第8話「虫歯!」
ある日の放課後。軽音部はいつものように練習……ではなくてティータイムをしていました。
律「あー!うめー!! ムギ、今日のケーキも最高にうまいっ!!」モグモグ
唯「おいし〜♪」ムシャムシャ
紬「うふふ、どういたしまして」
澪「ちょっ……、お前ら練習は……」
律「これ食べ終わったらやっるてばー」
澪「ほんとかよ……」ジトー
律「んまっ!なんですかその目は! 私が嘘ついたことなんてありましたかしら?」
澪「あったあった。軽く100回はあった。昨日だってそう言っておいて結局練習しなかったじゃないか」
律「今日はするからさー、安心しろ! 101度目の正直ってことで」
澪「信用できるかっ!!」
唯「あずにゃんもケーキたくさん食べな?」
梓「いや、そんなにはいりませんよ……。それより練習をですね」
紬「でも梓ちゃん、今日はバナナケーキをたくさん持ってきたんだけど……」
梓「食べます」キッパリ
澪「ホント、梓はバナナケーキ好きだな」
梓「子供のころから大好きなんです」モグモグ
紬「たくさんあるから一杯食べてねー?」ドッサリ
律「多っ!! すげえ量だなオイ!」
唯(……でもさりっちゃん、これだけケーキが多ければ あずにゃんも食べるのに時間がかかって練習時間もなくなるかも……)ヒソヒソ
律(……それもそうだな。じゃあ梓にはゆっくりケーキを食べてもらって……)梓「食べ終わりました〜。ムギ先輩ごちそうさまです」カラッ
唯律「ってはやっ!!!」
梓「じゃあケーキも食べ終わったことだし、練習しますよ?唯先輩、ほらギター出して」
唯「あ!そうだそうだ!ケーキ食べたあとは歯磨きしなきゃ!!」
律「そ、そうだったなー!いやー、すっかり忘れてたよ!!食後は30分ぐらいかけてゆっくり歯磨きをしなきゃな!」
梓「……唯先輩?律先輩?」ゴゴゴ……
唯律「ひいっ!!?」
澪(梓からすごい殺気が……!)
唯「わ、わかったよあずにゃん。今日はちゃんと練習するよ……。ね、りっちゃん?」
律「そ、そうだな」イソイソ
梓「それでいいんですよ。そうと決まったら 今日はビシバシいきますよ!!」
唯律「はーい……」
梓「もっと元気出して!!」
唯律「は、はいっ!!」
澪「今日の梓はやけに気合い入ってるな……」
紬「バナナケーキのおかげかしら?なんだか頼もしいわー」
梓「澪先輩もムギ先輩も! いきますよっ!」
澪紬「は、はいっ!!!」
・・・・・・
部活終了後
梓の家
梓「うーん、今日は久々にみっちり練習できたなー!」
梓「先輩方もちゃんと練習すればもっともっと上手くなるのに……、なんだかもったいないよね」グゥー
梓「あっ……。お腹鳴っちゃった///」
梓「今日は練習前、あんなにケーキ食べたのになぁ……。まあそれなりにハードな練習をしたからだろうけど」
梓「とりあえずジュースでも飲もっと」キュポッ
梓「〜♪」ゴクッ
ズキッ
梓「……っ!?」
梓「い、いたっ!?ジュ、ジュースが歯にしみて……?」
梓「まさか……これって……」
梓「いや、冷静になれ私。たまたましみただけかも。とりあえずもう一口……」ゴクッ
ズキッ
梓「〜〜〜!!」バタバタバタ
梓「そんな……!まさかこれって……虫歯!?」
梓「バナナケーキ食べ過ぎたからかな……?と、とにかく歯医者さんに行かなきゃ」アセアセ
梓「でも私、歯医者さんって行ったことないからなぁ……。確かテレビとかで見る歯医者さんのイメージって……」
梓の想像
歯医者『はい、じゃあ口を大きく開けてねー』
梓『は、ひゃい……』アーン
歯医者『あー、こりゃけっこうすごいねー……。じゃあドリルで削っちゃうねー』スチャッ
梓『!?(そ、それを口に入れるんですか!?)』
歯医者『じゃあいきますよー』ギュイイイン
梓『うにゃぁあああああ!!!?』
梓「ひぃぃっ!!」ブルブル
