―60―
そういうワケで大変なことになった。
これがギャグ漫画なら
「そんなあああ」
チャンチャン♪
で終わるんだが、現実はそうはいかない。
この悪夢のようなイベントを終わらせ、次のシーンに進むには
なんらかのケリをつけねばならないんだよ
私の手で。
律「ふう…」
レジの前にいても払う金も使えるカードも無いので
とりあえず席に戻る。
すると、既にアタシらの食べ散らかしたテーブルを店員が片付けにかかっていたので
それを制するように椅子に座る。
店員は「コイツ帰るんじゃなかったのかよ」という、ちょっと意表をつかれた表情をしてホールの方に戻っていった。
さて、これからどうするか…
一見、絶望的な状況だがまったく案が無いワケでもないので
1つ1つ検討していくとしよう。
とらあえず気分を落ちつかせるためにアタシはコーヒーを頼んだ。
さて。
まず、無難な方法として店員に
素直に金が無いことを話すって手がある。
そうすりゃ親に連絡して金を持ってきてもらうとかって事も可能だが…
数千円くらいならまだしも6万円はヤバいだろ…
しかも、車をぶつけてしまったとかなら理解できるだろうが一食分の食事代だ。
仮にアタシの娘がそんな事をしでかしたら
アタシはもうソイツに一生涯モヤシしか喰わさないだろう。
モヤシは美味いがモヤシだけがオカズなんて人間のやる事じゃない。
ウサギとかドングリとか…何かそういう弱小動物の発想だ。
それに農家に気をつかってモヤシは美味いと表現してみたが
別にあんなモン好きで喰ってる人類はいないだろう。
そもそもドングリは動物じゃないしな。
そう考えると、人間って案外ちっぽけな生き物だなあと思えてきて
私は甘いモノが欲しくなったのでアイスを注文してみたのだった。
―60―
終わり
※モヤシは最高です。
―61―
律「おーす!」
唯「はっ、りっちゃん」
澪「お前、あのあと どうしたんだ」
紬「食い逃げしたの?」
律「謝ったら許してくれた」
澪「えっ、そんな簡単に!?」
律「そのかわり、今週中に7万円払わなきゃならん」
唯「ははあ」
紬「まあ、妥当かつ無難な落としどころね」
澪「あれ、でも律の会計って6万1000円じゃなかったっけ」
紬「そういえば…」
唯「9000円分は罰金なんだよ、きっと!」
律「あのあと、コーヒーとアイスとスパゲッテイとアイス喰ったらそうなった」
紬「」
澪「お前、金が無いと分かってて何くつろいでるんだ」
律「倍プッシュだ」
唯「どういう事なんだろう」
紬「とりあえずパスタの事をスパゲッティとかいうのを
りっちゃんはやめるべきなんだわ」
律「え、なんで」
澪「今どきの若者はスパゲッティとか言わないらしいよ」
紬「パスタよ、りっちゃん」
唯「パスタ」
律「パ…」
律「パンティ」
澪「おい」
紬「ちなみにパンティの事もパンツって言うらしいわ」
律「くっ…」
唯「スパゲッティとかパンティとか今の若者はティに怨みでもあるのかなあ」
澪「まあスパゲッテイだのスパゲッチーだの
いかにも英語の発音が苦手なおじいちゃんの象徴なんじゃないの」
唯「ティ…」
律「しかしアタシらだって放課後『ティ』ータイムじゃないか」
紬「あっ、確かに」
澪「私たちのバンド名にもティがあったなんて」
律「くそっ…」
紬「だから何?って気もするけれど…」
唯「まあ、でもアレだよね」
唯「バンド名つけたの、さわちゃんだし!」
澪「ああ…じゃあ若者らしくない『ティ』が混じってても仕方ないよ」
律「最近、さらに歳をとったらしいからな」
紬「うん、仕方ない仕方ない」
仕方がなかったのです。
さわちゃん先生、遅れたけれどお誕生日おめでとうございました!
