中学の頃、私は荒れていた。
不良仲間A「姫子ぉ、ライター持ってる〜?」
姫子「はぁ、持ってないわけ?ほら」ポイッ
不良仲間A「サンキュ」
不良仲間B「はぁ、つまんなーい」
不良仲間A「ゲーセン行くぅ〜?」
不良仲間B「あー私パス。絶対コウジいるし」
不良仲間A「はぁ?お前まだあんな奴気にしてんの?」
不良仲間B「気にしてないし。アイツと話してたら脳みそが腐る」
姫子「ぷっ、シカトすればいいじゃん」
勉強なんかろくにしないで、毎日授業を抜け出しては、不良仲間の子たちと溜まり場で無駄な時間を過ごしていた。
そんなある日、私は1人の女の子に出会った。
一つ下の学年の子だった。
カラン
姫子「ん?」
姫子「なぁ。おい、おまえ!なにか落としたよ」
葵「あっ…!」
姫子「なにこれ?」
葵「そ、そそ…れは…その…」
葵「ご、ごめんなさい…」
姫子「はぁ…?なんで謝るの」
葵「うぅ……」
姫子「これ、何?なんか高そうじゃん」
葵「これは、その…栞です。本の栞…」
姫子「あー!へーこんなのあるんだ」
葵「はい、はい……あります」
姫子「“葵”?」
葵「あ、私の名前…です」
姫子「ふーん、はい」
葵「あっ…あり、ありがとう…ございます」
不良仲間B「ねぇー姫子ぉーはやくしないと購買のチョコパンなくなるよー?」
姫子「あ、そうだった。ごめん」
不良仲間A「だれ?今の。友達?」
姫子「ううん、知らない奴」
不良仲間B「あ、そういえば昨日さー」
葵「………」
それからしばらくたったある日…
不良仲間B「それで、国語のコンドーがブチギレてやんの!!ww」
不良仲間A「なにそれキモー」
姫子「はは、バカみたい」
葵「あ、あの…」
姫子「あ?」
不良仲間A「誰おまえ?」
不良仲間B「下級生?」
葵「あの、立花先輩…」
姫子「は?私?」
葵「…は、はい…その…」
姫子「なに?」
葵「えぇと…二人だけで、ちょっと話が…」
不良仲間B「お前モテモテかよぉー!」
姫子「うっせーな黙ってろ」
葵「う…ぅ…」
姫子「用ならここで言えば?」
葵「でも…その…あの…」
姫子「ちっ…あーもー鬱陶しいな」
姫子「はっきり言えよ。早く言わないなら消えろ」
葵「わっ…わかりました…」
姫子「………」
葵「立花先輩…」
葵「この前は、栞…ありがとうございました」
葵「………」
姫子「………」
姫子「で?」
葵「うぅ…」
姫子「それだけ?」
葵「その…あの…」
葵「その…わ、私…立花先輩の事が…す、すき…好きです」
不良仲間A「!?」
不良仲間B「!?」
姫子「は!?」
葵「………」
姫子「それマジでいってるの?」
葵「………」コクコクコク
姫子「………」
姫子「……ぷっ」
姫子「ぷぷっ…ぷははは!!!あははは!!!」
不良仲間A「姫子…?」
姫子「ははは、なにそれ?私お前の事全然知らないんだけど?」
姫子「ていうかなに?私女なんだけど?」
葵「それは、分かってます…」
姫子「いや、ありえないから。ぷっはは」
葵「え…うぅ……」
不良仲間B「姫子ちょっと言い過ぎなんじゃねー?ww」
姫子「いや、マジでありえない。キモいし」
葵「先輩……」
姫子「なに?」
葵「どうしても…ダメですか…」
姫子「はぁ!?だからキメェっていってんだろ、さっさと消えろよ」
不良仲間A「………」
不良仲間B「wwwww」
葵「うぅ……ぐすん…」
不良仲間A「ねぇ、姫子…あれいいの?」
姫子「なんで?無理だし」
不良仲間B「姫子最低ーww」
姫子「いやいや、レズとか無いから」
不良仲間A「………」
不良仲間B「姫子はレズじゃなかったかーwww」
姫子「はぁ?レズなわけないじゃん」
姫子「むしろ私をレズにできる女がいたら会ってみたいんだけど?ぷはははは!」
〜〜〜〜
和「………」
姫子「………」
和「おどろいた」
姫子「…でしょ」
姫子「そのあとは、葵の事なんか気にもかけなかった」
姫子「そのまま高校に上がって、その時の仲間は別の学校に行っちゃって」
姫子「それで…なんか不良やってるのも面倒になっちゃってね」
和「………」
姫子「で、いままでなんとなく過ごしてきたんだけど」
和「唯に会って思い出したのね」
姫子「うん」
姫子「私、本当にひどい事しちゃった」
姫子「今でもちゃんと覚えてる」
姫子「私がどんなひどい事言って、どんな風にあの子を傷つけたのか」
和「………」
姫子「だから本当なら私は、唯を好きになっちゃいけないの」
姫子「告白なんてもってのほか」
姫子「私は、恋なんかしちゃいけない…」
