梓「どうします?」

唯「えっ、どうって言われても」

梓「これ女性同士のカップルでも大丈夫なんですかね」

唯「あのね、それより気になることがあるんだけど」

梓「うわ、結構な大きさのケーキじゃないですか、飲み物も半額で」

唯「なんで私のおでかけ先に突然現れたの?」

梓「こっちのパフェ的なあれもカップル割引があるみたいですよ」

唯「そして何の話を進めてるの?」

梓「すいませーん!! ここのカップル限定って女性同士のカップルでも大丈夫で

唯「やめろ!!」

梓「そんな照れることないのに……」

唯「店の入り口で誤解されるようなことを叫ばないでください」

梓「入り口でじらすなんてテクニシャンですね」

唯「どこから尾けてきたの」

梓「人をストーカーのように言わないでください」

唯「でも」

梓「私の目が届く範囲にいて下さいって言ったじゃないですか」

唯「そういう言い回しがストーキングを連想させるんだよ」

梓「ちょっと見かけて後をつけてみただけじゃないですか」

唯「駅のあたりから?」

梓「そりゃ家からですよ」

唯「自分の?」

梓「唯先輩の」

唯「そんな堂々と言われても」

梓「おあずけになったデートにがっかりしていたけど偶然唯先輩を見かけて
  なんて運命的な二人だと思っただけですよ」

唯「どこかで聞いたような話だなぁ」

梓「恋に落ちた役立たずのスパイみたいですね」

唯「おあずけも何もデートの予定なんてなかったよね?」

梓「私はいつでも大丈夫ですよ」

唯「偶然を装って人の出先に合流してくるのはデートって言わないの」

梓「唯先輩みたいなふわふわした子が一人でフラフラ歩いてたら
  タチの悪いナンパとかに引っかかりそうで心配じゃないですか」

唯「今まさにタチの悪いナンパみたいなのに引っかかってるんだよ」

梓「まあちょっとお茶していきましょうよ」

唯「ちょっ、服ひっぱんないで」

梓「カップル限定のあれが上手くいったらおごりますから」

唯「上手くいったら無料じゃないの?」

梓「じゃあお店の中ではカップルということで」

唯「カップル割引のために恋人のフリをするつもりなの?」

梓「恋人が恋人らしく振る舞うのに何か問題がありますか?」

唯「まあフリだけなら何とか」

梓「私は既成事実さえ作れたらそれで」

唯「知り合いに見つかりませんように」


店員「こちらカップル限定のセットになりまーす」


唯「うわ、高そうなケーキ」

梓「あっちの席の人たちの分ですかね?」

唯「早くあれ食べて一刻も早くこのお店を脱出したいなぁ」

梓「………」


店員「それではカップルの証明として、おふたりでキスをお願いいたします」


唯「………」

梓「………」

唯「えっ!?」

唯「ちょっと待って、なんかキスしろとか言われてるけど」

梓「言ってましたね」

唯「なんで!?」

梓「カップルですから」

唯「しなきゃいけないの?」

梓「もう注文しちゃいましたし」

唯「いつの間に!?」

梓「そういうイベントなんだし、仕方ないですよ」

唯「知ってたの?」

梓「言ってませんでしたっけ」

唯「聞いてないよ」

梓「いま聞いたじゃないですか」

唯「いま言われても!」

唯「じゃあカップル限定の割引はキャンセルで」

梓「通常料金で?」

唯「それで」

梓「お金持ってるんですか?」

唯「足りないよ!」

梓「じゃあもう仕方ないですよ」

唯「貸してよ!」

梓「キスしてくれるならいくらでも出しますよ」

唯「なんて日だ!!」

梓「ほら見てください、あっちの席のカップルも女性同士みたいですよ」

唯「そういう問題じゃなくて……あっ」

澪「あっ」

律「あっ」

梓「あっ」


店員「お客様、このお店なんですけど実は……


ベリベリベリ


紬「ウチの系列のお店なの」 バァーーン


唯「えっ!?」




おわれ



最終更新:2016年02月28日 22:24