―61―
終わティ
―62―
紬「百合か…」
菫「え、何か言った?」
紬「ねえ、菫」
菫「なあに、お姉ちゃん」
紬「百合…って、どう思う?」
菫「え?」
菫「んー…」
菫「何かを語るほど百合について深く考えた事はないかなぁ…」
紬「そう…」
菫「うん」
紬「……」
菫「~♪」
紬「今からイヤがる菫の口の中に舌を力づくでネジこむわ」
菫「えっ、や、やだよ!!やめて…!!」
紬「……」
紬「……」
紬「ハァ…」
菫「……?」
菫「ど、どうかしたの?」
紬「最近ね…」
紬「フォースが弱まっているのよ…」
菫「この人、頭が変だなあ」
紬「最近、百合に興奮を感じなくなってしまったのよ…」
菫「はぁ…」
菫「それ、何か困るの?」
紬「何か、こう…生きる活力がなくなったというか…」
紬「例えば、以前は部活でじゃれあう唯ちゃんたちを見て股関を熱くさせていたけれど…
最近はそういうのどうでもよくなって、ぶっちゃけ何故、私は軽音部にいるか分からないくらいで…」
菫「ふ~ん…」
菫「あ。じゃあ、男の人に興味が湧いてきたり…」
紬「……」
紬「…………」
紬「……………」
紬「別にそれも無いわね」
菫「そう…」
紬「でも本当はなんとなく心当たりはあるのよ…」
菫「やっぱり非生産的な愛はむなしい…とか」
紬「……」
紬「フェチが足りないのよ…」
菫「……ふぇ、ふぇち?」
菫「あの、足首が細いコが好き!…みたいな?」
紬「何言ってるの菫?細い足首が好きなんてフェチでもなんでもない普通の事じゃない。私が言っているのは澪ちゃんの足の人差し指と中指の間にそっと舌を這わせて、そこに溜まっていた足指垢を澪ちゃんの見てる目の前でゴックン…て飲みこんで見せるとかそういう類いの話をしているのよ」
菫「お姉ちゃんはついになれたんだね」
菫「超サイヤ人に…」
―62―
おわり
―63―
菫「お姉ちゃんが昨日、そんな事をゆってました」
純「……」
菫「あ、あの、純先輩」
純「ごめん、私、地球人だから」
純「そのレベルの戦いにはついていけないから」
菫「そ、そんなの私だってですよぅ…!!」
ガチャッ
梓「大腸!!」
純「来たよ、サイヤ人が」
直「純先輩純先輩。何故、あの人は部室に入ってくるなり変な事を叫んだんですか?」
純「知るもんか」
憂「こんにちはー、菫ちゃん、直ちゃん」
菫「憂先輩、こんにちは!」
直「どーもです」
梓「あ、直。シャンプー変えた?」
直「いえ、全然変えてませんが」
梓「アハハハハ!!!アハハハハ!!!」
直「純先輩純先輩」
純「知るもんか」
憂「梓ちゃん、朝からゴキゲンだね!」
梓「うん、実は今朝、学校来る途中に8000円入った財布を拾って全部、私のモノにしたんだ~♪」
純「なんて生々しく汚らしい理由なんだろうね」
梓「アハハハハ!!」
梓「あれ、菫…なんだか元気ない…?」
菫「あ、はぁ…ちょっと」
直「さすが部長、部員の変化に敏感ですね」
梓「ハイ、1000円あげるから元気出して♪」ニコッ
菫「い、いりません!」
梓「な、なんで…?」
純「その湿ったクッシャクシャの1000円しまいなよ犯罪者」
梓「う、うん…」クシャッ
憂「菫ちゃん、なにかあったの?」
菫「……」
菫「あっ、憂先輩、お姉さんがいるんですよね」
憂「え、うん。いるよ~」
菫「もし憂先輩のお姉さんが女の子の足の指の垢をゴックンしたいって言い出したら、どう思います?」
憂「犯したいと思うよ」
直「そ、即答した」
菫「純先輩純先輩!!」
純「はいはい、深呼吸深呼吸」スーハー
菫「スーハー」
直「スーハー」
純「キミたちはおかしい」
梓「そうかなあ」
憂「おかしいのは世の中の方かも知れないよ?」
純「まあね。だから、私はキミらを非難しないし
また、私だけが正しいとも思っていないよ」
憂「良かったぁ」
梓「1000円いる?」
純「お巡りさんに届けてきたら?」
梓「でも財布は切り刻んでノラ犬に喰わせたから…」
純「お前は間違っている」
直「犯罪者としては正しいのかも…」
ガチャッ
さわ子「ちくわぶ」
梓「はい」
菫「あっ、ざわめき先生」
直「どーもです」
さわ子「ざわめき先生ってなんなのよ」
菫「なんでしょうね…なんか、浮かんだので」
直「さわ子先生とトキメキが合体した素敵な生命体かも知れませんよ」
さわ子「ふぅむ」
さわ子「一理あるわね…」
純(納得した…!?)
