梓「唯先輩、いじめられてるんですか?」

唯「じっとしてる練習をしてなさいって、和ちゃんが」

梓「放置プレイですか」

唯「ちょっと静かにしててくれるかな」

梓「仕方ないなぁ、私が協力してあげますよ」

唯「私はいいから、自分のクラスの出し物を手伝ってきなよ」

梓「だって唯先輩だけ劇の稽古から除け者にされて可哀想じゃないですか」

唯「私だって稽古してるもん」

梓「木の役を与えられる人なんて初めて見ましたよ」

唯「私にしかできない役だって言われたもん」

梓「そんな枝を持って突っ立ってるだけの役を押し付けられて」

唯「そっとしといて」

梓「役を与えようにもセリフも演技もロクに覚えられない、
  小道具作りもマトモにできない役立たずだからって酷くないですか?」

唯「そういう本当っぽいこと言うのやめてくれる?」



梓「じゃあ木になりきって、何があっても動かないでくださ 痛いっ!?」 バシッ

唯「風が強かったから」

梓「枝を振り回さないで下さいっ」

唯「当たり前のようにスカートに手を突っ込もうとしないで下さい」

梓「私、木の股に手を突っ込まずにはいられないんですよ」

唯「きちがいだね」


唯「邪魔だからあっち行って」

梓「ご存知の通り、私って木フェチじゃないですか」

唯「初めて聞いたよ」

唯「ていうか人の話を聞いてよ」

梓「もうちょっと木になりきって下さい」

唯「校門のところにもっと立派な木があるから、そっち行ってきなよ」

梓「肛門のところですか」

梓「なかなかマニアックな部分が好きなんで あぶなっ!!」 ブオンッ

唯「今日は風が騒がしいね」

梓「どうやら風がよくないモノを運んできちまったみたいだ」



梓「子猫が木にじゃれついただけじゃないですか」

唯「じゃれつくだけで済みそうになかったもん」

梓「お腹をすかせた子猫が樹液をすすろうとしただけですよ」

唯「子猫って樹液をすするような生き物なの?」

梓「飢えた獣は木の皮すら食らって生き延びるんですよ」

唯「可愛い子猫ならじゃれつかれても平気なんだけどなぁ」

梓「あいつら可愛い顔してネズミとって食ったりえげつない連中なんですよ」

唯「うそだ」

梓「その点、私は見た目とおり愛らしいから大丈夫ですよね」

唯「あずにゃんはただのケモノだよ」

梓「除け者の役を押し付けられたくせに ぶ っ」 ゴ スッ

唯「やれやれ、木の役は大変だなぁ」

梓「とうとう普通に殴りつけられた」

唯「木だけにね」

梓「はい?」

唯「気に障ったんだよ」

梓「あんまりうまくないですね」



梓「唯先輩は集中力とか忍耐力とか、そういうのが足りないんですよ」

梓「ぜんぜん木の気持ちになりきれてないじゃないですか」

唯「あずにゃんは人としてどうかと思う」

梓「そんな精神力じゃ本番中にいろいろやらかして劇を台無しにしちゃいますよ」

唯「むしろ私の稽古の時間が台無しにされてるんだけど」

梓「稽古ってただボサッと突っ立ってるだけじゃないですか」

唯「さっきからなんか邪魔が入るんだよ」

梓「そこで私の出番というわけですよ」

唯「あずにゃん自分のクラスの手伝いしなくていいの?」

梓「唯先輩、ちょっとこのスケッチブックを持ってみてください」

唯「なにこれ」

梓「集中力を高めるメンタルトレーニングみたいなやつですよ」

唯「ほんと?」

梓「これをこう、上に掲げてみてもらえます?」

唯「こんな感じ?」

梓「表紙をめくってみて下さい」

唯「なんか書いてある」 ペラッ

唯「……フリーおっぱい?」

唯「なにこ 梓「今だ!!」 グニッ

唯「ぎゃあああああああああ!?」 ドカッ バスッ

梓「痛っ!? ちょっ、タイム!!」 モミモミ

唯「あああああああ!!」 ガッシ ボカッ



梓「キズ物にされたので責任を取って下さい」 ハァハァ

唯「キズ物にされたのは私のほうだと思うんだけど」 ゼェゼェ

梓「じゃあ私が責任を取りますから」

唯「退部するの?」