梓(は、歯医者怖いよぉおおおおお!!)ガタガタ
梓「……そうだ、もしかしたら自然に治るかも…。うん!きっと治るよねっ!!」
梓「とりあえず、歯医者行くのはまた今度にしとこ……」
アズサー、ゴハンヨー
梓「あ、ごはんどうしよ……」
梓「(と、とりあえずここは!)き、今日は外で食べてきたからいらなーい!」
梓(ふぅ……、これでしばらくはなんとか……。明日の朝ごはんも寝坊したとか言えば食べなくて済むし……)
梓「それからどうするかは明日考えよっと」
梓(あぁ、そんなことを考えてるうちに睡魔が……。今日はたくさん練習して疲れてるからか…な……)
梓「……zzz」グー
翌朝
梓「い、行ってきまーす!!」ガチャ
梓(まさか本当に寝坊しちゃうとは……)タッタッタ
ズキッ
梓(うっ……。走るとちょっと歯が痛む……)
梓「や、やっぱり今日は歯医者に……」
梓(そういえばそこの角を曲がったところに歯医者さんがあったような……。しかもあそこは確か朝早くからやってたはず…!)
梓「確かこの角を曲がって……」
梓「あ、あったあった。あれだ」
梓(……今日はやってるのかな?)スタスタ
ガチャ
梓「!」(歯医者の中から人が!)サッ
スネ夫「うわぁあああん!ママァア!!怖かったよぉお!!!」
スネママ「頑張ったわねー、スネちゃま。あとでご褒美にケーキをあげるザマスね」
スネ夫「うん……」グスッグスッ
梓「……」
梓「……やっぱり今日行くのはやめておこうっと」クルッ
梓「って!もうこんな時間じゃん!!はやく学校行かなきゃ!」ダッ
ズキッ
梓「…いったーい!」
・・・・・・
そんなこんなでお昼休み
梓(なんか歯がときどき痛んで授業に集中できなかった……)ズキズキ
純「あーずさー。お昼食べよー」
梓「えっ……? あ、うん……(一応おひるは持ってきたけど……。歯痛いし…)」
梓「あ、やっぱ今日はいいや。お腹減ってないし」グゥー
梓「あっ……」
純「いやバリバリお腹鳴ってるじゃん! 何ー?梓ももしかしてお昼忘れたのー?」
梓「いや、そういうわ……(いや、待てよ。おひるを忘れたことにしておけば食べなくてすむかも)」
梓「……けなの!そうそう!今日は私、遅刻しそうになってたでしょ?だからお昼忘れたの!!」
純「ふーん、そうだったんだ。それは残念だねぇ」
梓「うん。あー残念だなーみんなとお昼食べられなくてー(ふぅ…これでなんとかなりそう)」
純「でも心配しなくていいよ、梓。こんなこともあろうかと今 梓の分まで憂がお昼ご飯買いに行ってるから」
梓「……は?」
ガララッ
憂「純ちゃーん。買ってきたよー」
純「あ、噂をすれば、だね。 憂ー、おつかれー!」
梓「え、あの……これはどういう……?」
純「あー、ただ私も憂も今日はお弁当忘れたから 憂に私の分も買ってきてもらったの!もちろん自分のお金は出したよ!」
純「本当は私が自分の分は食べるつもりだったけど……かわいそうだから梓にも少し恵んであげるよ」
憂「え?梓ちゃんもお弁当忘れたの?珍しいねー」
純「でも良かったね、梓。この心優しい私という友達がいて…。 さあ梓、好きなパンを一つ選びなされ!!」
梓「い、いやいやいやいいって!!そんなことしてもらっちゃあ純に悪いよ!」
純「遠慮すんなって。ほら、食べなー」ベリリッ
梓「本当に大丈夫だってば!」
純「むぅ……。なんでそんなに遠慮するんだい、梓は…」
憂「あ、もしかして」
純「ん?何ー、憂?」
憂「梓ちゃん、もしかしてダイエットしてるんじゃない?」
純「えっ!?」
梓「!!(ナイス憂っ!!)」
梓「そ、そうなの!!実は最近太ってきちゃってさー、昨日からダイエット始めたの!」
梓「放課後にケーキとか食べ過ぎたからかなー、だから今日はお腹がへっても何も食べないって決めたんだー、あー残念だなー」
