直「こんにちは。あれ?平沢先輩、早いですね」

唯「おぉ!わ、私の名前知ってくれてるの!?」ジーン・・・!

直「?………なにを言ってるんですか?そういえばなんで私服で……髪型も今日は違いますね……?」

唯「?………あっ!なるほど、憂と勘違いしてるんだね?」

直「えっ?」

唯「はじめまして!軽音部OG、憂の姉の平沢唯です!」

直「平沢……唯、先輩?あっ、はじめまして!すいません……

  平沢先輩にお姉さんがいることは聞いていたんですけど……」

唯「いいよいいよ〜♪昔からよく間違われるから。キミは新一年生だよね?」

直「あ、はい。私は……」

唯「ストップ!ふふふ……ちゃんと憂やあずにゃんから聞いて知ってるよ〜♪

  新一年生の佐藤さんと奥野さんのうち……佐藤さんのほうだね!?」

直「斉藤と奥田のうち奥田のほうです」

唯「………………ゴメンナサイ」

直「いえ、気にしないでください。それより平沢先輩はどうしてここに?」

唯「え?ああ、ちょっと用事で実家のほうに帰ってきたんだよ。

  それで、ついでにみんなの様子を見ていこうかなーってね♪」

直「……でも確か中野先輩が学園祭までは先輩方に会わないって言ってたような……」

唯「えぇっ!?あっ!そ、そういえば憂から聞いた気がする………どうしよう……

  えっと、ま、まあ、一日ぐらい大丈夫だよね!」

直「平沢先輩がそれでいいんでしたら……」

唯「まあその話は置いといて……奥田さんって下の名前なんていうの?」

直「直です。奥田直」

唯「おぉ!直ちゃんか〜♪かわいい名前だね!」

直「そ、そうですか?あんまり言われたことないですけど……」

唯「ねぇ、直ちゃん?軽音部楽しい?」

直「………………」

唯「直ちゃん?」

直「あ、すいません……あまり下の名前で呼ばれることがないもので……」

唯「そうなの?軽音部のみんなにはなんて呼ばれてるの?」

直「『奥田さん』ですね」

唯「えぇ〜っ?ダメだよー。せっかくかわいい名前なのに……それに、

  軽音部には下の名前で呼び合うっていう伝統があるんだよ?」

直「……そうなんですか?」

唯「うん!私達の時はそうだったよ?だから直ちゃんも私のこと唯先輩って呼んで?

  平沢先輩じゃ憂と紛らわしいし」

直「わかりました……唯、先輩……」

唯「よし!えへへ………あれ?なんの話してたんだっけ……?」

直「唯先輩が私に軽音部は楽しいかと……」

唯「あぁ!そうそう。で、どう?楽しい?」

直「そうですね……楽しいですよ。先輩方は良くしてくれますし。斉藤さんもいい子ですし……

  山中先生はちょっと変わった人ですけど……」

唯「そっか。良かったぁ♪……直ちゃんは楽器なにやってるんだっけ?」 

直「………私は楽器はやってません。今はパソコンで曲を作ったりしてますね」

唯「あ、そっか。そういえばあずにゃんがそんなこと言ってたような……」

直「先輩方の演奏聴かせてもらいました。『ふわふわタイム』……でしたっけ?

  すごくいい曲ですね」

唯「でしょでしょ〜♪作詞澪ちゃん作曲ムギちゃんの最強タッグだからね!」フンス! 

直「私も先輩方に負けないような曲を作りたいと思います」

唯「………ねぇ、直ちゃん。直ちゃんはなにか楽器やりたいとは思わないの?」

直「………いえ、私は………」

唯「曲を作れるのってすごいことだと思うけど……

  でも、みんなと一緒に演奏するの、すっごく楽しいよ?」

直「………入部した頃はギターとか、やりたいと思ってました。

  でも、楽器の才能がなかったので………」

唯「そんなことないよ!私だって高校入った時は初心者だったもん!

