こんにちは、中野梓です

私も今年で25歳になりました

会社に勤めて3年目、元気に社会人やってます

・・・

元気に、かあ・・・



梓「ただいま~・・・」ガチャ

梓「おかえり~」

梓「・・・はあ」

梓「今日もこんな時間まで働いて」

梓「明日も8時には出勤・・・」

梓「・・・」

梓「とりあえず何か飲もっかな」

梓「かんぱ~い」プシュッ

梓「んぐんぐ」

梓「ぷはぁ」

梓「飲まなきゃやってられないよね」

梓「なんかつまみはあったかな~」

梓「カップめんくらいしかないか・・・」

梓「まあこれでいいや」

梓「我ながら不健康だなあ」

梓「・・・」ズルズル

梓「私の人生ってなんなんだろう」

梓「毎日遅くまで働いて、休みの日は家事と買い物してたら終わっちゃう」

梓「私ってこんな事するために生まれてきたのかな・・・」

梓「昔は楽しかったなあ・・・」

梓「昔は・・・」

梓「皆今頃どうしてるのかな?」

梓「働きだしてから段々連絡とらなくなっちゃったけど」

梓「憂、純」

梓「菫、直」

梓「それに唯先輩、澪先輩、律先輩、ムギ先輩・・・」

梓「元気にやってるといいな」

梓「・・・高校の頃が一番楽しかったな」

梓「けいおん部に入って、バンド組んで」

梓「色んな事があったけど、どれも昨日の事みたいに思い出せるよ」

梓「毎日すっごく楽しかった」

梓「・・・」

梓「どうして今は楽しくないんだろう」

梓「・・・はあ」

・・・・・・・・・

梓「・・・」

梓「あれ?ここどこ?」

梓「って私なんで高校の制服着てるの!?」

梓「あ、夢か」

梓「最近昔の夢ばっかり見るなあ」

梓「ずっとこのままこの夢の中に居たい」

梓「そうすればまた先輩達と楽しく毎日を過ごせるもんね・・・」

梓「とりあえず部室に行こう!」

梓「行くよ!むったん!」タタタ

梓「おはようございます!」バン

梓「・・・あれ?」

梓「誰もいない」

梓「おっかしいなあ」

梓「夢なんだから都合よく居てよね」

梓「仕方ない、ちょっと待ってみよう」

梓「・・・誰も来ない」

梓「先輩達の教室に行ってみよう」

梓「もう、先輩達はほんとにしょうがないですね♪」スタスタ

梓「私がしっかりしないと全然駄目なんですから!」スタスタ

梓「せんぱ~い!練習しましょ~!」ガチャ

梓「・・・誰もいない?」

梓「というかここまで来る途中にも誰も居なかったような」

梓「もう!なんなのよ!」

梓「夢でくらい楽しい思いさせてよ!」

梓「唯せんぱ~い!!」

梓「いたら返事してくださ~い!!」

梓「・・・」

梓「駄目か」

梓「澪せんぱ~い!!」

梓「ムギせんぱ~い!!」

梓「律せんぱいでもいいですから~!!」

梓(ここで律先輩が、でもってなんだ~!とか言って駆け寄ってきてくれ・・・)

梓「・・・」

梓「ないか・・・」

梓「じゃあ憂~!!」

梓「菫~!!」

梓「直~!!」

梓「仕方ないから純でもいいよ~!!」

梓(ここでお約束!来い!)

