律「そうあせんなくてもいいと思うけど」
紬「でも…でも…」
律「…えーっと、付き合い始めてどれくらいになるんだっけ?」
紬「6ヶ月と12日」
律(即答かよ…)
紬「こんなにたってるのに…それなのにわたしたちまだ…」
律「半年かあ…」
紬「半年と12日!」
律「わかってるわかってる」
紬「わかってない! りっちゃんはわたしと澪ちゃんの12日間の重みをわかってないわ!」
律「ごめんごめん…わるかったわるかった」
紬「普通、半年と12日も付き合ってたらチューくらいしててもいいと思わない?」
律「さぁ……まぁ……人によるんじゃね」
紬「でも…それくらい普通じゃない? お互い好きなんだし、付き合ってるんだし」
律「うーん、どうだろうなぁ……人によるからなぁ…」
紬「フフ…でもね。わたし、そろそろだと思ってるの」
律「あっ、そう。ふーん、よかったじゃん。じゃ、そゆことで」
紬「なんでだと思う?? ねぇなんでだと思う??」
律(帰りたい……)
紬「ほら~もうすぐわたし、誕生日でしょ? だから…その…きっと澪ちゃん、誕生日プレゼントくれると思うのね? ね? なにもらえるとおもう?? なにもらえると思う?? ねぇねぇ??」
律「さぁーなー、んーっと、なんだろーなーわっかんねーなー」
紬「わたしね…アレじゃないかと思うの。わたしがいちばんほしいもの! ね? アレ! わかるでしょ? ねぇねぇ!」
律「あぁーうん。そだな。わたしもそう思うぞ。うんうん」
紬「聞きたい? ねぇ聞きたい?? ねぇねぇ!?」
律(…どうしても聞かなきゃダメか)ハァ~ア
律「…ヘイヘイ、じゃあなにもらえるんですかー?…っと」
紬「ダァ~メッ! おしえてあーげないっ♪ だって澪ちゃんとわたしの秘密だもん♪♪」ムフ
律「わたしかえる」
紬「ゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイ!!!」
律「…で、結局なにがほしいんだよ?」
紬「“ナニ”って…りっちゃんたら………」
律「かえるぞ」
紬「言うわ! ちゃんと言うから聞いて!」
紬「あのね…その…あの…えっと…わたし…澪ちゃんと…したいことがあって……」モジモジ
律「言いたくないなら言わなくていいんだぞ?」
紬「言います! 言いたいです!!」
律(言わなくていいのに)
紬「エッチしたいの!!!」
律「お願いだから大声で言わないで」
紬「ウフフ~誕生日たのしみだわぁ~~~~~♪♪♪」
紬「わたしの計画ではね…誕生日に初体験を済ませて、夏休みを迎えるの」
紬「学校がお休みの間、覚えたばっかりの行為に夢中になった二人は夏休み中ずっと………」
律(……なにか始まった)
~~~~~~~~
紬「でね! でね! 夏が終わってもわたし達は終わらないの! それからそれから…!!」
律(この話はいつ終わるんだろう)
紬「夏……わたしと澪ちゃんの夏………ふたりきりの…………ああ………夏休みはやくこないかしら~~~♪♪」ポー
律「ちょいちょい。ちょっと落ち着け。そんなに先走ってどーする」
紬「だって………好きなんだもん」
律「そりゃあ…まぁ…わからんでもないけどさ。でもな。わたし達まだ高校生なんだぞ」
紬「澪ちゃんの身体は超高校級よ!」
律「そういう表現やめてくれる?」
紬「だって…………」
律「まぁ待て…澪の発育がいいのはたしかだ。だけど澪はそういうのすっごく嫌がるぞ」
紬「わかってるわ。だからわたし、必死で自分の劣情を抑えてるの!」
律「“劣情”とかいうのやめような?」
紬「ハイ!」
律「わかればよろしい。ほら、澪はウブだし、そゆことすんのに抵抗あると思うんだよ」
律「だから強引なのは逆効果だ。それにあせる必要ないと思うぞ? ほら、人は人だしさ。自分たちのペースで進んでいければいいだろ?」
紬「わかったわ……じゃあしばらくは妄想だけでガマンするね。ちなみに最近お気に入りの妄想は………」
律(聞いてもないのに語りはじめたよ……)
~~~~~~~~~
~~~~~~~~~~
~~~~~~~~~~~
律「………」
紬「…そこで澪ちゃんがわたしの◯▽□×を……」
律(いったいいつまでつづくんだ………)ゲッソリ
律「あのさぁムギ…」ボソ
紬「えっ?? もっと露出の高い格好で迫った方がいいかしら?!」
律「言ってないし」
律「…コホン。妄想はさておきだな」
律「もっと高校生らしい付き合い方でいーんじゃねーの。
ほら、休みの日にふたりで遊びに行ったり、帰ってから毎日電話したり…」
律「好きな人のさ。声を聞けたり、一緒にいられたりするだけで楽しいじゃんか」
