澪「唯ーっ、おまたせー」

唯「あ、澪ちゃん!こっちこっちー!」

学際が迫ったある日、澪ちゃんの提案で私たち二人はボーカルの練習を、河川敷ですることにしました。他のメンバーには内緒です!

澪「悪いな、唯。どうしても一回は合わせておきたくてさ…」

唯「んーうん、私も澪ちゃんと練習しておきたかったけど、澪ちゃんはりっちゃんとロミオの練習が大変と思って…澪ちゃんとなら一発本番でもばっちり合わせられる気がするし!」

澪「…でも最後の学際だし、劇の追い込みで忙しくなる前にしておきたいなって!今度の学際は万全の状態で…」

唯「そうだね、澪ちゃん。じゃあ早速始めようよ…エリザベスなら、あっちでギー太が待ってるよぉ」

ギー太が斜めに立てかけてある河川敷の土手を指で指すと、澪ちゃんはその横にエリザベスを寄り添うようにおきます

唯「うふふふ〜二人は仲よしだねぇ」

澪「べ、別に横に置いてもいいだろっ…っていうかギー太持ってくる必要ないんじゃ…」

唯「それって、澪ちゃんもだよ…」

照れてる澪ちゃんはとてもかわいいです

唯「えーっと、どの曲から始める?」

澪「ふわふわにしようっか、唯?」

最初に作った曲、「ふわふわ時間(タイム)」…何度も二人で歌ってきた曲…
私が人差指を三回振り「いち、にっ、さん」と小声で合図して歌いだすと、澪ちゃんと私の歌声は瞬時にぴったりと合う…
♪〜

唯「…ふわふわタイム〜♪」

澪「−ふわふわタイム〜♪」

唯「…ぴったりだね、澪ちゃん!」

澪「だな!唯」

唯「じゃあ次はどの曲にしようか…」

澪「まだボーカル合わせたことのない『U&I』と『ごはんはおかず』だよな…まずは『U&I』からかな…」

唯「そうだね…ごはんはみんなでハモらないと雰囲気出ないしね、取りあえずU&Iで」

澪「それにしても、唯がこんな歌詞書けるなんてなぁ…それに比べ私は…」

空を見上げ落ち込み気味に口を開けてる澪ちゃん…

唯「そんなことないよ!澪ちゃんの書いた歌詞を歌ってきたからこの曲が書けたんだよ!」

澪「…え?」

唯「澪ちゃんの歌詞(歌)が頭に溢れていたから、私もこの歌詞をスラスラ…ってことはないけどね…、書き上げられたんだよ!」

澪「そうなのか!?…」

唯「…澪ちゃんはこの歌詞きらい?」

澪「んーんっ!好き!すっごく良い歌詞だと思った!」

唯「私たちらしい曲…だよね?…」

澪「うん!私たちらしい曲だと思う!…ごめんな、唯!自分が書けないことばかり気にして…私たち放課後ティータイムらしいよ、この歌詞!」

唯「良かった!…じゃあ早速練習しようよ!」

澪「だな!」

♪〜

唯「キミがいないと何もできないよ キミのごはんが食べたいよ♪」

唯「もしキミが帰ってきたらとびっきりの笑顔で〜♪」
澪「もしキミが帰ってきたらとびっきりの笑顔で〜♪」

唯(え?澪ちゃんは次のフレーズから入るはずなのに!?)

澪ちゃんを見ると、目線を前に振って「続けろ」と合図してくる…パートもコーラスでなく主旋律…もしかして…

唯(うん!分かったよ!二人で!)

私は縦に顔を振り、笑顔で返す…
そのまま私たちの声量は最大限に大きくなり、力いっぱいに歌い上げていく…
Bパートが終わり間奏に入る…私がエアギターで曲を繋ぐと澪ちゃんもエアベースで合わせてくる!二人で楽しさがあふれ出そうになる!
そしてピアノとボーカルのみの部分…澪ちゃんと目を合わせ、うなずくように呼吸を合わせ歌う…笑顔の澪ちゃん…落とした声のトーンとは逆に感情が高鳴っていく!

