放課後



梓「じゃあ私部活いくね。バイバイ純」

純「お疲れー、また明日ねー」

梓(学園祭も近いし気合いれなきゃ!唯先輩今日はちゃんと練習してくれるかなぁ……)テクテク

 ヒソヒソ・・・ボソボソ・・・

梓(ん?空き教室から話し声が………憂と和先輩?)


和「なるほど……じゃあその件に関して王女に危険はなかったのね?」

梓(王女……?)

憂「はい、問題ありません。ユイ王女も楽しんでいらっしゃいました」

梓(!!?)

和「そう、なら良かったわ。じゃあ私そろそろ生徒会にいくけど……ウイはもう帰るの?」

憂「そうですね、今から買い物に行きます。王女の好きなアイス買って帰らなくちゃ」

和「ふふっ、ユイ王女も今やすっかり普通の女子高生ね」

憂「ええ……ずっとこんな平和な日が続けばいいんですけど……」

梓(な、なんの話してるの?二人とも……)

和「じゃあウイ、また明日ね。気をつけて帰るのよ」

憂「はい。ノドカさんもお気をつけて」


梓(あ……二人とも行っちゃった………い、いまの話はなに?ユイ王女って……?)

純「あれ?なにしてんの梓?廊下でボケーッと突っ立って……部活行くんじゃなかったの?」

梓「あ、純……。いま憂と和先輩が話してるの聞こえちゃったんだけどね、

  なんか『ユイ王女』とか言ってたみたいで……」

純「………あちゃー、梓も聞いちゃったかー………」

梓「えっ!?純、なにか知ってるの!?」

純「いや、でも私の口から言うのもなー」

梓「教えてよ!気になる!」

純「………誰にも言っちゃダメだよ?中学の時に憂から聞いたんだけどね………」

梓「う、うん………」ゴクリ



 ____________




 コンコン

ノドカ「私よ。ウイ、開けてちょうだい」

 ガチャ

ウイ「どうでした?ノドカさん……」

ノドカ「ダメね。今や王宮の大半が大臣の息のかかった人間よ。

    このままじゃユイ王女の命は風前の灯火ね」

ウイ「そんな………!」

ノドカ「一刻も早くユイ王女を連れてこの国を出たほうがいいわ。しばらく外国で身を隠しましょう」

ウイ「外国って言っても……どこに?」

ノドカ「日本に行きましょう。住居はもう手配してあるから」

ウイ「日本……」

ノドカ「この王宮に比べたらかなり手狭な屋敷になるけど……王女には我慢して頂くしかないわね」

ウイ「王女はそんなことに不満をおっしゃるような方ではありませんが……さすがに心苦しいですね……」

ノドカ「ウイ、あなたはユイ王女の妹として一緒にその家に住みなさい」

ウイ「!!そ、そんな……私などが王女の妹だなんて……畏れ多いです!」

ノドカ「……そもそもあなたは王女に容姿が似ているから影武者として仕えることになったのでしょう?

    日本で暮らすなら姉妹ということにするのが一番怪しまれないのよ」

ウイ「で、でも……私のような下賤の者が王女と同じ屋敷で暮らすなんて……」

ノドカ「……あなたは王女に一人で生活しろって言うの?食事や身の回りの世話をする人間が必要でしょ?

