唯「戸山さん、子供向けの曲で何か弾ける曲……あるかな?」
香澄「えっと……あ、じゃあ、きらきら星……弾いてみてもいいですか?」
唯「うんっ、いいよ♪ じゃあ、行くよ……」
そして、香澄のギターと唯の奏でるオルガンの音に合わせ、園児達の合唱が始まった。
唯「……いち、に、さん」
――じゃららんっ♪
香澄「……きーらーきーらー ひーかーるー♪」
唯「おーそーらーの ほーしーよー♪」
香澄「まーばーたーきー しーてーはー……」
唯「みーんなーをー みーてーるー」
園児「うん、たんっ♪ うん、たんっ♪」
園児「きーらーきーらー ひーかーるー♪」
全員「おーそーらーの ほーしーよー……」
香澄と唯の歌声に合わせ、カスタネットの音と、園児達の歌声が幼稚園中に響き渡り……。
園児「あー、ゆいせんせーのおうただー、みんな、いこー!」
園児「うんっ♪」
りみ「あれ? みんなー、どこいくのー?」
りみ、たえ、沙綾、有咲達4人の元を離れ、唯と香澄の側へと園児達が集まっていく。
りみ「みんな、行っちゃったね」
たえ「あははっ……うん、そうだね」
沙綾「平沢先生も香澄もすごいなぁ、見てよほら、子供たち、みんな楽しそうに歌ってる……」
有咲「香澄のおかげで助かったけど……なんか客を取られたって感じがするな……」
沙綾「こうなったら仕方ないか、私達も行こうよ」
有咲「ああ、そうだな……」
程なくして、手持ち無沙汰になった4人も唯達の元に集まり、合唱に交じることとなった。
先生「ちょっと、みんな……」
園児「あー、ゆいせんせーだ! ゆいせんせーがオルガンやってるー!」
園児「あのおねーちゃんたち、だーれー?」
園児「わたしたちもうたうー! ゆいせんせーといっしょにおうた、うたうのー!」
他の教室からも園児が駆けつけ、いつの間にか香澄達の周りには多くの園児が集まり、揃って歌を歌い始める。
――さながらそれは、小さなライブ会場の様相を呈していた。
そして、きらきら星の合唱が終わりを告げ……。
唯「あははっ、すごい人数になっちゃったね……すみません、他のクラスも巻き込んじゃって……」
先生「まぁ、平沢先生が歌うとこうなるのはよくあることだし……ね」
先生「いいわ、今日の予定は変更して、お歌のお時間にしましょう」
唯「はい……ありがとうございます」
園児「ねーねーゆいせんせー、きょうはぎたー、ひかないのー?」
唯「あ~、ごめんねえ、今日は先生、ギター持ってきてなくって……」
園児「ちぇー、そーなんだぁ……」
唯「ごめんねぇー」
唯の声に何人かの園児の残念そうな声が漏れる。
その声を聞いた香澄が、ある事を思い付き、唯に提案していた。
香澄「……あの平沢先生、もし良ければ、私のギター使って下さい!」
唯「え? で、でも……」
香澄「平沢先生ならきっと優しく扱ってくれると思いますし、何より私、平沢先生の生演奏、聴いてみたいんですっ」
唯「…………いい、の?」
香澄「はいっ♪」
唯「……うん、ありがとう、じゃあ、少しだけ借りるね」
その独特の形状故に唯が普段愛用しているレスポールとは感じが違うが、それでも唯はすぐに対応し、その指からギターの音色が紡がれた。
――じゃらららんっ♪
唯「ふふっ……可愛いギターだね、戸山さんに出会って、すっごく嬉しそうにしてる……」
有咲「分かるんですか? ギターの気持ち」
唯「うん、なんとなく、だけどね」
香澄「えへへ……平沢先生……私のギター、可愛がってあげて下さいっ」
唯「うんっ! よろしくね!」
――じゃららんっ
それはまるで、唯の問いかけに対する返事のようだった。
―――
――
―
唯「じゃあみんな、何か歌いたい曲、あるかな?」
園児「わたし、プィキュアのうたがいいー!」
園児「えー、ライダーのうたがいいよー!」
唯「あははっ、あまり新しいのは先生わからないんだぁ、ごめーん」
