澪(ムギと別れてから少し経ったころか)

澪(またしても意地を張っていた私は、またしても律に殴られて、ケータイに海外対応サービスを追加した)

澪(でも、もう遅かった)

澪(メールも電話も繋がらない)

澪(もう…ムギが世界の何処にいるのかもわからない)

澪(ムギの声を聞くことも、もうないかのもしれない)

澪(…どんどん時間だけが過ぎていった)

澪(私たちは大学へ入学した)

唯「なんか大学って難しいよね〜。たんいとか良くわからないよ〜〜」

律「確かになぁ。高校のときはただ黙って同じ教室に座ってるだけだったしな」

澪「律が黙って座ってたことなんてないだろ」

律「そういう意味じゃあないっつーの」

唯「うぅ…次の授業の教室どこだったっけ?? もう頭がいっぱいだよぉ…憂〜〜」

律「一人暮らし始めたとはいえ、唯は相変わらずだな…」

ピッピッピ プルルルル…

唯「もしもし憂? 今休み時間〜〜?? 次の授業どこだったっけ?」

澪「うぉおおい!!」ビシッ

憂『教養棟307号室だよ、お姉ちゃん』

律「うぉおおい!!」バシッ

澪「私もなんだかんだで一人暮らしは不安だなぁ…寂しいし」

律「そうか〜? 私は気楽で気に入ってるぜ。聡もいないし」

澪「…確かに律って生活力ありそうだしな」

唯「うふふ〜これから毎日、憂が時間割をメールしてくれるって〜〜」

澪「いい加減にしろ!」ビシィッ!

律「よく今まで高校生活やってこれたな…ってレベルだな……」

澪(…)

澪(高校生活か…)

———「うふふ、唯ちゃんらしいわね」

澪(なんか…変わらないな…私たちは…)

———「それじゃあ、お茶にしましょ?」

澪(何も変わらない…な……)

律「なーなー、もうすぐゴールデンウィークだけどさ、どうするー?」

唯「どっか行きたいね〜」

澪(そっか…もうそんな時期か…)

澪(もう…2ヶ月もムギに会ってない…)

律「本当だったら、ムギのとこにでも遊びに行きたいんだけどな…」

唯「…うん、お金ないしね……」

律「つーか、そもそも住所聞いてないし連絡とれないし…」

澪(ムギのトコか…ムギに会いたいなぁ…)

