梓「はい。お祭りもやってますよ」
唯「わたがし食べたい!」
梓「じゃあいきましょう」
唯「そうだ、浴衣着ていこうよ」
梓「浴衣……?」
唯「せっかくだからね。格好でも楽しまないと!」
梓「わかりました。じゃあ着替えないといけませんね」
唯「虫除け対策もね!」
梓「虫除けスプレーどこやったっけ……」
唯「浴衣、浴衣〜♪」
♯
唯「ふふ〜♪」
梓「そんなに楽しみなんですか?」
唯「まあそれもあるけどさ、夜の散歩もいいなあって」
梓「なるほど……」
唯「ほら、昼と比べて外もすずしいし」
梓「たしかに……それに静かですよね」
唯「ほら、虫の音も聞こえるよ」
梓「まさに日本の夏ですよね……」
唯「だねえ……」
梓「……と、ところで唯先輩、浴衣姿似合ってますよ」
唯「ありがとう。あずにゃんも浴衣姿とってもお似合いだよ。髪括ってるから浴衣美人だよ!」
梓「あ、ありがとうございます……。あっ、見えてきましたよ」
唯「けっこう人いるね〜」
梓「お祭りですからね。向こうにわたがし屋さんありますよ」
唯「ふふふ……わかってないね、あずにゃん……」
梓「何がですか……」
唯「お祭りに来て最初に食べるものといえば!」
梓「……といえば?」
唯「ずばり、焼きそばだよ! わかってないなあもう……」
梓「誰が決めたんですか……」
唯「次に焼きとうもろこし、その次にフライドポテト、それから、わたがしだよ。これがゴールデンルート……」
梓「はあ……」
唯「じゃあいくよ! まずは焼きそば!」
梓「なにもそんなに急がなくても……」
唯「ふんす! 焼きそばは待ってくれないよ!」
梓「待ってくださいよ〜!」
~~~
唯「ふい〜食べた食べた……」
梓「けっこうお腹いっぱいになりますね」
唯「でも甘いものは別腹だよ、あずにゃん!」
梓「(まだ食べるんだ……)」
唯「よーし、次は……あ」
梓「……?」
唯「あ、あれは……!」
梓「カステラ焼きですね」
唯「ああ……いい匂い……足が勝手に……」フラフラ
梓「わたがしじゃなかったんですか!?」
唯「人間目の前に欲を突き付けられれば逆らえないものなんだよ〜……」フラフラ
梓「どこまで本能に忠実なんですか!」
唯「カステラくださーい」
梓「ああもう……」
唯「買ってきたよー! そこらで座って食べよう!」
梓「やれやれ……」
唯「甘くてほかほかでサクサクだよ……」
梓「こういう場所で食べるといつもよりおいしく感じますよね」
唯「うんうん。この味も見える光景も雰囲気も、みんな思い出になるんだよ」
梓「思い出……」
唯「そうだよ」
梓「……まあそうですけど。それだとなんか時間が過ぎるのがもったいない気がしますね……こう、そんな具体的に言われると……」
唯「どうして?」
梓「この楽しい時間がすぐに終わってしまう気がして……。思い出になるってことは、終わりが来てそこで途切れてしまうってことだから……花火が終われば……」
唯「…………」
梓「あっ、すいません……急に変なこと言い出したりなんかして……」
唯「……ううん、気にしないで」
梓「…………」
唯「あずにゃんは一つ一つの出来事をとっても大切にしてるんだね」
梓「まあ……はい……」
唯「楽しい思い出はこれからも作っていけばいいんだよ」
梓「これから……」
唯「そう、これから。将来つらいことや悲しいことだってあるんだろうけど、楽しいのは何も今日だけじゃないんだからさ」
梓「…………」
唯「ねっ?」
梓「……はいっ」
唯「よかった」
ドーン!
梓「あっ」
唯「花火だよ!」
ドドーン!
梓「綺麗……」
唯「すごーい! 大きいよ!」
梓「本当に、見に来られてよかったです」
唯「そうだねえ」
梓「デジカメ持ってくればよかったかなあ……」
唯「ケータイで撮ろう!」
パシャ
唯「ちょっとブレちゃった……」
梓「ふふっ、先輩らしいです」
唯「タイミングが……難しい……」
ドーン!
パシャ
唯「今度は写ってなかったー!? あーもう……」
梓「(……ありがとうございます)」
唯「ところで、あずにゃん」
梓「はい?」
唯「花火が終われば楽しい時間も一旦終わっちゃうかもしれない」
梓「…………」
唯「けどね、その楽しい思い出はずっと先にまで続くよ!」
梓「(ああ……そっか……)」
唯「今の話おかしかったかな……」
梓「……わかりました。続けていきましょう、二人で!」
唯「……うんっ!」
ヒュー…… ドーン!
唯「たーまや〜!」
梓「ちょ……いきなり何なんですか! 恥ずかしいですよ!」
唯「かーぎや〜!」
梓「ああ、もう……」
唯「たーまや〜! あずにゃんもほらっ!」
梓「……かーぎや〜!」
おわり
最終更新:2014年08月07日 17:36