さわ子「おやつちょうだい」
憂「はい」コト
さわ子「パオッ!!」
直(パオッて何…?)
さわ子「今日のおやつ、納豆なの?」
憂「体にいいんですよ」
さわ子「私がその情報知らないとでも思ってるの?」
菫「お紅茶入りました」カチャッ
さわ子「納豆に紅茶」
梓「夢のコラボレーションですね」
さわ子「……」
梓「どうかしましたか?」
さわ子「梓ちゃんの無垢な裸体に紅茶を滴らせてネバネバ納豆かけたら興奮するわね…」
梓「変態!変態!変態!w」
直(なんて清々しい笑顔なんだろう)
菫「さわ子先生って変態なんですよね?」
さわ子「そうかしら」
梓「さわ子先生は立派な変態ですよ。もっと自信をもって下さい」
憂「チョウチョ食べますよね?」
さわ子「食べないわよ!?」
菫「あ、あれ、普通の人なのかな…?」
純「さーて、練習しよっかなー」ガタ
直「同意します」カタッ
さわ子「え?ムギちゃんが女の子の足の指を舐めたがってた?」
梓「やるなぁ」
菫「せ、正確にはその光景を見たがってました」
憂「菫ちゃんはそれが嫌なんだ?」
菫「嫌なんです…」
憂「じゃあ菫ちゃんはチョウチョ食べたら?」
菫「嫌です…」
さわ子「バタフライのアジフライ、おいしいわよ?」
菫「そ、それ、衣をとったら何が出てくるんですか…?」
梓「シュオッ」
直「純先輩純先輩!!」
純「なんだい奥田後輩」
直「菫を助けてあげてください…」
純「……」
純「かめはめはー」
憂「え?」
さわ子「今、何かした?」
純「ごらん、ナオッチ。これが彼女たちと私との力の差だよ」
直「これで地球はオシマイだ」
純「私はここでベースをならし『練習しようよ』とアピールする事しか出来ない」ベベン♪
憂「純ちゃんうるさい」
純「は~い」
さわ子「ようするに菫ちゃんはムギちゃんが見た事もない異常な行動をとりたがっているのが気になるのよね?」
菫「すごく気になります」
さわ子「じゃあ菫ちゃんが好きな直ちゃんの足指にサランラップをまいて、それを舐めたら少しは慣れるんじゃない?」
梓「あ、見たい」
菫「……」
直「……」
純「」ベベン♪ベベベン♪
憂「純ちゃん、もっと官能的な曲お願い!」
純「私はそんなつもりでベースを弾いているんじゃないのだよ」
直「とりあえず脚にサランラップまいてみました」ピッ
菫「な、直ちゃん…」
直「変な事はしたくないけど、菫が少しでも何か救われるなら、なんでもやるから」
菫「……///」
憂「クスッ」
梓(ふふ……唯先輩。私、ちゃんとけいおん部の部長、やれてるみたいですよ?)
唯「…あっ」
澪「どうした、唯」
唯「なんか今、一瞬すごい寒気がしたんだよ」
律「おいおい、平気か?」
紬「今、インフルエンザが流行ってるから、気をつけないとね」
唯「ホントにね~」
―63―
おわり
最終更新:2014年04月19日 22:14