとお揃いだね!」

紬「それって良いことなのかしら…?」

律「悩んでる悩んでる」


紬「私の心をかき乱すのはいつも唯ちゃん」

唯「黄身を診てるといつもハートどきどき~♪」

澪「そいつ変態じゃないのか」

律「もしくは不整脈」

唯「黄身と言えば目玉焼きを発明した人は天才だけど
『目玉焼き』って命名した人は正直イカれてるよね」

澪「なんであんな怖い名前にしたんだろうな」

紬「じゃあ目玉焼きに別の名前をつけるとしたら何がいいのかしら」

律「たまご焼き」

澪「それは別の料理だ」

紬「う~ん」

唯「思ったんだけど…
卵を割って白身と黄身をフライパンで焼くでしょ~?」

澪「ん、そうだなぁ」

唯「それって人間におきかえるとどういう状態なの?」

律「おい、人間におきかえるのをやめろ」

紬「もしかして黄身を見てるとハートどきどきって
地獄の業火で本物の目玉焼きを…」

澪「見えない聞こえない」

唯「目玉を焼いたから?」

澪「ワォアアアア」

律「おいっお前ら!」



律「楽しいなぁ」


おわり





─46─

唯「大学の軽音部に入ったら晶(あきら)ちゃんというお友達ができたよ」

律「晶って、水晶のイメージが強いから
『しょう』って呼びそうになるんだが、どうしたらいい」

唯「すぐあきらめるあきらちゃん」

律「ふむ、覚えやすいな」

晶「勝手な事ヌカしてんじゃねーぞ」

唯「ややっ、晶めるちゃん」

律「むしろメルちゃんって呼ぼうぜ」

晶「私の原型が残ってねーんだが!?」

律「ふむ」

律「じゃアキラからアをとってキラって呼ぼうぜ」

晶「なにっ」

唯「おお~っ、いいね!カッコいいね、りっちゃん!」

晶(キラ……)


晶(イカすじゃねーか///)