    ウイなら家事も料理も得意だし適任だわ」

ウイ「………わかりました」

ノドカ「日本では姉のことを『オネエチャン』と呼ぶらしいわ。

    今からユイ王女をそう呼ぶように練習しておきなさい」

ウイ「そ、それこそ絶対に無理です!!王女に対してそんな呼び方をするなんて……!」

ノドカ「ウイ……もしユイ王女の素性がバレてしまったら王女の命を危険に晒すことになるの。

    私だって日本に行ったら王女の友人として接することになるわ。失礼だけど『ユイ』と

    呼び捨てにさせてもらうしかないのよ。これは王女の命を守る為、仕方のないことなの」

ウイ「……そうですよね。すいません、ノドカさんも辛いのに………」

ノドカ「さて、あまりのんびりもしてられないわね。ウイ、悪いけど荷物をまとめるのはあなたに任せるわ。

    私は自分の住む家の手配をしなくちゃいけないしね」

ウイ「あれ?ノドカさんは私達と一緒に住まないのですか?」

ノドカ「家の外を警護する人間も必要だからね。私はあなた達の住む家の近くに住んで王女の警護に務めるわ」

ウイ「……日本へ行くのは王女と私とノドカさんの三人だけになるんですか?」

ノドカ「いえ、私達三人の他にも信頼できる人間を二人だけ連れていくことにするわ」

ウイ「二人………ですか」

ノドカ「正直人員は全然足りないんだけど、大臣の息がかかっていないと確信できるのはその二人しかいないのよ。

    下手な人間を連れて行って大臣側の人間だったら目も当てられないからね」

ウイ「大臣の手の者はそんなに………」

ノドカ「年齢的にその二人にはユイ王女とあなたの両親というポジションで一緒に日本に来てもらうわ。

    ただし、彼らには大臣側の動向を探ってもらうという任務があるから基本的にほとんど家には戻れないと思う。

    だから家の中でのユイ王女の警護はあなた一人でするつもりでいてね?」

ウイ「はい」

ノドカ「さあ、近日中にはこの国を出るわよ。ウイ」

ウイ「………わかりました………」

ノドカ「……あなたがそんなに暗い顔していてどうするの?王女はもっとお辛いのよ?」

ウイ「わかっています。でも、なんであのお優しいユイ王女がこんな目にあわないといけないのかと思うと……」グスッ

ノドカ「いつの時代、どこの国にも権力に目がくらむ馬鹿というのは現れるものよ。

    今は私達が身を隠すしかないけど、いつまでも奴らの思い通りにはさせないわ。

    この国のトップに相応しいのはユイ王女以外ありえないんだから。そうでしょ?」

ウイ「………はいっ!」



 数日後



ウイ「ここが……今日から私と王女が住む家……」

ノドカ「こら、王女じゃないでしょ?」

ウイ「あ、すいません……私とお姉ちゃんの家ですね」

ノドカ「そう、ここでは王女は『平沢唯』、あなたは『平沢憂』よ。

    二人ともごく普通の日本の学生なんだからね?私は『真鍋和』。ちゃんと憶えなさいよ?」

ユイ「ウイ~!お腹すいたよぉ」

ノドカ「ほら、『お姉ちゃん』がお呼びよ」クスッ

ウイ「はいっ!お姉ちゃーん、すぐに晩御飯作るから待っててね♪」

ノドカ「ふふっ、その調子よ」



 数か月後・病院



ノドカ「ウイ!王女の容態はどうなの!?」

ウイ「あ……ノドカさん………ご、ごめんなさい……グスッ……わ、私がついていながら………」ポロポロ

ノドカ「いいから!王女の容態を教えなさい!!トラックに撥ねられたって聞いたけど……!!」

ウイ「命に別状はありません……奇跡的に外傷もほとんど無いようです………

   ただ、頭を打たれたようで記憶が………」グスッ

ノドカ「まさか……記憶喪失!?」

ウイ「はい………」

ノドカ「なにも憶えていらっしゃらないの?」

ウイ「最近のことは憶えていらっしゃるようです。私やノドカさんの名前を呼んでくださいましたし。

   ただ、日本に来る前のことは憶えていらっしゃらないようで………ご自身が王女だということも……」グスッ

ノドカ「……つまり今ユイ王女はご自身のことを、普通の日本の女学生だと思ってる、ってことになるのかしら?」

ウイ「そうだと思います」

ノドカ「なるほど……これはむしろ好都合かもしれないわね………」

ウイ「ノドカさん!?何てことを………!!」    

ノドカ「王女は天真爛漫な方でしょう?実は私やウイからじゃなくて

    王女ご自身から周りに素性がバレるんじゃないかって心配してたのよ」

ウイ「だからって好都合だなんて!!」

ノドカ「そうね、言い方が悪かったわ……ごめんなさい。でも王女の素性がバレないということは

    それだけ命の危険が減るということなのよ。………本国に戻る目処が付くまでは

    ご自身が王女だということは忘れていて頂きましょう。

    普通の日本の学生『平沢唯』であると思い込んで頂く方が王女は安全だわ」

ウイ「………わかりました。それがユイ王女の安全につながるのでしたら………」



 ____________




梓「ゆ、唯先輩が……王女様?でも言われてみればあの美貌……それにちょっと世間知らずだったり

  高貴な雰囲気があったり納得できるかも……」

純「(美貌は……まぁいいとして……高貴?)ちょっと梓、いまの話真に受けてんの?」

梓「………へ?」


純「憂と和先輩が中学の時に作った脳内設定だよ」


梓「………………はぁっ!?脳内設定!?」

純「うん。あんただって唯先輩や憂の昔の写真とか見せてもらったことあるでしょーが。

  普通の日本の子供だったでしょ?」

梓「え?え?なに?じゃあさっきの話は全部ウソってこと!?」

純「だから憂が和先輩と二人で作った設定だってば。唯先輩は国を追われ記憶を失って

  自分を日本の庶民だと思いこんでる王女様。で、二人がその護衛っていう設定なんだってさ。

  憂と和先輩が二人っきりの時はその設定の役になりきって遊んでるらしいよ?」

梓「……その設定、唯先輩は知ってるの?」

純「唯先輩には内緒なんだってさ。憂と和先輩が二人でこっそり楽しんでるみたい」

梓「そ、そうなんだ………あっ、私そろそろ部活いかなきゃ」

純「梓、わかってると思うけど今の話、誰にも言っちゃダメだからね」

梓「うん、わかってる。じゃあね、純」



梓「………………」ピッピッ

 プルルルル……プルルルル……ピッ

梓「あ、もしもし憂?ちょっと話があるんだけど………」



 翌日



梓「おはよー憂、純」

憂「おはよう、梓ちゃん」

純「おいーす」


憂「………アズサちゃん、昨日の部活での王女はどんなご様子だった?」

梓「異常なし。いつもどおりに楽しんでいらっしゃったよ」

憂「そう。良かった……もしなにかあったらすぐに私かノドカさんを呼んでね?

  アズサちゃんは宮廷音楽家で荒事には向いてないんだから」

梓「ウイ……私だっていざという時にはユイ王女の為に命を捨てる覚悟はできてるよ……」

憂「アズサちゃん………」




純(参加しやがった……)




 おわり



最終更新:2018年02月12日 18:49