唯「…思いよー届けーっ♪」
澪「…思いよー届けーっ♪」

唯「…はぁはぁ…もう、澪ちゃんたらーっ、うふふふふっ」

澪「あははははっ…この歌詞、メインボーカルで歌ってみたいと思ってさっ…」

二人とも笑い出してしまう

唯「びっくりしたー…でも、すっごく楽しかった!」

澪「だな!すっごく楽しかった!…続けてくれてありがとうな、唯!」

唯「本番でもこれで行こうよ!澪ちゃん!」

澪「ああ!いいなあ…でもこのテンションで歌ったら私たち倒れちゃうぞ!」

唯「えーいいじゃん!出し切ったーっ!みたいな!」

澪「それもいいな!…でも本番はコーラスで、唯との最高のハーモニーにするよ!」

唯「えーっ」

澪「…でも、二人きりで練習するときは、また唯と、こうして歌いたい、な…」

唯「うん!じゃあ私たちだけの秘密だね!澪ちゃん!」

澪「そうだな!私たちだけの秘密!」

感情いっぱいの顔で澪ちゃんが顔を見合わせて言う

唯「澪ちゃん、嬉しそう!」

澪「唯もだろ!」

唯「ふふふ…」

澪「うふふ…」

また二人で笑い合ってしまう

唯「じゃあ澪ちゃん、喉も乾いたし何か飲も〜」

私はギー太の横のバックに入れてある缶紅茶を取り出す

唯「ほら澪ちゃん!暖かいよ〜」

立ってる澪ちゃんの手元まで缶紅茶を持っていき、開いてる左手で澪ちゃんの右手を取り、缶に当てる

澪「暖っかい…でも、少しさめちゃってるな」

唯「あ、澪ちゃんの手も、暖かいねっ!」

澪「唯と…熱唱したら熱くなっちゃった…」

唯「へえ、そうなんだ…」

澪「ほらっ唯、手も温まったし、のど乾いてるんだろ、早く飲んじゃえよ」

唯「うー澪ちゃんのおてて、触っていたいのにぃ〜」

澪「なにバカなこと言ってるんだっ、もぅ」

唯「はいはい」

澪ちゃんの手を放し、二人で土手に腰を掛ける

パシュ

缶のタブを立て、缶を開ける

ゴクゴク…

唯「…あ、やっぱり少しぬるいかも……ほい!澪ちゃん!」

澪ちゃんに缶紅茶を差し出す

澪「え、私?」

唯「飲んで〜澪ちゃん」

澪「…あ、じゃあ…」

ゴクゴク…

澪「本当だ…ぬるいな」

唯「ふふ…間接キス…」

澪「ななななっ…」

唯「ねえ、澪ちゃん…」

澪ちゃんの顔が近づいてくる…私が顔を近づけているからだけど…

澪「ゆ、唯!?」

唯「いただきー!澪ちゃん!」

澪「ちゃっ…」

そして澪ちゃんから奪い取る

澪「…って唯!紅茶か!」

唯「えー何だと思ったの?澪ちゃん?」

ゴクゴク…

唯「澪ちゃんたら、やらしーいー」

澪「唯のばか!…ほら、取るとき手に紅茶が被っただろ…もう」

ペロ

澪「ほら唯!」

唯「なにぃッ!」

チュ!

澪「…ほら、唯の口から垂れた紅茶も…舐めておいたからっ」

唯「み、み、み、澪ちゃん?!」

澪「…嫌だったか?唯?」

唯「…澪ちゃんたら強引…」

それを聞いて赤みがかった顔がさらに真っ赤になる澪ちゃん…

澪「…ほら、練習!練習!」

唯「ま、まってよー澪ちゃん!」

二人、土手から駆け出し、練習の再開です!さっきより二人寄り会いながら…

ふと振り向くと、後ろではギー太とエリザベスがネックをクロスし、もたれ合っていました

おしまい



最終更新:2014年12月05日 19:17