―守れよ その愛で 大切な人を―



ファイブレッド「行くぞ!! 健!!」


 まずはファイブブルーに向かって投げる、ファイブブルーはそれを受け取る。


ファイブブルー「数美!!」


 続いてはファイブピンクに。


ファイブピンク「レミ!!」


 次はファイブイエロー。


ファイブイエロー「任せたわよ、文也!!」


 続いてはファイブブラック。


ファイブブラック「よっしゃぁ!! 兄貴!!」


 5人のエネルギーが充電されたファイブボールを構える。


―大切な 人の未来を Wow Wow Wow―



ファイブレッド「とっりゃあぁっ!!」


 最後にファイブレッドがファイブボールをコマンドギンに向かってぶつける。



―1・2・3・4・5―



コマンドギン「う、うわぁぁぁぁァァァァァァ!?」


 レッドが正面へと振り返ると、背後でコマンドギンが大爆発を起こす。



―地球戦隊 ファーイブマーン!!―



 銀河の死の指揮者・コマンドギンにファイブマンが勝利したのであった。


シュバリエ「まだだ、黒ゴルリン!!」


 シュバリエの声と同時に採掘場へと発してくる黒の巨大ロボット。
 それは、本来なら銀河闘士を窮して巨大化するロボットであるが、シュバリエがその能力を廃棄し、戦闘面に強化されたゴルリンである。

 そもそも、コマンドギンが爆発してしまった時点で吸収は不可能なのであるが……。


ファイブレッド「ファイブロボ!! 発進!!」


 レッドの声と同時に飛んできたのは、ファイブマンが操る巨大マシン・ファイブロボである。
 本来は、3つのマシンがトリプルジョイントして合体するのであるが、今回は合体してからの登場である。
 ファイブマンはファイブロボに乗り込む。


 ファイブロボと黒ゴルリンが対面しながら構える。
 先に動いたのは黒ゴルリンの方であり、肩のバルカンから無数の弾丸を飛ばすが、ファイブロボはそれを横に飛んで避ける。

