梓「ちょっと唯先輩!私ですよ私! いつもあなたに抱きつかれてるあずにゃんですよ!」
唯「だってあずにゃんはそんなに大きくないよ!」
梓「私だって成長くらいしますよ!(魔法で成長したんだけど……)」
律「まさかあの七夕のときに書いた願い事が叶ったのか……?」(※15話参照)
梓「ふふん。そうかもしれませんねっ」
律「てかそれにしたって成長したにしろ大きくなりすぎじゃないか……?170くらいあるように見えるぞ……」
澪「私よりも全然……」
律「そして大きくなったわりにそこはあんまり変わってないな」ジー
梓「こ、ここの話は今はいいんです!」
紬「梓ちゃん、まさか危ない薬でも飲んだんじゃないよね?」
梓「ムギ先輩まで純と同じこと言うんですか!? これは純粋な成長です!」
律「そんなこと言われてもなー……。にわかには信じられねーよな……」
澪「なんか変な感じはするな……」
唯「こんなに大きいあずにゃんなんてあずにゃんじゃないよ……」
梓「」ガーン
梓「もういいです!せっかく大きくなったのに誰もほめてくれないなんて!私もう帰ります!!」ガチャ バタン
唯「あ、あずにゃん待って! ……行っちゃった」
律「てか突然一体何があったんだー? 急にあんなに大きくなってさ」
澪「それは分からないけど……。でも、梓もせっかく成長したのに、ひどいこと言っちゃったかもな……」
紬「まだ梓ちゃん近くにいるかもしれないし、私探してくるわ」ガタッ
律「いや、待てムギ。ここは少し梓をそっとしておいた方がいい気がする。なんか感情も高ぶってたみたいだったし」
紬「でも……」
律「その代わり、部活が終わったら皆で梓の家に謝りに行く。」
律「澪の言うとおり私らがひどいこと言っちゃったのは事実だし……。それならいいだろ?」
紬「……うん。わかった、りっちゃんの言うとおりにする」
律「よーし! てことで部活が終わったら皆で謝りに行くぞー!」
唯紬「おーっ!!」
澪「よし、そうと決まればそれまで練習だな」
唯「えー? まずはお茶しようよ」
澪「ダメだ。それに梓のためにお詫びにケーキもって行ってあげた方がいいだろ?」
唯「むぅ、わかったよ。よーし!今日は久々に真面目にやりますかぁ!」
律「おうよ!」
紬「おー♪」
澪「さっ、早速始めるぞ!」
・・・・・・
梓の家
梓「結局昨日と同じように逃げ出してしまった……」ドヨーン
梓「せっかく大きくなったのにほめられるどころか誰も認めてくれないなんて……」ハァ…
梓「もういいや……。元に戻してもらお……」キュッキュッ
モワモワモワ……
魔人「ジャジャーン!呼ばれて出てきてチェケラッチョイ!!」
梓「何よそれ……。てか今までそんな登場の仕方してなかったじゃん」
魔人「結構インパクトあるっしょ? 暇だから寝てる間に考えてたんだ!」
魔人「……で梓。そんなことより残りの願い事は決まったの?」
梓「決まったことは決まったんだけど……」
魔人「何だか言い辛そうだな。まあ、ともかく言ってみなよ」
梓「実は……」
魔人「えーっ!? 背を元に戻したいだって!?」
梓「うん……」
魔人「だ、だって昨日、背高くしたばかりじゃん!!」
梓「そうなんだけどさ……。その、やっぱり私には元の大きさが一番な気がするから……」
魔人「いや背を元に戻すのは別にいいけどさ……。何か願い事の無駄使いっつーか、勿体ない気がするけど本当にいいのね?」
梓「うん。お願いします……」
魔人「分かった。じゃあ遠慮なく元に戻させてもらうぞ」
魔人「ペプシントリプシンリパーゼアミラーゼ!!」