最近のアニメの歌など、子供らしいリクエストが飛ぶ中、一人の園児の要望に唯の耳が止まる。
園児「うーん、じゃあ、あめふりっ!」
唯「あめふり……うん、じゃあそれにしよっか」
園児「わーいっ♪」
唯「もし良かったら、戸山さん達も一緒に歌ってあげて?」
香澄「はいっ」
唯「じゃあ行くよ……いち、にー、さんっ」
~~♪
唯「あーめあーめ ふーれふーれ かーあさんが……♪」
園児「じゃのめで おむかえ うれしいな♪」
香澄達「ピッチピッチ チャップチャップ ランランラン……♪」
全員「ピッチピッチ チャップチャップ ランランラン――♪」
――その曲は、昔、唯が妹とよく一緒に歌った歌。
唯にとって、最も思い入れのある歌だった。
唯の指から溢れるギターの旋律が、その場の全員の耳に、心に響き渡る。
とても穏やかな、ゆりかごのように優しい音色が、場の空気を一層和やかにしていく。
その光景を目にした香澄達もまた、唯の演奏に聴き入っていた。
りみ「ふふふっ……本当にみんな、かわいい……」
沙綾「うん、みんな、とっても楽しそうに歌ってるね」
たえ「そうだね、香澄のギターも楽しく歌ってるよ」
有咲「おたえにも、分かるのか?」
たえ「うん、ギターの気持ち、私もなんとなくだけど……ね」
香澄「おたえの言ってること、私も分かるよ、平沢先生と一緒に歌えて……私のギターも嬉しそうにしてる……」
有咲「ま、こればっかは、ギタリストにしか分かんねー感覚なのかも知んねーな……」
―――
――
―
そして、ささやかな演奏会は終わり、園児達は昼食を済ませ、昼寝の時間となる。
それと時を同じくして、ようやく香澄達も休憩の時間となった。
沙綾「みんな、寝静まったみたいだね」
すやすやと寝息を立てる園児達を見ながら、沙綾が言う。
有咲「ああ……変なことして起こすなよ? 香澄」
香澄「もー、いくら私でもそんな事しないよぉ」
たえ「でも……んんん……やっとご飯が食べれるね~」
有咲「ああ、午前中はなんだかんだあっという間だったな……」
沙綾「うん、楽しかったよね」
たえ「ふふふっ、いっぱい動いたから、ご飯がおいしいっ」
りみ「みんな、午後も頑張ろうねっ」
唯「あ、いたいたっ」
教室の隅で弁当を空ける香澄たちの元に、唯も弁当箱と水筒を片手にやって来ていた。
香澄「平沢先生、さっきはありがとうございましたっ♪」
唯「ううん、こちらこそ、戸山さん、ギター貸してくれてありがとうね♪」
唯「もし良かったらお昼、私もご一緒していいかない?」
香澄「はいっ、もちろんですっ」
唯を快く受け入れ、香澄は席を詰める。
そして、ポピパの5人に唯を合わせた6人により、席が囲まれていた。
沙綾「しかし、さっきの演奏は本当に楽しかったね、平沢先生の演奏、すごく上手で……」
唯「あ、それなんだけど、もし良かったら、私のことは気軽に唯って呼んでくれてもいいよ? なんかずーっと名字で呼ばれるのってくすぐったくてさ」
香澄「はーいっ、じゃあ、唯さんも私達のこと、ぜひ名前で呼んで下さいっ」
唯の案を、香澄達もまた快く引き受ける。
それにより、今まで互いに引いていた一線が失われ、一層親しみのある空気が教室内に流れていった。
唯「うん、私もみんなの事は名前で呼ばせてもらうね、よろしく、香澄ちゃんっ♪」
香澄「よろしくお願いします、唯さんっ♪」
沙綾「あははっ、香澄ったら、すっかり唯さんと仲良くなったみたいだね」
有咲「ま、唯さんと香澄、お互いに波長が合うんだろ……雰囲気とか似てるしなぁ」
二人を見ながら、やや素っ気なさそうに有咲は言う。
たえ「あれ? 有咲、もしかして焼きもち?」
有咲「……っ! だ、だーれが妬いてるってんだよっ」
りみ「あははっ……有咲ちゃん、顔真っ赤~」
有咲「り、りーみーっ……」
そんな感じで昼食会は始まり、話は次々と膨らんでいく。