律「おい! 澪! みーおー! おまえはどこ行きたいんだ?」

澪「え? あ、ああ…私は…」

澪「私は実家に帰るよ。マ…お母さんとお父さんに会いたいし」

律「…いいのかよ」

澪「何が」

律「しらばっくれるなよ」

澪「…どうしようもないだろ」

律「またそれかよ〜!」

律「…まぁ、実際今回ばっかしはお手上げだけどさ」

唯「! そうだ!! みんなでロサンゼルスの真ん中でうんたんすればいいんだよ!」

律「却下」

唯「ぶー…。空港のときはそれで見つかったのに…」

澪「空港と広さのレベルが違うぞ」

律「…私もおとなしく実家に帰るか。聡からかいたくなってきたし」

澪「うん、帰ろう…」

……………………………
…………………
………

澪「…ただいま」

澪「…この町は変わらないな……」

澪「…って、まだここ離れて1ヶ月だから、当たり前か///」

澪「駅のホーム…河原の道…」

澪「なんか、何処に行っても、みんなといた記憶しかないな…」

澪「ノスタルジィってやつを感じる…」フッ

澪「…って、だからまだここ離れて1ヶ月だっての」

澪「どうしようかな…取り合えず桜高でも行ってみようかな」

澪「…うわぁ、学校なつかしいなぁ〜」

澪「つい、この間まで制服着て、ここに通ってたんだよなぁ…」

澪「律と…唯と……ムギと…」

澪「…」

澪「…?」

澪「キレイなブロンド髪の女の人が、校庭に立ってる…」

澪「見覚えあるなんてレベルじゃあない…」

澪「あれはまるで…」

澪「ムギ………なのか…?」

ブロンド女性「…」チラッ

澪「!」

紬「澪ちゃん…」

澪「ああ、ムギだ…ムギが見える…」

紬「うふふ」

澪「良い夢だ……」

紬「夢じゃないよ?」

澪「…げん…じつ…?」

紬「日本だと連休中だし、もしかしたらって思って」

澪「すごい…偶然だ…夢みたいだ」

紬「夢じゃないし…偶然じゃない…」

紬「運命だよ」

澪「運命…」

紬「澪ちゃん」クルリ

紬「ちょっと大人っぽくなったね?」

澪「そ、そうかな…」

澪「そういうムギの方こそ…ちょっと…」

澪「ちょっと……」

澪(ん? 太った?)

紬「澪ちゃん…気付いちゃった?///」サッ

澪「え! い、いやいやいや、それはアメリカじゃあ食も違うしな! し、仕方ないよ!!」

澪「そ、それにどんな体形だって私はムギのことを…」

紬「え? 違うよ〜…澪ちゃん…」

澪「え?」

紬「実は私、妊娠したの〜〜」

澪「ニンシン?」

紬「私もとうとうお母さんになるの〜」

澪「ヘー、ソリャ、メデタイ」

澪「けけけk結婚して、にににに二ヶ月だろ!!?」

澪「早すぎる!そんなバカな…!」

紬「だってあの人…毎晩元気なんだもの…」ポッ

澪「う、ウソだ…そんなぁ…そん…」ウルウル

紬「ウソじゃあないわ」

澪「夢だ夢だ夢だ…」ブンブン

紬「夢じゃないよ」ズン

澪「ひぃぃぃ〜〜!!」

紬「現実よ」ズン

澪「はわわわわ〜〜」ブルブル

紬「これが…私たちの運命よ」ズーン

澪「や、やめろぉぉぉおおおお!」

澪「ひえええ!」ガバッ

澪「はぁ…はぁ……あれ?」

澪「…って、やっぱり夢だよっ!」

澪ママ「澪ちゃ〜ん、どうかした〜〜?」

澪「」ビク!

澪(あ、そっか…私今ゴールデンウィークで実家に帰ってるんだった…)

澪ママ「起きたの〜〜? ごはん用意しようか〜?」

澪「あ、うん!お願いママ」

澪(はぁ…実家まで来てなんていう夢を…)

澪「っていうか、もう昼過ぎだ……」

澪「いってきま〜す」

澪ママ「あら、どこ行くの?」

澪「うん、その辺ぷらぷらしてくる」

澪ママ「気をつけてね」

澪「うん」

澪(………)

澪(どこ、行こうかな?)

澪(河原通って、アーケード街いって…)

澪(そんで最後に桜高も行きたいな…色んな意味で…)

……………………………
…………………
………

がっこう!!

澪「…うわぁ、学校なつかしいなぁ〜」

澪「つい、この間まで制服着て、ここに通ってたんだよなぁ…」

澪「律と…唯と……ムギと…」

澪(ムギ…)キョロキョロ

澪(いるわけ…ないか…)


澪(…)トボトボ

澪(ムギ…もう会えないのかな、私たち)

澪(どうしてっ…どうしてだよ…)

澪(こんなに好きなのに……好きって言ってもらえたのに…)

澪「…会い…たいよ…」グスン

———「運命だよ」

澪「これが運命なのか…?」

澪「ムギに会えるならなんだってするぞっ…」

澪「ロスのど真ん中でうんたんだってするからっ…」

澪「神様お願い! 一度だけの奇跡をください…」

澪「本当に一度でいい…妊娠しててもいいから……」グスン

澪「…」

澪「…なんてな」

澪「もう……認めるしかないな」

澪(私は——もうムギには会えない)

澪「…」トボトボ

澪「あ、MAXバーガー…」

澪「ここで…よく皆と食べたなぁ…」

澪「…ムギが…バイトしてた……ここで…」

澪「…!」グゥゥ〜

澪「お腹…減ったな///」

澪「入るか…」グスン

グイーン

紬「いらっしゃいませ〜」ペコリ

澪「」ズコーッ!