モワモワモワ……
梓「さよなら、高身長の私……」シュルル……
魔人「……本当によかったのか? 何か一日だけの高身長体験!みたいになっちまったけど」
梓「いいんです。急に大きくなってもいいことばかりじゃないって分かりましたし」
魔人「アタイには願い事の無駄づかいにしか見えないんだが……」
梓「うっせーです!! 勿体ないことしたなんて思ってないんだから!」プイッ
魔人「ったく、強がっちゃってぇ。最後の願い事は慎重に考えなよ」
梓「わかってるよ……」
魔人「まあ慎重にっつってもあんま何日もかかるようじゃダメだけどな」
梓「え? もしかして日数制限とかあるの?」
魔人「あれ、言ってなかったっけ? 有効期限はアタイを呼び出した日の翌日までって」
梓「……は?」
梓「ってそれ今日までじゃん!!最初に言ってよもう!」
魔人「ゴメンゴメン、言うの忘れてたよ」
魔人「と、いうわけで今日中に決めないと願い事叶えられなくなるからヨロシク」
梓「ちょっとぉ! てか今日中に決めろとかそんなこと急に言われても思いつきませんって!」
魔人「何でもいいんだぞ?たとえば100億万円ほしいとかでも」
梓「その願い事はどうかと思うけど……」
魔人「じゃあさ、梓のかねてからの夢を実現させるのはどう?」
梓「私の夢?」
魔人「そう。ほら、小学生の時とかにも書いたろ?ミュージシャンになりたいとか総理大臣になりたいとかお嫁さんになりたいとかさ」
梓「お嫁さん……?」
魔人「ああ、もちろんそんなのでも構わない。アタイの力にかかれば意中の相手と結婚するのもカンタンだからね」
梓「結婚……」ドキッ
梓(もし、唯先輩と結婚したら……)
唯『おかえり、あずにゃん。ご飯にする?お風呂にする?それともワ・タ・シ?』
梓『全部いただきます!!』ガバッ
ギシギシニャンニャン
梓「///」ボンッ
魔人「ど、どうしたんだよおい。急に悶えはじめて」
梓「魔人さん!私願い事決めました!!」ズイッ
魔人「お、おう。てか顔近いって!」
魔人「まあいいや、言ってごらんよ」
梓「は、はいっ!」
梓「ゆ、ゆいせんぱいと……け、け……///」
ピリリリリ
梓「こ、こんな時に電話!?」
魔人「またナイスなタイミングだな。 願い事は電話終わったら聞いてやるから、とりあえず出ちゃいな」
梓「どこがナイスタイミングですか……」ピッ
梓「もしもs」
律『梓!! 大変だ! 唯が、唯がっ……!!』
梓「!? ど、どうしたんですか律先輩!?落ち着いてください! 唯先輩に何かあったんですか!?」
律『唯が、車に……うぅ。ひかれた……』
梓「えっ……?」
梓「あの、律先輩……?冗談ですよね?」
律『梓の家に謝りに行く途中で……、道に飛び出した子猫を助けようとして、唯も、飛び出して……うっ…』
梓「そんなバカなそんなバカなそんなバカな……」
律『とにかく○△病院に来てくれ!! すぐに!』プツッ
梓「うそ……」プーッ、プーッ……
魔人「おいどうしたんだよ? 何かあったのか?顔真っ青だぞ」
梓「ま、魔人さん!!」ガシッ
魔人「お、おい!?本当にどうしたんだ!? 大丈夫かよ!?」
梓「唯先輩が!唯先輩が……!!」ユサユサ
魔人「ただごとじゃないみたいだな。説明してくれよ」
梓「唯センパイが、グスッ。事故にあって、いま病院にいるっていっで……。うぅ……」グスッ
魔人「じ、事故ぉ!?」
梓「! そうだ妖精さん! 唯先輩を治してよ! 私の最後のお願い事!!」ユサユサ
梓「ねっ?いいでしょ!? 唯先輩を治して!」ブンブン
