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真っ暗な部屋にいる。
テレビの明かりでお互いの顔が見える。
あめ…………紅葉が全国に広がって…………。
それはテレビから聞こえてきたのか、それともわたしの頭の中で鳴っていたのかよくわからなくなってしまう。

唯「ね、あずにゃん」

梓「なんですか」

唯「寒いね」

梓「そうですね」

唯「雪、降ってるよ」

梓「雪は白いですね」

唯「そうだね」

梓「寒いですね」

唯「すごい作戦考えたんだけど」

梓「唯先輩のすごい作戦はきっとぜんぜんすごくないですよ」

唯「ふたりでぎゅーってしたらすごくあったかいよ」

梓「やっぱりすごくないじゃないですか」

唯「どうする?」

梓「そりゃあ、あったかいほうがいいですけど……」

唯「ほら」

梓「なんですか、その手」

唯「手招きだよ」

梓「手招き?」

唯「こっちおいでって」

梓「いやですよ」

唯「む、なんでさ」

梓「唯先輩がきてくださいよ」

唯「やだよ」

梓「なんでですか?」

唯「わたしの座ってるところちょっとあったかくなってきたもん」

梓「わたしのとこのほうがあったかいですよ」

唯「じゃあ、比べてみよう」

梓「いいですよ」

わたしたちは立ち上がって場所を交換する。

唯「よいしょ」

梓「どうです?」

唯「よくわかんない……あずにゃんは?」

梓「わたしもです」

唯「いいこと考えたんだけどね」

梓「どうせいいことじゃないですよ」

唯「お互いにちょっとずつ距離をつめればいいんだよ」

梓「あ」

唯「じゃあ、せーのっ、でね」

梓「いいですよ」

せーのっ。
わたしたちはくっついた。
ちょっと抱きあうみたいになって、わたしは照れた。
唯先輩がわたしに全体重を預けて、くたあ、となった。
でもわたしには唯先輩の体重を支える気はなかったので、わたしたちは右側に大きく傾いた。

唯「ね、またすごい作戦思いついた」

梓「今度は何ですか」

唯「紅葉だよっ」

梓「今は冬ですよ」

唯「雪に色をつけるんだよっ」

梓「雪?」

唯「白いから、いろんな色に染められるんだよ」

唯先輩はどこにあったのか蛍光スプレーを掲げてみせた。
赤、黄色、オレンジの蛍光スプレー。

唯「これで、雪を紅葉させるんだっ」

梓「……そうですか」

唯「でも、あずにゃんは混ぜてあげない」

梓「なんでですか」

唯「だってあずにゃんはいつでも秋が見えるから、ずるいっ」

梓「わたしだって好きでそうしてるわけじゃ……」

唯「うそだよ。はやく行こっ」

唯先輩が手を差し出してきて、わたしはそれを握った。
玄関をこえて、雪の積もる街の中に飛び出す。
もう深夜だから人はいない。
走ってた。
だんだんあったかくなる。
商店街を途中で折れて細い道を進み、公園にたどり着く。
公園の奥のほうに、駐車場のような資材置き場のような何に使われているのかよくわからないスペースがあってそこまできたところで、唯先輩が言った。
ここでいいよね。
スプレーの缶を一つ手渡してくれた。
赤色のやつを。
街が静かすぎるせいで二人分の心臓の跳ねる音がやけに耳についた。