梓「・・・」シーン

梓「なんなのよ・・・」

梓「もう起きよう・・・」

・・・・・・・・・

梓「・・・」ムクリ

梓「寝てた・・・1時間くらい?」

梓「唯先輩に会えなかったな・・・」

梓「あれ、メール来てる」

梓「ああ、次の練習日についてか」

言い忘れたが、私は今もバンドを組んでいる

だがそれは放課後ティータイムでも、わかばガールズでもない

なんとなくやっているバンド

ただの暇つぶしのようなバンドだ

昔は本気でプロになれたらいいと思っていた

現実は厳しいと分かっていたけど

放課後ティータイムなら

わかばガールズなら

もしかしたら本当にプロになってデビューできるんじゃないかって

そう思ってた

でも今はそんな事微塵も思ってない

なんとなく、本当に何も考えずにバンドを組んでいる

きっと放課後ティータイムやわかばガールズの影を追ってるんだろう

そんなのもうどこにも無いのに

梓「めんど・・・いつでもいいよ。っと」スッスッ

梓「・・・」

梓「私って一体なんなんだろう」

梓「このまま大して楽しい事もない毎日を過ごして」

梓「ただ流されて生きていくだけ?」

梓「私なんて居ても居なくても世界は変わらず回っていくんだよね」

梓「その辺の石ころと同じだ」

梓「私は『中野梓』じゃなくてただの一人の人間に過ぎないんだ」

梓「・・・何言ってんだろ私、25にもなって」

梓「現実を見よう、現実を・・・」

梓「でも彼氏も居ないし友達だってもうそんなに・・・」

梓「ホントに何のために生きてるのかな」

梓「昔はもっと世界がキラキラしてた気がする」

梓「今なんて白黒だよ白黒」

梓「仕事したくないよ~」

梓「ロンドン行きたいよ~」

梓「・・・」

梓(今日4時間しか寝れない・・・)

梓「うわあああああ!」

梓「現実が押し寄せてくるうううう・・・」

梓「泣いてる場合じゃないいいぃぃぃ・・・」



何時からこうなってしまったのだろう?

わかばガールズが解散してから?

先輩達が大学を卒業してから?

私が就職してから?

何時から私は『中野梓』じゃなくなったの?

・・・ううん、なにも私だけじゃないはず

皆どこかに『自分』を置いてきてるんだ

ただの一人の人間になるって事が大人になるって事?

何も考えないで時間が過ぎるのを待つのが大人になるって事?

・・・唯先輩も、私と同じような事考えてますか?

先輩は、今どうしてますか?

会いたいです、唯先輩



梓「・・・」

梓「いちいち難しい事考えるから駄目なんだよね」

梓「大人になるってのはこういうの割り切るって事なんだよ」

梓「大学卒業するまではちゃんと『中野梓』だったんだもん」

梓「それでいいよ」

梓「人生の楽しい時期は終わったんだよ、これからは楽しんだ分のツケを払っていかないと」

梓「今までありがとう、『中野梓』さん」

梓「先輩、いつか会えたらまたお茶しましょう」

梓「・・・寝る」

~♪

梓「はあ、いつでもいいって言ったじゃん・・・」ピッ

梓「?」



差出人:唯先輩

件名:あずにゃん!!

あずにゃんお誕生日おめでとう!
なんかあずにゃんに呼ばれた気がしたから久々にメールしてみたよ~
連絡しなくてごめんね!お仕事忙しいかと思って
久々だけど元気にしてるといいな!
あ、ちゃんと私の事覚えてる~?
平沢唯だよ!唯!



梓「―――」

梓「唯先輩」


どんなに離れていても、何年経っても

私はあの頃に戻れるんだ

ただ何の変哲もないメールが一通来ただけ

でも、今の私にとってそれは―――



梓「あはは、なんだろこれ」ポロポロ

梓「なんで泣いてるんだろ私」ポロポロ


ただメールが来ただけなのに

今まで抑え込んでいた何かが溢れだしてくる


梓「25にもなってあずにゃんって呼ばれるなんて」ポロポロ

梓「唯先輩はいつまで経っても唯先輩だ」


白黒だった世界は

またあの頃のようにキラキラしていた

その後、調子に乗って唯先輩と夜通し電話で話した

唯先輩は何にも分かっていないようで、きっと私の事を思って連絡してくれたんだろう

それで今度他の先輩とも一緒にご飯を食べに行く事になった

あ、それと憂と純、あと菫と直にも連絡してみた

皆何にも変わってなくて本当に良かった

社会人だとか忙しいだとか、私は自分で勝手に理由を作って逃げていただけなのだ

自分から一歩踏み出せば、世界は変わるんだ

私はまだ、頑張れる気がした



梓「いってきま~す!」

梓「よ~し!今日も1日頑張るぞ!」

梓「残業がなんだ~!」

梓「お~!」

梓「あ」

梓「あれ言おう」

梓「・・・ゴホン」

梓「やってやるです!」



こんにちは、『中野梓』です

私も今年で25歳になりました

会社に勤めて3年目、元気に社会人やってます!


おしまい



最終更新:2012年11月11日 04:35