和「………」
姫子「………」
姫子「はぁ、また余計な事話しちゃった…」
和「ううん」
和「姫子、本当にその事を後悔してるのなら…」
姫子「?」
和「自分の罪に気づく事ができたのなら…」
和「葵ちゃんに、ちゃんと謝るべきじゃない?」
姫子「………」
和「謝って、葵ちゃんが許してくれるかどうかは分からないけど」
和「このまま放っておくのは、葵ちゃんにとっても、姫子にとってもよくないと思う」
姫子「でも、もう3年も前の事、いまさら謝ったって…」
和「ううん、時間なんか関係無いわ」
和「現にあなたは今、3年前の自分の過ちで苦しんでるじゃない」
和「葵ちゃんは傷はもっと酷いわ」
姫子「………」
和「葵ちゃんにちゃんと謝って、許してもらえれば…唯の事だってもっと前向きに考える事ができるはずよ」
姫子「そんな簡単な事かな…」
和「私は、それでもいいと思うわ」
姫子「………」
〜〜数日後〜〜
「バイバーイ」
「またねー」
「また明日ー!」
姫子「………」
私は葵が通う学校の門の前で待っていた。
姫子「………」
姫子「…あっ」
葵「?」
姫子「あ、あお……葵?」
葵「あっ、立花先輩!」
最初、私は葵の事をなんて呼べばいいのかわからなかった。
葵は心底驚いていたが、私を見て嫌な顔はしなかった。
姫子「その、覚えてるよね?私の事」
葵「はい、覚えています」
姫子「よかった…」
葵「………」
姫子「話があるんだけど…いい?」
葵「はい」
〜〜〜〜
葵「ここでいいですか?」
姫子「うん」
私と葵は、近くの公園のベンチに腰かけた。
姫子「………」
葵「………」
姫子「ねぇ、中学の時、あなたが私に…その……覚えてるよね?」
葵「……はい」
姫子「私、その…葵にひどい事言っちゃって」
葵「………」
姫子「ほんとに、ごめんなさい」
姫子「今日は、どうしても謝りたくて…」
姫子「とにかく、私…すごく後悔してる」
姫子「それを言いに来たの」
葵「………」
姫子「今更だけど…本当に、ごめんなさい!」
葵「………」
葵「どうして、今なんですか?」
姫子「そうだよね…遅すぎるよね」
姫子「私、あの時あなたの気持ちなんて考えもしなかった」
姫子「だけど私やっと…」
葵「…ぐすっ」
姫子「あっ…」
葵「…うっ…ぐすん」ポロポロ
姫子「あぁ…そうよね…私本当にバカだった」
姫子「あなたの気持ち、踏みにじっちゃって…」
姫子「遅すぎるよね……」
葵「そうじゃない…」
姫子「えっ…?」
葵「そう、じゃなくて…ぐすん」ポロポロ
姫子「……?」
葵「立花先輩…ありがとうございます」
姫子「葵……」
無理やり笑顔を作ろうとする葵。
葵「昔あった事は、もう気にしていません」
葵「立花先輩にもう一度会えて、良かったです」
姫子「………」
〜〜〜〜
姫子「はぁ……」
姫子「本当にこれでよかったのかな」
そして…
唯「なぁに?姫子ちゃん。話って」
姫子「唯……」
唯「?」
姫子「唯、実はね…私…」
姫子「私…唯の事が」
唯「…?」
姫子「唯の事が好き」
唯「えっ…」
姫子「………」
唯「それって…」
姫子「うん」
唯「………」
姫子「………」
唯「姫子ちゃん、ごめんなさい」
姫子「っ………!」
唯「私、その…ほかに好きな人がいるから」
姫子「………」
姫子「………そっか」
姫子「誰?…って、そんなの言えないわよね」
唯「うん、ごめんね。でもその人は私の大切な人なの」
目頭が熱くなってくる。
唯「その人は優しくて、いろんな事を知っていて、いつも私の面倒を見てくれる」
唯「それに、一緒にいるとなんだかとっても安心するの」
唯「だから、ごめんなさい」
姫子「………うん」
唯「もちろん、姫子ちゃんの事は嫌いじゃないよ!?」
唯「だから、友達としてなら…!」
だめだ。私はまだ泣いちゃダメなんだ。
姫子「うん、ありがとう…唯」
唯「ごめんね!ほんとうにごめんね…?」
姫子「うん、唯に伝えられただけで十分」
唯「えへへ。あ、そうだ姫子ちゃん」
姫子「?」
唯「放課後は暇?一緒に遊ばない?」
姫子「………」
姫子「ごめんなさい、唯」
姫子「ありがとう唯、今気がついたの。私ってホント馬鹿だわ、あはは」
唯「?」
〜〜〜〜
姫子「………」
私はまた、あの子が通う学校の門の前で待っていた。
葵「あ…!」
姫子「葵」
葵「立花先輩…」
葵「どうでした?」
姫子「………」
姫子「…ふふ、ダメだった」
泣き崩れる私に寄り添う葵の顔は少し笑っていた
おわり
最終更新:2014年09月07日 10:04