唯「さあ、やろうっ」

斜め上に向かって唯先輩がスプレーを噴射した。
霧状の黄色が降ってきた雪に触れて、着色。
熱で溶かされた雪は水滴としてこぼれ落ち白い地面にシミを作るのだけど、中にはそうならならないのもあって、それは色付きの雪になって空を舞った。
わたしも缶を握って、トリガーを引いた。
赤い雪になる。
まだ汚れていない純粋な白の中にいかにも人工的な赤や黄色が混じったその光景を見ていると、なんだか現実感が遠くなっていくような気がした。
隣でまた唯先輩がスプレーを発射した。
わたしたちはしばらく無言でその作業を繰り返していた。
服にも、肌にも、積もった雪にも、色がついた。
あたりを駆け回って、スプレーを吹き付ける。
すぐにまた別のところでトリガーを引く。
スプレーの噴射音と荒くなった呼吸の音だけがただ響いていた。
紅葉した雪が散って、秋色の液が跳ねる。
地面はにせものの落ち葉でいっぱいだった。
最初半分くらいあったスプレーはいつの間にか空っぽになった。
スプレー缶を投げ捨ててわたしたちは雪の上に腰を下ろす。
吹きつけたスプレーのせいで地面はべちゃべちゃになっていたが、どうせわたしたちも汚れているんだ、気にしない。
空を見上げると、まだ残っていた最後の色付きの雪が降ってきた。
そのひとつが唯先輩の顔にぶつかって、わたしたちは声を上げて笑った。

唯「紅葉した紅葉したっ」

梓「そうですねえ」

唯「ね、秋も悪くないよね。毎日秋でもきっと平気だよ」

梓「でも……でもちょっとだけわかんなくなっちゃうんですよ」

唯「うん」

梓「わたし、どこにいるのかなあって」

唯「あずにゃんはさ……夢……夢を見てるんだよ。わたしと手を繋ぎながらわたしと手繋ぐ夢を見てるんだ」

梓「……でも、いつかどっちか選ばなきゃですよね」

唯先輩はわかんないよって顔をした。
それから、わたしにもずっと秋が見えたらいいのになあって言った。
真っ白なため息を吐いた。


また少し思い出した。
唯先輩は、すごく退屈な気分の日、空っぽだねって言った。
せっかくの日曜日をテレビだけ見て終わらせちゃうような。
それはそれで別に悪い気はしない。
いつか、唯先輩とふたりで雨の日にテレビを見てたみたいに。
でも、今――といってもいつが今だったかなんてのはもうわからなくなっちゃったんだけど――は空っぽが怖い。
それで、わたしは逃げ出したんだ。
どこか、そう例えば、天国とかに。
それでも誰かがドアを叩く。
だんっ。だんっ。
誰も変わらなくて、季節だけが過ぎる。
たいていのことは上塗りで、色が、下にどんな色があったかなんてどうだってよくなる。
どうだっていいことは忘れる。
だんだん。


秋の日の放課後、わたしと唯先輩は少し寄り道して帰った。
公園のベンチに座って、話をしていた。
くだらない話。
唯先輩は自販機で何か買ってくると言って、何がいいかとわたしに聞いた。
わたしは、コーラにしたかったけど、大人のふりして缶コーヒーを頼んだ。
一番甘くて、あったかいやつを。
唯先輩がいない間、通りを眺めていた。
紅葉した街路樹、通りすぎる小学生やカップル。
秋は好きだった。
気温もちょっと寒いくらいでなんとなく心地良いし、食べ物もおいしいし、紅葉はきれいだ。
そういえば秋は別れの季節って言うな、とふと思いついた。
別れといえば、今年で先輩たちは卒業してしまう。
でも、それはまだ少しだけ先のことでどちらかと言うと冬とかの思い出になるんだろうな。
だから、もっと秋が好きになりそうだった。
そんなことをぼんやり浮かべたり沈めたりしているうちに缶を両手に持った唯先輩が戻ってきた。
ざくりざくり。
わざと落ち葉を踏んで歩いてくる。

