唯「…というわけだよ!」
澪「あー…」
紬「ふむぅ」
梓「なるほどです」
和「それは悪かったわね」
唯「和ちゃんはもう少しちゃんと謝ってよ!」プンスコ
和「ごめんごめん、謝るわ」
唯「ふんとにもぅ! わたしが好きなのはあずにゃんだけだよ!」
梓「ちょ…巻き込むのやめてくださいってば」
唯「とにかく誤解だから! …和ちゃん、ほかの誰かに言ったりしてないよね」
和「大丈夫よ。律に言いふらすな、って言われたから守ってるわ」
和「ひとりにしか言ってないから。ひとりだけなら言いふらす、に入らないわよね?」
唯「…」
澪「…」
紬「…」
梓「…」
唯「……和ちゃぁぁぁん!!!!」
澪「…それで和。誰に言っちゃったんだ?」
和「昨日…廊下で憂に会って、そのときに…」
梓「…サイアクだ」
唯「りっちゃん…昨日憂と二人で帰ってた…なにか話したのかも」
紬「…そのときに告白したのね」
唯「えっ、りっちゃんって憂が好きなの?」
澪「唯、とにかく今は憂ちゃんの誤解を解くことが先だ!」
唯「わかった! 憂に電話してみる!」ピポパ
和「なんだか大変そうね」
梓(この人はちょっとでも責任を感じているんだろうか…)
デンゲンガハイッテイナイタメ…
唯「…つながらない」
梓「憂…どこにいるんだろ」
紬「唯ちゃん、心当たりはないの?!」
唯「えええーっっとぉ…」オロオロ
和「そういえば昨日、図書館で勉強してるって言ってたわ。もしかして今日も…」
梓「行ってみましょう! グッジョブです和センパイ!」
澪「ほら! 律! お前も行くぞ! 当事者だろ!」
律「……いいよわたしなんか。どーせわたしなんか」ズーン
澪「バカ! ここで頑張らないでいつ頑張るんだよ! しっかりしろ! バカ律!」ゴツン
律「あいったぁ~」ヒリヒリ
澪「行くぞ!」ズルズル
ー図書館内ー
唯「あっ! いたっ! うーいー!!」ブンブン
憂「お、おねえちゃん?!」
憂「おねえちゃん、ここ図書館だから静かに…」シー
唯「ごめん憂! でもいまそれどころじゃないから来て!」グイグイ
憂「で、でも…」
唯「いいから早く!」グイー
ー図書館、入口扉外ー
律「…」
澪「…話はわかったか」
律「…ああ」
澪「あとはもうお前次第だ」ポン
律「…」コク
紬「りっちゃん」ギュ
律「…ん」
梓「ちゃんと決めてくださいよ」グッ
律「わかってるって」
和「なんか、いろいろごめんなさい」
律「いいよ、むしろ和のおかげみたいなとこもあるし」
和「そう言ってくれると助かるわ」
ガラッ
唯「りっちゃん!」
憂「律さん…」
律「憂ちゃん…」
澪「じゃ、わたし達はこれで」
唯「りっちゃん、憂を泣かせたら許さないからね」
律「……ああ」
唯「うい」
憂「…おねえちゃん」
唯「ちゃんと、ほんとうに思ってることを伝えなきゃダメだよ」
憂「…うん、わかった」
律「………」
憂「………」
律「………」
憂「………」
律「昨日の、ことだけど」
憂「…」
憂「しつこいですよ、律さん」
憂「いくら冗談が好きだからって、言っていい冗談とよくない冗談があります」
律「冗談でも嘘でもないよ」
憂「おねえちゃんに告白したんでしょ!」
律「いやそれは間違いで…」
憂「律さんは間違いで人に好きって言えちゃうんですか?!」
律「だからその…あぁー! もう! 違うんだって!!」
憂「わかってますよ。わたしのことからかったんでしょ? そのくらいわかります」
律「違うよ、違うの唯のほうで…」
憂「もういいです。聞きたくないです。わたしもう帰ります」
律「ちょっと待ってよ!」
律「どうしたら信じてくれるんだよ」
憂「信じるもなにも…律さんはおねえちゃんのことが好きなんでしょ!」
律「…なんでそんな風に思うの」
憂「だって…」
律「なんで信じてくれないんだよ…憶測や人づての話じゃなくて、目の前にいるわたしの言葉を信じてよ…」
律「ほんとうのことだよ」
律「わたしが口に出して言ったことがほんとうのことだよ」
律「信じてほしいんだ」
律「それから改めて返事を聞きたい」
律「……ダメかな」
憂「…」
憂「…ご、ごめんなさい」ポロポロ
律「う、ういちゃん!?」
憂「ごめんなさいごめんなさい…」
憂「目の前にいる律さんの言葉、信じられなくて…」
憂「人から聞いた話や憶測で勝手に決めつけちゃってて…」
憂「ごめんなさい…」ヒックヒック
律「いいよ、いいよ…」ヨシヨシ
憂「………」ヒックヒック
律「なぁ、憂ちゃん」
律「ちゃんと言葉にして伝える、って怖いよな」
