~数時間後~
[すっかり陽も落ちて、辺りはだいぶ暗くなってまいりました。罠を張り終えた律先輩は火を
起こしております。火の始末には気をつけましょう! 憂の方は依然として所在が掴めません。
一体、どこに潜んでいるのでしょうか……]
律「そろそろ頃合いかな…… 松明にしてっと……」ボボボボ
[律先輩、上着を脱いでタンクトップ姿となり、松明を掲げました! これは何を意味するのか!]
律「オオオオオオオオオオオオオオオオ!!」
[律先輩、敢然と雄叫びを上げました! まるで、自分はここだぞ、と知らせるかのように!]
~ゲームフィールドのどこか~
憂「……!」ピクッ
ザシャアッ ザザザザザッ
~再びTEAM澪スタート地点近く~
律「急げや急げ……!」ダダッ バサッ グイグイ
[律先輩、上着をカカシに着せ、松明を持たせました! なるほど! 自陣への後退、罠、
カカシ、夜! ようやくすべてが符号しました!]
律「さあ、いつでも来い……!」ダダッ スッ
[カカシから少し離れた場所で息を潜めます……! しかし、この作戦、憂相手に通用するか
どうか……!]
律(はあ…… 緊張で漏れそう……)ドキドキ
[まだ何の動きも無いようですが――]
ババババババッ バシュッバシュッバシュッ
律(!?)
[えっ!? カカシに何の前触れも無く突然の射撃!! 一体どこから!?]
律(馬鹿な! あれだけ罠を張ってたのに! 鳴子も鳴ってないぞ!)
ヒュッ ザシャアッ
憂「違う…… 律さんじゃない……」
律(上から……! そうか…… 木から木へ跳び移って……!)
[憂が律先輩の頭上から飛び下りてきました! どうやら罠を警戒して、木の上を移動して
ここまでやって来たようです! しかし、律先輩の存在には気づいていません! これは
律先輩、僥倖!]
律(気づくな…… 気づくなよ……)ソロリソロリ
[律先輩、カカシを見て首を傾げる憂の背後へにじり寄ります……! 射撃にベストの
ポジションへ……!]
律(よし!)チャッ
憂「……!」ギンッ
律(気づかれた! うおおおおお!」ドンッドンッドンッドンッドンッ
憂「ハアッ!」ザザッ ババババババッ
[殺気か!? 僅かな物音か!? 律先輩に気づいた憂、ショットガンの散弾をかいくぐり、
猛然と反撃!]
律「当たれえええええ!!」ドンッドンッドンッドンッドンッドンッ
憂「あああああっ!」ザザッ ババババババッ ザザッ
[ダメです! 当たらない! これはいつか見た光景! 凄まじいスピードで跳び回る憂!
それどころかサブマシンガンの弾丸が徐々に律先輩を追い詰める!]
律「うおおおおお!」ドンッドンッドンッドンッドンッカチッカチッ
[ああっと! 律先輩、これはっ……!]
律「くそったれ! 弾切れだ!」ザザッ
[律先輩、遂にショットガンが弾切れです! 急いで木の陰に隠れる! 絶体絶命大ピンチ
だぁー!]
憂「……律さん、ショットガン終わっちゃいましたね」ジリジリ
律(よく見てるな、くそっ……)
[憂がゆっくりと近づいて行きます……! 律先輩にはベレッタが残されているとはいえ、
勝負にならないのは明らか! どうする律先輩!]
律(この場所…… よし、あとはなるようになれだ……!)
[おや……? 律先輩が……]
律「負けた負けたー! 降参だよ、降参!」ガチャン
憂「……?」
[な、なんと律先輩! ショットガンを投げ捨て、両手を頭の後ろに回して出てきました!
これは戦意喪失か!? 勝負を放棄したのか!?]
律「いやー、まいったまいったw やっぱ憂ちゃんには敵わないよw」
憂「一体、何の真似ですか……?」ジリジリ
律「いや、だからさ、降参だって。あとは一思いに撃ってくれよw(もうちょっとだ……
あと三歩……!)」
憂「……」ピタッ
律「どうした? 早く終わらせようぜ(くそっ! 来い! あと二歩だろ!)」
憂「……落とし穴ですか」ギロッ
律(バレてら……)
憂「それとも背中のベレッタで不意討ちですか?」
律(これもバレてると……)
[ああっ! 別のカメラでアングルを切り替えてわかりました! 両手を回した頭の、その下!
背中の首に近い辺りにベレッタをガムテープで貼りつけております!]
憂「小細工を……!」ジャキッ
律(こうなりゃ……!)
