第10話「寒い!」


ある寒い 冬の朝の平沢家


〜唯の部屋〜


……エチャーン

オネエチャーン


唯「……んぁ…?」

憂「お姉ちゃーん、朝だよー、起きてー」ユサユサ


唯「…うーん……、あと5分だけ……」ムニャムニャ

憂「ダメ。遅刻しちゃうよ」

唯「でもー。布団から出たら寒いしー…。だからもうちょっとだけ……」

憂「ダーメ。ごはん冷めちゃうよ」

唯「ぶー。憂のケチ……」ガバッ

唯「うぅっ…!さむっ!」ブルルッ


憂「今日はこの冬一番の寒さになるって天気予報で言ってたからねー」

唯「な、なんですと!? てことはもしかして雪とか降るのかな!?」

憂「うーん……。雪は降らないって言ってたな」

唯「えー……。残念…。そしたらただ寒いだけだね」

憂「そうだねー…」


憂「とりあえず、こたつに入りながらごはん食べて、あたたまろっか?」

唯「うん。……あぁー、さぶいー」ブルブル

・・・・・・

30分後

唯「行ってきまーす!」ガチャ

ヒュウウウウウウ

唯「うぅ…!さ、さむい!!身を切られるような寒さだよ!!」ブルブル


唯「うわ!あそこの水たまりの水、凍ってる!!」

唯(どれぐらい凍ってるのかな……?)ガシガシ

パリッ……ピチャッ

唯「!!つめたっ!」


唯「くっ…。罠だったか……。油断大敵だね…」

唯(あー、靴ぬれちゃったし早く学校に行ってあったまろう……)