今日の職場体験の感想、触れ合った子供たちの話……。
そして、香澄達の今と、唯の過去についても……話は広がっていった。
唯「香澄ちゃんがギターを持ってきたのを見た時は本当にびっくりしたんだぁ、もしかして、香澄ちゃん達もバンドをやってたりするの?」
りみ「はいっ、私達、Poppin'Partyっていうバンドを組んでるんですっ」
香澄「私がギターとボーカルで、おたえもギターで、さーやがドラムで、りみりんがベースで、有咲がキーボードなんです」
唯が自分達に興味を抱いてくれたことに対し、嬉しそうに全員を紹介する香澄だった。
有咲「香澄ちゃん達“も”って事は、ひょっとして、唯さんもバンドをやってるんですか?」
唯「うん、今はもうやってないけど、私も高校生の頃、軽音部でバンドやってたんだぁ」
沙綾「軽音部……部活でバンドを組んでたんですね」
唯「うん、放課後部室に集まって……みんなでお茶飲んだり、ライブで演奏したり……楽しかったなぁ」
上を見上げ、唯は過去を思い返す。かつての日々が記憶の中に蘇り、自然と唯の顔に笑みがこぼれていく。
たえ「じゃあ、唯さんはその頃からずっと、ギターを続けていたんですね」
唯「うん、大人になってからはなかなかみんなには会えないんだけど、それでもギターだけはずっと続けてるんだ」
唯「……今の私がこうして昔と変わらず私でい続けられるのは、きっと、軽音部のみんなと、ギー太のおかげだと思うから……さ」
有咲(……ギー太?)
唯「ふふふっ……バンドって、音楽って、楽しいよね♪」
香澄「はいっ! 有咲の蔵でこのギターに出会って……それで私、音楽をやるようになって……有咲やりみりん、さーや、おたえ……色んな人に出会えたから……」
香澄「――私、バンドも音楽も大好きですっ!」
唯「香澄ちゃん……」
まるで咲き誇るように輝いた笑顔で香澄は言う。
純粋に音楽を愛し、仲間と共に音を紡ぐ喜びを、感動を、楽しさを……香澄達は知っている。
だからこそ、あんなにも輝いた笑顔で言えるのだろう。
その笑顔に、かつての自分の姿を重ねながら、唯は優しく頷いていた。
有咲「香澄のやつ……へっ……照れるじゃねーか」
たえ「私もだよ、香澄……香澄に、みんなに会えて、バンドが組めて、本当に良かったって思ってる」
りみ「私も……香澄ちゃんに出会えなかったら、きっとこんなに楽しい生活、送れてなかったと思うな……」
沙綾「香澄がいなかったら、私、きっと今もあの時のこと、後悔してばかりいただろうからね……」
沙綾「香澄には……ううん、香澄だけじゃない、みんなにはいくらお礼を言っても言い足りないぐらい、感謝してるよ」
香澄「みんな……!」
唯「……ふふっ、みんな、いい子達だね……」
唯(私も、みんなに会いたくなっちゃったな……)
楽しく笑いあう香澄達の姿を見ながら、この後開かれる同窓会の事を心待ちにする唯だった。
唯「そうだ、みんなは一体、どんな演奏をするの?」
香澄「あ、そうだ! その事なんですけど、実は今度……」
声「せんせー……」
香澄が言い始めるのを遮るように、突如として園児の声が唯達に投げかけられる。。
その声の先には、陸と呼ばれていた一人の園児が、泣きそうな顔で唯達を見つめていた。
唯「あれ、陸くん、どうかしたの?」
陸「ぅぅ……先生……っおしっこ~」
唯「え……? あ、時間っ!! 今何時!?」
驚いた様子で唯が時計を見る。
既に休憩の時間はとっくに終わり、園児を起こしてトイレに連れて行かなければならない時間となっていた。
陸「ふぇ~ん、もれちゃうよぉーー」
唯「ちょ、ちょっと待って……! い、いま行くから! みんなごめん! 話に夢中ですっかり忘れちゃってた!」
慌てて弁当箱を片付ける唯達、そして……。
園児「うぇ~んっ! せんせーはやくー!」
園児「えぐっ……えぐっ……せんせぇ、おトイレ、もれちゃうよぉー!」
