---あまりもの劇場---
純「あまりものとか言うなーっ!スミーレだってなぁ、必死にけなげに生きてるんだぞ!」
純「ほら、今日はどんどん食べてよ」
菫「いいんですか?」
純「いいのいいの、わたし先輩なんだし! たまにはーさっ」
菫「はあ、ありがとうございます」
菫「今日だってお昼ごはん、純先輩の分際でおごってくれたんですしね」
純「分際!?」
菫「そそそ、そんなこと言ってないですよ、聞き間違えじゃないですか?」
純「だよね、スミーレはそんなこと言う子じゃないもんねー」
菫「うぜえなあ……」
純「え、え、え、うざ?」
菫「いや、ちがうっ……あっ!ほら、あそこ!すごいおもしろい髪型の人いる!」
純「え、どこ、どこ、どこ?」
菫「お前だよっ!」バシン
純「……え、え、何が起こったの?」
菫「ごめんなさい、つい……」
純「つい!?」
菫「ダメじゃない!わたしの右手!まだはやいよ!」バシバシ
純「まだはやい!?」
菫「あ、なんでもないです」
純「もしかしてスミーレわたしに下克上しようとしてない?」
菫「そ、そそそんなとんでもないですっ!」
菫「桜が丘女子高の規範のような生徒であり軽音部のまとめ役ひいてはエースである純先輩に対してそんなことぜーったいに思ってません!……そう、絶対に……絶対に絶対に……絶対…………絶対してやる…………」
純「あ、これ下克上されるな」
純「あー、スミーレおはよー!」
菫「あ、おはようございます」バシンッ
純「いたっ……え、なに?」
菫「ごめんなさい……つい」
純「え、ついって!?」
菫「申し訳ございません、つい……隙があったもので」
純「隙? 隙があったら殴られなきゃいけないの!?」
菫「すいませんすいませんすいません」
純「はーわかったよ、許す。もうしないでね」
菫「はい、もうしないです。ほんとについやってしまっただけなので、つい……」
純「だからついって言うな!」
純「心の中ではいつもわたしを殴りたがってるみたいに聞こえちゃうよ?」
純「もちろん、スミーレがそんなこと思わない優しい子だってことはわかってるけどね」
菫「そうですよね、時期尚早でしたよね!」
純「言っとくけど先輩を殴るのに適した時期というのはないからね」
菫「鳴かぬなら殺してしまえホトトギス」
純「え?」
菫「あ、間違えました!」
菫「鳴かぬなら鳴くまで待とうホトトギス、でしたね、あはは」
純「そっちでも許さないけどね!」
おしまいのおしまい
---あまりもの劇場Ⅱ---
純「あ、そう……? あまりものってわたしのこと……」
純「澪先輩見てくださいよ、これ!」
澪「ああそれは購買で一日3つしか販売してないという伝説のゴールデンチョコパンじゃないか!」
純「そうですよ」
澪「実際に知り合いが買ってるのを見るのははじめてだよ、すごいな」
純「そうです!わたしはすごいんですよ!」
純「すごいわたしはすごいから半分澪先輩にあげます」
澪「あ、なにやってるんだ!ばか!」ポカリ
純「いたっ、なんですか」
澪「ゴールデンチョコパンはこうやってすごい長いのを長いまま食べるからすごいのであってそれを半分にしたらそれはもうただのパンだろ!」
純「いや、別にただのパンではないと思いますよ」
澪「いや、ただのパンだよ」
純「っていうかただのパンってなんですか」
澪「ただのパンは…………食パンだよ」
純「絶対に食パンではないと思いますけど」
澪「いや、もうそれは食パンだね、食パン以外の何者でもない」
純「食パンではないです」
澪「食パン!」バシン
純「食べ物で人を叩くな!」バシン
純「みーお先輩っ!」ニヤニヤ
澪「あ、鈴木さん」
純「あのー、カチューシャの人からちょっと小耳にはさんだんですけどぉ、澪先輩って怖い話苦手なんですってねー」ニヤニヤ
澪「なんでにやにやしてるんだ?」
純「いやね、わたしちょっとした話持ってるんですよ! こ、わ、い話」ニヤニヤ
澪「あ、わかった!宝くじだろ!」
純「え?」
澪「宝くじがあたったからにやにやしてるんだな!」
純「いや、あの、廃病院……」
澪「あーこれ絶対そうだ!けっこう大金あたったんで周りの人に気づかれるとたかられるから黙ってるけど流石ににやにやが抑えられないパターンのやつだ!」
純「廃……廃病院で……カルテにわたしの名前が……」
澪「他のみんなは欺けてもわたしは欺けないぞ!」
澪「あ、そういえば思い出したけど、わたしって鈴木さんの憧れの先輩だったな!ずっと憧れの先輩でやってきたよな?」
純「はぁー……」
純「はい、千円です。みんなには秘密ですよ」
澪「ちなみにいくら当たったんだ?」
純「二口買って三万円です」
澪「おぉ……」
澪「あ、鈴木さんだ!」
澪「話しかけよう……鈴木さー……あ!」
澪「あれ?隣に男の人がいる」
澪「鈴木さんもなんかお洒落してるし」
澪「髪もいつものくるくるじゃなくてまっすぐセットしてるな……」
澪「彼氏かな?」
澪「……」
澪「……」
澪「……」
澪「……」
澪「……」
澪「……眠れない」
澪「あーだめだ」
澪「今日の鈴木さんのあれが気になって眠れない」
澪「あれはどっちだったんだろうな……」
澪「うーん、たぶん、そうなんだろうか」
澪「どうだろ、うーん」
澪「だめだ!気になる」
澪「どっちだろ?どっちかな、んー……どっち」
澪「どっち……どっち、どっちだろ?」
澪「でも、たぶんそうだよな」
澪「流石にそうだ」
澪「あんなお洒落だったし」
澪「だから鈴木さんのあれはそうに決まってる」
澪「鈴木さんのあの髪型はわたしをリスペクトしてたんだろう」
純「いや、あれお兄ちゃんですよ」
澪「え、そうなのか?」
純「そうです」
澪「え、じゃあやっぱりあの髪型もわたしをリスペクトしたわけじゃない?」
純「はい。昔からのです」
澪「あーなんだー!なんだなんだなんだー」
澪「そっかあ、なんだー。わー恥ずかしいな」
純「あはは」
澪「あ、じゃあ、もしかして、鈴木さんのお兄さんの髪型はわたしをリスペクトし……」
純「絶対してません」
澪「絶対してないか」
おしまいのおしまいのおしまい
最終更新:2018年02月25日 22:48