 そして、逆に両腕に装備されたツインカノンを黒ゴルリンに放つ。

 ツインカノンが直撃してしまった黒ゴルリンはよろけてしまう。


ファイブレッド「今だ、超次元ソード!!」


 異次元空間から現れたのは、ファイブロボの専用武器である・超次元ソード。
 超次元ソードを構えながら走りだし、黒ゴルリンを斬る。


ファイブレッド「正義の剣を受けてみろ!!」


 全エネルギーを開放して超次元ソードを黒ゴルリンへと振り下ろす。

 必殺技を受けた黒ゴルリンの体から火花が生じる。


シュバリエ「くっ、撤退だ!! 黒ゴルリン!!」


 シュバリエの言葉を受けて、黒ゴルリンは逃げるように去っていく。


シュバリエ「おのれぇ、ファイブマン。次こそは」


 シュバリエ達も姿を消す。



 桜が丘高校。

 コマンドギンを倒すと、学達は急いで講堂へと向かった。


文也「もう、終わったんじゃないのかな?」

レミ「大丈夫よ、きっとまだ」

学「よし、入るぞ」


 講堂の扉を開けた瞬間、大きな歓声が響き渡った。


 唯「みんな、次が最後の曲です。聞いてください!!」


「えぇ~、もっと聞かせてよ~」

「まだ終わらないで~」


唯「ごめんなさい。私達もまだやりたいんですけど、これが最後なんです!! だから聞いてください。最後の曲は……」


 その時、唯と学達の視線が合う。
 学が笑顔で手を振ると、唯は嬉しそうに笑う。いや、唯だけじゃなく、律たち他の部員も同じであった。


唯「U&I!!」


 大歓声に包まれる講堂で最後の演奏が始まる。
 学達はその演奏を嬉しそうに聞き続けた。


 ライブ終了後。


 ライブが終了し、講堂では楽器の片づけが始まる。

 学達はこっそりと舞台袖に上がる。
 そこでは、さわ子が待っていた。

さわ子「おかえりなさい。どうだったあの子達の演奏?」

学「とっても良かったよ。唯ちゃん達は?」

さわ子「部室に言ったわよ。最後の文化祭だしね……今はあの子達だけにした方がいいわ」

学「そうだな……」


 袖口にドラムなどの楽器を運ぶ運営委員の生徒達。
 健は彼女からドラムセットを奪うように取る。


健「こういうのは男たちの仕事。健先生に任せなさい」

女子生徒「で、でも……部外者に……」

さわ子「大丈夫よ。この人たちは私の知り合いだから。それに、安全も保障するわよ。みんな、先生だしね」

健「そうそう、そういうこと。音楽室まで運べばいいの?」

女子生徒「え、はい」


 重いはずのドラムセットを楽々と持ち上げながら音楽室へと向かっていく。
 流石、体育の教師だけはある。


学「俺達も手伝うよ。これをどこに」

文也「あぁ!! 兄貴はいいって。さわ子姉ちゃんとちょっと話してきなよ」

学「でも……」

文也「いいから、いいから」


レミ「さわ子お姉ちゃんも!! ほらっ!!」

さわ子「ちょっと、止めなさいよ」


和「だったら、文化祭を回ってはどうでしょうか? といっても、どこも片づけだともいますけど。展示品などは見れると思いますよ」

さわ子「真鍋さんまで!?」


数美「いいじゃないですか。行ってきてくださいよ」

女子生徒「そうですよ、先生」

運営委員「これが最後のチャンスかもしれませんよ!!」



 弟や妹、それに和率いる女子生徒にも後押しを受けて学とさわ子は講堂から追い出される。


 外に出たはいいが何をするべきか……。


学「取り敢えず、少し見て回ろうか……」

さわ子「それじゃあ、エスコート……お願いできるかしら」

学「勿論」


 外の展示品を見て回る。

 和の言っていた通り、もう終わりの時間のためどこも片づけに入っているが……それでも展示品は見て楽しむ事が出来た。
 どれも、生徒の努力と思いでの結晶である。
 見ていて、それが感じられる。


 ただ気になった点は、やたら生徒たちの視線が2人に集まっていたことであるが……。
 ついでに、これは運営委員の生徒がメールで『山中先生に彼氏が!?』と送ったからであるが、それを知るのはもう少し先の話である。


 何分くらい見て回ったのか……。
 時間にすると30分も回ってはいない。
 それでも、時間が永遠に感じられた瞬間だった。


 腕時計を確認する。
 もうそろそろ、音楽室に向かった方がいいだろう。


 学「そろそろ、行くんだろ?」


 学もそれは分かっているようだった。

 音楽室には学は行かない。あくまで学は部外者である。行くのは顧問である自分一人だ。
 別れる前に言いたいことがあった。これだけでも言わなければならない。


さわ子「あの子達ね、あなた達の為に一曲歌ったのよ。そりゃあ、予定になかった演奏だから、音が外れたりして酷かったけど……ちゃんと聞こえたかしら?」

学「聞こえたよ、その演奏が聞こえたから俺達は勝てたんだ」

さわ子「あら? そんな夢みたいな話し、本当かしら?」

学「本当だよ。みんなの思いが届いたよ。皆に、ありがとうって伝えといてくれないか?」

さわこ「貴方が自分で言いなさいよ」


 そう言われると学は、頭を下げる。


学「駄目だよ。俺達と一緒にいるとまたゾーンに狙われるかもしれない。だから、会わない方がいいんだ」

さわ子「……そうよね、あなた達はヒーローだものね」


 唇を噛みしめる。
 わかっていたのだ、彼等が自分達と違う世界に生きていることを……。
 恐らく、もう会えないだろうということを……。


さわ子「それじゃあ、さようなら」


 背を向けて歩き出す。
 もう振り返りたくはなかった。


学「あの、さわ子ちゃん!!」

 大声で引き止める。
 さわ子は振りかえらない。


学「もし……全部が終わったら、また会いに来てもいいかな? 今度は、伝えたいことがあるんだ!!」


 世界が止まったように感じられた。
 自分勝手だとはわかっている。だけれども、それも手放したくはなかった。


さわ子「……約束だからね」


 それだけ言い残すと、さわ子は音楽室に向かって走り出す。

 学は嬉しそうに頷いた。


健「いや~、兄貴がまさか告白するなんてな~」

数美「本当、驚いたわ」

学「み、皆……見てたのか?」

文也「う……えぇと……まぁね」

レミは「悪気はなかったのよ。でも……」


 申し訳なさそうに言う5人。
 学はそんな彼等の姿を見て笑顔になる。


学「さぁ、皆、帰ろう。ゾーンとの戦いはまだ終わっていないんだ」


 夕陽に向かって歩き出す。
 ファイブマンの戦いはまだ終わってはいない。平和になるその日まで、戦えファイブマン。
 ゾーンの野暮を打ち砕き、地球に平和をもたらすのだ。




