【イナゴの佃煮】
唯「あっ、それも私が入れたやつだ」
和「あんたねえ……」
梓「脳を宇宙生物か何かに乗っ取られて『一升食べるのを邪魔しろ』と命令されているとしか
思えないんですけど」
律「ていうか、どこの馬鹿だよ! 弁当にイナゴ入れてきたのは!」
唯「それは私が持ってきたの。お父さんとお母さんの長野旅行のおみやげ。お茶の時間に
みんなで食べようと思って」
澪「もう何もかもダメだ! お前は!」
紬「うう…… の、和ちゃんもケーキでご飯を食べたんだし、私も食べてみるね!」ヒョイッ
風子「うわぁ…… 虫だ……」
梓「私、ちょっと無理です……」ウプッ
紬「えいっ!」パクッ モグモグモグモグ
澪「ひいいいいい…… ムギが虫を、バッタを食べてるぅ……」ガクガクブルブル
紬「……おいしい!」
律「マジで!?」
紬「うん、エビみたい。少し青臭いエビって感じ。普通の佃煮よ」ヒョイ パクッ
律「信じらんねー…… バッタって美味しいんだ……」
紬「これならいけるわ!」バァクッ モォグモォグ
梓「ちょっ…… 今、一口で茶碗のご飯が半分無くなりましたよ!」
唯「ホントにムギちゃんで終わっちゃうかも……」
紬「ほふぁふぁふぃ」モォグモォグモォグ
澪「早っ! もう一杯食べたのか!?」
梓「もう『バキューム琴吹』なんて呼び捨てにしちゃダメですよ。『バキュームさん』ですよ」
律「いや、『大先生』だな」
梓「それはそれでしょっぱくてご飯が進みそうな呼び名ですね」
――紬、怒涛の快進撃! 瞬く間に三杯を食べ切る活躍を見せる! しかし、ここで問題発生!
紬「どうしよう。おかずのイナゴが無くなっちゃった」ペロリ
律「おかずも食べすぎだろ、ムギw」
澪「唯、これはおかずを補充してもいいんじゃないか?」
唯「うん! ムギちゃん、特別ルールでもう一回引いていいよ!」
紬「じゃあ、これ」ゴソゴソ スッ
【ハチノコ(塩味)】
律「だーかーらー!!」
澪「唯ぃいいいいい!!」
唯「お、お父さんとお母さんがね、長野にね……」
梓「律先輩、こいつ殴っていいですか?」
紬「うん、これも美味しい! ちょっと冷えてフニャッとなったポテトみたい!」ヒョイ パク ヒョイ パク ガツガツ
和「微塵の躊躇も無く食べたわね……」
風子「琴吹さんが芋虫食べてる……」
紬「んぐんぐ…… ほふぁふぁふぃい!」サッ
――紬、ハチノコという新たなおかずを得て、さらに三杯を完食! なんと合計六杯の記録を達成!
紬「うーん…… ごちそうさまぁ……」
律「いやー、三合は食べたぞ。やっぱすごいな、ムギ」
和「それにイナゴとハチノコが合わせて300gくらいあったわよ。その身体のどこに入ったのか
不思議だわ」
梓「虫で白飯をモリモリいく女子高生というかなり珍しい絵も見せてもらえましたし」
風子「おひつの中はあと四杯分くらいだよ。あとは唯ちゃんと田井中さんの二人だし、全部
食べられそうだね」
唯「いよーし! 頑張っちゃうぞー! 私のおかずはぁ~……」ゴソゴソ スッ
【フリスク】
唯「あうぅ……」
律「……」ハァ
澪「……」ハァ
和「どうしてかしら。展開としてはピンチなのに、すごく気分が良いわ」
梓「因果応報とはこのことですね」
唯「あの…… これはちょっと無理だから引き直し……」オズオズ
律「そんなワケないだろ。はい、ご飯」コトッ
梓「こんなのふりかけみたいにこう、こうですよ」サッサッ パラパラ
風子「うわっ、ここまでスースーする匂いが漂ってくる……」
澪「はい、『いただきます』は?」
唯「い、いただきます……」ソーッ パクッ
紬「私、フリスク食べたことないから、ちょっと興味あるかな」
唯「はぁあああああ!! げほっ! げほっ! ごほっ!」ガタッ
律「wwwwwwwwww」
梓「wwwwwwwwww」
和「まあ、100%こうなるとは思っていたけど」
澪「なあ」
紬「やっぱり興味無い。全然無い」
唯「これ無理!! 無理ぃいいいいい!! げほっ! げほっ! おええっ!」
律「えずくなよ!w」
梓「せめてその一杯は食べてくださいよw」
唯「うわわわわわ…… 無理だぁあああああ……」
――咳き込み、えずき、三十分ほどかけながらも、唯、何とかフリスクご飯をクリア。
唯「ご、ごちそうさま…… なんか舌と指先が痺れてる…… 寒くないのに寒い……」
律「もっと頑張れよー。私、三杯も食べなきゃいけないだろ。あんまりお腹空いてないのに」