唯「あっ、駄目だよ!なんか喜んでるよ!」

律「駄目なの?」

唯「駄目だよ」

晶「何故だよ」


律「唯は晶の事を気に入っているようだが
こんなの何がいいんだ?」

菖「おっ、なになに?嫉妬?」

唯「あっ、大学軽音部でお友達になった菖と書いて殺めるあやめちゃん」

唯「通称めるちゃん」

晶「何故この女は人をめるちゃんと呼びたがるのか」

律「病気なんだよ」

菖「じゃあ幸も、なんらかのメルちゃんなワケ?」

唯「幸ちゃんは背が高過ぎる事を気にする悩めるメルちゃん」

律「諦める・殺める・悩めるとキャラが立ってるな、キミらのバンド」

晶「幸は確かに悩んでいるが、アタシは断じて諦める子じゃねぇよ」

菖「私はなんでもいいや」

唯「あっ、菖ちゃんには大人の余裕があるね!」

菖「大学生だからね」

律「カッコいいヤツだぜ」


─澪の部屋─

律「という事があったんだ」

澪「それ、報告するような事か?」

紬「でも良かったわね~、お友達がすぐに3人も出来て」

澪「みんな話しやすいしな」

律「でも唯は最初、晶の事を怖がってたのに
頭が狂っていきなりカワイイとか言い出したけど」

律「澪はいつの間に晶を克服したんだ?」

澪「あぁ…この間、新歓ライブで私たち、ふわふわタイムを披露しただろ?」

唯「したした」

澪「あの晩、晶の部屋から、ふわふわの歌詞が聞こえてきたんだ」

律「おっ?」

唯「私たちの歌、気に入ってくれたってこと?」

紬「なんだか嬉しいかも~♪」

澪「そうなんだ。それ以来、私は晶の事を見下せるようになったってワケさ!」

唯「見下せるようになったんだ」

律「よかったな」

紬「ところでみんな誰のことがお気に入り登録?」

律「ムギっ!友達に順位をつけるようなマネ…!」

紬「2万円出すから、そろそろ全開でイキましょうよ」チャリーン

澪「あっ、私たちの大好きなマネーだ!」

律「よっしゃヨッシャ」チャリーン

唯「ムギちゃんムギちゃんムギちゃんちゃん~!」

紬「ふふっ、欲深きアバズレたちよ」

紬「りっちゃんは、菖ちゃんと波長があってるカンジね」

律「そうだなぁ、なんかアイツとは話が合うよ色々」

澪「唯とは別のベクトルで息があってるというか」

唯「でもでも菖ちゃんは遭難ごっことかしてくれないよ、きっと!」

律「……」

律「アタシ、もう大学生だし」

唯「りっちゃんが私から卒業してゆくよ!?」

澪「というか唯は大学生になっても、あの小芝居を続ける気なのか?」

唯「人前で大きな声でりっちゃん隊長と叫び続けようっと」

律「おいやめろ」

唯「澪ちゃんは、りっちゃんが菖ちゃんにとられてもいいの!?」

澪「えっ」




澪「私には幸がいるから…///」

律「うわっ」

唯「話をフッといてなんだけどアレだよ」


唯「ひいた」

紬「本当に…」


澪「なっ、なんだよムギまで。というか私と幸はそんなのじゃないよ!」

唯「そんなの、ってどんなの?」

澪「女同士で赤ちゃんが作れるかどうかとか?」

律「コイツは何を言っているんだ」

澪「しまった、罠か!?」


紬「いま、あなたの目には何がうつっていますか?」

澪「全部うそだよ?」

律「そういう事にしておこうぜ」

律「何故ならこの日常を守りたいから」

唯「そうだね」

紬「だけど澪ちゃんと幸ちゃんって
大人しそうな2人がお互いを慈しみあってて美しい光景だわ」

紬「私は好きよ」

澪「ブヘへ」

唯「でも、あの、これは決して文句とかではないんだよ?だけど…」

律「なんだいハッキリしないなぁ」

澪「どうしたんだ唯?」

唯「りっちゃんを殴る澪ちゃんはイキイキしてたけど
そのうち幸ちゃんの事も殴るの?」

澪「えっ」



澪「いいな…」


律「えっ」

紬「かわいそうな幸ちゃん」


澪「全部うそだよ?」

唯「おや、デジャブかな」

律「アイツは昔からウソばっかさ」

紬「ところで澪ちゃん…」

澪「どんと来て」

紬「高校最初の合宿では唯ちゃんと艶かしい雰囲気を少なからず醸し出してたけど
あれは澪ちゃんの中でどうだったの?」

澪「知らん」

律「そういや人に心を開くのが苦手な澪の中にズンズン入り込んでゆく唯、
みたいな構図があったといえばあった」

唯「ゆいみおだね!」

紬「唯ちゃんはどうとらえているの?」

唯「澪ちゃんのことを?」

澪「どきどき」

唯「最初は綺麗だしカッコいいし可愛いし、なんか良かったけど
モスバーガーを食べたらマクドナルドじゃ物足りなくなった!」

律「なんだ、モスとかマックとかって?」

唯「あずにゃん」

紬「あぁ」

澪「私がマクドナルドだと?」

紬「そういえばマックでバイトしたときハンバーガーにミミズ入れてたわ」

澪「その情報は私と関係あるのか!?」

律「このマクドナルドは実在するマクドナルドとは一切関係ありません」

紬「全部うそよ」

唯「おや、デジャブかな」

律「で、あずにゃんと言えば唯にゃんよ」

唯「なんだい、りっにゃん」

律「晶って梓とは随分タイプが違うけど
お前は穴さえあれば、なんでもいいワケ?」

澪「そういえば異常になついてるよな」

唯「晶ちゃんは髪を伸ばせば間違いなく化ける」

唯「私はその時を待つよ」

紬「で、でも晶ちゃんが梓ちゃんみたいな髪型してたら狂気を感じない?」

澪「確かに」

律「そもそも梓自体に狂気を感じる」

唯「でもあずにゃんはあずにゃんだよ!」

澪「そうだな」

紬「あらっ、良い話になったカンジ」

律「よかったよかった」


おわり



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