唯「それとも学校辞めるの?」

梓「わくわくしないで下さい」

梓「でも引退して普通の女の子に戻るのもいいかもしれませんね」

梓「同性婚が認められてる国だってありますし」

唯「そういうところがすでに普通じゃないよね」

梓「引退っていうか変態ですからね」 HAHAHA

唯「………」

梓「そんな睨まなくてもいいじゃないですか」

梓「ちょっとしたドッキリですよ」

唯「そんな可愛いイタズラじゃないよ」

唯「強制わいせつだよ」

梓「違うんですよ、そのスケッチブックをもう1枚めくってみて下さい」

唯「?」

梓「ちゃんと読んでみて下さい」

唯「おっぱいは世界を救う」

梓「スキあり!!」 ムニュッ

唯「ぎゃあああああああああ!?」 ガスッ ドカッ バシッ

梓「痛い痛い痛いっ」 グニグニ

唯「あああああああ!!」 ガッシ

梓「ちょっ、ギターはさすがに死

ゴ シッ



梓「愛が痛い」

唯「次はないからね」

梓「ギターケースで殴打するのはシャレにならないですから」

唯「身体をまさぐってくるのがもうアウトだけどね」

梓「女の子どうしだったらセーフみたいな風潮があるじゃないですか」

唯「あずにゃんは何なの?発情期なの?」

梓「違うんですよ、この間フリーおっぱいとかやらかしてた女子高生がいて」

唯「何に影響されたのか知らないけど、私を巻き込まないで」

梓「でも、揉むと大きくなるって言うから……」

唯「自分で揉んでたらいいのに」

梓「だから自分の手で揉んだじゃないですか」

唯「私に手を出しても効果がないでしょ」

梓「性的な興奮で女性ホルモンがいい感じになるんですよ」

唯「面と向かって性的興奮とか言わないで下さい」



梓「じっとしてる練習をするって言うから協力しようと思ったのに、
  なんでこんなボコボコに殴られなきゃならないんですか……」 グスッ

唯「しらじらしいなぁ」

梓「なんで一秒たりとも恥辱を耐え切れずにひっぱたいてくるんですか」

唯「泣きたいのは私のほうだからね?」

梓「私が思ってた展開とぜんぜん話が違うじゃないですか」

唯「それは知らないけど」

梓「こんなシチュエーションを逃すわけにもいかないじゃないですか」

梓「大人しく木を演じなきゃいけないところを後ろから責めるわけですよ」

唯「私もう帰っていい?」

梓「こうやって!」 ガシッ

梓「ちょっ、あずにゃん……」

梓「唯先輩だって後ろから抱きつくのが好きだったじゃないですか」

梓「自分が後ろからいじくられる気分はどうですか?」

梓「やだ……」

梓「ほら、唯先輩は木なんですからじっとしてて下さい」

梓「んぅ……」

梓「花びらがヒクヒク舞い落ちちゃいそうになってますよ?」

梓「やめて、誰かきちゃうよ」

梓「本当にやめちゃっていいんですか?」

梓「ほら、樹液がどんどんあふれてきましたよ?」


律「なにやってんだアイツ」

唯「さあ……」

紬「気が狂ったのかしら」

唯「木だけにね」

澪「気が狂ったのか……」



梓「ここの果肉もずいぶん大きくなってきましたね」

梓「やっ……」

梓「毎晩自分で育ててたんですか?」

梓「そんなことしてないもん……」

律「中野」

澪「おい、戻ってこい」

梓「今いい所なんですから邪魔しないで下さい!」 ハァハァ

澪「どっちかっていうとお前のほうが目障りなんだよ」

紬「そういうのは帰ってからやりなさい」

唯「それはそれでやめて」

梓「じゃあ唯先輩以外帰って下さい」

梓「2人きりでいい雰囲気だったのに」

唯「雰囲気最悪だったけどね」

梓「関係ない人は劇の稽古とやらに戻って下さいよ」

律「お前が自分のクラスに戻れよ」

澪「なんか出し物の打ち合わせみたいなのやってたぞ」

梓「じゃあ家に帰って続きをします」

唯「だめだからね!?」



律「なるほど、唯が木の役をやるというので役作りを手伝っていたと」

律「何があったのかさっぱりわからん」

澪「なんでお前の即興劇が始まったんだ」