紬「りっちゃんってば乙女~~~」
律「はい、相談タイムしゅ~りょ~」
紬「ごめんなさいごめんなさい! おねがい! もうちょっとだけ話を聞いて!」
律「もう十分聞いたよ。……とにかくあせらないように、じっくり付き合うこと。先は長いんだから」
紬「…………」
律「………?」
紬「…………わかってるの」
紬「あせっちゃダメだってことはわかってるの。だけど…」
紬「遊びに誘うのもわたしからばっかりだし、」
紬「電話もメールもほとんどわたしからだし、」
紬「手をつなぐのだって、恥ずかしい……って。あんまりしてくれないの」
紬「こんなかんじでほんとうに付き合ってるって言えるのかな、って……」
紬「澪ちゃん、ほんとうにわたしのこと好きなのかな、って……」
律「うーん………」
紬「澪ちゃんがわたしのこと、ほんとうに好きかどうか、」
紬「りっちゃんからさりげな~く訊いてもらうことできない?」
律「えぇ~…」
紬「おねがい! おねがいだから!」
律「でもさー、ムギと澪が付き合ってるのって一応みんなにはナイショってことになってるだろ?」
紬「うん。澪ちゃん、恥ずかしいから誰にも言わないでくれって」
律「いかにも澪が言いそうだよな。約束破ったらアイツ、めちゃくちゃ怒るぞ」
律「第一、わたしにバラしてる時点でそーとーヤバいんだからな」
紬「だって…付き合い始める前からりっちゃんには相談してたじゃない。それなのに黙ってたら悪いもの」
律「うん……まぁ…」
紬「それにバレなきゃ大丈夫だから!」
紬「だからお願い! こんなことりっちゃんにしか頼めないの! お願いします!!」
律「う~ん………」
*
梓「それで引き受けちゃった、ってわけですか」
律「だってあんまり一生懸命に頼んでくるからさ」
梓「そうですねぇ。たしかに付き合って半年ですか」
律「半年と12日な」
梓「珍しく細かいですね」
律「ムギにしつこく刷り込まれちゃって」
梓「はぁ。ま、ムギ先輩が不安になるのもわからないでもないですけど。それだけたってるのに、キスはおろか手をつなぐのもたまにってのは…」
律「わたしたちなんか付き合う前にしちゃったからな」
梓「勢いだったとはいえそれはそれでどうかと思いますけどね…」
梓「で……澪先輩の反応はどうだったんですか」
律「え? 澪の反応?」
梓「だから訊いたんでしょ。ムギ先輩のことどう思ってるのか」
律「いや? 訊いてないけど?」
梓「訊けよ」
律「だってさぁ~、ムギに頼まれて訊いたってことがバレないように訊かないといけないんだぜ?」
律「…ってことは、ムギと澪が付き合ってること知らないフリしつつ、澪がムギのことどう思ってるか訊かなきゃなんない、ってわけじゃん」
律「無理っしょ~。そんな高度なことわたしにできるわけないっしょ~」
梓「じゃあ引き受けないでください」
律「それはそうなんだけどさ。なんとかしてあげたいわけじゃん?」
梓「“わけじゃん?”じゃねーです。安請け合いしないでください、どーするつもりですか」
律「そこで梓ちゅわんにお願いがありまして」
梓「キモい声出すのやめてくれますか?」
律「まぁまぁそ~言わないでさっ。梓のほうからこそ~っと澪に訊いてみてくんない?」
梓「えー…ヤですよ。なんでわたしが代わりに探り入れなきゃいけないんですか」
梓「そもそも澪先輩とムギ先輩が付き合ってるってナイショなんでしょう? わたしにバラしていいんですか?」
律「それは…わたしと梓の仲じゃん? 梓が黙っててくれればバレないわけだし」
律「なぁ~、た~の~む~よぉ~~あ~ずさぁ~~」
梓「澪先輩に頼むのときと同じトーンで喋るのやめてくれます? 虫酸が走るんで」
律「ごめんごめん。でもほんっと、梓にしか頼めないんだよ」
律「だってさー、澪って梓には優しいじゃん? 同じこと訊いたとしてもさ、わたしならゲンコツ喰らうかもしんないけど、梓に対してそんなヒドいことしないだろ?」
梓「それはそうですけど…いきなりわたしがそんなこと訊いたらゼッタイ不自然でしょう」
律「そこはさ! うま~いことやってくれればいいからっ」
梓「押し付けないでください。…ご自分でうま~いことされたらいいじゃないですか?」プイ
律「そんなこと言わないでっ。な? あ~ずさっ」ギュ
梓「……ちょ、どこさわってるんですかっ」ビクン
律「きょうはりっちゃん、がんばっちゃうからさっ。だから頼むよ、なっ?」
梓「あした学校ですよ…こーゆーの、“高校生らしいらしい付き合い方”じゃないと思うんですけど」
律「わかってて日曜の夜に誘ったのは梓じゃん」