園児「えぐっ……ぐずっ………うわぁぁぁぁぁん!!!」
先程まで寝息を立てていた園児達は気付けばいつの間にか目覚めており……。
そして、一人が泣き出せば、あとはもう止まらない。
一斉に、教室中で泣き声の大合唱が始まっていた。
唯「あ、あわわわわわ……え、えっと……!」
沙綾「唯さん、とりあえず行きましょう! 私もトイレのお手伝いしますから!」
唯「へ? あ、うん、沙綾ちゃんごめんねっ!」
りみ「あ、あの、私達は……?」
唯「ごめーん! みんなは泣いてる子をおねがいっ」
有咲「ちょっ! んな無茶苦茶なっ」
園長「ちょっと、平沢さん! 一体何事なの?」
唯「す、すみませーーーーーんっっっ!!」
教室内の騒動に他の先生達も巻き込まれながらの、慌ただしい午後が始まる。
園児の対応にあくせく目を回してる唯を見ながら、香澄達は仕事の大変さと、それに見合う楽しさを垣間見ていた――。
―――
――
―
そして、騒動は一段落つき、午後のお遊戯会も問題なく進み、気付けば、園児の帰宅の時間となり……。
園児「せんせー! さよーならー!」
唯「はーい! また来週ねー、ばいば~い!」
最後の園児を見送り、仕事にも一区切りがついた頃。
香澄「終わっちゃったねー」
りみ「うん……少し寂しい気もするけど、楽しかったね」
有咲「ああ、後半ドタバタしてたけど、結構楽しかったよなぁ」
沙綾「有咲、すっかり子供たちの人気者だったもんね」
たえ「うんうん、有咲、すっごく楽しそうだった」
有咲「……いいから行こうぜ、職員室で今日のレポート書くんだろ?」
照れくささを隠しながら、足早に向かう有咲に続き、香澄達も職員室へ向かっていた。
【職員室】
先生「園長先生、今度の保護者会の資料です」
園長「はい……ええ、こちらで確認します、どうもね」
先生「平沢さーん、今度の遠足のプリントなんですけど、用意できてますかー?」
唯「はーい、今転送しますっ!」
りみ「わわ、子供たちが帰ってからも、お仕事って続くんだね……」
香澄「なんか、こっちの方がずっと大変そうだね……」
有咲「ああ、あんまし邪魔にならないようにしとこうぜ」
沙綾「私達が幼稚園だった頃も、きっとこんな感じで先生達、頑張ってたんだろうね……」
たえ「うん、大人って……すごいんだね」
園児が帰ってからの事務仕事に追われている先生達の邪魔にならぬよう、香澄達は今日のレポートを作成していた。
園長「みなさん、今日はどうもご苦労様でした……どうでしたか? 職場体験は」
仕事が一区切り着いたのか、園長が香澄たちに声をかける。
香澄達も既にレポートの作成を終えていた所だったので、園長に向け、笑顔で返していた。
香澄「はいっ! 先生のお仕事って……大変かもって思ってましたけど、唯さ……ううん、平沢先生を見てたら、すっごく楽しそうだと思いました!」
園長「うふふっ……それは良かったわ……また、いつでも遊びにいらして下さい……」
香澄「はいっ、今日は、本当にありがとうございました!」
園長「平沢先生、平沢先生も、よろしければどうかしら?」
園長が唯に向けて声をかける。
唯もまた、仕事を一区切りつけていたようだった。
唯「はい、みんな今日はお疲れ様、ありがとう、おかげですっごく助かったよ」
香澄「そんな、私達も楽しかったです、ありがとうございました!」
一同「ありがとうございましたっ」
唯「みんな、もし良かったらまた遊びに来てね、園児たちも待ってるからさ」
一同「――はいっ」
唯の言葉に、元気に返す香澄達。
そしてレポートをまとめた香澄達は、唯から今日の証明の判子を貰い、それぞれが帰宅の準備を始める。
香澄「先生方、今日はありがとうございました! お先に失礼します!」
唯「うん、みんな、今日は本当にありがとう!」
時刻は既に陽も傾く頃合いになり、帰りの挨拶を済ませた5人は幼稚園を後にする。
――その帰り道。
