○○○

澪「今日はありがとうね、憂ちゃん」

憂「いえ、こちらこそ、すっかりごちそうになってしまって」

紬「いいのよ。ここのランチコースもおいしいからよかったら今度唯ちゃんとも来てみてね」

憂「はい、ありがとうございます」

澪「……憂ちゃん」

憂「?」

澪「ほんと、ありがとう。梓のこと、頼むな」

憂「……。では、また」

○○○

梓「今日はごちそうさまでした」

律「ほいほい。まぁ、後輩に奢るって先輩らしくていいな!!」

梓「はい、律先輩の貴重な先輩姿を拝見しました」

律「私をなんだと思っている」

梓「放課後ティータイムのリーダーです」

律「……」

梓「……」

律「じゃ、また明日部室で」

梓「はい。ではでは」

○○○

純「……」トボトボ

純「……」トボトボ

純「……」トボトボ

憂「……」トボトボ

純「ってうぉぉお!? びっくりしたぁー!?」

憂「うん。純ちゃんの姿を見かけて、いつ気づくのかつけてみた」エヘヘ

純「しれっと犯罪っぽいことしないで普通に声かけてよぉ!?」

憂「純ちゃんはどっかからの帰り?」

純「あ、う、うん。そんな感じ」

憂「口の横にチョコついてるよ?」

純「えっ!? はっず!? え、ほんとについてるの!?」

憂「うん、ほら」ゴシゴシ

純「うわ、マジだ。え、私、チョコつけてずっとファミレスから歩いてたの!?」ギャー

憂「純ちゃんはお姉ちゃんとファミレスでパフェだったんだね」

純「そうなんだよ、唯先輩、いちごパフェ食べに行こうとか言い出して」

純「って、え?」

憂「私は澪さんと紬さんと喫茶店で、だったんだ。さっきまで」

純「え、澪先輩とムギ先輩と!?」

憂「うん」

純「……同じ用事?」

憂「そういうこと」

純「……」

純「……なら私そっちがよかったな」ミオセンパイ

憂「」

純「ごめん、一瞬で殺気を友達に出さないで。私、唯先輩とパフェ食べれてちょーうれしいー!? 途中で交換して唯先輩のチョコパフェも食べれたしー!?」

憂「「」」

純「殺気がさらに増すとか私に一体どうしろと!?」

憂「一緒に軽音部入ろうか」

純「……そうくるか」

憂「純ちゃんのことだから、お姉ちゃんの説明聴いてイラッとしたでしょ」

純「うぐっ。完全に読まれてる」

純「憂はそれでいいの?」

憂「私? 私はもともとお姉ちゃんがいなくなったら軽音部に入ろうと思ってたから」

純「そうなんだ」

憂「純ちゃんのことだからまた青春熱血バカみたいに暑苦しい思想をお姉ちゃんにかましたんだろうけどさ」

純「うぃいい……私のことそんな風に思ってたの? 泣きそうなんだけど」

憂「梓ちゃんってああ見えて、結構深い部分からしてけいおん部に染まっちゃってるからね?」

純「……」

憂「どっちが押しつけなのか、わからないってことも世の中にはあるんだよ?」

純「……」

純「……そんなことわかっ」

梓「うぇぇ……ちょっと食べ過ぎたぁ……」トボトボ

純憂「あ」バッタリ

梓「あ」バッタリ

純「や、やあ、梓、どうした、お揃いで」

梓「いや、揃ってないよ。誰とも揃ってないよ。私は今フリーで歩いてたよ」

梓「むしろ純と憂でしょ。お揃いなのは。珍しいね。二人がこんな遅くまで制服っでうろつくなんて」

純「う、うん? いや、私っていえば私服が制服みたいなところあるから」

憂「……純ちゃん、いきなりぎこちなくなりすぎてわけわかんないよ」

梓「……」

純「……」

憂「……」

梓「…あ、あのさ」

純「ん、な、なにかな、梓さんよ」

梓「2人にちょっと話があるんだけど」

憂「……」

梓「けいおん部のことで」

純「……」

純「そ、そうなの、奇遇だね、実は私たちも梓に言いたいことがあるんだよ」

純「けいおん部のことで」

梓「そう、なの? 憂」

憂「うん、そうだよ。梓ちゃん」

純「なぜ憂に確認する、梓よ」

梓「あ、ごめん、純。なんか、ごめん」

純「素直に謝られるって傷つくからやめて」

憂「で、話ってなにかな、梓ちゃん」

梓「あ、う、うん」ゴクッ

梓「そ、そのさ……話っていうのは、私のわがままを二人にきいてもらえないかなって」

梓「思って……。ものすごく自分勝手なワガママなんだけど」

憂「……」

純「……」

梓「私は、その……けいおん部を、自分の代で廃部にしたくない。先輩たちと出会ったあの場所で私ももう一年間だけ、先輩たちみたいに過ごしてみたい」

憂「……」

梓「だから、二人にけいおん部に入ってほしいんだ。あの場所を守るために」

純「……」

