・・・・・・


数分後


梓「すみません……。見苦しい姿をお見せしてしまって……」


律「いや、分かるぜ。梓の気持ち」

唯「そうそう。英語からは逃げ出したくなる時もあるよ。だから気にする必要なんてないよあずにゃん」

紬「そうよー。私たちは日本人なんだから日本語だけ話せればいいの。だからそんなに落ち込まないで、梓ちゃん?」

梓「そ、そうですよね!!英語なんて話せなくても生きていけますよね!!」

律「まぁセンター試験とかではほぼ英語必修だけどな」

梓「律先輩は慰めたいのかさらに落ち込ませたいのかどっちなんですか」


律「まあ、今はその問題よりもボールの問題だ。それにしても正攻法も使えないとなっちゃあ本当どうすればいいんだ……」

唯「りっちゃん……、もう諦めようよ。ボールは新しく買いなおそう?私もお金だすから」

律「……ダメだ。諦めるなんてダメだ! あのボールはな……」



一時間前


律『聡ー、ちょっとボール貸してー? 友達とキャッチボールするからさ』

聡『いいけど……絶対返せよな?』

律『分かってるって!!絶対返すから安心しろ!もし返さなかったら1000円やるよ!!』



律「……って言っちゃったんだよー」ウワーン

梓「何ですかそれ! 完全に自業自得じゃないですか!!」


梓「はぁ、何か思い出のボールなのかと思ったら……。まったく、心配して損しました。私もう帰っていいですか?」

律「そんなこと言うなよ梓ー!協力してくれよー」ガシッ

梓「いやですよ!私もいろいろと忙しいんですから」


律「……ケチだな」ボソッ

梓「何か言いましたか!?」クワッ

律「な、なんでもありませーん……」


紬「でもりっちゃんどうする? 1000円くらいなら貸してあげようか?」

律「いや、ビーフジャーキーも買ってもらって1000円まで貸してもらったら流石にムギに申し訳ないよ……」

唯「じゃあ聡くんの口を封じるとか!」

梓「怖いこと言わないでくださいよ……。もっと別の方法があるでしょうに」

唯「例えば?」

梓「それはもちろん……、その……。ほ、ほら!アレですよアレ!」

唯「あー、アレか〜」

梓「そう!それですっ!!」

律「どれだよ」

梓「……どれでしょう」


紬「……何にも考えてなかったのね、梓ちゃん」

梓「はいごめんなさい。 ……すみません(なんかさっきから謝ってばかりな気がする……)」

唯「でもそんなアレにゃんもかわいいよー!!」ギュー

梓「ギニャー!!やめてください!こんな道の真ん中で…! あと誰がアレにゃんですか!!」



・・・・・・


澪「……たまにはその辺を散策してみるのもいいもんだなぁ」


ギニャー!!ヤメテクダサイ! コンナミチノマンナカデ!

澪「……? これは……梓の声?こっちの方から聞こえたな」

澪「……ちょっと行ってみるか」スタスタ


澪「あ、いたいた。てかみんないるじゃないか」

澪「おーい!何やってるんだー、みんなしてー!」

律「!? み、みお!?」クルッ

紬「あら、澪ちゃんも来たのね!」

澪「来たというよりは偶然通りかかっただけだけどな」


唯「でも偶然とはいえ、これでみんな揃っちゃったね!」

梓「ほんとすごい偶然ですね……」

律「一生分の運は使い切っちゃったかもな。まあ全部梓の運だけど」

梓「なんで私の分だけなんですか!!」


澪「お前ら少しは静かにしろよ……近所迷惑になるぞ」

律「やーい、怒られてやんのー」

梓「誰のせいですかッ……むぐぐ…アトデオボエテロデス」



澪「はぁ、まあいいや。で、お前たちはこんな道端で一体何してるんだ?ピンポンダッシュとかならやめとけよ」

律「小学生かよ! …そんなことじゃねえよ。実は、かくかく(ry」

梓(この人めんどくさくなって略した!)


