第11話「献血!」
3学期が始まって1か月ほど経った頃、私が部室に行くために階段を上がっていると ふとあるポスターが目についた
澪「へぇー、何かかわいい何かかわいいキャラが描いてあるなぁ…なんのポスターだろ…」
目をこらしてポスターに書かれている文字を読むと 私は顔から血の気が引いていくのが分かった
澪「け…献血……!?血……!?」ガクガク
澪「ひぃいいい!!」ダッ
血を連想した私は 気が付けば恐怖から踵を翻し 悲鳴を上げながら階段を全力で駆け上っていた
なんとか部室の前までたどり着き 視界からポスターも消えほっと一息をつく
澪「はぁー……怖かった」
澪「痛い思いをしてまで自分の血を分けることなんてないよな、まったく」ガチャ
独り言をつぶやきながら 私は部室のドアを開けた
部室を見まわしてみると どうやら私以外の全員は既に揃っているようだった
私は挨拶をしようとしたが それを遮るように律が口を開いた
律「あ!来たか澪!澪は献血行くの?」
律の言葉を聞いて 再び「血」の文字が私の頭をよぎった
澪「ひっ!!」
思わず私は悲鳴を上げてしまう
澪の悲鳴にもかまわず 唯がさらに畳み掛ける
唯「澪ちゃんも行こうよ!なんかタダでジュースとかお菓子とか貰えるみたいだよ!」
唯は興奮した口調で 澪に向かって話した
唯と律のことだ どうせお菓子目当てで献血に行くのだろう
子供じゃあるまいし、もちろんそんな理由ならば、お誘いを受けても私は行くつもりはなかった
でもどんな理由があるにせよ、私には献血にはきっと行かないだろう
だって……
私は少し沈黙したあと 小さい声でこう答える
澪「いや…私はやめてくよ……」
澪「私、痛いのダメだし…血を見るのとか怖いし……」
そう。血が怖いのだ。それが例え自分のものであっても。
律「そっか…」
それを聞いた律は残念そうにつぶやいた
紬「じゃあ明日は私たちだけで行く?」
お茶菓子の準備をしていた紬も 少し残念そうな顔でそう提案する
梓「澪先輩がそういうなら仕方ないと思います…少し残念ですけど…」
唯「そうだね…」
律「まぁ澪には悪いけど…明日は私たちが戻ってくるまで一人で練習しててくれ!」
…どうやら明日の放課後は軽音部の私以外のみんなは献血に行ってしまうようだった
なんでみんなわざわざ痛い思いしに行くんだろ……
正直、そう思った
練習が終わった後の帰り道 私は律に尋ねてみた
澪「律はさ…その、献血とか怖くないの?」
律「いやまぁ別に怖くはないかなぁ…」
律「てかジュースとか粗品とか貰えるし寧ろ楽しみだぜ!」
律はにこやかに笑い返事をする
澪「すごいな…律は…」
確かに粗品目当てで少し興奮しているってこともあるとは思ったが、私は素直に律の気丈さに感心した
思えば私は本当に痛いことが苦手だった
子供のころ予防注射を受ける際も注射される前から泣いていたし
歯医者での治療の順番待ちは もはや死刑の執行を待つような気分であった
苦手はそう簡単に克服できるものではなく
今も「血」という文字を見ただけで悲鳴を上げてしまう状態であることは先ほどの行動に示す通りであった
澪「私はやっぱり痛いのはダメだな…」
律「昔からそうだもんなー、澪は。まぁそういう人もいるし、仕方ないよ」
律は慰めるように言った
そしてその後 律はうなだれて歩く私を一瞥した後、付け加えるようにつぶやいた
律「…でも私は多少の痛みならしてもいいと思うな」
律「針が刺さる痛みなんかよりもっと大きな痛みで苦しんでいる人もいるわけだし、そんな人に
私が分けた血が役に立つならこんなに嬉しいことはないよ」
澪「へぇ…」
正直律らしくもない台詞だと思ったが 言いたいことには共感できるような気がした
・・・・・・
夜になってからも ベッドの上で横になりながら私は考えていた
澪(献血、か……)
澪(…血……ひぃっ!!)
澪(いやダメだダメだ!うろたえちゃ!)
澪(やっぱり少し痛いだろうけど…困っている人のためになるなら…やってみようかな…)
澪「……私が分けた血が役誰かのに立つ、か…」
澪「……zzz」
考えているうちに いつしか私は眠りに落ちてしまっていた
翌日の放課後、献血に行く前に唯が私に話しかけてきた
唯「じゃあ澪ちゃん、行ってくるね!なるべく早く戻ってくるから」
唯の言葉に対し 決意に満ちた表情で私は答えた
澪「いや……唯 私も行くよ、献血」
その後、私は軽音部のみんなと一緒に献血に向かった
いざ自分の番になり、注射針を腕に近づけられた時は やっぱり緊張して気を失いそうになったが、
みんなの励ましもあって、なんとか献血を終えることができた
献血を終えると係員の人が ご協力ありがとうございましたの言葉とともに私に粗品を手渡してくれた
はしゃぐ唯と律を尻目に 私は粗品の袋を握りしめ、達成感を感じていた
献血を終えた後の部室への帰り道
私が階段を上っていると 先日見かけた献血のポスターが再び目に入った
澪「私の血…誰かの役に立つといいな…」
私は自分の腕に貼り付けられたガーゼをなで 再び階段をのぼり始めた
終
. , -‐—‐- 、
く__╋__〉
ゞ``;ィ" . ヾ゙'z みんなも気が向いたら献血に行こう!
ヾツ冫i.レソルlバjリ、;`
. ´''゙ヘミ(li> ┃┌O ∧_∧
. ヾl、'' ヮ''ノ| ├─| ̄ ̄ ̄ ̄ ̄| r( ~∀)∴
. ,{゙につ| ├─| ]┬┬┬┐┝━┿ つ
〈___i」.| ├─|_____| ⊂、 .ノ
. (__iノ └┘ レ'
最終更新:2015年02月10日 23:28