唯「ぴとー」

梓「ひゃっ」

唯「わたしはコーラにしてみました」

梓「もう、ほっぺたするならあったかいのにしてくださいよ」

唯「えへへ、こっちはわたしのほっぺたが独占中です」

梓「わたしコーラがいいです」

唯「なんで?」

梓「缶コーヒーまずくなってそうで」

唯「失礼なっ」

結局、わたしは缶コーヒーを飲んだ。
胸のあたりが温まって心地良い。

唯「ううっ、さむ」

梓「だから、あったかいのにしとけば」」

唯「あったかいの」

唯先輩はわたしの方を指差す。

梓「缶コーヒーもうないですよ」

唯「そっちじゃなくて」

梓「じゃなくて?」

唯「あずにゃんっ」

梓「わっ」

唯「やっぱこれが一番あったかーいよっ」

梓「人前でやめてくださいよ……あ、人前じゃなきゃいいんだっていうのもなしですからね」

唯「うへえ、バレてる」

梓「唯先輩の言うことなんてわかりますよ」

唯「えへへ」

梓「何嬉しそうにしてるんですか。単純ってことですよ、ばかって」

唯「うわーん、あずにゃーん、あずにゃんにばかって言われたよー。なぐさめてー」

梓「はあ」

唯「あずにゃん、あずにゃんがなぐさめてくれないよー」

梓「気に入らないでください」

唯「あずにゃん、あずにゃ…………どっか行かないでよー」

ベンチを立ったわたしの後を唯先輩がついてくる。

唯「勝手にどっかいっちゃだめだよ」

梓「別にただ空き缶捨てに行っただけですよ」

なんとなくさっきのベンチに戻る気にもならず、わたしたちはどこへ行くともなく歩き出した。
街路樹の紅葉の下を通る。
いろんな色の落ち葉の降る中を歩くのはなかなか気分がよかった。

唯「春になれば、このあたりも桜でピンクになるんだよね」

梓「そしたら卒業ですね」

唯「そうだね」

梓「唯先輩は卒業するの楽しみですか?」

唯「えーそんなことないよ。あずにゃんともっと一緒にいたいし」

梓「いや、そうじゃなくてですね、なんていうか、ほら大人になるの」

唯「それは楽しみかな。お酒も飲めるしっ。あでも、放課後ビールタイムなんかはちょっとやだなあ」

梓「そのときはもう放課後じゃないですって」

唯「あ、そっか」

梓「まったく……唯先輩は気楽で羨ましいです」

唯「へへーん。もっと羨めー羨めー」

梓「ばかともいいますけど」

唯「あずにゃーん、あずにゃんが……」

唯先輩が抱きついてくる。
今度は拒まなかった。

唯「あっ、あそこ落ち葉がいっぱい溜まってるよ」

唯先輩は駆け出していった。

梓「……あ」

わたしはその背中を見つめていた。
なんだかほんとに遠くなってしまう気がして。

唯「あずにゃんもほらー、落ち葉蹴ろうよっ」

梓「……はいはい」

仕方なく唯先輩の方に向かった。
いつか違う意味で、仕方なく唯先輩たちと会ったりするようになるんだろうか。

唯「じゃーんぷっ」

落ち葉が跳ねる。
とても悲しげな音をたてて。
わたしも落ち葉の山の中に足を踏み入れた。
くしゃり。
1歩進むたびに落ち葉の崩れる音が耳の奥のほうで響いて、苦しくなる。
落ち葉の隙間にはきっとたくさんの空っぽが凝縮されているから、あんなに悲しそうな声を上げるのだろう。

唯「あずにゃん、どうしたの?」

梓「え、いや、別に」

唯「だって震えてるよ」

梓「これは……その……寒くて」

唯先輩はわたしの手を引っ張って自分の方に引き寄せた。
ばりばりばりっ。
落ち葉の裂ける轟音。
また、いつもみたいに抱きしめられるのだろうと思っていたのだけど、違った。
唯先輩はわたしの顔をじっと見つめた。
あまりにも長い間そうするものだからわたしは顔中真っ赤になって、もう十分あったかいです、って言いたいくらいだった。