梓「だって……せっかく親いないし」
律「だろ~、てなわけで3回戦に行きますかっ。ついでにムギの件もよろしくな」チュ
梓「あっ ちょ くびんとこダメですって…」
律「バレないバレない」チュッチュッ
梓「みんな案外目ざといんですから……え、ちょっ………あっ、もうっ…あっあっ……ん…」
*
梓「…というわけでして」
唯「え~っとつまり…」
唯「あずにゃんの代わりにわたしが澪ちゃんに訊いてこい、ってこと?」
梓「はい。お願いできませんか?」
唯「確認だけどさ。澪ちゃんとムギちゃんが付き合ってることはナイショなんだよね?」
梓「そうですね」
唯「ナイショになってるからもちろん、わたしもあずにゃんも知らないってことになってるわけだよね?」
梓「そうですね」
唯「付き合ってることも、イマイチうまくいってないことも知らないフリしつつそこんとこどうなの?…って訊かなきゃいけない、ってことだよね?」
梓「そうですね」
唯「わたしがそんな器用なこと、できると思う? 思わないでしょ?」
梓「そうですね」
唯「はい。じゃあこの話はおしまいね」
梓「そうですね……じゃなくて!」
梓「ほら。澪先輩って和先輩と仲いいじゃないですか。あのひとなら頭よさそうだし、澪先輩の信用も勝ち得てそうだから、うまく訊いてくれるかな、って」
唯「その言い方だとまるでわたしが頭悪くて澪ちゃんの信用もないっていう風に聞こえるけど?」
梓「そうですね」
唯「はい。じゃあこの話はおしまいね」
梓「そうですね……じゃなくて!」
梓「いや…唯先輩には唯先輩にしかないすごいところがたくさんあるんですから」
唯「ちなみにどこ?」
梓「え……………っとぉ…」
唯「気分が悪いなぁ…」
梓「言い方が気に障ったのなら謝ります。でもこんなこと唯先輩にしか頼めなくて…」
唯「和ちゃんに直接お願いしたらいーじゃん」
梓「だってわたし、和先輩とそんなに親しいわけじゃないですし」
唯「まぁそれもそうか」
梓「そこで唯先輩に頼んでなんとかしてもらえないかと」
唯「う~ん…」
梓「なにが気に入らないんですか」
唯「いやさーこの話、わたしにメリットなくない?」
梓「唯先輩って損得勘定でしか動けないひとだったんですね。失望しました…」
唯「なんでそうなるのかなぁ…それにさぁ、和ちゃんへのお願いならわたしじゃなくて憂に頼めばよかったんじゃないの」
梓「そう言われるとそうですね。じゃあそうします」
唯「んん? ちょっと待って」
梓「なんですか。もういいです。薄情な唯先輩には用はないです」
唯「いやいや…憂の名前が出た途端引き下がるとかおかしくない?」
梓「なにもおかしくないです」
唯「これじゃまるでわたしより憂の方が頼りになるみたいじゃん?」
梓「知らなかったんですか?」
唯「んんん?」
梓「唯先輩は憂のこと、頼りにならない子だと思ってるんですか?」
唯「そんなわけないよ! 自慢の妹だよ!」
梓「ほら」
唯「いやだからそうじゃなくて…あのさ、わたし、憂のお姉ちゃんなんだけど…」
梓「知ってます」
唯「妹より頼りにならないお姉ちゃんなんている?」
梓「はい。ここに」
唯「……」
梓「事実そうじゃないですか。唯先輩はわたしのお願いを聞いてくれない薄情者なわけですし」
唯「言い方にトゲがあるなぁ…」
唯「でもそれを言うなら憂だってお願いを聞いてくれるどうかわかんないでしょ」
梓「憂は聞いてくれますよ」
唯「なんで断言できるのさ」
梓「憂が損得勘定で動く人間に見えますか? 友人が困ってるのに見捨てるような薄情者に見えますか?」
唯「そんなわけないよ! 憂は自慢の妹だよ!」
梓「じゃ、そういうことで」
唯「あーもう! わかった! わかったよ! 訊くよ! 訊けばいいんでしょ!」
梓「さすが唯先輩です。それでこそ唯先輩です。尊敬してます」
唯「ちっともうれしくない……」
梓「お礼と言ってはなんですが、今日一日は練習サボっててても抱きついてこられても文句言わずガマンします」
唯「いいよ……そう言われるとかえって抱きつく気がなくなるし、練習も頑張りたくなるよ…」
梓「それはなによりですね」
唯「それに最近のあずにゃん、抱きつくとメスっぽい匂いするし」
梓「◯$×?▽!□@&◆#?」
唯「べつにぃ、わたし達も高校生だしぃ。そーゆーことするのが悪いって思わないけどさ~あ。ほどほどにしときなよぉ?」
梓「な な な な な 何を根拠に???」
唯「ん……ナマナマしいからあんま具体的に言いたくないんだけど………くび」チョイチョイ
梓(……だから言ったのに!!)