  頑張って練習すれば絶対、弾けるようになるよ!」

直「指が上手く動きませんし……」

唯「私も最初は動かなかったよー。毎日ギター触って、

  指のストレッチとかしたら動くようになってくるよ」

直「で、でも、ギター持ってませんし……」

唯「さわちゃんに頼んだらきっと貸してくれるよ。とりあえず今日は私のギー太貸してあげる!

  ちょっと重くって最初は扱いにくいかもだけど……」

直「だめですよ……唯先輩の大事なギター壊しちゃったりしたら……」

唯「あはは。ギー太はそう簡単に壊れたりしないよ?ね、ちょっとだけ練習してみよう?

  みんなと一緒に合わせれるようになったら、きっともっと部活が楽しくなるから!」

直「は、はぁ………」


 _________



唯「………ね?ゆっくり弾いたら、ちゃんと出来るでしょ?」

直「は、はい………ちょっと指が痛いですが………」

唯「あはは、最初はそうだよねー。でも直ちゃんすごいよ!コードほとんど憶えちゃってるもん!」

直「はい。勉強はしましたから」

唯「私はコードちゃんと憶えるのに二年ぐらいかかったなー………

  こんなにすぐに憶えられたんだから直ちゃん、才能ないなんて言っちゃダメだよ!」

直「はあ……でもコードを憶えるのはギターの才能なんでしょうか?」

唯「私なんて今でもたまに忘れちゃうし……何度あずにゃんに怒られたことか……」

直「あの、唯先輩?さっきから気になってたんですけど『あずにゃん』ってもしかして……」

唯「え?……あぁ、梓ちゃんのあだ名だよ。まあ、私しか呼んでなかったんだけどね〜♪」

直「あの中野先輩が『あずにゃん』ですか……」プッ

唯「あっ!直ちゃん。『中野先輩』なんて呼び方ダメだよー。呼ぶなら『梓先輩』か、もしくは……」

直「『あずにゃん先輩』ですか?」

唯「プッ……あはは!直ちゃん、わかってるぅ!」

直「あはは……ご本人の前では言えませんけどね」


 _________



唯「どうだった?ギター弾いてみて」

直「はい……楽しかったです。ありがとうございます」

唯「みんなで一緒に演奏したら、もっともーっと楽しいよ♪」

直「………唯先輩。実は私、一度軽音部を辞めようと思ったことがあるんです。

  どの楽器も上手く扱えなくて……その時、山中先生がパソコンで曲を作れること

  教えてくれて。これなら私にも出来るって思って軽音部に残ったんです」

唯「………………」

直「だから、曲を作る事でしか私は軽音部に貢献できないって。それしか私の居場所はないって

  決め付けていたんです。軽音部に入部する前もそうでした。色んな部活に体験入部して

  ちょっとやってみただけで、それで自分には向いてないって決め付けて………」

唯「直ちゃん………」

直「私、ギターやりたいです」

唯「うん、頑張って!あずにゃんや憂は私よりずっといい先生だから、

  教えてもらえばきっと上手くなれるよ」

直「出来ればこれからも唯先輩に教えてもらいたいんですが……それは無理ですもんね」

唯「うーん……そう言ってくれるのは嬉しいけど……なかなか来れないしねぇ……

  でも今日みたいに、たまには顔出すようにするから、ね?」

直「はい。ありがとうございます。………それにしても、唯先輩は

  私がイメージしていた人とちょっと違いました」

唯「そうなの?どんなイメージだったのかなぁ?」

直「平沢せんぱ……憂先輩が『お姉ちゃんは私よりもっとしっかりしてる』と

  言っていましたので……」

唯「まぁ♪憂ったら………んん?それでイメージと違ったってことは……?

  あぁーーーっ!直ちゃんひどい!」

直「ふふっ、すいません。でもいい意味でイメージと違ったんですよ?