 数か月後。
 ゾーンとファイブマンによる最後の闘いがあった。
 激戦の末バルガイヤーを破壊し、長き戦いに勝利したファイブマンは、使命を終え両親の待つ星へと旅立った。


 そんな、情報がさわ子の耳にも入った。


 1年後・2月。
 ―桜が丘高校・音楽室。


『危険に今、命を張れ、地球が危ない!! 銀河でただ1つきりの虹が降る星~♪』

純「う~ん……」

菫「あれ、何見てるんですか?」

純「いや~さ、澪先輩たちの最後の文化祭のDVD見つけたんだけどさ。なんで、一曲目に澪先輩達らしくない演奏をしたのかなって?」

憂「でも凄かったよね。皆その歌知ってたから会場全員で歌ったよね」

純「そうだけど~。うーん。ねぇ、梓、この時って本当に何があったの? 梓達は遅れてくるし、一曲目はこんなんだし」

梓「えぇ~と、それは秘密かな。やっぱり、それは言えないよ」

純「えぇ~、なんで~。いいじゃん。それじゃあ、憂は何か知らない? 唯先輩が何か言ってなかった?」

憂「うーん、私も分からないんだよね。お姉ちゃんは文化祭からファイブマンの大ファンになってたけど」

純「大ファンか~。何となく、ファイブマンの活躍を嬉しそうにはしゃぐ唯先輩の姿は想像できるけど……まぁ、私はジェットマンの方が好きだけどね、戦う女性ブルーとか最高じゃん」

菫「え、えっと、私はターボレンジャーです。なんか、レッドが格好良くて……」

純「へぇ~、レッド派か~。直は?」

直「サンバルカンですね。3人っていうのが斬新で素晴らしいと思います」

純「サンバルカンって渋っ。私そこら辺よく分からないんだよね……なんだっけ、1+2……」

直「サンバルカンです。レッドの動きが途中から変わったんですよ、今まで日本刀なんて使わなかったのに急に」

純「あぁ。わかった、わかった。憂は?」

憂「う~、わたしもお姉ちゃんと一緒でファイブマンかな。なんか、好きになっちゃって」

純「梓もファイブマンだよね。ってことは、梓と憂以外バラバラか~」

梓「勝手に決めないでよ」

純「違うの?」

梓「……合ってるけど……」

純「あっ、そういえばさ、この文化祭の時期にさ、山中さわ子先生・結婚かっ!? って噂が流れたよね」

梓「!? ……っ、ケッホ、ゲッホ……」

憂「大丈夫、梓ちゃん?」

菫「え、え、まさか私のお茶が不味かったんじゃ」

梓「いや、そうじゃくて」


純「でもさ、結局結婚はしてないし……やっぱり噂だったのかな~? う~ん」


 そんな事を話していると、音楽室の扉が開く


さわ子「おい~す。あら、また憂ちゃん達来てるのね」

憂「えへへ、お姉ちゃんたちもよく部室に通ってたから、私達もって思って」

さわ子「いいわね~。大学も決まって、後は卒業するだけで……私なんか大変よ」

直「担当クラス持ってないのにですか?」

さわ子「うっ、それはそうだけど。卒業が近くなると何処の先生も大変なのよ!!」

菫「先生、お茶です」

さわ子「ありがとう、菫ちゃん。あら? その映像って」

純「あぁ、これですか。去年のライブのDVD見つけて流してたんですよ。さっきまで何で一曲目がファイブマンなのか、梓に聞いてたんですよ」

さわ子「去年の……そうね」

梓「し、しまった」


 明らかに、後ろに真っ黒なオーラが見えるほど暗くなる。
 もっと早くにこの話題を止めるべきだった


さわ子「ファイブマン……色々あったわよね……。色々」


梓「(や、やばい。先生がどんどん……)え、えっと、そ、それよりも、今日は皆でどこか行かない。ほら、時間もあるし」

純「おっ、梓から誘うなんて珍しいじゃん。行く行く、憂達も来るよね」

憂「うん、あんまり遅くならなければ大丈夫だよ」

菫「私も……遅くなりすぎなければ」

直「夕飯に間に合えば大丈夫です」

梓「だったら、行こう。一刻も早く行こう。せ、先生はどうします……?」

さわ子「私はいいわよ。楽しんでらっしゃい」

梓「そ、それじゃ行こう。速く、速く……」

菫「でも、カップの片づけが……」

梓「明日で大丈夫だから、はやく」

純「分かった分かったって、なんか、今日の梓、やけに怖いんだけど……」


 先生さようなら~の声とともに出ていく部員達。
 それを確認すると、さわ子は大きく溜息を吐く。


さわ子「そんなに、気を使ってくれなくてもいいのに」


 ファイブマンが地球を去ったという噂を聞いた時、それが信じられずにさわ子は再建されたニュータウン小学校まで赴いた。
 そこの生徒たちに学の友人であることを話すと、噂通り両親の待つ宇宙に旅立ったということを聞いた。