唯「すごくあったかくなる方法知ってるんだ、知りたい?」

梓「あ……はい」

唯先輩の顔がだんだん近づいてきて、わたしはどうしたらいいかわからなくなって目を閉じた。
それで……。
いしいいいやきいいいもおおおお。

唯「あ」

梓「あ」

わたしたちは顔見合わせて、仕方ないねって笑った。
まだ、いい意味の、仕方ない。

唯「お芋食べよっか。きっとすっごくあったかいよ」

梓「そうですね」

二人で焼き芋を買って食べながら帰った。


唯「ここで、またテストですっ。さあ、何が見えますか?」

もう一度、真っ白な部屋。
わたしは椅子の上にいて、唯先輩は白衣に円盤。
先輩の持つボードにはやっぱりぐにゃぐにゃが。
発光。
…………赤、黄、橙。

梓「…………」

唯「え?」

梓「…………」

唯「聞こえないよ」

梓「…………です」

唯「なに?」

梓「わかんないです……」

唯「それはだめだよ。とにかくなにか言わなきゃ」

梓「……だって」

唯「ほら」

梓「……紅葉」

唯「ざんねーん……やっぱりまだ治らないね」

唯先輩はわたしの方をじっと見てまた言った。

唯「……ごめんね」

梓「なんでごめんねなんですか」

唯「あずにゃんをこうしちゃったのはわたしなんだ」

梓「唯先輩が?」

唯「わたしがあずにゃんの頭にね、きらきらをさしたから」

梓「きらきら……電飾?」

唯「うん」

梓「どうして……」

唯「あずにゃんもそうしたいと思ってると思って」

梓「それでダメだったから治そうとしてるんですか?」

唯「ううん。違うよー。わたしはいいって思ったんだけど、でもそれはあずにゃんが決めることだったんだよ」

梓「わたしが?」

唯「ほら、これ、きっとあずにゃんにとって一番大切なものだよ」

頭のとこについた円盤をくれる。

唯「Disc1、だよ」

梓「でも、こんなものもらっても、どうすれば……」

唯「また頭の中に入れるんだ」

梓「また?」

唯「そうだよ、昔はあずにゃんの中にあったんだから」

梓「わたしの中に」

唯「うん。あずにゃんの思い出だよ」

梓「わたしの」

唯「わたしね、あずにゃんの思い出みんなのぞいたよ。きれいな景色がいいなあってがんばってつくったけど、やっぱりきれいな景色ってちょっと、ちょーっとだけやだな」

梓「なんでですか?」

唯「だってね、食べられないもん。ずるい」

唯「でも、いいんだよ、それは。だって、もうわたしあんまりわたしじゃないんだもん。髪黒くしたほうが似合うかなあ?」

梓「えと……それは……」

唯「あはは、じょーだんだよー。あずにゃんをちょっと困らせてみたかったんだ」

梓「いつも困らせてるじゃないですか」

唯「えへへへ」

梓「てれるところじゃないですよ」

唯「というわけでこれはあずにゃんにお返ししますっ」

梓「……あの」

唯「なに?」

梓「その……いらないです」

唯「え、なんで?」

梓「……たぶん、耐えられないようなきがします、もう」

唯「そんなことないよもとはあずにゃんのだもん」

梓「わたしのだから辛いんですよ。それに……もう唯先輩に会えなくなるような気がして……」

唯「大丈夫、ほら」

ねっ。
唯先輩がわたしの手をとって笑った。
それでやはりまたわたしは安心してしまうのだ。

唯「いくよ。目つぶってて」

唯先輩はキスをした。
わたしの唇に。
そういうことはあるもので、それがなんとなくわかってたんだけど、その行為はたぶん必要ないことだった。
でも、もしそれがなかったらわたしはどこにも戻ることはできなかったんだろうな。
空っぽの仲間になって。

