澪「また増え、てる……」

何ということだ。
ほんの僅かな期間……そう、たった一週間計らなかっただけなのに、そこに示された数字は前回のそれよりも明らかに多い。
こんなことが本当にあり得るのか。
何かの間違いではないのか。

澪「よっ、ほっ」

体勢を変えてみる……変化なし。
呼吸を整える……変化なし。

現実は、残酷だった。

澪「わたし……太っちゃった……?」

原因は何となく分かる。
そう、今の季節は何だ?……秋だ。
秋と言えば何だ?……食欲の秋だ。

澪「サンマ、栗、ぶどう……」

旬のものは当然に美味しいし、秋といえば実りの秋だし、そのうえ夏の暑さでバテていた体が健全なカロリーを求めだす頃。
それが秋という季節。
私もまた秋という季節に踊らされ、食欲に任せてパクパクと食べていた……気が、する。
ママが気を利かせて私の好物をたくさん買って来てくれたこともまずかった。

澪「…………ぁ」パクパク

言葉が出ない。
鏡に映る自分の顔が見る見るうちに青く染まっていく。
まずい。まずいまずいまずい。

律『あっらーん。澪ちゅわんったら、ちょっと見ないうちに丸っこくなっちゃってー♪』

律『その秋新作の肉襦袢、どこに売ってたの?私は着る気ないけどー、きゃはっ☆』

律『ぷに、ぷに、ぷに……おおうっ!せんせー、秋山さんがお腹にお肉を隠してまーすっ!』

律『みーおー、一緒にシーソーにでもあうっ!?』

澪「ダイエット、しなきゃ……!」

とりあえず頭の中に浮かんできた憎さ3倍増しくらいの律をたたき出し、私はそう誓ったのだった。

……

律「……というのが昨日の話みたいだなー」

澪「ほら、いつまで休んでるんだ!練習だ練習、カロリー消費だ!」

唯「澪ちゃんまたダイエットしてるんだ」

梓「それで今日はケーキを食べようとしないんですね……」

唯「美味しいのにね~」モグモグ

律「まったくだ」モグモグ

澪「い、いいから練習するぞ!私たちは軽音部なんだぞ!」

紬「ねえ澪ちゃん、一緒に食べましょう?このモンブラン、季節限定ですごく美味しいのよ?」

澪「う……」

紬「はい、あ~ん」

澪(モンブラン……大好物だ)

