梓「まぶしい......」

梓「......朝かぁ」ヨコチラ

律「んぷぅ......」スゥスゥ

梓「......」ァハハ

律「みおぉ......」

梓「......」

梓「......」ハァ

-----

OL1「最近ハマってるマンガがあってさー」

OL2「えっなになに?」

OL1「『リッアンダンスタンドッツ』って言う人が描いてるやつなんだけど、
今確か持ってるはず......、あ、あった!」バサッ

中野「......」

OL2「あー、それ知ってるー!」

OL1「えっ、ほんと?」

OL2「うん! 昨日だか一昨日に、朝から昼までモッコリテレビで紹介されてたよ!!」

OL1「マジかー!! 私のお気に入りが世間に認知されたのか!!」

OL2「あんたが知ってることなんてみんな知ってるっての」ゲラゲラ

OL1「ぬおぉぉ......それを凡人に言うなんて。直でダメージくるわぁ」ズキュ-ン

OL2「めんごめんご!! ......中野っちはこれ知ってる?」

中野「ぬぁ、あ......私もー、一昨日だかにテレビで見たよ」ァハハ

OL1「ああん! マンガ読んでなさそうな中野ちゃんまで知ってるなんて!! 私、マジ凡人!!」

OL2「ははは、ほらほら元気だして元気だして」ナデナデ

中野「あ、もうそろそろ昼休み終わるよ」

OL1「私、トイレ行ってから行くわー」

OL2「あ、私も」

中野「なら、先に行っとくね」

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ガチャ

梓「ただいまー」

律「......ここで......これが......こうなってて......」ググググ

梓「......なにしてんの?」

律「あ、梓!! いや、このシーンのこいつのポーズがイマイチよくわからなくて、真似してた!!」ググググ

梓「......1人で関節キマりそうなポーズですね」

律「あと少し...あと少しで.....できそうな気が」ゴギッ

律「いったっーー!!!!」

梓「だ、大丈夫!?」トタタタタタ

律「腕がキマっ、キマって動かない!?」

梓「バカか」

律「バカでいいから、はやく外してーー!!? 痛い痛い痛い!!!!」

梓「私には律センパイの存在が痛い」ヨイショ

ゴギュン

律「う"。...っと、取れた......梓ありがとう......」

梓「私がタイミング良く帰ってきたからいいものの、帰りが遅い日だったら終わってましたね」

律「マジだ......良いところに帰って来てくれたよ。あ! 梓おかえり!!」ギュ

梓「ただいまリッアンダンスタンドッツ先生」ギュ

律「はぁ......もうバカな真似はしない。
私のマンガに出てくるやつのポーズは現実では無理だってことがわかった」

梓「律センパイが身体固いだけだって」

律「えっ、そうなの?」

梓「昨日だか一昨日にテレビで『実証!! リッアンダンスタンドッツ先生のマンガに出てくるポーズを再現してみよう!!』ってコーナーで元体操選手の芸人がやってましたもん」

律「そうだった......そんなのするってメール着てた......許可した......見逃した......」

梓「録画してあるから後で観たらいいよ」

律「本当!? ありがと、梓!!」

梓「じゃあ、私、着替えてご飯作りますから」クスッ

律「はぁ、ここのポーズは想像で書こう......」カキカキ

梓「......」ジ-

律「......」カキカキ

梓「......」ジ-

律「......想像でなんとかなった」ガ-ン

梓「あはは、やっぱバカだ」

律「お前は早く着替えて来いっての!!」

梓「はーい。さっきの律、写真撮っとけば良かった」

律「聞こえてるぞ、中野ー!」

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憂「なるほどねぇ」

梓「......」ゴクン

憂「で、その、律さんとの生活になんの問題が?」フ-フ-

梓「問題というか、なんなんだろう」

憂「?」ゴクン

梓「......ここ、私の居場所で良いんだっけ、私ここに居ていいんだっけみたいな......なんていうか」

憂「罪悪感?」

梓「......罪悪感......なの、かな?」

憂「存在の証明が他にないとか?」

梓「消してリライトしてだなんて、ネームの締め切り間近の律センパイじゃあるまいし」

憂「書いてる字が間違いなのわかって、消して修正しようとしてまた同じ間違った字を書いてることってあるよね」

梓「あるあるー! 私もさ、こないだ事務の書類で、
って、今はその話じゃなくてーー!!」バン

憂「今の梓ちゃんのテンションなら律さんに全身全霊あげられるよ。
うーん、ええと。 これまでずっと梓ちゃんの相談に乗ってきた私の立場からすると」

梓「うん?」パクッ

憂「律さんと付き合うために、澪さんに惚れているお姉さんと協力しタッグを組んで、
澪さんの律さんへ、律さんの澪さんへの想いを断ち切って、そこに梓ちゃんとお姉ちゃんが漬け込んだ形でナシ崩し的にカップルを成立させたわけだけれども、
ショーウィンドウで飾られているとても綺麗なナシは実は人の目に触れることのない裏の部分が腐ってましたってことだよね?」