純「えー……。でも私にはとても太ってるようには見えないけどなー」
純「むしろちっちゃいんだから もっとたくさん食べた方が……」ジー
梓「ちょっ……! どこ見て言ってんの!」
梓「ともかく!私はもう決心したんだから!! 今日は何も食べないからね!」
憂「……だって、純ちゃん」
純「そっかー……。じゃあしょうがないね、そんならお昼は二人で食べよっか、憂?」
憂「そうだねー……。ちょっと残念だけど」
梓「(よかった、なんとかなった……)じゃあ私は本でも読んでるn」純「スキありっ!!」ズボッ
梓「モゴッ!!?」
梓「ひょっ……!ひゅん、はにふんほよ!!」モゴモゴ
純「へっへーん。油断大敵だよー、梓ー」
純「大体、ダイエットしてるとしても お昼ご飯抜いちゃ体がもたないよ」
憂「そうだよ梓ちゃん。お昼はちゃんと食べておいた方がいいよ」
梓「もごごご……!(そ、そんなこと言われたってー!! は、歯が痛くて……)」
純「……?いつまでもごもごしてんの、梓?そのパンそんなに固かった?」
梓「いひゃ……ひょういうはへはひゃいへほ……(どうしよう……この状況)」
純「噛めないんなら私が手伝ってしんぜよう」ガシッ
梓「へ……? ひゅん、ほうひはほ、ひょつぜんひゃたしのはたまとひゃごをふかんで……」
純「えいっ」グッ
梓「!!? いったぁー!!?」
梓「モグモグ……ゴクッ」
梓「ハァー、ハァーッ……。な、何するのよ純……」
純「いや、梓があまりにも食べづらそうにしてたからさ、何か私にできることはないかなって。…ちょっと力入れすぎたかな?」
梓「ほんと勘弁してよもう……。まだ歯がいたいよ……。ズキズキいってるし」ズキズキ
純「ごめんごめん」
純「……ん?歯がいたい……?」
梓「あっ!!(し、しまった!)」
梓「いや違う!いいい言い間違い!! 羽交い(絞めし)たいって言おうとしたの!ほら、よくあるじゃん?略語って!」
純「その略語使うタイミングあるの!?」
憂「ねぇ梓ちゃん……本当にダイエットなの? 私たちに何か隠してない?」
梓「う、憂たちに隠し事なんてするわけないじゃん! 本当にダイエットだって!!」
憂「……本当かなー」
純「確かに、あやしいねー。これは間違いなく何か隠してるよ」
梓(ヤバイヤバイヤバイ…。これでもし虫歯だってバレちゃったら……)
梓の想像
憂『え!?梓ちゃん、虫歯だったの!?』
純『これは大変だ!すぐに歯医者さんに連行しなきゃ!』ガシッ
梓『ちょっ……!まだ心の準備が……』
憂『問答無用だよ、梓ちゃん』ガシッ
梓『ま、まって!お助けー!!』
チュイイイイイイイン
ウニャアアアアアア!!!
梓(ひぃっ……)ガタガタ
梓(そ、そんな事態になるのは絶対に避けなきゃ!!)
憂「梓ちゃん?どうしたの、今度は急に震えて……?もしかして風邪?」
梓「う、ううん。そういうわけじゃないk(いや待て。ここは風邪をひいたということにして離脱すれば、しばらくは……!)」
梓「……というわけでもなくて、あー確かに風邪かもー、最近寒くなってきたからなぁー、ゲホッ!ゴホッ!」
純「うわ……すごくわざとらしく見える」
梓「…とにかく!私はきっと風邪ひいたの! というわけで念のためちょっと保健室行ってくるね!!」ダッ
純「めちゃくちゃ元気じゃん!」
ガララ……バタン
純「……本当に行っちゃった」
憂「……ねぇ純ちゃん」
純「分かってるって。あれは間違いなく」
純憂「虫歯だね」
純「そうと決まれば、早速捕まえに行こうか、憂」ガタッ
憂「そうだね」ガタッ
・・・・・・
梓(なんとかピンチは脱出できた……)
梓(それにしても疲れた……。保健室では寝ちゃおっかな……って)
梓「あれ!?保健室閉まってる!?」
梓「そんな、急になんで……?」
ピンポンパンポーン
梓(ん?放送……?保健室関連の放送かな?)