 ショックだったが、まだ学を待っている自分がいる。
 いつか迎えに来てくれるということを信じていた。


さわ子「なんていってる間に一年が過ぎたんだけどね~」


 溜息を吐きながらDVDを最初から再生しなおす。

 ファイブマンの歌がやたら胸を締め付けた。


 夜。
 帰り道。

さわこ「うぅ~、寒い。ガソリン代高騰で節約の為に歩いてきた来たけど、失敗だったかしら……」


 手袋とマフラーをしっかりと付け直しながら呟く。
 最近、独り言が多くなったような気がする。


さわ子「年は取りたくは……ん、あれって?」


 さわ子の目の前ではこんな時間まで遊んでいたであろう女子高生の姿が。
 だが、何か可笑しい。

 まるで、誰かに追われているような……。


「た、助けて……」
「だ、だれか……」


グリナム兵「黙れ、地球人ども。貴様らはここで死ぬのだ」


さわ子「あれって、バイラム!?」

 バイラムとは、ゾーンに代わって地球制服を宣戦布告してきた組織である。
 その作戦も次第に激しいものへとなっているらしい。


 その下端であるのがグリナム兵である。
 近くに、ボスらしき次元獣は見えないので、戦闘員だけらしいが。

 教師として、生徒のピンチを黙って見過ごせない。

 近くにあった、石を思いっきり投げつける。


グリナム兵「誰だ!?」

さわ子「あら、ここよ。丁度いい的があったから投げたくなっちゃったの」

グリナム兵「何だと、貴様。バイラムに逆らうのか」

さわ子「あなた達、速く逃げなさい!!」


 叫ぶより早く彼女達は既に逃げていた。
 桜が丘の生徒ではなかったが……もう少し、躊躇う姿を見せても……。


グリナム兵「まずは、お前だ!!」


 握りしめていた武器から弾丸を発射する。
 普通の人間であるさわ子に、それを避ける術などはない……。


さわ子(あぁ、死ぬんだ、私)


 不思議と恐くはなかった。

 後悔はあったが……。


「Vソード!!」


 刹那。
 何かがさわ子の目の前に立ちふさがり、弾丸を叩き落とす。

 体にVの模様を刻んでいる赤き戦士。
 赤き戦士はグリナム兵に向かって走る。


「Vソードアタック!!」


 敵が反応するより早く、グリナム兵が爆発する。
 赤き戦士は変身を解き、さわ子に向かって歩いてくる。


さわ子「遅いじゃないの、ずっと待ってたんだから」


学「ごめん……やっと全部終わったんだ。行方不明だった父さんと母さんに会って、宇宙の色々な星を再建させてた。時間はかかったけど、父さんに怒られてさ。教師を放り出すとは何事かって」


 照れたように笑う。
 生徒を置いてきて、女性まで置いて来て何事だ、とどやされた。


学「俺達兄妹は、もう一度地球で教師をやる。だから……えぇ……と」


 恥ずかしそうに言葉が詰まる。
 さわ子はそんな姿を見て笑う。


学「取り敢えず、今度うちの両親に会ってみないかな? 多分、2人共さわ子ちゃんのこと気にいるんと思うんだ」

さわ子「あら、そこで一年以上放ったらかしにされたっていってやろうかしら」

学「はは、勘弁してくれよ」


 2人で笑う。

 そして、次第に抱きしめあった。

さわ子「もう、放さないでよ」

学「勿論……」


 その数か月後、盛大な結婚式が開かれた。
 放課後ティータイムとわかばガールズの合同ライブや、覚醒したさわ子率いるデスデビルのライブで会場が盛り上がったり。
 と、沢山のハプニングはあったが……。
 それは、また別の話。

 一応これで本編は終了です。

 個人的には本当に『地球戦隊ファイブマン』は良作だと思うんですよね。
 色々と新しい要素も入れてましたし、何よりも本当にレッドが死んだ話には衝撃を受けました。
 少しでも多くの人がファイブマンを知ってくれると幸いです。



最終更新:2015年01月09日 08:00