唯「いやダメだよ」
唯「なに言ってるの」
梓「唯先輩から誘ってくれるなんて珍しいですよね」
唯「誘ってないし呼んでないんだけど」
梓「大学の寮って意外といい部屋なんですね」
唯「いや狭いから」
唯「一人でいっぱいいっぱいだから」
梓「いやあ苦労したんですよ、唯先輩の部屋探しあてるの」 ドサッ
唯「待って、その大きい荷物なに?」
梓「じゃあしばらく厄介になりますね」
唯「えっ、泊まっ……住むの?」
梓「すみませんね」
唯「どっちなの?」
唯「あずにゃんいつ帰るの?冗談だよね?」
梓「それより久しぶりに会ったのに抱擁やキスのひとつもないんですか」
唯「なんか嫌がってたみたいだし」
梓「すてきな天使にふれちゃっていいんですよ」
唯「そんなことよりどうやって大学に潜り込んできたの」
梓「そんなことって」
唯「部外者でしょ」
梓「女子大のキャンパスのセキュリティなんてガバガバですからね」
梓「まるで女子大生の下半身のように」
唯「いや真面目に」
梓「えっと、だから私服で女子大生に扮して」
唯「私服で大学生に見えるわけないでしょ」
梓「………」
唯「あのね、寮に部外者を泊めたりすると問題になるから」
梓「恋人が泊まりに来てなんの問題があるって言うんですか」
梓「愛にはいろいろな形があるって言い返してやればいいんですよ」
唯「そういう恋愛観的な問題じゃなくて」
梓「じゃあペットだということで押し通しましょう」
唯「ペットも禁止だから」
梓「朝起きたらペットのネコが美少女に変身していたみたいな設定で」
唯「禁止なんだってば」
梓「黙ってればわかりませんって」
梓「規則と処女膜は破るためにあるんですよ」
唯「私が怒られるんだけど」
梓「怒られるだけで済むならいいですけどね」
梓「最悪、退学処分になったりして……」
唯「…………」
唯「あずにゃん、隣に晶ちゃんって子が住んでるんだけどさ」
唯「どうしても泊まるならそっちに行きなよ、面倒見のいい子だから」
梓「大声出しますよ」
唯「私が大声出したいよ」
唯「じゃあ今日はもう遅いしさ、そろそろ」
梓「そろそろ夕飯にします?何か作りましょうか?」
唯「もうお風呂入って寝るところだったんだけど」
梓「背中とかいろんなとこを流しますよ」
唯「あのね、明日も朝早いから」
梓「ちゃんと起こしますから大丈夫ですって」
唯「ベッドも布団もひとつしかないし」
梓「好都合じゃないですか」
唯「ばかじゃないの」
梓「宿泊費を身体で払えばいいんですよね」
唯「待って」
梓「心の準備はできてますから」
梓「この日の為に下着も新調してきたんですよ」
梓「まあどうせ脱がされちゃうからあんまり関係ないんですけどね」
唯「えっとね」
唯「帰ってくれる?」
梓「えっ、いま、帰りなさいって……」
唯「うん」
梓「それって 『おかえりなさい』 って意味ですか?」
唯「あずにゃん日本語わかる?」
梓「ここは私の部屋でもあるからという意味で」
唯「違うってば」
梓「おかえりのキスは?」
唯「顔っ、顔が近い」
梓「海外だとフレンチキスなんて挨拶みたいなものなんですよ」
唯「この国だと強制わいせつも適用されるんだよ」
梓「別に減るものじゃないでしょう」
唯「口も減らないなぁ」
唯「落ち着いたら帰ってくれる?」
梓「じゃあさよならのキスを」
唯「………」
梓「あと要らなくなった下着とかありません?」
唯「わかった、じゃあ憂に私の恰好してもらえるように頼んでみるから」
梓「そういうことじゃないんですよ」
梓「実の妹に何をさせるつもりなんですか」
唯「逆に何をするつもりだったの」
梓「まあ百歩譲って憂でもいいですけど」
唯「いいの?」
梓「あっ、ちょっと嫉妬しちゃいました?」
唯「いや、本当に見境ないんだなって……」
梓「本命は唯先輩だけですよ」