・・・・・・

数十分後

部室


唯「あぁー!やっとついたー! …でも当たり前だけど部室も寒いね……」ガタガタ

唯「しかーし!部室にはエアコン君があるからね!! ふふふ……、これで今年一番の寒さなんてなんのそのだよ」ピッピッ

シーン……

唯「……あれ?つかないや」


唯「あ、もしかしてリモコンの電池が切れてるのかな?どれどれ…」カパッ

唯「あれー…?結構新しい電池だ……」

唯「あ!そういえば先週電池替えたんだったっけ。じゃあ電池が切れたわけじゃないか……」


唯(いちおうテレビのリモコン君の電池でも試してみよう……)パカッ

唯「……」ピッピッ

シーン……

唯「うーん……。やっぱりつかない…」


唯(一応……)ピッピッ

シーン……

唯「まあテレビのリモコンでエアコンがつくわけないよね」


ガチャ

律「おいーっす……って何やってんだお前」

唯「あっ。りっちゃんおはよー」


律「てかそれテレビのリモコンじゃん。エアコンのリモコンはそっちだぞ。昨日ちゃんと寝たのかよ、オイ」

唯「ふふふ……私をなめてもらっちゃ困るよりっちゃん。なんと昨日は9時に寝ました!」

律「はえーな、オイ! てかそんなに大声で言うことじゃないだろ」

唯「そんなことより りっちゃん!さっきからエアコンが動かないんだよ!」

律「……いやそりゃあテレビのリモコンじゃ動かないだろ」

唯「そうじゃなくって!ホラ!」ピッピッ

シーン……

律「あれ……? ホントだ、エアコンのリモコンでも動かないな」


律「うーん、まいったな……。壊れちまったのかー?よりにもよってこのクソ寒い日に」

唯「りっちゃん……。このままじゃ私、凍死しちゃうかも……」

律「!? 大丈夫か唯隊員!?」

唯「あぁ……寒さでからだ…が……」ガクッ

律「唯……? ゆいーっつ!!!」



唯「……飽きたね」

律「……そうだな」


律「てかこんなことしてる場合じゃねーな。何か部室を暖める方法を考えないと……」

ガチャ

梓「おはようございまー……って何やってるんですか先輩方」

唯「遭難ごっこだよー。あずにゃんもやる?」

梓「そんなことやってる暇があったら練習しましょうよ……」


梓「てかなんでこんなに部室寒いんですか?エアコンつけましょうよ」

律「あー、それなんだけどな梓……。実はエアコン、壊れちまったみたいなんだ」

梓「……え?」


梓「え、何ですか壊れたって……?まさか先輩方、壊したんじゃ……」

唯「失礼な!! 違うよ!リモコン押してもエアコンがつかなくなっちゃったの!」ピッピッ

シーン……

唯「ほらっ!ね?」

梓「あれ、本当ですね……。この前電池替えたばかりなのに」


律「そういえば電池替えたのって梓だったよな。本当にちゃんとした電池持ってきたのかー?」

梓「失礼な!ちゃんと持ってきましたって!てか現に昨日までは使えてたじゃないですか」

唯「うーん、そうなんだよねー。昨日までちゃんと使えてたんだよねー……」

唯「まったく、どうしてこの冬一番寒い日に壊れてしまうんだい、このエアコン君は」

梓「……日ごろの行いが悪いからじゃないですかね」ボソッ

唯「ひどーい!?私たちが何したっていうのさ!」

梓「練習しなかったり、練習しなかったり、練習しなかったりとかじゃないですか?」キッパリ

律「……なんかすんません」


唯「そんなことより!今はこの寒さをなんとかする方法を考えなきゃ、だよ!あずにゃん、何かいいアイデアない?」

梓「急にそんなこと言われましても……。 …あ!ちょっと待っててください!」スタスタ

ガチャ バタン

律「……?梓のやつどうしたんだ?急に音楽準備室になんて入って」

唯「まさか 抜け駆けして一人で音楽準備室の中で暖を取るつもりなんじゃ……」

律「いや、さすがにそれはないだろ」


ガチャ

梓「お待たせしましたー。……よいしょっと」

唯「あ、あずにゃん出てきた!」

律「両手でなんか持ってるな……。何だそれ梓、ストーブか?」


梓「はいっ! ……よっと。結構重いですね、やっぱり」ドスッ

律「へえー。そこの音楽準備室にストーブなんてあったんだなー」

梓「ハイ。この前掃除した時に見かけたのを思い出しました」

唯「いろいろ置いてあるんだねー、音楽準備室。私そこで暮らそうかなー」

梓「唯先輩があんな場所で暮らしたら中がさらにぐちゃぐちゃになるからダメです!」

唯「えー、何それー……。ひどいよあずにゃん」

梓「てか音楽準備室の私物、いいかげん持ち帰ってくださいよ。まだまだ唯先輩の私物いっぱいありましたよ」

唯「そ、そんなことより今はさっさとストーブつけて部室を暖めようよ!あー、さむいさむい」

律梓(話逸らしたな……)