梓「......グサグサ行くね、いや、むしろグサグサ来るね、親友」シャリシャリ

憂「行ったり来たりナシ崩したりナシ腐らせたりさせてるのは、梓ちゃんとお姉ちゃんなんだけどね」ゴクッ

憂「私の剥いたナシ美味しい?」

梓「うん、とっても」ゴクン

憂「お姉ちゃんと澪さんは結構楽しそうにヤッてるみたいだよ?」

憂「あ、ヤッてる、って、そういうことじゃなくて、上手く付き合ってるみたいだよって意味で」

憂「あ、付き合ってる、って、そんな突き合ってることを暗に言いたいわけじゃなくて、
確かにこないだお姉ちゃんの部屋を片付けたらペニバンが......もがっ」

梓「わかった、わかったから!! 静まれ、憂!!
聞いてるこっちが今度会うときに唯先輩と秋山澪先輩にどんな顔すればいいのかわからなくなってくる!!」

憂「ひぬとぬぬこりんな」モガモガッ

梓「?」

梓 「あ、手で口を塞いだままだった」パッ

憂「笑えばいいと思うよ?」

梓「そんなこと今必死に伝えなくていいよ!?」

憂「ふぅ......空気美味しい。でも、梓ちゃんが今頃になってようやく人間らしく自分のしてきたことに罪悪感を覚えて、
私に相談してくるようになったこと、嬉しく私は思ってるんだからね?」

梓「......まるで人を人でなしみたいに言うね」フ-フ-

憂「だって、人でなしじゃないの? 両想いで上手くいきそうだった律さんと澪さんの仲に割り込みしちゃったんだから」

梓「......」ゴクン

憂「あ、この場合の、上手くいきそう、ってのは絶頂を迎えるっていうエクスタシー的な意味を含むものじゃなくて、
律さんと澪さんが恋人同士になれるかどうかの境目だったっていう意味で」

憂「あ、境目、って言っても女の子特有のワレメのことじゃ」

梓「あぁあああああもうわかったから!! わかったから!! 憂!!! 黙って!!!」

憂「ナシ崩し的に人でなしになった梓ちゃんが今更、罪悪感を覚えても私としてはアドバイスできることはそうだなぁ......」

-----

梓「その状況でシアワセになること、かぁ......」ボケェ......

