憂とギターデュオをやることになった。
わかばガールズの、ライブの一幕として。
私が唯先輩と「ゆいあず」をやったことがあったから、それに対抗して「ういあず」というユニットになった。
そこまではまぁ、特に理由もなく流れで決まったんだけど……
実際に憂と練習を始めてみて、今まであまり意識していなかったことに気づくことになった。
憂とどうやって音楽を作っていけばいいんだろう?……って。
私、唯先輩と組んでたときはどうしてたっけ?
先輩はあまり練習してこないし、用語も知らないし、すぐ集中力なくなるし……
とにかくそれをフォローするのに必死だった気がする。
だからあまり深く考えたことなかったのかも?
ただ唯先輩はやるときはやるというか、天性の才能みたいなものが表に現れたときがすごい。
そのときだけは本当に、ガンガン前に出てくる感じがしてた。先輩についていくのに必死だったかも。
……そっか、そういえば憂はあまり自己主張がないかも。
飲み込みの速さはピカイチで、どんな難しい譜面でもサラッとこなしちゃうんだけど。
でも優しい性格だから、いつも控えめで前に出て来ない。
ねぇ憂、もっと自己主張してもいいよ?
「え、自己主張? うーん……うまくできるかな」
できるって!
憂は基礎がしっかりしてるし、ちょっとアピール強めにすればすごく良くなると思うよ。
合わせてみよっか、さん、はい。
「……」
あれ?
ううん、音量大きくすればいいわけじゃなくて。こう、何ていうか……
私が支えるから、思いっきりやってみて。
「えっと……こうかな、ぎゅいーん!!」
あ、いや、唯先輩のマネをしろってわけじゃなくて……
「……どうすればいいのかな?」
うまく言葉で説明できない。何て言ったらいいんだろう。
「ごめんね梓ちゃん、お姉ちゃんみたいにうまくできなくて」
……あ、そうか。
無意識のうちに、唯先輩とやってるときのことに合わせて考えちゃってた。
これじゃ、憂に唯先輩になれって強制してるようなものだ。
憂は憂なんだから、別のやり方を考えなきゃ……ごめん、憂。
えっと、憂は飲み込みが速くて、何でもこなせて……だから……
「……梓ちゃん?」
だから、どうすれば……?
あまり自己主張がないから……だから……
まず、私がリードしてあげなきゃ!
「……ねえ、梓ちゃん?」
……はっ、ごめん!
あ、あのね憂、ユニット名、「あずうい」にしてもいいかな?
「え? いいよ? 何で?」
その、つまり……
私が引っ張るから、ついてきて!
「……ふふ、そっか。うん、頼りにしてるよ、梓部長」
よーし、じゃぁ……
私がここをこう弾くから、憂は掛け合いで、こうできる?
「難しいね……でも、なんとか頑張れるかも」
じゃ、ちょっとやってみよう。
さん、はい。
「……!! こう?」
……さすが憂、一発で出来てる。
ちょっと難しめのフレーズにしたのに。
じゃ、次は交互にこれとこれと……こう!
いくよ、さん、はい!
「……こう、かな、はい!」
あははっ、すごいね、これ!
それなら、音に合わせて体も動かしてみたら? 2人で交互に……
「……にょき、にょき、にょき」
ぷっ、何その効果音。でもそれっぽいかも。
「なんだか楽しくなってきたよ、梓ちゃん」
うん、いいね。
そっか、これでいいんだ。
憂は、何でも応えてくれる。
私が引っ張っていけば、きっといいものが作れるはず。
普段は頼りになるから、ついつい憂にはお世話になっちゃうけど……
音楽に関しては、私がリードギターなんだから、頑張らなきゃ。
一緒にいい音楽を作っていこうね、憂。ついてきてくれる?
「もちろんだよ、梓ちゃん!」
おわり
最終更新:2015年06月01日 07:59