ずっと唯先輩だった誰かの姿がだんだんとぼやけていく。

唯「ね、会えるよ……会える。いいこと教えてあげるね。
思い出に戻っても未来は変わんないけどね、未来を変えれば思い出も変わるんだよ。
だから、会えるよ」

わたしは泣いた。
たくさん。たくさん。
頭がんがんして、痛い。


全部思い出した。
わたしが高校生だった頃のこと、二人で落ち葉を踏んづけたこと、先輩たちが卒業したこと、わたしも同じ大学に行ってバンドをしたこと、わたしたち大人になったこと、言葉に出来ない空っぽがすぐそこまできていたこと、唯先輩と紅葉を見に行こうとしてでも雨だったこと、唯先輩が髪を黒く染めたこと、唯先輩がわたしの頭に電飾を差し込んでDisc2を回し始めたこと、昔唯先輩だったあの人はだんだん唯先輩じゃなくなって思い出なんて呼ばれるようになったこと、秋に閉じ込められたこと、唯先輩がわたしを治そうとしてくれたこと、二人で冬を紅葉させたこと、昔唯先輩だった人がDisc1を返してくれたこと。
でも、少しぐちゃぐちゃになってしまっているんだ。
どの唯先輩が、どの思い出が、Disc1でDisc2だったのか。
それで、最後にちょっとしたことを思い出した。
唯先輩(またはだった)が言ったこと。

誰かが扉を叩く。
思い出をなくしたんじゃなかった。
すごいきれいな思い出があって、それでもわたしたちは変わってしまえるんだ。
扉が開く。
あずにゃんっ!
さて、その唯先輩はどっちの唯先輩だったのか?
唯先輩だったらこう言うんだろう。
両方じゃだめなのかな。

あの日の落ち葉の裂ける音は優しかったような気が少しだけした。
……明日の天気は……ざあああぁぁ……もっとよくなるよ……よくなる…………きっと、きっとね。
紅葉。


あずにゃんっ!
唯先輩はわたしの名前を呼んだ。

唯「紅葉を見に行こうよっ……紅葉っ」

梓「もう、秋は終わりましたよ」

唯「じゃあ……えと、昔紅葉してた木を見に行こうっ、それならだいじょうぶだよね?」

梓「まあ」

二人で外に出た。


あずにゃんっ!
唯先輩はわたしの名前を呼んだ。

唯「紅葉を見に行こうよっ……紅葉っ」

梓「もう、秋は終わりましたよ」

唯「じゃあ……えと、昔紅葉してた木を見に行こうっ、それならだいじょうぶだよね?」

梓「まあ」

二人で外に出た。

唯「みんな待ってるんだよ」

梓「みんな?」

唯「そうだよ。ムギちゃんが飛び切りのお茶持ってきてくれて、憂がサンドイッチ作ってくれて、澪ちゃんとりっちゃんは場所取りまでしてくれたんだから」

梓「どうして、いきなり」

唯「前に言おうとしたのに、あずにゃん酔っ払って倒れちゃうんだもん」

梓「いや、あれは……」

唯「まったくもう」

梓「そういえば、唯先輩、髪戻したんですね。それにヘアピンも」

唯「うん。秋になるために」

梓「秋? 今だけそうするってことですか……って」

唯「……むーむー」

梓「なんでほっぺた膨らませてるんですか」

唯「赤くなってる?」

梓「ぜんぜん」

唯「うーん。あとは赤だけなのになあ。ヘアピンの黄色と髪の栗色、でもやっぱ赤がないと……」

梓「赤……」

ふと、思いついてわたしは唯先輩の手を握った。
あったかい。

唯「……あ、紅葉…………させられちゃった」

唯先輩がわたしを抱きしめる。

唯「あずにゃん秋病だよ。ずっと秋に閉じ込められるんだ」

梓「……唯先輩に」

わたしはなんだかすごく安心して泣いてしまう。
涙が溢れないように目を閉じると脳みその裏側で、電飾……ネオンの光が溶けた。
赤黄色の雪が雨に変わって流れだし、唯先輩のピンクの舌がわたしの瞳のすぐそばで振れた。

唯「あずにゃんの涙、変な味がする」

梓「……秋の味ですよ」

頭の中で最後のノイズが。
……め、あめふるよっ……傘を……晴れて……雪が、傘を紅葉が……広がっ……じぃいいいぃっ…………ぷつん………………

これからもっとずっと寒くなる。
冬に。
わたしたちは震えて、また強く手を握った。

紅葉?


おしまい




最終更新:2012年12月17日 01:11