澪(ああ、何て美味しそうなんだろう……そうだ、一口……ひとくちくらいなら……)フラフラ

澪「……はっ!?だ、ダメだダメだ!その一口が命取りなんだ!」ブンブン

紬「そう……」シューン

律「あー、澪がムギを苛めてるー」

澪「そ、そんなんじゃない!練習するぞ、早くっ!」

律「とりあえずモンブラン食べ終わったらなー。澪ちゃんの分も私が食べてあげるから、あと30分待ってくれ」

澪「りーつー!」

梓「う~ん……」

唯「ん?どったのあずにゃん」

梓「いえ、澪先輩って本当に太ったのかなあって。見た目は本当に以前とあまり変わらないですよね?」

唯「そうだね~。澪ちゃんも体重計に乗るまでは気付かなかったみたいだし」

梓「でも何だか澪先輩、最近変わったような気がするんですよね……こう、色っぽく?なったというか」

唯「色っぽく……?」

律「ほほう、梓も気づいたか!」

梓「うわっ!?いきなり会話に入って来ないで下さいよ律先輩!」

律「まあまあ。それより梓、澪が色っぽくなったって言ったよな?」

梓「ええ、何でそう思ったのか自分でもよく分からないんですが」

律「ふふーん♪よし、それならこのりっちゃんが答えを教えてあげよう!」

梓「えっ?」

唯「りっちゃん分かるの?」

律「もちろんだ、伊達に長い間澪の幼なじみをやってないぜー。梓、ちょっとこっちに」チョイチョイ

梓「……何するんですか?」トテトテ

澪「こうなったら私一人でも練習してやる」ベーンベーン

澪「私の真の友はエリザベスだけさ……」ナデナデ

紬「澪ちゃん、私もダイエット付き合うから一緒にお茶しましょう?」

澪「ムギ……」

紬「今日のケーキはね、澪ちゃんが喜んでくれるかなって思って持ってきたの……。ほら、澪ちゃんってモンブラン好きでしょ?食べてくれると嬉しいな……」

澪「で、でも私は……」

律「みーおー」

澪「何だよ律、いまムギと話して――」

律「ドーン☆」ドンッ

澪「うわっ!?」

梓「にゃっ!?」

ムギュッ モニュモニュ

澪「ひやああああああっ!?///」ビクウッ

梓「むぐううううううっ!?」

梓(な、何このあったかくておっきくて……柔らかすぎる塊は!?)

梓(私の顔に二つの柔らかい何かがフィットして、呼吸が出来ない……!でも何か幸せな気分///)グリグリ

澪「あ、あずあずあずさあっ!?な、何やって――――ひゃうんっ!う、動くなあっ!///」

ムギュムギュ ムニュムニュ

唯「ふおお……りっちゃん、これは……」

紬「まあまあまあまあ!」キラキラ

律「あっはっは、そう!澪の体重が増えたのは、今までよりさらに胸がでかくなったから!梓が色っぽくなったって言ってたのはこれが原因だろうな」

唯「むう……澪ちゃんまたおっきくなったのかあ。私も最近追いついてきたと思ってたのにぃ」モミモミ

律「食った分の栄養が全部胸に行くんだよな……けっ、いいよな巨乳様は」

唯「希望は捨てちゃダメだよ、りっちゃん!」

律「うるへー!」ペターン


澪「どうでもいいから梓を何とかしてくれ~っ!///」

梓「むぐぐぐぐ……」ジタバタ

紬「まあまあまあまあまあまあ!」キラキラ

唯「6回!」

梓(ああ、何だろう……自分が帰るべき場所に帰ってきた気がする……ずっとこうしていたい……)ムニムニ

梓(でも……なんだか、いしきが、とおの、いて――――)ガクッ

澪「わああっ、梓っ!?大丈夫かっ!?」

唯「おおっ、ついにあずにゃんノックアウトー!澪ちゃんのおっぱいはすでに殺人級だというのかーっ!?」

紬「梓ちゃん、幸せそう……」ホロリ

律「綺麗な顔、してるだろ……?気絶してるんだぜ、それ」

梓「我が生涯に、一片の、悔いなしです……ふにゃあ///」

澪「それでお前の人生本当にいいのか梓あああああっ!ていうかもう、本当に何なんだよこれ~っ!?」

……

唯「りっちゃん、何か元気ないね。どうしたの?」

律「……あの騒動の後さ、澪泣いちゃったじゃん?だからお詫びに私がダイエット付き合うことになってさ……」

唯「えっ、結局ダイエットしたの?体重増えたのっておっぱいのせいなんでしょ?」

律「体重が増えたって事実は変わらないからなー。澪としては気になったんだろ」

唯「でもダイエットしたらおっぱいから先になくなっていくって言うよね~。あずにゃん泣いちゃうよ」

律「いや、それがさ……澪の奴、体重減ったのに胸のサイズは大きくなったままなんだよ」

唯「……へ?」

律「お腹周りとか二の腕とか……そこら辺の無駄な脂肪だけ削られたみたいで、腹立つくらいスタイル良くなってた」

唯「ほっほう……。でも何でそれがりっちゃんの元気のなさに関係してるの?」

律「いや……私もダイエット付き合ったって言ったじゃん?澪と同じような運動・食生活を一週間くらい体験するじゃん?」

唯「うんうん」

律「……ブラが、緩くなった」

唯「ああ~……」

律「…………」

唯「ドンマイ!りっちゃんもいつか花開く日が来るよ!」ポンッ

律「ちくしょ~!いっぱい食べておっきくなってやる~!」

おしまい


最終更新:2012年11月20日 23:21