律「お、いいなー」
唯「いこういこーう!」
澪「家に連絡しないとな」
梓「珍しいですね、ムギ先輩からそういうお誘いって」
紬「うふふ、実はね~? 行ってみたいお店があるの~♪」

………♪

……♪

…♪

妙に嬉しそうな琴吹の先導のもと、軽音部員達は歩みを進める……。

紬「ここよ~♪」

フレンチレストラン【ユリ・オ・マチ】

唯「こんなお店あったんだ!」
澪「知らなかった。初めて見るな……」
梓「す、すごく高級そうなお店ですね」
律「ひょっとして、ムギんとこのお店とか……」
紬「うふふ、せいかーい♪」
律「やっぱりなー」ゲヘェ

唯「私、そんなにお金持ってないよ……」
梓「私もです……」

紬「大丈夫! 今日はみんなをVIP待遇として、ご馳走してもらえるようにしてあるから!」

唯「ええー! ほんとにー!?」
澪「い、いいのかムギ?」
紬「もちろん♪ さ、入りましょ~」

………♪
……♪
…♪廊下

高級フレンチが食べられると知り、嬉しそうに歩く四人の前に、物々しく立てかけられた看板が。

律「おー? なんだこりゃ」
紬「このお店のルールが記されてるわ~」


最高級フレンチレストラン 【ユリ・オ・マチ】

~本店における規則~
その① 男子禁制。完全予約制であり、招かれうる客は乙女のみ。
その② オーダーの際は他客とのスキンシップが必要。
その③ 連続して同じ人にスキンシップしてはいけない。また、一人に対して行なったスキンシップは、もうその人に行なってはいけない。