[怒り心頭の憂! サブマシンガンを構えた! 律先輩、あなたはよく頑張りました!
相手が悪かったんです!]
律「そう、小細工だ。だってさ、憂ちゃん強過ぎるんだもん。私と澪が組んでメインウェポン
撃ちまくっても勝てないくらいな。でもさぁ……」
憂「……?」
律「この状況はどうなの? もうハンドガンしかない私がだよ? 憂ちゃんよりずっと弱っちい
私が両手を上げてんのにだよ? またピョンピョン飛び跳ねて、そのサブマシンガンで
バンバン撃ちまくんの? それを唯が見たらどう思うかなぁ」
憂「……!」ピクッ
律「憂ちゃんはそんな子だったのかなぁ。弱い者イジメをするように今まで唯に教えられて
きたのかなぁ」
憂「~~~ッ!」プルプル
律「唯が泣くぞぉ? 今の憂ちゃんを見たら」
憂「な、なら、どうしたらいいんですかっ……!」スッ
律(かかった……!)ニヤリ
[憂がサブマシンガンを下げました! 効いています! 今までのどんな攻撃よりも、律先輩の
“口撃”が効いています!]
律「簡単簡単。ウェスタンさ。『抜きな。どっちが速いか勝負しようぜ』ってヤツだよ」
憂「いいでしょう……」グイッ
[憂がサブマシンガンを後ろに回し、ズボンの腰辺りに差し込みました! 対する律先輩は
両手を頭の後ろに回したまま! 格好は違いますが、どちらもすぐに銃を抜ける体勢です!
さあ、決着の速撃ち勝負の用意が整ったぁ!!]
憂「何か言い遺すことはありますか……?」
律「イピカイエー、ってか……w」
憂「……」
律「……」
憂「……」
律「……」
アォオオオオオオオオン
憂「!」ジャキッ
律「!」ガチャッ
[野犬の遠吠えを合図に二人が抜いたぁー!!]
タァーン
ババババババッ
~琴吹家別荘前特設会場~
唯「遅いねー」
紬「もうすぐ戻ってくるはずよ。あっ、ほら! 来たわ!」
姫子「おーい!」
和「おかえりなさい、二人共」
唯「おかえりー!」
憂「ただいま。お姉ちゃん、和ちゃん」
律「たっだいまー!」
梓「すごい勝負でしたよ、律先輩。同時被弾で引き分けですけど、不満に思ってる人なんて
誰もいませんでした」
律「いやー、ホント憂ちゃん強かった!」
和「あの状況から憂に引き分けるのは正直すごいと思うわ。見直したわよ、律」
憂「でも、最後は律さんの勝ちみたいなものです! 私は額を撃たれたけど、律さんはお腹
でしたから。もし、これが本物だったら倒れていたのは私ですよ」
律「いや、そんな“もし”は絶対あり得ないから…… あれ? そういや澪は?」
紬「あ、あそこに……」
澪「憂ちゃん怖い憂ちゃん怖い憂ちゃん怖い……」
和「背後から襲いかかられて、蔓で木に逆さ吊りにされたら、そりゃ誰だってああなるわね」
憂「ご、ごめんなさい……」
梓「私は三回殺された挙げ句、気絶してるとこを罠に使われたけどね」
憂「梓ちゃん、本当にごめん! 許して!」
唯(ごめんなさい)
紬(ごめんなさい)
律「でもそのくらいで済んで良かったな、澪。もうちょっと手こずらせてたら脊椎から頭蓋骨
抜かれてトロフィーにされてたかもw」
澪「ひいい!」
憂「そ、そんなことしませんよ!」
紬「さあさあ、この後はバーベキュー大会よ。観に来てくれたみんなも一緒にね」
律「やったー! もう腹ペコだよ!」
和「律と憂には特にお腹いっぱい食べてもらわないとね」
唯「行こう行こう! レッツゴー!」
姫子「あ、鈴木さん鈴木さん」
純「はい?」
姫子「鈴木さんの実況、すごく良かったよ。私、早くにリタイアしたからずっと聞いてたけど、
スポーツ中継みたいな名実況だった。お疲れ様」
純「あ、いや、えへへ……/// ありがとうございます!」
憂「純ちゃん。はい、マイク」
純「えっ? あ、じゃあ……」
純[残念ながらお別れの時間が来てしまいました! それでは皆さん、ここ紬先輩の別荘前
特設会場から、ごきげんよう! さようなら!]
おしまい
以上になります。お読み頂き、ありがとうございました。
挿絵は私が仲良くさせて頂いている方に描いて頂きました。
本当にありがとうございます。
最終更新:2014年05月22日 23:33