――朝。中野家


梓(今日は私の誕生日)

  (・・・なんだけど、まさかの日曜)

  「うーん・・・」

  (自意識過剰みたいだけど、優しい憂あたりは今日祝ってくれそうな気がする。でもそうなると純も一緒にいるだろうし)

  (そうなるとあの純のことだ、「サプライズパーティーにしよう!」とか言い出すに決まってる)

  (・・・今日は日曜だから親も祝ってくれる予定になってる。から、それと被ると、正直、困る)

  (贅沢すぎる悩みだけど、被ったらどちらかに悲しそうな顔をさせちゃうわけで。それはいやだ)

  (でも・・・)

  「「今日、私を祝ってくれる予定ある?」なんて聞けないし!」

  「そもそもサプライズなら聞いても教えてくれるわけないし!!」

  「もっと言うならそもそも確定してるわけじゃないんだし!!!」

  「聞くこと自体が自意識過剰見え見えで恥ずかしい行動なわけで!!!!」


母「梓、うるさい!」

梓「ごめんなさい!!!!!」

母「うるさい!!」

梓「ごめんなさい・・・」


――商店街のほうのどこか


梓(うるさいからって追い出されてしまった・・・)

  (せっかくだから少しブラブラしてようかな)

  「・・・って、あれ。あそこにいるのは・・・」



菫「あっ」

直「げっ」

クラスメイト「ありゃ」

梓「菫と直・・・と、あの時の」

クラスメイト「はい。単行本P35の私です」

梓「どういう自己紹介なの・・・」

クラスメイト「あはは。お久しぶりです先輩」

梓「うん。あの時はありがとね」

クラスメイト「いえいえ。結局何のお力にもなれませんでしたし」

梓「そんなことないよ。ところで二人は何か私を見て驚いてたみたいだけど・・・」

菫「あっ私急に急用を思い出しました!では!」ピューン

直「あっ、待って菫!日本語おかしいよ!」ピューン

梓「・・・行っちゃった」

クラスメイト「行っちゃいましたね」

梓(あの二人の慌てよう・・・やっぱり何か企んでる?)

クラスメイト「追いかけないんですか?」

梓「それ割と私のセリフなんだけど・・・っていうか休日に一緒に外出するくらい仲良しだったんだね」

クラスメイト「あの時はそんなに仲良くなかったんですけどね、どちらとも」

梓「そうなの?」

クラスメイト「はい。ほら、斉藤さんって人間っぽくないようなところあるじゃないですか」

梓「人間っぽくない!?」

クラスメイト「あ、間違えました日本人っぽくない、です」

梓「あー・・・外見とか」

クラスメイト「はい。そして奥田さんも奥田さんで何考えてるかわかりづらいところあるじゃないですか。決して悪口じゃなくて」

梓「うん・・・言いたいことはわかるよ」

クラスメイト「そんなわけで少し距離があったんですよね、学園祭までは」

梓「学園祭?」

クラスメイト「はい。斉藤さんも奥田さんも、もちろん先輩達もとても楽しそうに輝いてて」

梓「は、恥ずかしいなぁ」

クラスメイト「ふふっ。それで、そんな二人と変に距離を取ってることがとても勿体ない、バカバカしいことに思えてきて」

梓「・・・うん。二人とも、とてもいい子だよ」

クラスメイト「はい。今では二人ともクラスの人気者です」

梓「そっか。よかった」

クラスメイト「私としては先輩もとてもかわいらしいのでお近づきになりたいのですが!」ガシッ

梓「ええっ!? え、えっと、じゃあ軽音部に入る?」

クラスメイト「考えておきますねー」パッ

梓「軽っ!?」


~~~~


クラスメイト「ところで先輩はこんなところで何を?」

梓「あー、えっと・・・」

  (そうだ、この子にカマかけてみようかな)

クラスメイト「?」

梓「あー、私、今日誕生日なんだよね」

クラスメイト「それはそれは、おめでとうございます。あ、もしかしてこれ私プレゼントをたかられてるんですか?」

梓「そんなんじゃないけど!ただ、その、友達が企み事が好きそうな奴でさ」

クラスメイト「サプライズパーティーとか?そういえば斉藤さん達もさっき何か買ってましたね」

梓「・・・確定、かなぁ」

クラスメイト「嫌なんですか?祝ってもらうの」

梓「そうじゃないけど、今日って日曜じゃん?家族も祝ってくれるって言ってたから、それと時間が被ったら申し訳ないなーって」

クラスメイト「あー、サプライズだから時間がわからない、と」

梓「そういうこと」

クラスメイト「斉藤さん達を捕まえて聞けばよかったじゃないですか」

梓「逃げちゃったじゃん」

クラスメイト「追いかければよかったじゃないですか」

梓「まぁ、そうなんだけど・・・」

クラスメイト「っていうか私、完全にあの二人から忘れられてますよね」

梓「フツーに置いていかれたもんね・・・」

クラスメイト「熱く優しく慰めてくれませんかお姉さま」ピトッ

梓「ごめんね私もこれから急用ができる予定なんだ」

クラスメイト「それならしょうがないですね」

梓「今からでも追いかけてみるかな」

クラスメイト「私は一人寂しく帰りますね」

梓「・・・なんかごめんね?」

クラスメイト「ぐすん;;」


~~~


梓「・・・見つからないし!!」

  「仕方ない、一回家に帰ろう。結局何の解決法も見つかってないけど・・・」



~~~~



梓「ただいまー」ガチャ


  「「「「「「おかえりー」」」」」」


梓「・・・ん?」

憂純菫直父母「ハッピーバースデー!!」

パンパンパンパンパンパーン

梓「多っ! まさかの全員集合!?」

純「サプライズパーティーだよ!」

梓「ウチの両親まで巻き込んでるなんて確かにサプライズだけど!」

母「祝ってあげるって言ったはいいけどどう祝おうか悩んでいたらね、憂ちゃんと純ちゃんに持ちかけられて」

憂「えへへ、梓ちゃんのお母さんと一緒に立派なお料理作ったんだよ!」

梓「おお・・・所狭しと並べられたご馳走。お昼ご飯どころか夕食の分までありそう・・・」

純「よく気づいたね。夜までぶっ続けのつもりだよ」

母「ねー」

梓「それもそれでサプライズ!」

菫「プレゼントもお母様方と相談の後、買いに行きました!」

直「これでプレゼントが被って気まずい空気になることはありません」ドヤ

梓「さっき私の顔見て「げっ」って言ったこと忘れてないからね、直」

純「そんなことより早く食べようよー」

梓「そんなことって」

憂「まぁまぁ。ほら、座って座って」

梓「わ、わかったから押さないで!」



・・・結局、私の悩みは全部意味の無い悩みだったってオチになっちゃったけど。
でも楽しかったし、何よりサプライズパーティーらしく驚かせてもらったのでこれでよかったのかな。

ありがとう、みんな。私は幸せ者だよね。
貰った幸せは、みんなの誕生日にちゃんとお返しするからね。


あと菫と直はお友達にちゃんと埋め合わせしておくように。

おわれ






最終更新:2012年12月20日 23:56