澪「……要するに、あの家にボールが入っちゃって困ってるってわけか」

紬「そういうことね」

唯「ねぇー、澪ちゃーん、何かいい作戦なーい?」

澪「作戦って……。作戦なんて立てるまでもないだろう、私が取ってきてやるよ」

梓「え!?み、澪先輩!話聞いてましたか!? 家の中には番犬がいるんですよ!澪先輩は特にやめておいた方が無難かと思うんですが……」

澪「まあ見てろって、梓」スタスタ

唯「ちょっ!澪ちゃん!? ……本当に大丈夫なのかなぁ?」


澪「……こいつらだな?」スタスタ

番犬たち「……」ギロッ


唯「ひいっ!さ、早速澪ちゃんが番犬に気づかれちゃったよ!」

紬「ま、またほえられちゃうわよ! 澪ちゃん大丈夫かしr」

澪「おー、よしよし」ナデナデ

番犬たち「……ワンワン♪」

唯律紬梓「……なっ!?」


律「な……嘘だろ!? あ、あのいかつい眼をした凶暴な番犬が……!」

梓「澪先輩になついている!?」

紬「す、すごいわ澪ちゃん!!」


澪「……?何でそんなにみんな驚いてるんだ? 確かに顔はちょっと怖いけど、かわいい犬じゃないか」ナデナデ

唯「手馴れてる……」

澪「よしよーし。 ……あ、ボールを探さなきゃ、だったな。えーと、ボールは、っと……」キョロキョロ

澪「あ、あった。あれだな」ヒョイッ

澪「ほら、律。これだろ? 取ってきてやったぞ」


律「あ、ありがとう……。よく取ってこられたな…」

唯「さっきまであんなに苦労してたのが嘘みたいだよ……」

紬「改めてすごいわね、澪ちゃん…」

澪「いやいやこんなの朝飯前だよ。……あの頃と比べたらな。な、律?」

律「は?あの頃……?」


律「……あっ!!まさか……!」

澪「思い出したか。まあお前はよーく知ってるだろうな」

梓「……澪先輩?何なんですか、『あの頃』って」

澪「あぁ、みんなにも説明してやらなきゃな。あの頃ってのはな……」


・・・・・・

八年前のある日の下校時


りつ「ねーねー、みおちゃーん。今日はちがう道から帰ってみないー?」

みお「えっ?なんで?」

りつ「実はねー、この前あっちの道ですっごくかわいい犬を見たんだー! だからみおちゃんにも見せてあげたくって……」

みお「本当!?わ、わたしも見てみたい!!」


りつ「じゃあ決まりだねー!さっそく見にいってみよー!」

みお「う、うん……!!」


数分後


りつ「……着いた! この家だよー」

みお「へぇー、大きな家だねー。 ……で、犬さんはどこにいるの?」

りつ「この家の中だよー。だからみおちゃん!犬を見るには家の中に入らないと!」

みお「え……。でも人の家に勝手に入るのは……」

りつ「大丈夫だよー!ちょっとだけなら! 犬を見るだけだし」

みお「そうかなぁ……」


りつ「じゃあみおちゃんはかわいい犬さんを見なくていいの?」

みお「あ……。それは……」


みお「……わかった。ちょっとだけならいいよね……?じゃあちょっと見てくるねりっちゃん!」

りつ「うんっ!!」

みお「〜♪」スタスタ


りつ(……引っかかったね!みおちゃん!!)ニシシ


みお「犬さん、どこかなー……?」キョロキョロ

番犬「グルル……」ギロッ

みお「えっ」


番犬「ワンワンワンワン!!!」

みお「えっ!!? う、うわぁああああ!!?」バタッ

みお「」


りつ「いえーい!みおちゃん驚かせ作戦大成こ……ってみおちゃーん!?」ユサユサ


・・・・・・


澪「……あんなことを何度もされたらそりゃ慣れますよ」

律「そ、そういえばそんなこともあったな……」


律「まあ、あれも実は澪がもっと犬好きになるように私が仕組んだ作戦だったんだけどな!!」

梓「……1000%嘘ですね」

律「そこまで全力で否定しなくてもいいじゃん!」


紬「でも、これで無事にボールも取れたわけだし!これで一件落着ね」

澪「そうだな。まったく、もうボール投げ込むなよな?ほら律、ボール」シュッ

律「投げ込んだのは私じゃないのに……」パシッ

唯「ま、まあ細かいことはいいじゃん!!みんなでボールを救出した記念に万歳三唱しよう!!」

律(こいつごまかしやがった!)


梓「てか救出って……そんな大層な」

紬「でもそれなりに苦労したわけだし、大げさな表現ではないと思うわ! まさに救出劇ね!」

梓「そうです かねぇ……」


唯「ムギちゃん、あずにゃん何やってるの?早くみんなで万歳三唱するよ!」

梓「……私もやらなきゃダメですか?」

唯「当たり前でしょ!マストだよマスト!」

梓「なんで英語なんですか……」


梓「…はぁ、まったく。分かりましたよ、手短にお願いしますよ」

唯「そうこなくっちゃ!」


唯「よーし!あずにゃんの許可ももらったことだし!みんなで万歳三唱だよ!!」

律紬「おー!!」


澪「……まあ付き合ってやろう、梓」

梓「……はいっ!」


唯「それじゃあいっくよー!! バンザーイ!!」

澪紬梓「バンザーイ!」

律「バンザー……」ツルッ

律「いっ」

梓「うっ」

澪「えっ」


ヒューン…… ゴンッ!!


……キシャアアアア!!


律「あ、て、手がすべって……」

梓「ボールが今度はあっちの家に……。てかなんかすごい鳴き声が聞こえてきたんですけど」

紬「……あれはアマゾンの密林に暮らす凶暴な動物の鳴き声ね」

唯「てことはその凶暴な動物がいる家にボールが落ちたってこと!?」

律「……そのようだな」

梓「冷静に分析してる場合ですかっ!!」


律「なーに大丈夫だ梓。心配は無用だ、澪がまた取ってきてくれるから……」

澪「無理だっ!!!」ゴチンッ


おわれ