「いっしょにたべよう」



「いっしょにたべよう」 岡崎律子


梓「えっと。メモと携帯とエコバックと……」

持ち物の確認をしていると、部屋のチャイムが鳴りました

憂「梓ちゃん?もうみなさん集まってるよー?」

梓「あ、うん。今行く」

スニーカーを履いて、少しだけ髪を整えて

家の扉を開けると憂が立っていました

憂「準備できた?」

梓「うん。お待たせ」

鍵をかけて、ちゃんと閉まってるか確認します

梓「ごめんね。行こうか」

エレベーターに乗って一階へ

エントランスには、もう澪先輩とむぎ先輩が居ました

梓「すみません、準備に手間取っちゃって」

澪「いいよ。私たちも今きたところだから」

紬「洗濯物、干し終わった?」

梓「はい。ただ、洗濯機が終わる直前に唯先輩から電話があって」

梓「それでつい長話してたら、結構時間ギリギリになっちゃいました」

紬「あらー。相変わらずラブラブねー」

むぎ先輩が素敵に微笑みます

澪「ん?唯がそんな長電話できるほど暇だったんなら、律の録音が結構かかったんだな」

紬「なおちゃんにダメ出しされて、きっと涙目でしょうね」

澪「律が悪いんだよ。昨日も、明日スタジオ入りだっていうのに夜遅くまで……」

憂「え、昨日の夜って何かあったんですか?」

澪「え!?い、いやその……まあ、色々とね?」

澪先輩が真っ赤な顔をして、消え入るように呟きます

その反応で、憂も何かを察したらしく

憂「す、すみません。野暮でしたね……」

澪「いや、ぜんぜん大丈夫だから……」

紬「あらあらまあまあ」

むぎ先輩、楽しそうだなぁ

澪「と、とりあえず行こうか」

その一言で、私たち四人は一緒に歩き出します

目指すは近所のスーパー

私たちの行きつけのお店です


澪「憂ちゃんは今夜何にするか決めてるの?」

憂「はい。和ちゃんが今夜はお肉食べたいって言うから、お肉料理でって思ってます」

澪「律もお肉がリクエストだったな。でも野菜も食べさせないと、栄養偏るしなぁ」

紬「冷製サラダとか追加したらどうかしら。この暑さだし」

梓「あ、冷やしたトマトをメインに、お塩を少し振れば食欲も増しそうですね」

澪「美味しそうだな。じゃあ、お肉と冷製サラダにしよう」

梓「あ、いい感じにレタスとトマトが安いですよ」

澪「あ、本当だ!運がいいな!」

野菜売り場の方へ、澪先輩が小走りで行っちゃいました

紬「私もちょっとビール見てくるわね。さわちゃんの買い置きが切れちゃってたから」

パタパタと、むぎ先輩もお酒売り場へ向かいます

憂「そういえば、梓ちゃんは今夜はどうするの?」

梓「うん。中華にしようと思ってるんだ。暑くて唯先輩、オフの日はダラダラしてるから」

梓「ちょっと辛めの中華で、気分変えてもらおうって思って」

憂「へえ。いいね。食欲も出てきそう」

梓「でしょ?……あ、うちも唯先輩のアイスの買い置きが切れてた」

憂「今日アイス全品半額の日だよ。良かったね」

梓「こういう日にまとめ買いしとかないとね」

私と憂がアイスを選んでいた時、澪先輩が小走りでやってきました

澪「ねえねえ、桃が安かったよ」

心なしか澪先輩がはしゃいでます

憂「あ、本当ですね」

澪「蜜柑も安かったんだよ。甘夏」

梓「甘夏かぁ。ちょっと酸っぱくて、夏にはぴったりですよね」

憂「桃と蜜柑……フルーツケーキ作りませんか?」

梓「おお」

澪「いいな、それ!」

憂「デザートにもなりますし。それに、二人でワンホールだと多いですけど」