放送『えー、2年の
中野梓さんにお知らせです。あなたが虫歯であるということは分かっています。至急校門の前まで来なさい』
梓「」ブッ
梓「てかこの放送、純の声じゃん!? ど、どうして私が虫歯だってわかったの……!?」
梓「とりあえずここに居ちゃダメだ、逃げなきゃ!!」アタフタ
梓「とりあえずどこか人がいない所に……! そ、そうだ、屋上だ!屋上に行こう!!」ダッ
・・・・・・
屋上
ガチャ……
梓「……」ソーッ
バタン
梓「よかった、誰もいないみたいです」ホッ
律「……そうだな」
梓「はい。良かったですよ、誰もいなくて」
梓「……ん?」
梓「!?って律先輩!!?(待ち伏せされてた!?)」
律「よっ。梓」
紬「私たちもいるわー」ヒョコッ
唯「あずにゃんも屋上にお昼食べにきたのー?」
梓「いや、あの、私は……(あれ…捕まえようとしてこない…? 先輩たちさっきの放送聞こえてなかったのかな)」
梓「あの、先輩方さっきの放送聞こえましたか……?」
律「えっ…?放送?そんなのあったのか?」
紬「ここは屋上だから校内放送は聞こえないのかも」
澪「梓、何か重要な放送だったのか?」
梓「い、いえいえ!大丈夫です(よかった…。どうやら私を捕まえに来たわけではないみたい)」ホッ
唯「そんなことよりあずにゃん、今日はムギちゃんが新作クッキーを持ってきてくれたんだけど、あずにゃんも食べる?」
梓「えっ…?クッキーですか……?(ま、また食べ物……)」
梓「……今日はお腹減ってないんで大丈夫です」
紬「そう?せっかく持ってきたのに残念だわ」ガックリ
梓(あぁムギ先輩そんなに気を落とさないでください!)
律「でも腹減ってないってことは梓は屋上に何しに来たんだ?」
梓「そ、それは、そのですね……。えと…」
律「まさか憧れの澪先輩に会いに来たとか!」
梓「もう、そんなんじゃありませんよ/// 私はただ歯医者から逃れるために来ただけです。からかわないでくださいよ」
律「だよなー」
アハハハ……
澪「……え?」
梓「あ」
澪「え、何 梓、歯医者って……?」
梓「いや、あの、それは、そのう……」
紬「梓ちゃんもしかして虫歯なの?」
梓「あ……う……(ヤバイヤバイヤバイよこの状況!!)」
梓「……あっ!!あんなところにUFOが!!ものすごい勢いで飛んでますっ!!ブォンブォンいってます!!」
澪紬「えっ?」クルッ
梓「スキありですっ!」ダッ
律「あ!に、逃げた!!」
唯「な、なんて古典的な……!」
律「引っかかる方もあれだけどな。とりあえず追うぞ!!」
梓(捕まってたまりますか!!)ダッ
私は走った
とにかく走った
無我夢中になって走った
歯医者という恐怖から逃れるために 私は全力で足を動かした
でも、これからどうすれば……?
……そうだ。旅に出よう。風来の旅に出よう。
旅に出れば歯の痛みも和らぐかもしれない うん。きっとそうだ、いやそうに決まってる……!
そうと決まれば歯医者から逃r……いや旅に出るために 今、この屋上の扉を開こう!
梓「やってやるです!!」ガチャ
憂「はい、捕まえたー♪」ガシッ
梓「…ですよねー」
・・・・・・
その後間もなくして 私は憂と純に半ば強制的に歯医者へと連れていかれた
連行される間も私は必死に抵抗を試み、幾度も逃走を企てたが 成功には至らなかった
……そして、ついに運命の時を迎えた
最終更新:2015年02月10日 23:20