律「まあでも確かに唯の言うことももっともだ、今はちゃっちゃとストーブつけて部室を暖めちゃおうぜ!」

律「とりあえず、梓。このコードをコンセントに繋いで、はい」

梓「分かりました。よいしょっと……」グッ

梓「律先輩!繋げました!」

律「よっしゃー、いくぜ!スイッチオン オブ ザ ストーブ!!!」ポチッ

唯「おー、なんかかっこいいよりっちゃん!!」

梓「文法とかいろいろおかしい気がするけどとりあえずこれで部室は……」

ストーブ「」


梓「……うんともすんとも言わないんですが」


唯「まさか……これって」

律「……多分壊れてるな、このストーブ」

唯「えぇーっ!?ま、また!?」


唯「ほんとにつかないの!?ちょっと貸して、りっちゃん」

律「無理だって。そもそも電源が入らねーんだから」

唯「むぅ……。本当だ」ポチッポチッ


梓「せ、せっかくやっとの思いで持ってきたのに……。まさか壊れてるとは…。すみません、先輩方…」ガクッ

律「まあそんなにクヨクヨすんなって。悪いのは梓じゃない」

梓「律先輩……!」

律「よしよし。じゃあとりあえず、このストーブを一人で音楽準備室に戻してこようか、梓?」

梓「はいっ!!」


梓「……って何でそうなるんですか!律先輩も手伝ってくださいよ!!そっち側持ってください!」

律「ちっ……。分かったよ…。よいしょ」

梓「…あーてがすべったー」パッ

律「ってオイ!!重っ!?中野ォー、貴様ー!!」

梓「舌打ちした罰です。てか唯先輩も手伝ってくださいよ」

唯「私も手伝いたいところなんだけどさー、私物を持ち帰る準備があるから……」

梓「そんなのあとでやってください!ほら、そっち側持って!!」

唯「……はぁーい」シブシブ

・・・・・・

唯「はぁーっ、やーっと戻し終わったー…」

律「結構重かったぜ……」


梓「でもどうします?エアコンもストーブもダメとなれば、一体どうやって部室を暖めれば……」

唯「そうだよねぇ……。うーん、どうすれば…」


律「……あ!いいこと思いついた!!」

唯「えっ!?なになにりっちゃん!?聞かせてー!」

梓「なんか少し嫌な予感がしますが…。まあとりあえず、聞かせてください律先輩」


律「よくぞ聞いてくれた! 唯、梓。よくよく考えたらストーブ並みに温かいものがこの部室にはあると思わないか?」

梓「ストーブ並みに温かいもの……?そんなのどこにあるんですか」

唯「全然わかんないよー!りっちゃん、もったいぶらないで教えてよー!!」

律「ふっふっふ。そんなに教えてほしいか、唯?」

唯「是非とも教えてくださいりっちゃん先生!このままじゃ私気になって日課の昼寝もできません!!」

梓(いつも昼寝してたんですか!?)

律「よーし、じゃあ特別に教えてしんぜよう。それは……」ジリジリ

梓「……律先輩?どうしたんですかそんな顔してこっち向かってきt」
律「それは!お前らの体のことだー!!」ガバッ

梓「に"ゃっ!!?」


律「考えてみたらさー、私たちの体温って結構な温度じゃん?つまり抱き合ってればストーブなんていらないじゃーん」ギュー

梓「ふぁああああ///(律先輩に抱き着かれるのってすごく久しぶりな気がする///)」

唯「あー!りっちゃんずるーい! 私もあずにゃんに抱き着くー!」ギューッ

梓「ふにゃああっ!? ゆ、唯先輩までっ!!?///」

律「どうだー?梓ー」ギュー

唯「えへへーあずにゃーん」ギュー

梓(あ、あったかい……。なんか密着しすぎな気がするけど、確かにこれなら 律先輩の言うとおりストーブなんて……)


ガチャ

紬「みんな、遅れてゴメ……」

紬「ってあらあらまあまあ!みんなどうしたのそんなに身を寄せ合って!?」

梓(って言ってるそばから密着してるところ見られたー!!)



梓「いやいや!あ、あのですね!!ムギ先輩誤解しないでくださいこれはですね!」

律「おー、ムギー。おっはようさん」

唯「ムギちゃんおはよー。今日も寒くてやんなっちゃうよねー」

梓「って何でそんなに普通でいられるんですかっ!?」


律「なんでって言われても……。大体、寒かったから身を寄せ合ってただけじゃん。何も問題ないぜ!」

唯「そうだよあずにゃん。何もやましいことしてるわけじゃないんだから、もっと堂々としなきゃ」

梓「そ、そうかもしれないですけど……。やっぱり、その…、恥ずかしいといいますか///」

紬「そんなことないわ、梓ちゃん!私は色々な意味で素晴らしいことだと思うわ!!」キラキラ

梓「ど、どういう意味ですか!てかそんなに目を輝かせて言わないでくださいー!」

唯「てことでムギちゃんも私たちと一緒に抱き合おー?」

紬「どんとこいです!!」フンス!


紬「じゃあまずは梓ちゃんからにしようかしらねー♪」ジリジリ……

梓「ちょっ!?ま、また私ですか!?別に私からじゃなくて唯先輩や律先輩からでも」

紬「問答無用よー♪」ギュー

梓「ふわぁあああ///(ム、ムギ先輩やわらかい……)」


唯「おー!あちらの二人もやりますなー!こっちも負けてられないですぜりっちゃん!」

律「おうよ!よし唯、私の胸に飛び込んで来い!!」

唯「アイアイサー!りっちゃん覚悟!!」ギュー

律「何をー!おかえしだー!!」ギュー


アハハハ…… ワイワイ ヤメテクダサイヨモー

澪(……遅れたから急いできてみたものの 非常に扉を開けづらいんですが)


