唯「ねえ、あずにゃん」

梓「なんですか、唯先輩」

唯「いつまでわたしに対して敬語でしゃべるの?」

梓「うっ……(密かに気にしていたことを……)ま、まあ! いずれは少しずつ……」

唯「別にもう敬語じゃなくてもいいのに〜」

梓「それは自分が許せません!」

唯「そうかなあ」

梓「そうです」

唯「じゃあさ、一回逆にしてみない?」

梓「逆?」

唯「わたしがあずにゃんに敬語で話して、あずにゃんはわたしにタメ口で話す! どうかな?」

梓「そ、そんなこと……」

唯「わたしとあずにゃんの仲でしょ! 気にしない気にしない」

梓「…………」

唯「それにさ、今はわたしたち、同い年でしょ?」

梓「えっ?」

唯「ほら、この前あずにゃんの誕生日だったでしょ? わたしの誕生日はあずにゃんより少し遅いからさ」

梓「あ、あー……」

唯「つまり! わたしの誕生日が来るまではあずにゃんと同い年なんだよ!」

梓「ま、まあ……たしかに」

唯「ってことでさ、気にしないでタメ口でもいいんだよ〜」

梓「うーん……」

唯「さあ!」

梓「……わかりました」

唯「あ、さっそく敬語」

梓「わかったよ! はあ〜……(いきなりタメ口っていっても、何て呼びかければいいのかな……)」

唯「あずにゃん怒ってる?」

梓「怒ってませ……ないけど、またくだらないことを思いついたんだな〜って」

唯「ひどいっ!」

梓「それに私には敬語で話すんじゃなかったの?」

唯「あずにゃん先輩厳しい……」

梓「あずにゃん先輩って……」

唯「かわいいでしょう?」

梓「うー……なんか改めて恥ずかしい気が……」

唯「ふふ。そういえばあずにゃん先輩、そろそろ買い物に行きませんか? 夕方過ぎると寒くなってしまいますから!」

梓「そ、そうだね。今日の晩ご飯どうしようかなあ……」

唯「あったかいものがいいです!」

梓「それなら鍋とかかな」

唯「やった!」

梓「それじゃあ、いきましょ……いこっか!」

唯「はーい!」

梓「あっ、と……そこのカバン取って…………ゆ、唯……」

唯「わあぁっ……! かわいい、かわいい……」ギュッ

梓「……早くいこう!」

唯「わわっ! 待って、くださーい!」


梓「はーい、できたよー」

唯「わーい! あったかそう……」

梓「唯、手ちゃんと洗った?」

唯「もちろんですよ〜!」

梓「それならいいけど……」

唯「さあ、あずにゃん先輩も! 手を合わせて」

梓唯「いただきます」

唯「あふっ!? こえ、あふいあふい!」

梓「いきなり頬張りすぎですよ! ほら、お水飲んで……」

唯「ふうー……助かった〜。ありがとう、あずにゃん」

梓「もう、気をつけてくださいよ……」

唯「ごめん、ごめん……って、敬語っ!」ビシィッ

梓「あっ、えっと……火傷したらどうするの!」

唯「ごめんなさ〜い!」

梓「まったく……ふふ」

唯「えへへ。わたし、怒られてばっかだからあずにゃん先輩の方が年上みたい! ……今は同い年だけど」

梓「そう、かなあ……まだ中学生、高校生みたいって言われたりするけど……」

唯「あずにゃん先輩はわたしよりもしっかりしてますよ!」

梓「例えば?」

唯「そうだねえ……洗濯、料理、お掃除……」

梓「か、家事全般だね……」

唯「あとはダメなとこはダメって言ってくれるとこ!」

梓「うーん……それはまあ……そうかも……」

唯「でしょ?」

梓「けど、私は唯の方が年上だなあって思う時の方が多いかな」

唯「そうかな? どの辺が?」

梓「……えっと」

唯「うんうん!」

梓「……やっぱ秘密!」

唯「えーっ? そこまで言っておきながら……」

梓「またいつか話すから! 多分!」

唯「ぶーっ……」

梓「(落ち込んでる時に優しく励ましてくれたりとか、包容力のあるところとか、いつも気にかけてくれたりとか……良いところを挙げればキリがないや)」


梓「電気消すね」

唯「はーい……ねむねむ」

パチッ

梓「ふう……」

唯「どうでしたか、あずにゃん先輩。タメ口っていうのは」

梓「ちょっとだけ疲れる、かなあ……」

唯「疲れる?」

梓「何て言うか……やっぱり慣れないというか……」

唯「なるほど……」

梓「……唯は?」

唯「わたし? うーん……特に疲れはしなかったかな。あずにゃんの後輩ってのはなんだか新鮮だったかも!」

梓「そっか……」

唯「えへへ。今日も楽しかったからぐっすり眠れそうだよ」

梓「……唯、先輩」

唯「うん? どうしたの?」

梓「もうしばらく……もうしばらくだけ、敬語のままでいさせてください」

唯「…………」

梓「敬語使ってるからといって、決して距離を置いてるとかそういうのじゃ絶対ないので……」

唯「……わかった、わかってるよ、あずにゃん」

梓「本当ですからね! ただ、まだ心の準備ができていなくて……」

唯「じゃあその時が来るの待ってるよ!」

梓「ありがとうございます……」

唯「ゆっくりでいいんだよ。のんびり待ってるからね」

梓「はい、待っててください」

唯「じゃあ……そろそろおやすみ、あずにゃん」

梓「おやすみなさい、唯先輩」


おわり!



最終更新:2014年12月01日 07:20