【帰り道】
香澄「あ~~~!!」
突然、弾けたように香澄は大声を上げる。
有咲「わっ、香澄……いきなりでっかい声出すなよっ! びっくりしただろ?」
香澄「私、忘れ物しちゃった……! ごめんみんな、先行ってて!」
沙綾「香澄? うん、気をつけてねー!」
りみ「香澄ちゃん……忘れ物って一体……なんだろう……?」
香澄は慌てて幼稚園に駆けていく。
そして程なく、幼稚園の門が見えた時、偶然にも門前でホウキを手に掃き掃除をしていた唯と鉢合わせする。
息を切らせ、唯の元に駆け寄っていく香澄に、唯は声をかけていた。
香澄「はぁ……はぁ……ゆ、唯さーーんっ!」
唯「か、香澄ちゃん? どうかしたの? ……あ、何か忘れ物?」
香澄「はい……はぁっ……ゆ、唯さん……お昼の時、私達がどんな演奏してるかって……聞いてくれましたよね……?」
息も絶え絶えに、香澄は言葉を続ける。
唯「えっ? ああ、うん……実は興味あったんだ」
香澄「あの、もし良かったら……来週、ここに来てくれませんか?」
唯「……これは?」
香澄から1枚の紙を手渡され、唯はその文面をまじまじと見つめる。
香澄から手渡されたそれは、来週に開かれるライブのフライヤー……ガールズバンドパーティーの告知フライヤーだった。
唯「……ガールズバンド……パーティー?」
香澄「はい、今度……花咲川のライブハウスで大きなライブがあるんです……それで、そのライブ、私達も、ポピパも参加するんですっ」
香澄「なので……もし、もし良かったら……ぜひ、唯さんも……来て下さい、私達の歌、聴きに来て下さいっ」
唯「……いい、の? 私なんかが行っても……」
香澄「はいっ! ぜひ唯さんに、私達の歌……聴いてもらいたいんですっ」
唯「……そっか……うん、ありがとう」
唯「日程は……うん、この日はお仕事もお休みだから、行ってみるよ……ありがとう、香澄ちゃんっ」
香澄「唯さん……あ、ありがとうございますっ!」
唯「このために精一杯走ってきてくれたんだね……香澄ちゃん、本当にありがとう……」
香澄「こちらこそ、フライヤー……受け取ってくれて、ありがとうございます」
そして、唯と香澄は硬い握手を交わし、来週の再会を誓い合うのだった。
唯「香澄ちゃん……ライブ、がんばってねっ♪」
香澄「はいっ! 唯さんもお仕事、頑張ってくださいっ! 失礼しました!」
唯「うん、またねー!」
再び駆け出す香澄の背を、唯は満面の笑顔で見送る。
何事にも全力で向き合う少女を後姿を、唯は静かに見つめていた――。
―――
――
―
唯「すみません、お先に失礼しまーす」
園長「はい、平沢先生、今日はご苦労様でした」
唯「はい、園長先生、今日はあの子達の担当、任せていただいてありがとうございました!」
園長「あの子達、平沢先生に担当になって貰えてとても喜んでいたわ……園児達もみんな平沢さんの事を慕っているし、これからもよろしくお願いしますね」
唯「はいっ! それでは、失礼します!」
そして職員室を抜け、差し掛かる夕日を背に、唯は駆け出す。
その途中、スマートフォンからメッセージアプリを立ち上げ、メッセージを送る。
相手は、かつて青春時代を共に歩んだ一人の後輩……。
彼女に一通のメッセージを送った直後、すぐさま返信が届く。
――『私も、今から向かいますよ……楽しみですね、同窓会』
唯「うん、私も楽しみ……早くみんなに会いたいな……」
画面を優しく見つめ、唯は駆け出す。
その足取りは更に軽く、唯は向かう。
放課後の集う時は、刻一刻と近付いていた――。
――こうして、5つの放課後は、それぞれが異なる輝きを持つ少女達との、運命的な出会いを果たしていた。
この出会いが後に、放課後の復活……そして再来へと繋がる奇跡になっていたという事を、この時の彼女達はまだ、知らない――。
最終更新:2019年12月15日 07:57