澪(でも練習しないで遊んでばかりいられてもダメだからな……。ここは私がビシッっと言ってやらなきゃ!)ガチャ

澪「おい!お前ら!!遊んでないで練習をs」律「!! 澪が来たぞ!!総員、突撃ィー!」

唯紬「おー!!!」ダダッ

梓「やってやるです!(もうヤケクソです!)」ダダダッ

澪「えっ!?う、うわぁあああ!!?」バタッ


・・・・・・

澪「ハァーッ、ハァーッ……。ひ、ひどい目に遭った……」

律「ただみんなで抱き着いただけ だけどな!」

紬「そういえばりっちゃん、私が来たときなんでみんなして抱き合ってたの?」

律「あー、そういえばムギとかにはまだ理由を言ってなかったな……。実は、かくかくしかじかってことがあってな……」

澪「……つまり、律がエアコンとストーブを壊したと」

律「そうそ……ってそうじゃねぇよ!!ちゃんと話聞いてたのかよ、オイ!」


澪「冗談だよ。しっかしストーブとエアコン両方ともこの寒い日に壊れるなんてな。全く不運としか言いようがないよ」

梓「そうですね……。やっぱり日ごろの行いが悪いんでしょうか……」ジトー

律「なんでこっち見るんだよ!」

梓「だって……ねぇ?澪先輩」

澪「そうだな。律はもっとちゃんとしておいた方がいい」

律「私の扱いひどくね!?」

唯「そうだよりっちゃん。部長なんだからもっとしっかりしなきゃ」

律「お前もな!」

唯「えー……」


澪「とりあえず!これで全員揃ったんだから、練習するぞ!!」

唯「で、でも身を寄せ合ってなきゃ寒いよー……」ブルブル

澪「練習してればそのうち体も温まってくるさ。ほら、準備準備!!」

唯律「えー……」


紬「まあまあ唯ちゃん、りっちゃん。練習が終わったら温かいお茶でも飲んであったまりましょ?」

紬「澪ちゃん、ちょっとだけ待って。ポットの準備だけするから」ポチッ


紬「…?あら…? つかないわ……?」ポチッポチッ

梓「え…?ポットまでつかないんですか……?」

律「おいおい…これってブレーカーとか落ちちゃってるんじゃねーの…?」

唯「そ、そういえば部室の電気もつけてなかったね。つくかな……?」パチッパチッ

紬「……電気もつかないね」

律「てことはやっぱり停電してんじゃん!!」

律「…ん?停電……? そういえば昨日の部長会議で……」


〜昨日の部長会議〜

和『明日の朝、学校で電機関係のメンテナンスがあって 授業が始まる時間まで教室以外は停電になるから、朝練がある部活動は注意してね』

律『あーい……zzz』



律「…って言ってたような気が……」

澪「……やっぱりお前の日ごろの行いの悪さが原因だったのか」スタスタ

律「み、澪しゃん……?どうしたのそんな怖い顔で拳を振り上げながら近づいてきて……。ぼ、暴力はいけませんわよ?」

澪「問答無用」ゴチンッ

律「いでっ!!」


梓「まったく、部長会議くらい真面目に受けてくださいよ……」

梓「でもこれで、ようやくストーブとかがつかない原因が分かりましたね。すごく単純な原因でしたけど」

律「こういった事態を未然に防ぐためにも日ごろからしっかりしておこうと思いました、ハイ」プクー

唯「あははは!おもちみたーい!」サスリサスリ

律「うるせーやい!!」


紬「あらあら。……あ、そうだ。今日のケーキ冷蔵庫に入れておかなきゃ」ガチャ

梓「え?でも冷蔵庫も停電してるから使えないんじゃあ…」

澪「まあ今日はこの通りの寒さだし、別に大丈夫だろ」

紬「……あら?冷蔵庫の電気ついてるわ……?」

澪「……えっ?」


梓「てことは…」ポチッ

ゴォオオオオ!!!


梓「やっぱり! 先輩!エアコンつきましたよ!!」

唯「おー!!てことは停電解除!?や、やったー!!」

律「ああ、やっとだな……!ここまで耐え忍んだ甲斐があったぜ!」

唯「あぁー、あったかいー……」

紬「うふふ。これで一件落着かしらね」

澪「そうだな」

アハハハ……


梓「…あれ?でもそういえば さっきの律先輩の話だと停電って授業が始まるまでってことでしたよね……?」

律「そ、そうだけど……? あ、まさかてことは……!」

澪「も、もう授業始まってるってことじゃないか!!!」

律「そ、そうなりやすね……」

澪「なっえっとっ、とにかく急がないと…!」アセアセ

律「大丈夫だって澪。停電のメンテナンスを手伝って遅れた体でん行けばみんな笑って許してくれるさ、きっと…」

澪「んなわけあるかっ!!」ゴチンッ





最終更新:2015年02月10日 23:25