紬「あら、澪ちゃん」

澪「くぁw背drftgyつむぎlp;@:「」」

紬「み、澪ちゃん…だよね……??」


紬「あ、私今日は6時あがりだから、良かったら待っててくれない?」

澪「・ソ譁・ュ怜喧縺代→縺ッ縲∵悽譚・陦ィ遉コ縺輔l繧九∋縺肴枚蟄励」

紬「ありがと〜、もうすぐだからね」

澪「ュフ佻 シtヌセクtヌXチ 」

澪「ごめん…私混乱しすぎてよくわからないから…順を追って頼むぞ…?」

紬「わかったわ〜。そうね…あのあと澪ちゃんたちと空港で別れてから…」

澪「うんうん」

紬「私、離婚したの」

澪「順を追ってぇぇえええーーーーッ!!??」

紬「これもいわゆる成田離婚ていうのかな?」

澪「え…あのあと本当に直ぐ……?」

紬「うん…一度は本当に諦めてロスに行こうとしたんだけど…」

紬「あの人、あまりに澪ちゃんとのことしつこく聞いてくるから」

紬「私、本当は男の人になんて興味は無いのよ、って言って、ついでに引っ叩いて来ちゃった」クス

澪「」

紬「それで…あの人も向こうの家もカンカンで…」

紬「…それでお父様ともケンカして、勘当みたいにされちゃって…」

澪「え…?」

紬「家も追い出されて…お金もほとんどないまま…」

澪「ム、ムギ…」

紬「そしてアルバイトでなんとか生活してるの……ここ、店長も先輩も知り合いだから特別に入れてもらって」

澪「に、二ヶ月以上も……? 家は!? どこに住んでるの!?」

紬「公園と…3日に一回くらいマンガ喫茶に…」

澪「そ、そんな…」ウルウル

紬「私、一度マンガ喫茶で生活してみたかった…の〜〜……」

紬「でもね、駅前のマンガ喫茶って凄いのよ! 一晩で980円だし、シャワーもあるの!」

澪「い、いや、そんな情報はいいから…」

紬「価格破壊ってこういうことね」フムフム

澪「違うと思う…」

紬「…」

澪「あ、その、ムギ…ごめん…! ……私のせいで……」

紬「そうよ…」

澪「…え?」

紬「全部澪ちゃんのせいよ!!」

澪「うぅ…」ガーン

紬「私がこんなに辛い想いしてるのも全部…全部!」

紬「この年でバツイチ…家なき子……上野公園のハトの方が私よりご飯食べてる……」

澪「あ…ああ……」ガクブル

紬「おまけに最近ムダ毛処理も出来てないのも、水虫になっちゃったのも、澪ちゃんが悪いんだから!」

澪「ごめんムギ…ごめんなさい! ごめんなさい! ごめんなさい!」

紬「………みおちゃん」

澪「ひ、ひぃぃ…」ブルブル

紬「そこは…『そろそろ私関係ないだろ! ポカッ!』ってするところじゃないのぉ……」

澪「」

紬「澪ちゃんに叩かれるいいチャンスだと思ったんだけどなぁ…」ガッカリ

澪「? ……」

澪(ボケのつもりだったのか…。ていうか、まだ…そんな願望あったのか…)