魔人「……残念ながらそれは無理だ」
梓「!? 何でよ!? 何でも叶えてくれるって言ったじゃない!!」
魔人「ああ確かに言ったさ。でも叶えられるのは、アタイを呼び出した当人に効果が及ぶ願い事だけなんだ……」
梓「そ、そんな……! じゃあ唯先輩のケガは治せないってこと!?」
魔人「すまないが、そうなるな……」
梓「そ、そんな……」ガクッ
梓「うぅ……唯先輩……。唯せんぱぁーい!!」ウワーン
魔人「……すまない」
梓「……私、ちょっと行ってきますね」スクッ
梓「○△……グスッ びょういんに……」フラフラ
魔人「梓……」
魔人「(……そうだ!) ま、待て梓!!」
梓「……なんですか?」
魔人「一つだけ、方法があるかも……」
・・・・・・
数十分前
唯「あずにゃん、まだ怒ってるかなー?」
律「ある程度でいいから落ち着いてくれてるといいんだけどな……」
紬「お詫びのケーキも持ってきたし、とにかくちゃんと謝らなきゃね」
澪「そうだな」
ニャー
唯「あ!ネコさんだ!」
紬「まあ!可愛いわー」
律「野良ネコか? にしても通学路でネコ見かけるのなんて珍しいな」
澪「かわいいな……」ナデナデ
ネコ「ニャー」トテトテ
律「……プッ。逃げられてやんの」
澪「う、うるさい!」
唯「あっ、ネコさんそっちの方行ったら危ないよー」
ネコ「ニャー!」ダッ
唯「あっ!コラ待ちなさい!!」タタッ
ブロロロロロ
紬「! 唯ちゃん危ない!!」
唯「えっ!? う、うわぁ!!」
律「唯ーっ!!」
キキイーッ!!
唯「……」
唯「……あれ?なんともない……?」
梓「よかった、間に合いました……」ガシッ
唯「あ、あずにゃん!? どうしてここに!?」
運転手「ったく危ねぇな! 気をつけろ!!」
ブロロロ……
梓「はぁ、はぁ……。よ、よかったぁ……」ヘナヘナ
律「唯!! 大丈夫か!?」
唯「う、うん大丈夫。あずにゃんが助けてくれたから」
澪「え、梓いつの間に来てたの!?」
澪「はぁ、でもよかった……。急に飛び出したもんだからびっくりしたよ」
紬「本当……。もし梓ちゃんが来てくれなかったら大変なことになってたかもしれないわね」
律「てか梓、お前身長もとに戻ってないか?」
梓「そ、その話は今は置いといて! 唯先輩! 急に飛び出しちゃダメじゃないですか!!危ないでしょ!!」
唯「ご、ごめん……」
梓「でも……。 本当に……グスッ。ひかれなくて……よかったよぉ…」グスッ
唯「あずにゃん……。たすけてくれてありがとね」ナデナデ
梓「……唯センパーイ!」ウワーン
唯「よしよし」ナデナデ
梓「……もう危険なことはしないでくださいね?」
唯「うん、これからはもっと気をつける。だからほら、涙拭いて? ほら、ハンカチ」
梓「ありがとうございます」ポロポロ
・・・・・・
梓「……ありがとうございます。大分落ち着きました」
律「にしても梓、お前いつ来たんだー? さては気配を消して私らのことを……」
梓「ちがいますよ!もうっ!」
澪「あ、それとごめんな、梓? 梓がせっかく大きくなったのにあんな態度とっちゃって……」
梓「澪先輩、もうそれはいいんです。私、この身長のままでいいって分かりましたから」
律「……で? 大きくなるのにどんなトリック使ったんだよ?梓しゃん?」ウリウリ
梓「そ、それは教えられません」
律「えぇーん!? ケチー……」
梓「ほ、ほら! もう遅いですしいつまでも話し込んでたら暗くなっちゃいますよ! そろそろ帰らないと!」
紬「そうね。梓ちゃんにも会えたことだし、今日はもう帰りましょうか」