律「はっきり口に出した瞬間、もう取り戻しが効かなくなるだろ?」
律「ずっと怖かったんだ。だから逃げてた」
律「でもさ。ちゃんと口に出さなきゃ伝わないから。
伝わらないままあきらめちゃうのが一番イヤだな、って思ったんだ」
律「たとえフラれちゃってもね…」タハハ
憂「…」
憂「律さん」
憂「わたし…律さんは別の人が好きなんだ、ってずっと思い込んでました」
憂「だから…わたしを見てくれるなんて思いもしなかったから…」
律「けっこーわかりやすいつもりだったんだけど?」
憂「わからないですよ、口に出して伝えてくれなきゃ」
律「そっか。ごめん」
憂「…謝ってばっかり。それよりもう一度、言葉にしてほしいです」
律「え、も、もう一度…?」
憂「…はい」
律「…好きだ、」
憂「わたしも、好きです。ずっと。はじめて会ったときから」
ー図書館、入口扉からちょっと距離の離れた場所ー
唯「…どうやら」
澪「…うまく」
紬「いったみたいね~♪」
梓「はぁぁぁ…肩の力が一気に抜けました」
唯「途中で憂が泣き出したときはりっちゃんの頭、ギー太でカチ割ろうと思ったけどね」
和「なんにせよ、ハッピーエンドでよかったわ」
唯「和ちゃんが言わないでよ」
和「でもわたしの発言がなければあの二人、くっつかなかったかもしれないわよ?」
澪「ま、それもそうかもな」
梓「しかし憶測だけで外野が勝手に動き回るのはよくない、って痛感しましたです…」
紬「ほんとにそうね…」
澪「その辺は二人ともちゃんと反省しろよ」
紬梓「「…はい」」
梓(純にもちゃんと言ってきかそう…)
和「じゃあわたし、生徒会行くね」
澪「いろいろ迷惑かけちゃってごめんな」
唯「むしろ迷惑かけられたほうだけどね」
和「ううん。面白かったわ。またこんなことがあったら呼んでちょうだい」スタスタ
梓(あの人にだけは声をかけたくない)
紬「よ~し、じゃああとはもうひとカップルをくっつけるだけね!」
梓「…なに言ってんですか」
澪「そうだな。両思いなんだからさっさとくっついてほしいよな」
唯「…ほえ?」
紬「唯ちゃん、梓ちゃん、頑張ってね!」
澪「唯、梓。大事なことは、ちゃんと口に出して言葉にしなきゃダメだぞ」
梓「ちょっとちょっと! なんなんですか!?」
澪紬「「じゃあね~」」スタスタ
唯「澪ちゃんムギちゃん行っちゃったねー」
梓「は、はい…(な、なんか気まずい)」
唯「口に出して…ってもうわたし達ちゃんと言葉にして伝え合ってるのにね?」
梓「はぁ………はい?」
唯「ほら。昨日ちゃんと伝えたでしょ?」
梓「え? あ、あれは…そういうのじゃ…」
唯「あずにゃん…冗談だったの?」
梓「冗談じゃなくてその…」
唯「じゃあもう一度言うね」
唯「好きだよ、あずにゃん」
梓「え…わ、わたし………」
梓「わたしも好き…………、です」
ー木曜日、夜ー
プルルル…
紬「もしもし紬です」
澪『ムギ? いまいいかな?』
紬「うん。大丈夫。いつもわたしばっかりだから、澪ちゃんから電話かけてくれるの、うれしい」
澪『ハハ…なに言ってんだよ。同じくらいかけてるだろ?』
紬「ううん。わたしからかけた方が5回多いよ」
澪『(…電話かけた回数とかかってきた回数、数えてるのか)』
紬「……ごめんなさい、ひいちゃった?」
澪『う、ううん…! だ、大丈夫!』
澪『今日はお疲れ。ごめんな、律のこと。黙ってて』
紬「ううん。言えないことだってあるわ。それくらいわかってるつもり」
澪『それならいいんだけど。さみしい思いさせちゃったかな、って思って、』
澪『唯と二人で遊びに行ったのも…律と憂ちゃんを二人きりにするための作戦で…』
澪『二人がうまくいくまではムギにも話せなくて…ごめん』
紬「あやまらないで。今こうやって話してくれるだけでうれしいの」
澪『そっか、ありがと。じゃあもう寝ようか』
紬「うん…」
澪『それじゃまた明日。おやす…』
紬「ちょっと待って」
澪『…? どうかした?』
紬「口に出してほしいな」
澪『えー…』
紬「大事なことは、ちゃんと口に出して言葉にしなきゃ、伝わらないんでしょ?」
澪『…う』
紬「……」
澪『……』
紬「……」
澪『……キだ』
紬「……きこえませーん」
澪『ムギきびしい…』
紬「…おねがい。聞きたいの。ときどき不安になるの。だから、おねがい」
澪『…ムギ』
澪『…好きだよ』
紬「…わたしも。澪ちゃん大好き」
おしまい。
最終更新:2016年02月28日 21:38