梓「演技指導です」

唯「うわあ」

梓「だいたい木が人の服を着てるのがおかしいんですよ」

紬「そこまでリアリティを追及した劇じゃないから」

梓「唯先輩はメンタルを鍛えるべきだと思うんですよ」

梓「身体だけ大人になってる場合じゃないんですよ」

紬「それはわかるけど」

梓「情欲を持て余したロミオが木の股をジュリエットに見立てて
  想いを発散するシーンとかあったらどうするんですか」

律「ねえよそんなシーン」

澪「どんな劇だよ」

梓「じゃあジュリエットが木の枝をロミオに見立てて」

澪「やめろ!!」

梓「でもムギ先輩が脚本を書くっていうから」

唯「ありえなくはないけど」

紬「…………」

律「おい」


紬「大丈夫、そこまで直接的な表現はしないから」

唯「ちっとも大丈夫そうじゃない」

律「これ以上余計な演出を思いつかなくていいから」

澪「絶対やらないからな!?」

紬「木の棒を意味深に見つめるくらいならいいでしょ?」

律「できるか!」

紬「ナレーションでごまかすから」

澪「余計やめろ!」

紬「じゃあキスシーンくらいなら大丈夫?」

澪「いや、お前……」

紬「ていうか物語上、ここだけは譲れないからね」

律「キスくらいだったら……」

澪「おいっ!?」

律「いや、変なナレーションつけられるくらいならさ」

澪「うう……」

紬「計画通り」



梓「劇、ずいぶん気合い入ってるんですね」

澪「そりゃ、まあ……」

律「今のクラスで何かするのも最後になるし」

澪「ここまで来たら後に引けないし」

梓「………」

紬「大変だったのよ、主演の2人が照れたりデレたり」

律「照れてない!」

澪「デレてない!」

紬「シェイクスピアの話にずいぶん文句言ってたじゃない」

紬「話が回りくどいとか駆け落ちすればいいのにとか」

律「脚本家が変なセリフ言わせようとするからだろ……」

梓「それで、軽音部のライブのことなんて二の次ですか」

梓「軽音部のことも、私のことも忘れていってしまうんですか」

律「梓?」

憂「それより自分のクラスの出し物は手伝わなくていいの?」

梓「私は軽音部のライブのほうが大事なんです!」

梓「先輩たちも最後の学園祭で気合い入ってるって、わかってますけど」

梓「私は、私にとっては先輩たちと最後のライブかもしれないのに」

梓「こんなこと言うのワガママだって、嫌な子だってわかってますけど」

憂「じゃあこんなとこで油売ってないでそろそろ自分のクラスに戻ろっか」

梓「憂っ!?」



梓「何やってんのこんなとこで」

憂「梓ちゃんが何やってたの」

梓「唯先輩が木の役をやるって言うから手伝いを……」

憂「ウチのクラスの手伝いは?」

憂「放課後にクラスの出し物の打ち合わせするって言ったよね?」

梓「はい」

憂「部活と掛け持ちしてる子もみんな残って話し合ってたのに
  1人だけぶっちぎってお姉ちゃん達とキャッキャしてるなんて大した度胸だね」

梓「そういえば先輩たちは」

憂「劇の稽古に戻るって言ってたよ」

梓「唯先輩は?」

憂「幕が降りたら音もなく去る……!って言いながらどっか行ったよ」

梓「追いかけなきゃ」 ダッ

憂「 来 い 」 ガシッ

梓「はい」



梓「そういえば純の誕生日って知ってる?」 ズルズル

憂「急にどうしたの」

梓「そういえばちゃんとお祝いしてあげた事なかったなと思って」

憂「牡羊座らしいよ」

梓「誕生日は?」

憂「誕生花はレンゲソウらしいよ」

梓「えっ、憂も知らないの?」

憂「花言葉は心が和らぐ、とか私の幸福、とかそんな感じで」

梓「中学校も同じだったのに知らないの?」

憂「そんな細かい事より、お祝いしてあげる気持ちが大切だと思うよ」

梓「そうかもしれないけど」

憂「みんな、梓ちゃん捕まえてきたよ!」 ガラッ

純「えっ、みんな解散しちゃったよ」

梓「純、誕生日おめでとう」

純「アバウト過ぎるでしょ」




おわれ