唯「いや、もう無理だよぉ」
澪「まあ、でも、三杯なら頑張ればいけなくはないだろ」
律「おかずにもよるなあ。どれどれ」ゴソゴソ サッ
【ごはん】
澪「んん?」
律「何、これ……」
唯「ごはんはおかず! ごはんはすごいよ! ないと困…… あ、いててて。りっちゃん、
胸倉つかまないで。痛い痛い痛い」
梓「普通にキレちゃダメですって、律先輩」
澪「よせ、律。唯はこういう奴なんだ。わかってたはずだろ」
律「おかずも無しでご飯三杯も食べられるワケないだろ!」
和「唯を擁護するつもりはまったく無いけど、一応みんなここまで何が出ても食べてきたから、
律も頑張りなさいよ」
律「鬼畜眼鏡め…… むむむ……」
梓「どうぞ」コトッ
律「そうだ! 飲み物はOKなんだろ!?」
唯「え? うん、OKだけど」
律「ムギ! お茶淹れてくれ! 今すぐ!」
紬「は、はい!」タッタッタッ
風子「あ、そっか」
唯「なぁに? どういうこと?」
風子「お茶漬けよ。お茶漬けにして流し込んじゃえば食べやすいでしょ?」
梓「なるほど。考えましたね」
律「へへ~ん。ナイスアイディアだろ」
紬「りっちゃん、お待たせ! はい、紅茶!」
律「うおおおおおい!! なんで紅茶なんだよ!!」
紬「えっ、だって『お茶淹れてくれ』って……」
律「普通お茶漬けって言ったら緑茶だろ!」
澪「いや、律の言い方も悪かったろ。普段、飲んでるのは紅茶なんだし」
和「最初から『お茶漬けにするから緑茶を淹れてくれ』って言えば良かったのよ」
唯「出てきたものはちゃんとお腹に入れなきゃダメだよ。りっちゃん」
律「だー! わかったよ! 食べりゃいいんだろ! 食べりゃ!」トポトポトポ
梓「赤茶色のお茶漬けって気持ち悪いですね……」
紬「りっちゃん、お砂糖とミルクは?」
律「いるか! そんなもん!」
唯「さあ、大将りっちゃん! 頑張って!」
律「いただきます! ぬおおおおおおおお!」ガツガツガツ
梓「いったー!」
律「うわ! まずっ! まっずぅううううう! ぅおえ!」ガタッ
風子「同じお茶の仲間なのに、こうも違うんだね」
澪「ウーロン茶漬けとかほうじ茶漬けもあるのにな」
律「全然ご飯と合わねえぇえええ…… あー、もう!」ガツガツガツ
唯「すごい! あとちょっとで一杯目クリアだよ!」
律「一杯目終わりぃ! おかわり持ってこぉい! まっず……」
――やけくその律は凄まじい勢いで一杯目、二杯目を食べ終わり、いよいよラストの三杯目に突入!
律「もうさぁ、お金払うからこれ食べなくていいことにしてよ……」ゲェプ
梓「何言い出してんですかw」
澪「あともう少しだぞ! さっきみたいにかき込んじゃえよ!」
律「いや、もう、最初からそんなお腹空いてない上に、紅茶でお腹タポンタポンだし……」
澪「そんなこと言ってる間に、ご飯が紅茶を吸ってどんどん食べづらくなるぞ」
律「こんなのでお腹いっぱいになるのがなんか嫌だ…… はぐっ……」モソモソ モソモソ
梓「うわー、まったく盛り上がらない地味な絵になってきましたよ、これ」
和「もうだいぶ長くなってきたから、さっさと食べちゃいなさいよ」
澪「そうだな。正直飽きてきた」
律「言いたい放題だな、お前ら…… ええい!」ガツガツガツガツ
唯「おっ! ラストスパート!」
梓「ぶ・ちょ・う! ぶ・ちょ・う! ぶ・ちょ・う!」
紬「りーっちゃん! りーっちゃん! りーっちゃん!」
澪「りーつ! りーつ! りーつ!」
律「コール揃えろよ! バラバラでやりづらいよ!」ガツガツガツガツ
風子「あともう少し! もう少しだよ!」
律「おっしゃあー! 完食ぅー!」カタンッ
唯「やったぁあああ! 一升達成!」
澪「すごいな。本当におひつが空になった」
梓「一時はどうなることかと思いましたよ」
和「ムギのおかげによるところが大きかったわね。あとは梓ちゃんと風子も」
風子「私、しばらくカレーはいいかな……」
律「私はしばらく米を食べたくないよ…… うっぷ……」
紬「イナゴとハチノコ、長野からお取り寄せしようかしら。美味しかったぁ~」
唯「じゃあ、ご飯一升完食を祝して、ばんざーい! ばんざーい! ばんz
ガチャッ
憂「お姉ちゃん、調理実習でハンバーグを作ったんだけど食べない? あ、皆さんの分もありますよ」
おしまい
最終更新:2014年11月24日 19:33