唯「へー、変わったお店だね~」
澪「それで済ませるの!?」
律「これ店として成立してんのか」
梓「こ、こんなのおかしいです!」

紬「でも、このルールに従ってくれないと、お料理は出せないの……」

澪「そんな……」
梓「…………」
律「スキンシップって言ってもな~~~」
紬「さ、お席へごあんなーい」

四人が案内された場所は、まさにセレブ御用達といった、豪華絢爛たる一室。

唯「すんごい……」キラキラ
澪「わあ……!」
律「おぉ……スゲー……!」
梓「私、こんなすごいところはじめてです!」
紬「さあ座って座って~♪」

言われるがまま並んで座る四人。これから、お待ちかねのコース料理が始まる。

紬「今日のコースはこちらとなっておりま~す♪」パチン

琴吹が指を鳴らすと、メイドのようなが、コースメニューをよこす。

唯「ほえぇ、クリームチーズとトリュフの軽いスープ? 重いのもあるのかな……」
律「コースは何コかあるんだな、どれにしよっかなー」

紬「お好きなコースを選んでね~♪」

澪「ムギ、私、Bコースがいいな」

紬「…………澪ちゃん」
澪「え?」

紬「ルール……」

澪「あっ……」
紬「もう始まってるからね~。 どんどん頼んで~♪」

唯「ぃよーし、早速頼むよ!」ガタッ

紬「……!」キッ

唯「あーずにゃんっ!」ぎゅ~
梓「や、やっぱり来ると思いました……」
唯「ん~~~~」スリスリ
梓「むぐぅ~……」

唯「……」チラ

紬「…………」

紬「ウィ! ムッシュ!!!」パチーン

唯「やった~♪ 私Aコース~!」

先陣を切った平沢へ最高級オードブルが運ばれる。
待望のフレンチに早くもがっつく。

唯「おいひぃ~~~♪」

澪「おいしそうだ……」
律「う、早くも……」

唾を飲む皆をよそに、至福のひと時を味わう平沢。
他の三人はまだ動けない。

唯「みんなも早く頼めばいいのに~♪」
梓「う……」グゥ~
律「簡単にいいやがる……」
澪「唯の得意技だからなぁ……」

唯「むぐむぐ……次行くよ!」

一皿目を早々に平らげた唯は、すぐさま立ち上がる。今度は……

唯「澪ちゃーん♪」
澪「うわ! ゆ、唯!」
唯「お~よしよしよしよし……」
澪「や、やめろぉ~っ、は、恥ずかしいぃ……!」

紬「ウィ! ムッシュ!!!」パチーン

唯「いよしっ!」

怒涛の平沢。二品目が運ばれる。

唯「んま~い!」グアアァ

律「…………」ごくり

律「お、おーし! アタシもっ」ガタッ
梓「ひゃあ!?」

律「ほ~ら梓ぁー……ヒゲッ!」
梓「ちょっ」ツインテールヒゲ

律「たこ焼き~」ブニブニ
梓「や、やめてください~!」

紬「ウィ! ムッシュ!!!」パチン

律「シャアァッ!」

後に続いたのは田中。Bコースの品が運ばれる。

律「うんめー!」
唯「うんまい」

澪「くぅ〜、こうなったら……」ぐっ

澪「あ、あズ にゃ~ぁんっ……」ギュ
梓「のぁあ!? 澪先輩ッ!?」
澪「ふんぬぅーーー」ぎゅうううう
梓「ちょ、ちょ~~~っ……!」

紬「ウィ! ムッシュ!!!」パチーン

澪「やった……!」

勇気を出した秋山。Bコースが運ばれる。

澪「……あ、おいしいっ!」パァァー

律「モアァイ!」
前菜を二口で平らげた田中は、はやくも次の皿を要求する。

律「…………」ギュッ!
唯「わっ!?」
律「…………」ギュウゥゥ…
唯「り、りっちゃん……」ドキドキ

紬「ウィ! ムッシュ!!!!」パチーン

律「ムホォーー!」

………♪

………♪

………♪

梓「…………」

澪「っ……」スタスタ
唯「あっ?」

澪「」デコ合わせコツン
唯「お、おでこ禁止だよ澪ちゃん……」

澪「…………」

唯「…………」

澪「…………かわいいよ、唯」ボソ
唯「わー! 澪ちゃあん! やめてよぉ~!」キャー

紬「ウィ! ムッシュッ!!!」パチィン

澪「や、やったぞwww」
唯「もぉ~……」
律「澪もノッてきたなwww」

紬「ルール変えてもいい? いいよねっ? 次からは、同じスキンシップしちゃダメっ。分かった!?」

澪「難しくなったな……」
唯「どんとこいだよ~」

律「その中で、未だに前菜のひとつも頼めてねーのがここに……」

梓「ううぅ~……」

澪「スキンシップされるばかりで、自分は食べれてないな……」
唯「あずにゃん……」

唯「ムギちゃん、このかわいそうなあずにゃんに一口あげ 紬「ダメです」

………♪

……♪

…♪

唯「うーんお腹いっぱい」
律「満足だー」
澪「コースはこれで終わりか」

梓「…………」ムッスー

紬「それじゃあコース料理はおしまいでーす♪ みんなどうだった?」

唯「おいしかったー!」
律「こんな料理食べたの初めてだぜー」
澪「ああ。ありがとうムギ、本当にご馳走になっていいの?」
ムギ「いいのよ〜。それじゃあ、私は梓ちゃんと話があるから、先にいっててくれる? お帰りはあちらでーす♪ 今日はありがとーう」

唯「ほえ? うん、ありがとねー。バイバイムギちゃんあずにゃん」
澪「また明日っ」
律「じゃーなー」

三人は帰っていった。
メイドも控えに戻り、部屋に残ったのは琴吹と中野だけ。


紬「梓ちゃん、残念だったね」

梓「……」ムスー

紬「澪ちゃんだって勇気を出したんだから、梓ちゃんも頑張らなきゃ……」

梓「……」むっすー

紬「でも、このままお腹を空かせたまま帰らせちゃうのも悪いから……。恥ずかしがりでかわいそうな梓ちゃんには、特別にご馳走しようと思うの」

梓「……」ぴく

梓「ほ、ほんとですか?」パァー

紬「うふふ、もちろんよ♪」

ムギはそういうと、梓を抱き寄せた。

梓「!? なにするんですか!?」

紬「あら梓ちゃん、ここのルールを忘れちゃった?」
梓「うう……」カァァ
紬「ふふふ、梓ちゃんにだけ特別コースをご馳走しちゃう〜」もぞもぞ
梓「ちょ、ちょっと……どこ触って……やめてくださいよぉ」

紬「いいじゃない。私もまだ何にも食べてなくて、お腹が空いてるんだもん♪ さあ、料理を楽しみましょう?」

梓「い、いやーーーーーーっ! あ…………♡」


終わり



最終更新:2017年03月15日 08:17