憂「ツーホール分作って、私たちで半ホールづつ分けたらちょうどいいですよね」

澪「そうだよな!ちょっとむぎも呼んでくるよ!」

買い物かごを私たちに預けて、澪先輩がお酒売り場へ向かいました

梓「美味しそうだね、フルーツケーキ。唯先輩が喜びそう」

憂「うん、きっと喜ぶよ。とりあえず、八人分だよね。桃と蜜柑、どれくらい必要なのかな」


夕方、テレビのニュースを流しながら、キッチンに立ちます

お風呂掃除も終わったし、洗濯物も取り込んでたたみ終りました

あとはお料理だけ

今夜は中華料理です

梓「ご飯も炊けるし、あとはメインだけ」

梓「唯先輩、今日は疲れてるだろうからなぁ」

梓「スタジオ入りすると本気で集中しちゃうから」

梓「きっと気づかないうちにヘトヘトになっちゃってるんだ」

梓「直と和先輩が居るから、無理はしてないと思うんだけど」

梓「うん。辛めの中華の後にはデザートにケーキもあるし、お風呂上りにアイスもある」

梓「きっと疲れも取れるよね」


唯「あずにゃん、ただいまー!」

七時過ぎに唯先輩が帰ってきました

玄関までお迎えに行きます

梓「お帰りなさい、唯先輩」

唯「あーずにゃーんー、疲れたよぉ」

靴も脱がずに抱きついてくる唯先輩

やっぱりちょっと、ドキドキしちゃいます

抱きつかれるのって、たぶん四桁レベルまでいってるはずなのに

梓「お疲れ様です。ほら、ギー太置いて、靴脱いでください」

唯「だめー。まだあずにゃん分補給出来てないもん」

梓「あとでいくらでも補給させて上げますから」

唯「だって丸一日あずにゃんと触れ合えないなんてさー」

梓「レコーディングのスケジュールなんだから仕方ないですよ」

唯「やっぱ別撮りはダメだね。和ちゃんに言って、一発撮りに変えてもらおう!」

梓「唯先輩と律先輩が言い出したことじゃないですか……」

まったく、と言いながらも、離れる気にはなれません

私だって、丸一日唯先輩と会えなかったんですから

唯先輩分が足りないんです

梓「ご飯とお風呂、先にどっちにします?」

唯「お腹空いたし、先にご飯がいいなぁ。で、少し休んでからあずにゃんとお風呂!」

梓「はいはい、わかりました」

夕飯です

唯先輩と二人、小さなテーブルを囲みます

ご飯の時にはテレビを消すのが、うちのルールです

唯「でね、あずにゃん。今日りっちゃんたらね」

梓「そうなんですか。大変でしたね」

唯「まありっちゃんも私も、結構良い演奏が出来てたからね」

唯「デモ出来たらびっくりするよ!直ちゃんも褒めてたもん」

梓「そうですか。直が評価するんだったら本物ですね」

唯「天才的REだからね!和ちゃんも天才マネージャーだけど」

梓「和先輩には本当に苦労をかけてますよね……」

唯「えへへ。でも、和ちゃんも楽しいって言ってたよ。私にぴったりだってさ」

梓「それだったら良かったです。あ、先輩。味、どうですか。辛過ぎないですか」

唯「美味しいよー!今日ね、ちょうど中華料理食べたいなって思ってたんだ」

梓「そうなんですか?なら、良かったです」

唯「夏の暑さも吹っ飛ぶよ!さすがあずにゃん!」

梓「えへへ。あ、今日はデザートもあるんですよ。フルーツケーキ」

唯「え、本当!?やったー!」

本当に嬉しそうに唯先輩が笑います

その笑顔は、私の一日の終わりのご褒美で

だから、どんなに忙しくても

夕ご飯だけは、いっしょにたべよう






全部終わりました
ありがとうございました



最終更新:2015年03月25日 07:49