梓「でも、それだけじゃなくて……。それだけじゃ、私のエゴは終わらなくて」

純「……」ギリッ

梓「……けいおん部に入ったら二人と私だけで、バンドはちゃんと組む。一年生もちゃんと入るように、頑張る。でも」

梓「私は自分が思っているよりも器用じゃないから……。その、えっと」

梓「……大学に入ったら憂と純と組むバンドからは抜ける」

梓「そして、私は……放課後ティータイムに戻りたい。ううん、戻る」

梓「……………そう考えてる」

憂「……」

純「……」

梓「どうかな。二人とも、この私の考えを聴いても、けいおん部入ってくれるかな」

梓「……」

純「……」

憂「私はそれでいいよ」

梓「ほ、ほんと?」

憂「私だってきっと、大学に入ったらまた忙しくなってバンドをしてる時間とかとれなくと思うから」

憂「それに一年間だけでも軽音部に入ってお姉ちゃんの観てきた景色、私も観てみたいし」

梓「……あ、ありがとう。憂……」

純「……」

梓「……純」

純「身勝手だな、梓。ワガママに付き合えだなんて、1年間もさ」

梓「……くれないよね、普通は、私、ごめんね、ワガママで」

梓「自分がこんなにワガママだなんて、私も知らなかったから」

梓「けいおん部に出会うまで」

純「……」

純(ずっと)

純(ずっと人には『どうしてもこれだけは』っていうものがあると私は思ってきた)

純(けいおん部、4人の先輩たちの一方的な梓への想いなら、そんなものぶっ壊そうとか思ってたけど)

純(どうやら違うみたいだなぁ……)

純(……いいな、梓は。そんなものを人生たかだか17年生きたぐらいで見つけられちゃって)

純(私も……いつか……)

純「……いいよ、梓」

梓「え……」

純「けいおん部、入るよ」

憂「純ちゃん……ちょっと予想外」

純「なんで憂も驚いてんの。傷つくってば。あんたたち姉妹は私の喜怒哀悲を引き出すがとてもうまいな、おい」

憂「いや、純ちゃんは人の踏み台に無意識になっちゃう人生歩んでるけど、率先して人の踏み台になるような性格ではないと思ってたからてっきり」

憂「断ると思ってた」

純「……私は今笑っているけど、心で泣いているからね、憂」

梓「……純」

純「なんだよ、もっと喜んだ顔しろよー。そんな、泣きそうな顔すんな、部長」

梓「……ありがとう……ごめんね」

純「いいよ、こういうの慣れてるし」ポリポリ

憂「じゃあ、円陣でもくもっか」

純「え、な、なんで!?」

憂「いや、こういう熱血なことしとけば、お互いに目的は違えどなんか雰囲気でるかなって」

純「……まぁ、い、いいけど、梓と憂がしたいなら」

憂「どうする、梓ちゃん」

梓「……しゅりゅ」グスグス

純「しれっと泣くなよ、まったく気づいてなかったっての!?」

純「って円陣組むんだ」

憂「ほらーはやくはやくー純ちゃんこないとなんか道で組み体操してる人みたいになってるから、私と梓ちゃん」

梓「うえぇ…えふん…ぐすん………こほこほ……」

純「え、梓、本格的に泣き始めてるけど、円陣するのこれ!?」

ガショッ

憂「えへへ、青春っぽくてうれしい? 純ちゃん」

純「憂、さっきから私を青春フェチにしたてあげないで」

梓「うああぁ・・・・…じゅー…ぅぃいい……」グスグス

純「大丈夫か、梓……あとでティシュあげるからね」

憂「よし、じゃあ」コホン

憂「私はお姉ちゃんの体験を追体験するため」フンス

梓「わだ、わだしは、先輩たちと、再開するためぇ……」スンスン

純「……私は、なんかあれだ。居場所的なものを見つけてラノベ的に高校生活のラストをいい感じにするため」

梓「けいおん部ぅ〜〜」グシグシ

憂純「しゃぁーーーー!!!!」

○○○

こうして、私と憂はけいおん部に入った。
色々な意図がくんずほぐれつなあの場所で、
私はきっとまた誰かの踏み台になるような人生や体験をするんだろうか。

憂「あ、今日行ったお店、ランチやってるみたいだから三人で行こうよ」

純「憂がランチ食べてきてからレシピ再現した方が私的には安上がりでいいかな。あ、あった。ほら、梓、テッシュ」ハイ

梓「ずぴぴぴぴっぴぴぴp」

純「もっと女の子らしくしようよ……。音。音」

憂も梓も友達だけど、いつかは私の元から去っていくことが決定している。

梓「憂と純だから、別にいいかなって」

まぁ、でもそれまではとりあえずの時間の猶予はあるわけだから、
私は私なりに、この三人での時間ってやつを大切にしてみよう、
とかそんなことを思った。

うん、それってなんか、けいおん部っぽいって思わない?

終わり。



最終更新:2014年11月09日 11:37