律「うぅん......」スピ-

律「......あ、」

梓「おっ!?」

律「......あはは、みおぉ、それおっかし......でへへ」スピピピ

梓「......はぁ」

梓「この状況でねぇ......」ウ-ン

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中野「うーん」

OL2「なに? 中野っち、便秘?」

中野「ち、違う!? なんでそうなるの!?」

OL1「自分が便秘だからって人も便秘とは限らないよ?」クスクス

OL2「わ、私も便秘じゃないもん!?」

OL1「はいはい。 あ、中野ちゃん、これ読む?」ガサッ

中野「ん? なに?」

OL1「こないだ言ってた、リッアンダンスタンドッツ先生のマンガ!!
OL2に貸してたんだけど、それ今日帰ってきてさ」

中野「へぇー」

OL2「あきらかに持って帰るのめんどくさいから中野っちに押し付けてるの図」

OL1「な、なんのことやら~!?」ギクッ

OL2「しらばっくれてもムダだぜ? ネタは上がってんだよ、じょーちゃん」ツンツン

OL1「なにキャラだよ」モウ

中野「借りてもいいなら、読みたい、かな」

OL1「そう? じゃあ、これ」ハイ

中野「うん、ありがとう」

OL1「返すのはいつでもいいから」

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ガチャ

梓「ただいまー」

律「お、おかえりー! ちょーどよかった。 今できたんだ! 熱いうちに食べようぜ!!」

梓「律センパイが料理......。今月の原稿終わったんだ。おつかれさま」

律「いやー、今月も色々あったけど、なんとかなったわー。
ほら、さっさと着替えて来いよ!」メシメシ

梓「あ、うん、そうする」ガサッ

律「ん? その紙袋なに? 」

梓「あ、これは......ちょっと仕事のやつ持って帰ってきたんだよ。
部屋に置いとくけど触らないでね?」

律「おーけーおーけー!! 前に書類にケチャップかけて怒られたこと、まだ頭が痛みを覚えてるからな。
同じ間違いは繰り返さないりっちゃんだぜ!!」

梓「律センパイ、居間に置いてたらなんでもかんでも汚すんだもん」

律「人を躾がなってないみたいに言うなよ」

梓「はっ」

律「鼻で笑うな!!」

梓「着替えて来るね」

律「......はいよっ」

バタン

梓「はぁ......」ズルズルズルペタン

梓「......素直じゃないなぁ」

ガサッ

梓「リッアンダンスタンドッツのマンガ、律センパイが恥ずかしがるから読んだことないんだよね。部分部分は知ってるんだけどな」

梓「......」ジ--

律「あずさー!!チャーハン冷めるー!!」

梓「はーい!! 今行くから!!」

梓「時間がある時に読もう」

ガチャ

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唯「私と澪ちゃんはそういうの、ないね」パクッ

梓「」ゴキュン

唯「今、ちょーシアワセだよぉ?」ムシャムシャ

梓「それはないですよ、唯先輩。ひどい裏切りをみた」

唯「そんなこと言われてもなぁ」ゴクン

唯「はぁ、ここのクッキーやっぱ美味しいねぇ~」ウフフ

梓「それは、同感、......だけどさ」サクッ

唯「でも、りっちゃんもあずにゃんもヤることはヤってるわけでしょ?」モシャモシャ

梓「それはまぁ、はぁ、まぁ、律センパイ、そこら辺は恋愛感情と結びついてるんだかどうなんだかわからないですけど」ゴクン

唯「りっちゃん、バカだから本能と性欲が直結してそうだよね。その点澪ちゃんはもう乙女乙女してて
......あぁ、もう思い出すだけでかわいいよぉぉお」ハァハァ

梓「もう見たまんま、唯先輩も律センパイタイプじゃないですかよ」

唯「むっ、失敬な。私は『恋愛感情:本能:性欲=6:2:4』ぐらいだもん」

梓「8...それトータル12になってるじゃん」

唯「そういうあずにゃんは?」

梓「私は......『7:1:2』......ぐらい」

唯「うわ、リアルー!!」ケラケラ

梓「もう、なんで茶化すんですか!!真面目に答えたのに!!」

唯「あはは、ごめんごめん、怒らないでよ、あずにゃん」ヒ-ヒ-

梓「ヒ-ヒ-ってまだ笑ってる、もう!!」

唯「冗談だから、そんな怒らないでよ、キレにゃん」

梓「人をジバニャンみたいに言わないでください!!」

唯「今流行ってるよねー。うちのとこの幼稚園児も毎日ニャンニャンニャンニャンヨーデルヨーデルうるさいよー」

唯「私は澪ちゃんを毎日ニャンニャンニャンニャンヨーデルヨーデル言わせてるけどねー」

唯「まぁ、何が出てるんだ、って話なんだけどさ、あはは」

梓「はぁ......このペニニャンめ」ボソ

唯「ん? なんか言った、あずにゃん」

梓「いえ、なにも。私たちも使ってみるべきなのかなぁ」ハァ

唯「なにを?」

梓「いえ、こっちの話です」ァハハ

唯「私からのアドバイスとしては、そうだなぁ」

-----

梓「無いものは補え、ねぇ......」

律「なぁ、マジでこれつけてするの?」ビョ-ン