唯「りっちゃんにも言っといてあげなよー」
梓「」
唯「あれ? バレてないと思ってたの? 視線でわかるよーアイコンタクト多すぎ。バレたくないならもっと要領よくしなきゃねー」
*
唯「かくかくしかじか………ってわけで頼むね和ちゃん」
和「へぇ」
唯「ちょっとちょっとぉ、気の無い返事しないでよぉ」
和「よく考えてみなさいよ」
唯「?」
和「わたしがコイバナなんてするタイプに見える?」
唯「みえない」
和「というわけで無理ね。あきらめなさい」
唯「待って! ちょっと待って!」
和「 はい、ちょっと待ったわ」
唯「さぶいよ…ぜんぜんわらえないよ…そういうのやめたほうがいいよ……」
和「……………」
和「唯はわたしにお願いがあるのよね? 自分の立場わかってる?」
唯「いや……わかってるけどさ。こういうことはちゃんと言わないと、和ちゃんが恥かくでしょ。親切心だよ」
和「…はっきり言ってくれるわね」
唯「わたしだって和ちゃんが公衆の面前でスベるところ見たくないよ…それにこんなことはっきり言えるなんてわたしか憂くらいじゃん」
和「そうね。ありがとう。恥をかくところだったわ」
唯「わかってくれたならいいよ」
和「もっとウケる回答を磨かないとダメね」
唯「和ちゃんは一体なにを目指してるの?」
和「だいたいアンタ達けいおん部の中でそうゆう話しないの? コイバナとか」
唯「いやー…かえって部内でアレコレあると話しにくいんじゃないかな」
唯「だから部外にいる和ちゃんに対しての方が話しやすい、っていうか」
唯「和ちゃんは、澪ちゃんに信用されてそうだし。わたし達には話しにくいことでも和ちゃんには言えるじゃないかなーって」
和「わたし、言うほど澪の信用を勝ち取ってるのかしら」
唯「和ちゃんを信用してない人なんていないよ! いたとしても人を見る目が腐ってる人だよ!」
和「そうかしら……///」
唯「コイバナはガラじゃないけどね」
和「そうなんだ。じゃあわたし、生徒会行くね」スタスタ
唯「まってよぉ~おねがいたすけて! わたしの人間性と姉としての立場がかかってるの!」
和「やれやれ…わかったわ。でもあんまり期待しないでね」
唯「やったぁ! 和ちゃんだいすき!」ギュ
和「もう…調子がいいんだから。ところで一つ確認しと起きたいんだけど」
和「澪とムギが付き合ってるのは一応ナイショってことになってるのよね」
唯「そうだよー」
和「でも、もうけいおん部の全員にバレちゃってるんじゃないの」
和「澪、それに気づいたらすごく怒るんじゃないかしら」
唯「……」
和「……」
唯「……」
和「そのあたりはバレないように探りを入れてみるわ」
唯「よろしく……」
和「人に隠すようなことでもないと思うけど」
唯「だよね~。バレてもいいよね、別に。わたし達なんか隠す気ゼロなのにみんなぜ~んぜん気づかないし」
和「唯はもともとスキンシップ多いからじゃない?」
唯「そうかな~? この際だしわたし達のこともみんなに言っちゃう?」
和「そうね。でもいざお披露目するとなると照れくさいわね」
唯「むずかしいねえ~」
最終更新:2016年07月04日 18:50