  もっとロボみたいな人を想像してましたから」

唯「ロ、ロボ……?」


 _________



唯「ふぅ……それにしてもみんな遅いねぇ」

直「三年生は確か学年集会があるんで遅くなるそうです。斉藤さん……菫は

  日直だったんでもうすぐ来ると思いますけど」

唯「そっか………よし!今日はもう帰るよ、直ちゃん!」

直「……えぇっ!?みなさんに会っていかないんですか?」

唯「うーん……まあ、会いたいけどねぇ。ほら、さっき言ってたでしょ?

  あずにゃんが学園祭までは会わないって決めてるって。やっぱり今日会っちゃったら

  怒られそうだし……それにあずにゃんの決意を無駄にしちゃ悪いもんね?

  直ちゃんも今日私が来たことは内緒にしててくれないかなぁ?」

直「それは構いませんけど……私も学園祭まで、唯先輩には会えないんですか?

  ギター教えてほしいです」

唯「あっ、そっか……じゃあ、私の家で会おう!私が実家に帰ってる時は憂から

  直ちゃんに伝えてもらうようにするから!」

直「わかりました。楽しみにしてます!」

唯「うん。じゃあね直ちゃん。軽音部、楽しんでね!」


 _________



 ガチャッ

純「ふぃ〜〜……お疲れ〜」

憂「ごめんね、奥田さん。遅くなっちゃって」

梓「お待たせ、奥田さん」

菫「すいません……私も遅くなりました……すぐにお茶の用意しますね?」

純「悪いね、奥田さん。一人で寂しかったでしょ?」

直「いえ、特には……」

憂「!?……お姉ちゃんの匂いがする……なんで!?」

梓「はぁ?なに言ってんのよ憂」

純「お姉ちゃん好きが高じてついに幻嗅まで……」


直「あの、梓先輩」

梓「えぇっ!?」

直「まだ何も言ってませんけど……なんでそんなに驚いてるんですか?」

梓「えっ、だ、だって奥田さん今まで私のこと『中野先輩』って呼んでたよね?」

直「ああ……すいません、ダメでしたか?」

梓「う、ううん!ダメじゃない!全然ダメじゃないよ!むしろそう呼んで?」

純「私のことも『純先輩』でいいからねっ!?」

憂「じゃあ私も『憂先輩』で!」

直「はい。皆さんのことこれからは下の名前で呼ぼうと思います。……菫もいいかな?」

菫「えっ!?う、うん!嬉しい……」

直「ですから皆さんも私のことは『直』と呼んでください」

純「そういえば……奥田さんだけ何故か今まで苗字で呼んでたよね……」

憂「ホントだね……特に意識してたわけじゃないんだけど……ごめんね、直ちゃん」

菫「な、な……なお…ちゃん……///」

梓「そう言えば先輩も後輩も下の名前で呼び合うのは軽音部の伝統だったね……ごめん、直」

直「………あ、そうだ。梓先輩に言いたかったのはそんなことじゃないんです」

梓「なに?」

直「あの……私、今日からギターの練習させてもらってもいいでしょうか?」

梓「!!」

憂「どうしたの、急に?」

直「……みなさんと一緒に演奏したくなりました。下手くそで足を引っ張るかもしれませんけど

  頑張りますので、どうか教えてください!」

梓「うん、もちろんいいよ。ごめん……私、もう直は楽器演奏するの嫌がってるんじゃないかって

  思って……無理になにかを演奏させようとしたら軽音部辞めちゃうんじゃないかって勝手に

  思い込んじゃって……やっぱり、みんなで演奏したほうが楽しいもんね?一緒にがんばろう、直!」

直「はい!」




直「あ、それともう一つ……」

梓「なに?なんでも言って?」

直「あずにゃん先輩って呼んでもいいですか?」

梓「……んんっ!?」




 おしまい



最終更新:2014年07月26日 07:48