紬「改めて梓ちゃん、ごめんね? でも私はやっぱりこのサイズの梓ちゃんが一番だわ」
唯「私からもごめんね? 背が高くてもあずにゃんは あずにゃんなのにあんなこと言っちゃってさ」
梓「もうっ。その話はいいっていったじゃないですか。私は怒ってませんから」
律「やっぱり梓はちっちゃくてナンボだしなー?」ニヤニヤ
梓「胸見ながら言わないでくださいよ! てか律先輩には言われたくありません!」
律「何だとー中野ぉー!!」ガシッ
梓「きゃーおやめになってー」
キャッキャッ
澪「まったく……何やってるんだか」ヤレヤレ
澪「ほら、そろそろ帰るぞ。みんなまた明日な」
紬「みんなまたね〜」
・・・・・・
梓の部屋
梓「……今日はありがとうございました、魔人さん」
魔人「上手くいったみたいで良かったよ。過去に人を送り届けるってのは初めてだったからさ」
梓「……ふふっ」
魔人「何だよ梓。急に笑って」
梓「いや、魔法瓶拾っておいてよかったなって思って」
魔人「えー、二日経ってようやくアタイのありがたさに気づくなんて遅すぎるんじゃないのー?」
梓「そうかな……?」
魔人「ちょっ!そこで悩むなよ!」
アハハハ……
魔人「……さて。これで梓とはお別れだね」
梓「そういえば、願い事3つしたのに、これじゃ何も変わってないのと一緒ですね」
魔人「あはは、本当だね! アタイもこういうパターンは初めてみたかも」
梓「でも私、これでよかったと思います。何も変わらなくっても、今のままで私は十分幸せですから」
魔人「ははっ、欲がないねぇ。アンタは」
梓「謙虚だと言ってください!」
魔人「褒めたつもりだったんだけどね」
梓「だって魔人さん、あんまり人とか褒めなそうですし……」
魔人「あ、こう見えても結構お世辞は上手いんだよアタイは!」
梓「って結局お世辞だったんじゃないですか!!」
魔人「バレた?」
梓「もうっ……。本当に変な魔人さん」
魔人「よし!じゃあお別れの前にアタイに言うことはないかー?」
梓「へっ……?」
魔人「ほら、無言でお別れなんて寂しいだろ? なんでもいいからさ」
梓「……ありがとうございました、魔人さん」
魔人「ははっ、またそれかよー! でも梓らしいっちゃ梓らしいか!」
魔人「じゃあアタイからも! こちらこそありがとな! 短い時間だったけど楽しかったぞ!!」
梓「……また会える時って来るんですかね」
魔人「さあな? まあアタイの気分次第ってとこかな?」
梓「なんですかそれ」クスッ
魔人「まあ会えなくてもアタイは梓のこと、忘れるまで忘れないけどな」
梓「ちょっとー、それはひどくない?」
妖精「うそうそ。忘れないよ、梓と出会ったことは」
梓「……私も忘れませんよ。魔人さんと出会ったこと」
魔人「じゃあそろそろ行くな。その魔法瓶はあげるよ」
梓「うん。ありがとうね、魔人さん」
魔人「じゃあ元気でな! グッドラック!!」スゥー……
梓「そちらこそお元気でー!」
梓「……」
梓「……行っちゃったか」
梓「変だったけど不思議な魔人さんだったな……。何か、まだ信じられない気分……」キュッキュッ
魔法瓶「……」
梓「何か少し寂しくなっちゃったな……」
ピンポーン
梓「ん? 誰だろ、こんな時間に」
梓「はーい」ガチャ
純「あああ梓! 大変なの!!」
梓「ちょっ、何よ純? こんな夜中にどうしたのよ」
純「い、今そこのゴミ捨て場で魔法瓶を拾ったら何か変な魔人が出てきて!!」アワアワ
梓「えっ」
完
最終更新:2015年02月10日 23:51