紬「唯ちゃんがトラックに撥ねられる話らしいの。梓ちゃん知ってる?」

梓「いえ、初耳ですね……」

紬「そう……私も最近知ったんだけど」

梓「……それで、唯先輩はその後異世界で無双するんですかね?」

紬「えっ? い、異世界って?」

梓「こことは違う世界ですよ。大体はファンタジーな世界ですね。トラックに撥ねられた人は死んだら大体異世界に行くんです」

紬「へ、へぇ……でもそういう話じゃなかったはず……」

梓「じゃあ何ですか、その唯トラっていうのはそこからどう話が広がるんですか?」

紬「た、たぶん広がらないんじゃないかな……」

梓「なんと勿体無い……私ならもっと面白く出来るのに。唯先輩の異世界転生。これは流行る。今のうちに書き溜めないと!」ダッ

紬「え、ちょ、梓ちゃん!?」

梓「すいません私今日は早退しますね! シュビッ!」タタタ

紬「シュビッて何」



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梓「そう、唯先輩のスペックなら異世界でも人気者になれるはず。頭は良くないし運動が出来るわけでもないけど、あの人には人の心を掴む才能がある」

梓「……私だって掴まれた一人だからわかる」

梓「パラメータ的には最弱だけどそれ以外の部分で強者を味方につけていき一目置かれる存在になる……そんな最弱系主人公のパターンでいける、はず」

梓「具体的にはあの笑顔と優しさと、あとは……やっぱり音楽が必要かなぁ、あの人には。演奏している時の唯先輩は本当に楽しそうだし」

梓「そうなるとギター……ギー太にも一緒に異世界転生してもらわないといけなくなるね。まぁ唯先輩はいつも背負ってるから不自然ではない、か」

梓「……さすがにアンプまでは無理かなぁ。転生する時に神様にアンプの能力でも与えてもらえないかな」

梓「……うん、ここは私の作者としての腕次第ということで。どうとでもなるよね、きっと」

梓「それで、こう、異世界で戦争とかしてても歌を歌って戦いを止めたり、その人柄で両方の偉い人から気に入られたりして世界に平和をもたらしていく、みたいな」

梓「音楽という文化を広めて世界を優しさで包んでいくお話、でもいいね。唯先輩の音楽で世界がひとつに! 争いのない平和な世界に!」

梓「うん、いい……さすがは唯先輩です」

梓「えっと、こういう流れにするとして、アンプのこと以外に何か問題点は」


梓「………」

梓「よく考えるとそもそもあの人を一人で右も左もわからない異世界に放つというのが不安なんだけどどうしよう」

梓「普段は私がちゃんと見てないと危なっかしいからなぁ。音楽が絡むと別人なんだけど」

梓「誰かにナビゲートしてもらいたいね・・・私の代わりに、誰かに」

梓「……代わり? いや、いっそ私でもいいのかな? でも転生時点で二人ペアっていうのは王道から外れてるよね……運命のペアっぽくて素敵ではあるけど」

梓「う、運命のペア!?」

梓「……何言ってるんだ私は」

梓「まあ実際、唯先輩を一人で死なせるのは可哀想だし、私が一緒にいてもいいとは思うけど……」

梓「………」

梓「…………」


梓「……可哀想、だよね、やっぱり」

梓「唯先輩が死ぬだなんて、可哀想だし、私も悲しい」

梓「……何をしようとしていたんだろう、私は」

梓「唯先輩と同じ時間を生きる私が唯先輩を死なせるなんて、たとえフィクションの中ででも出来るはずがないのに」

梓「フィクションの、物語の中ではたくさんの人が死んでいるけれど・・・それは否定しないけれど、私が唯先輩を死なせるのは絶対に違う」

梓「……それにそもそも異世界転生するような人は現実で追い詰められているような人達だ。唯先輩は当てはまらない」

梓「どこから見ても最初っから間違っていたわけだ。私はバカだ」

梓「……消そう。これは無かったことにしなくちゃいけない」

梓「ごめんなさい、唯先輩。私が間違ってました。私はあなたにはこの世界で幸せになってほしいです。まだまだずっとあなたを見ていたいです」

梓「……異世界になんて行かないでください。私と同じ世界にいてください」

梓「どうか、ずっと……」

梓「………」

梓「………」

梓「……異世界転生モノ読んで寝よ……」



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紬「梓ちゃんの言ってた異世界転生モノ、面白い……!」

紬「でも百合が少ない(´・ω・`)」

紬「……こ、こうなったら私が書くしか……?」



……こうして、紬は異世界転生百合小説作者の道へ一歩踏み出した……


のかはまだ定かではない

オチが弱い
おわれ



最終更新:2017年08月26日 19:24