唯「じゃあ例えば今夜は澪ちゃんが泊めてくれるって言ったらどうする?」
梓「………」
唯「試しにちょっと聞いてみる?」
梓「………」
ボスッ
梓「ぶほっ」
梓「ちょっ、なんでクッション投げつけるんですか」
唯「変態」
唯「あずにゃん、ちょっとそこ座って」
梓「唯先輩、またちょっと胸大きくなりました?」
唯「真面目に聞いて」
梓「なんで平沢家は思春期を過ぎても発育を続けてるんですか!?」
唯「座って」
梓「はい」
唯「学祭の時まで会わないって言い出したの、あずにゃんだったよね?」
梓「はい」
唯「なんで普通に会いにきてるの」
梓「だって我慢できなかったんですよ」
唯「ライブ近いのに何やってるの?」
唯「あずにゃん、部長でしょ?」
唯「他のみんなのこと、ちゃんと見てあげてる?」
唯「みんなあずにゃんと違って、バンド初心者なんでしょ?」
梓「……さわ子先生にも同じようなことを言われました」
唯「同じようなこと言われてるのに何でここに来たの」
梓「唯先輩、やっぱり先生に向いてるのかも知れないですね」
梓「正直、こんなだらしない人間に教職なんか務まるかよって思ってましたけど」
梓「身体だけじゃなくて、中身も大人になりつつあるんですね」
唯「………」
梓「強引に行けば、なし崩し的に泊めてもらえると思いましたけど」
梓「簡単に自分の部屋に人を泊めさせるような女じゃなくて安心しました」
唯「わかってくれたならそれでいいよ」
梓「じゃあ今晩だけ泊めてもらえます?」
唯「ダメだって言ってるでしょ」
紬「梓ちゃんが来てたの?」
唯「忍び込んできてた」
澪「なんか騒がしいと思ったら……」
唯「もう帰ったけどね」
唯「ていうか帰らせたんだけどね」
律「まだ見えるぞ、そこの下で歩いてるの」
澪「本当だ」
梓「まさか本当に追い出されるとは……」 トボトボ
唯「おーい、あずにゃーん」
梓「!」
唯「暗くなってきたから気をつけてね」
梓「唯先輩ー!」
梓「私、あきらめませんから!」
唯「ちょっ、聞こえてるからあんまり声を張り上げないで」
梓「絶対同じ大学に入って!」
梓「堂々と同棲できるようになってやりますから!」
唯「声、声が大きいってば」
澪「おいっ!!」
律「名前を出すな!!」
澪「フルネームで呼ぶな!!」
梓「それで、それで卒業したら一緒に……」
律「中野ぉ!!」
澪「待て!!」
律「逃げんな!!」
ダダダダダダダダダ
ザワザワ……
晶「何を騒いでんだよ今度は……」
唯「寮、追い出されないかな……」
紬「勝手に入ってきた賊が逃げ出しただけだからセーフじゃない?」
幸「さっき騒いでたのがこの前言ってた後輩?」
紬「ええ……うん、一応」
唯「急に後輩ができたり、部長やったりでいろいろ思い詰めてたみたい」
菖「面白そうな子だよね、あの子も」
幸「ここの大学に来るんでしょ?」
唯「たぶん……」
律「逃げられた……」 ゼェゼェ
澪「いや、結果的に駅まで送ってきたから」 ゼェゼェ
律「ていうか駅の近くで見失った」
唯「そっか」
紬「安心した?」
唯「まあ……」
晶「変わったやつばっかだよな、お前らの軽音部」
唯「でもギターは私より上手いんだよ」
菖「晶みたいな子だよね」
晶「どこがだよ」
菖「好きな先輩のとこに押しかけちゃうとことか」
幸「玉砕してもあきらめないとことか」
晶「………」
律「梓が晶みたいにばっさり髪切ってきたらどうする?」
唯「………」
晶「嫌そうな顔で人の顔を見るな」
唯「やれやれ、大変な一日だった」
ガチャ
梓「あっ、遅かったですね」
唯「………」
梓「ご飯にします?お風呂にします?それとも……」
このあと滅茶苦茶セッションした
久しぶりにカレッジを読んで大学編のやつを書いてみたくなった
(大学の話になってるのかどうかわからないけど)
最終更新:2018年12月28日 22:54