梓「いちおー、kanazonで星がいっぱいのやつ買ったんで。レビュー良くてそれなりに高かったんで」

律「うーん、文句言わないで使えってか。そして、私がつけるのかい」

梓「え、今日は律センパイヤられたい側ですか?」

律「う、いや、そう言われると、こういう体験してみるのもいいかな、とか思ってたりする」

梓「ノリノリかよ」

律「むしろローションでヌルヌルだったりするけどな、今」ヨット

梓「行為は割愛するよ」

律「愛を割るだなんて字面的に不吉だけどな」

梓「いいんです、最後に愛は勝つんですから」

律「うーん、照り焼きチキンが食べたくなってきた」

梓「せめてカツで繋がり持たせてよ!!」

律「......疲れた」グッタリ

梓「どうでした?」グッタリ

律「両手が使えるってレパートリー増えていいね!!」グッ

梓「満足?」

律「梓は?」

梓「......いつもより良かったかなぁーっ......」

梓「なんて」ボソッ

律「なら、まぁ、さもありなんなんじゃね?」

梓「次は律でヤってみよう」

律「......こ、今度な。今日はもう疲れた」

梓「わ、私も今日はなんだか疲れました」

-----

中野「......ふぅ」

OL2「中野っち、なんだかおつかれやね、今日」

中野「ちょっと......寝不足で」

OL1「あ、もしかして徹夜でマンガ読んだとか?」ヒョコ

中野「......そ、そんな感じ!!」ワタワタ

OL2「!」

OL2「ふーん」ニャニャ

OL1「まぁ、返すのは本当にいつでもいいから、ゆっくり読みなよ? 寝不足良くない!!」ムンッ

中野「う、うん! ありがとう。ゆっくりじっくり読むことにするよ」

OL2「中野っち!!」ニャニャ

中野「?」

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紬「梓ちゃん、首に絆創膏してるけど、怪我?」

梓「いや、あははー!? なんと言いますか、えっと、季節ハズレの蚊に喰われまして」ワタワタ

紬「そうなんだ。気をつけてね? 最近、色々と病気流行ってるらしいから。
蚊に喰われだけでも一大事だよ?」

梓「はい。気をつけます。ちゃんと蚊取り線香炊きます」ショボン

紬「ふふ。じゃあ、蚊に喰われてなんだかお疲れ気味な梓ちゃんとりっちゃんには蟹でも食べて元気になってもらいましょう!!」ジャ-ン

梓「えっ、蟹!? この蟹どうしたんですか!?」キャアアア

紬「りっちゃんの新刊が3008万部を達成した記念に担当である私からの差し入れでーす!!」

梓「3008万部...!? なんか中途半端な数ですけど律センパイのマンガってそんなに売れてるんですか?」

紬「梓ちゃん、知らないの? りっちゃんのマンガ、今ブームだよ? ブームなうだよ。この蟹でも会社としては感謝足りないくらいだよ?」

梓「全然知りませんでした......」

紬「ネームから背景から何から何まで1人でマンガを描くって大変なんだからね?
月刊誌だって言っても、りっちゃんの頑張りって並大抵のことじゃないし、頑張ったところでブームを起こすマンガなんて描けるわけじゃないんだから」

梓「私、たまに手伝わされてますけど、背景とか資料集めとかベタ塗りとか」

紬「......」

梓「......」

紬「......とにかくりっちゃんはすごいの!!」

梓「はい。律センパイはすごいですね!!」

紬「というわけで、2人でタラバ蟹食べてね?」ニッコリ

梓「はい、そういうことでしたらば、遠慮なくいただきます」

紬「あ、話は変わるけど梓ちゃん」

梓「はい?」

紬「こないだ、りっちゃんが私に相談してきたよ、梓ちゃんのこと」

梓「私のこと......?」

紬「梓ちゃんが唯ちゃんと一緒にりっちゃんと澪ちゃんの間に入ったこと、私は今でも許してませんからね!!」

梓「......はい、わかってます」

紬「でも、私だってそんないつまでも感情的になって現実を見てみないフリなんてしてないの。
唯ちゃんは澪ちゃんとシアワセそうだし、澪ちゃんだって今はもう唯ちゃんとそれはもう仲良く、仲良くしてくれちゃって堪らないの」アアア

梓「は、はぁ......たまらな?」

紬「梓ちゃんも、ただりっちゃんとくっ付いただけじゃなくて、ちゃんと介護...おっと。
面倒みて上手くやってるみたいだし、今はこれはこれでアリな未来だったのかな、って私少し思い始めているのよ?」

梓「......律センパイの介護」

紬「もっと2人で話をしてみたら?」

梓「2人で......」

紬「本音と本心と真実っていうの? そういうの、あきらかにしちゃったら、ギクシャクして戻れないかもしれない。
聞かなきゃよかったって思うこともたくさんある」

紬「どうでもいい人なら、そこでバイバイしちゃえばいいんだけどね。
でもずっと一緒にいたい人ならそれって乗り越えたり飛び越えたり、泳ぎ切ったりとか走り切ったり逃げ切ったりしないと、ね」


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最終更新:2014年09月25日 08:12