軽音部の部室にある、お姉ちゃんのティーセットが入った食器棚
その食器棚の扉の付いた下段(下段はあまり使わないので滅多に開けませんでした)
その扉の奥に一冊のノートがありました
表紙の端に小さな百合の花が描かれた一冊のノート
以前お姉ちゃんが屋敷の自室でこのノートに何かを書き込んでいるのを見たことがあった
菫「やっぱりお姉ちゃんのノートだ。いったいどうしてここに?」
桜高軽音部への置き土産、とか?
中を見ちゃてもいいのかな?
菫「そう言えば、お姉ちゃん軽音部で作曲もしてたって言ってたっけ」
作曲のノートなら、直ちゃんといっしょに読みたいな
それともただの忘れ物だったりして?
菫「・・・中を読んでみないことにはわかんない、か」
菫「お姉ちゃん、ちょっとだけなら覗いてもいいよね?」
パラっ
菫「これは・・・」
そこに書いてあったのは、お姉ちゃんが見た軽音部の何気ない日常の風景でした
菫「お姉ちゃんの日記かな?」
勝手に見たらダメなものだったのかも
でも、どうしてお姉ちゃんの日記が軽音部の部室に?
・・・本当に見たらいけない部分になったら、このノートを閉じよう |
そう思って少しだけ読みすすめました
菫「軽音部でおこった出来事が書いてあるのかな?」
書いてあるほとんどが軽音部の皆さんの会話録のようなものでした
『今日唯ちゃんが梓ちゃんに猫耳を付けて抱きついていた。梓ちゃんは少し嬉しそうな気がしたけど、どうかな?』
梓先輩と、憂先輩のお姉さん・・・?
『りっちゃんが不機嫌。澪ちゃんが和ちゃんにばかり構うのが気に入らないみたい』
やっぱりこのノートはお姉ちゃんの日記
でも、自分の事があまり書いていないような・・・?
軽音部の活動日誌みたいなものかな?
それでも、このノートに書かれている事を読む限りは・・・
菫「お姉ちゃん、楽しそうだな・・・」
ペラッ
『唯ちゃんのリクエストで、放課後みんなとアイスクリーム屋さんへ。美味しいアイスを堪能』
『みんなで合宿!別荘の海でたくさん泳ぎました!』
『ライブ前日。練習のためにみんなで部室に泊まり込みです!
唯ちゃんが梓ちゃんに「今夜は寝かせないぜ」だって!ふふっ』
菫「お姉ちゃん、輝いてるなぁ」
菫「私もお姉ちゃんみたいに、ここでこんな高校生活がおくれるのかな・・・?」
菫「楽しそうだなぁ、とっても」
菫「と、言うわけで」
菫「まずはお姉ちゃんのマネをして、軽音部の活動を日誌にしてみようかと思いまして」
純「はぁ」
憂「なるほど・・・」
梓「ムギ先輩、こんなノート作ってたんだ」
直「・・・。」カタカタカタカタ
菫「きっとこうやってノートに日々の楽しい事をまとめていけば、自然と楽しい部活になると思いますっ!」
梓「そっか。それじゃあ、任せるねスミーレ」
菫「へっ?」
憂「よろしくねスミーレちゃん!」
純「がんばれースミーレ!楽しい部活にしようね!」
菫「あ、あれ?」
直「・・・。」 カタカタカタカタ
純「あ、ムギ先輩の名前と、ノートでググったらツイッター出てきたよ?」
菫「つ、ついった・・・?」
憂「Wikiも出てきた。こんな風にまとめてたんだねー」
菫「うぃき・・・」
梓「したらばのBBSも運営してるみたい。本格的だなぁ」
菫「タラバ・・・?びーびーえす・・・???」
直「・・・。」 カタカタカタカタ
憂「引き継ぐとしたら、結構大変そうだね」
梓「スミーレ、出来そう?」
純「全部無料で出来るヤツだから、作ってしまえば・・・って」
菫「ついった、びびーえす?タラバガニ・・・」ぶすぶすぶす
梓「し、しまった!」
憂「忘れてたっ!」
純「この子、箪笥を担いで持って帰ろうとするくらいの・・・」
梓憂純「アホの子だった!!!」
菫「・・・!!」ぼすんっ!!
純「スミーレぇえええっ!!」
直「・・・。」 カタカタカタカタ
菫「ううっ、私には無理みたいです・・・」ぐすん
純「そうかなぁ?」
菫「ぐすっ、私にはっ、お姉ちゃ、と・・・同じことなんて・・・無理だったんです・・・」
憂「そんなこと・・・」
梓「ないと思うけど?」
菫「でもっ、でも、私には、こんな事もできないし・・・」
直「・・・。」カタカタカタカタ
カタカタカタカタ カタカタカタカタ
純「・・・直はさっきから何してんの?」
直「・・・。」 カタカタカタカタ
純「無視されたっ!梓、私直になんかしたかな!?」
梓「知らないよ。純がウザいんじゃない?」
純「ひどっ!」
カタカタカタカタカタカタカタカタ
直「・・・できた」
菫「?」
憂「できた、って、何が?」
直「WikiとTwitterアカウント、それにしたらばの
掲示板も設置しました」 カタカタ
梓「ほんと!?」
菫「えっ、えっ!?」
純「すげー!ちゃんとしたのが出来てる!!」
憂「すごーい!」
純「さすが直!眼鏡っ子!!」
梓「眼鏡っ子は違うでしょ」
菫「わぁ、直ちゃん・・・すごい!」ぱぁぁ
直「菫は軽音部の活動をノートに書き留めて。パソコンを使うのは、私がやるから」
菫「ありがとう直ちゃん!。私、頑張ってみるね」
直「うん」
菫「直ちゃん、本当にありがとう。直ちゃんのおかげで、お姉ちゃんのノートを引き継げそうだよ」
直「菫が出来ない事は私がするから。だから、菫は自分に出来ることを諦めないで」
菫「・・・うんっ♪」
直「それに、私はやれる事をやっただけ。ノートを引き継ぐこと、軽音部の活動をまとめる事を決めたのは菫だから」
菫「えへへ。私一人じゃ全然できなかったけどね」
直「菫のお姉さんだって、きっと一人では出来なかったんじゃないかな?」
菫「そう、かな・・・?」
直「うん。二人でやってみようよ」
菫「・・・うん!」
純「二人だけじゃないよー!」
梓「もうっ!二人の世界に入り込んじゃってー」
憂「私たちも協力するよっ」
菫「みなさん・・・!」
梓「菫がノートに書くネタに困らないように、毎日楽しいこといっぱいするんだからね!」
純「みんなでたくさんお菓子食べてね」
憂「いっぱい演奏もしようね!」
菫「はいっ!私、頑張ります!」
直「・・・。」 カタカタカタカタ
菫「ふふっ、直ちゃんったら少し照れてます」
直「・・・!」 カタカタカタカタカタカタカタカタカタカタ
菫「あははっ♪」
こうして始まった私たちのノート
まだ最初の方のページしか埋まっていない白いノートに、毎日の思い出を少しずつ刻んでいきます
それを直ちゃんがパソコンを使ってネットにアップロードしてくれます
お姉ちゃんから引き継いだノートは、今はもう私たちの一部になりました
少しだけ、毎日が輝いてる気がします!
おしまい!!!
最終更新:2012年11月15日 00:26