澪「はぁ…でも、少しでも元気そうで良かったよ」

紬「ご、ごめんね…澪ちゃんがそこまで思いつめるなんて思わなかったから…調子に乗ってみました〜」

澪「…ちょ、調子にのるなっ」ポカッ

紬「…いたっ」

澪「あ、ごめ、ちょっと強すぎた……かな?」

紬「……えへ、…」ジワッ

紬「うふふ……ふふ……ひっぐ……」グスングスン

澪「む、ムギぃ〜…!?」オロオロ

紬「うわぁ〜〜ん! ひっく! ぇぐ……」ポロポロ

澪「ちょ、ちょっとムギ! ごめんてば……」アセアセ

紬「…違うの! 澪ちゃんに会えたの! 叩かれたの! 嬉しいの!! うぇ〜〜ん…」

澪「ムギ…」

紬「もう…私の人生何もないと思ってた…ひっく…でも、今日はいったい何の日なの〜〜…? こんなに急に幸せが訪れて〜……」

紬「すごく…凄く、会いたかったの〜……ひぐ…」

澪「なんだよ…それなら、この町にいたなら私たちに連絡してくれれば良かったのに…」

紬「それは…」

紬「…さすがに…みんなに顔向けできないっておもってたから……」

紬「さっき再会したときだって…、本当は不安で足…震えてた…」

紬「こんなにみすぼらしくなった私を見て…澪ちゃん目も合わせてくれないんじゃあないかって…」

澪「そんなわけないだろ…」

澪「く、空港で、わ私が言ったこと忘れたのかよ!!」

紬「!」

澪「家がなくても、お金がなくても、水虫でも…人の気持ちなんてそう簡単に変わるものじゃあないだろ!」

紬「澪ちゃん……」

澪「…ムギだって…そうだろ?」

紬「…」

澪「む、ムギ!?」

紬「…忘れちゃった〜…」

澪「な、何が?」

紬「空港で、澪ちゃんが何て言ったか忘れちゃったの〜!」

澪「」ガーン

紬「だから…もう一回、言って?」

澪「あ! む、ムギおまえ!!」

紬「ぷりーず、りぴーとあげいん♪」

澪「も、もう! また叩くぞ!」

紬「叩いて、澪ちゃん」ニコッ

澪「…はぁ…ムギには敵わないよ…」

紬「うふふ」

澪「ふふ…」

澪「ムギ…これからどうするんだ?」

紬「うん…お金ためて、なんとか家見つけて…もう少しアルバイト増やして……」

澪「…その」

澪「……私さ、今N女子大のそばにアパート借りてるんだ」

紬「うん?」

澪「大家さん…凄いいい人でさ。きっと事情話せば…わかってくれるかも…」

紬「…え〜と??」

澪「…だ、だからぁ……。よよ良かったら、そ、その…一緒に…どうかな」

紬「!!」

澪「8畳ワンルームだから…ちょっと2人では狭すぎるかもしれないけど…」

澪「そ、それに近くには唯も律も住んでるし……だから…その///」

紬「…いいの?」

澪「! も、もちろん」

紬「…でも、悪いわ」

澪「〜〜っ!」

澪「わ、わかった! もうはっきり言うよ! お願いだ! 一緒に住んでくれ!」

澪「もう…ムギと離れたくないんだ!」

澪「…もうあんな想いはしたくないから……」

紬「…ありがとう」


紬「私いっぱい働いて澪ちゃんを養ってあげるね!」

澪「い、いやそこまではいいし…」

紬「……ねぇ。澪ちゃん」

澪「ん?」

紬「空港で私たち、大勢の前で長い長いキスしたよね」

澪「なななな何だよっ、急に!」

紬「…思い返すと恥ずかしかった、よね///」

澪「うぅ…確かに……///」

紬「これからは人目を気にせず、好きなだけ出来るね」ニコッ

澪「…」

澪「…ママに電話しとかなきゃ」ボソッ

紬「うん?」

澪「…ううん、こっちの話」

澪「…それじゃあ早く帰ろっか。私のアパートに…」

……………………………
…………………
………

律「はぁ…ゴールデンウィーク終わっちまったなぁ…早くも鬱だ…」

唯「私…授業の課題…全部わすれてたよぉ〜」

律「ハァ…」

唯「ハァ…」

澪「…」ニコニコ

律「…な〜んか澪、機嫌よさそうだなあ…」

唯「澪ちゃ〜ん…課題…写させて〜……」

澪「ふふ、しょうがないな〜唯は」

律「ぬ? 本当に怪しい…」

澪「そうだ、唯、律。今日授業終わったら、ウチに来てくれないか?」

唯「いいとも〜」

律「おお、澪から誘うのって珍しいな。いつも私たちが押しかける形なのに」

澪「…みんなに会わせたい人がいるんだ」

律「む〜、彼氏か? お母さんは許さないザマスよ!」

澪「何のキャラだよ…」

唯「ね、ね? 誰だれ〜??」

澪「私の…私たちの最愛の人」


本当におしまい



最終更新:2014年11月03日 19:30