>くるまのなか!

紬「ねぇ、ちょっと寄り道していいかしら」

澪(私たちはムギの家の人の車で送ってもらっていた)

澪(律と梓が降りた後、ムギが寄り道したいと言った)

澪「もう暗いよ」

紬「ちょっとだけだから、ね」

澪「それならいっか…」

紬「ありがとう澪ちゃん」

澪「あぁ」

紬「斉藤、さっきの公園に寄ってもらってもいいかしら」

斉藤「かしこまりました」


>よるのこうえん!

紬「澪ちゃんにね、これを渡したかったんだ」

澪「あけてもいいの?」

紬「うん」

澪「これは……」

紬「アノマロカリスのぬいぐるみ。澪ちゃんが欲しそうにしてたから」

澪「でも、もらえないよ……」

紬「どうして?」

澪「だって、私は明らかに感謝しなきゃいけない側だし」

紬「そんなことないよ」

澪「あるって」

紬「どうして?」

澪「ムギにはお世話になりっぱなしなんだ」

澪「いつもお茶をいれてもらってるだけじゃない」

澪「お菓子をもってきてもらったり」

澪「別荘貸してもらったり」

澪「私のこと慰めてくれたり……」

澪「とにかく、いつも感謝してるんだ」

紬「澪ちゃん…」

澪「だから気持ちは嬉しいけど……」

紬「澪ちゃん、ありがとう……」

澪「私がどれだけ感謝してるかわかってくれた?」

紬「うん。でも澪ちゃんもわかってないよ」

澪「な、なんだ」

紬「私だって、澪ちゃんには本当にすごく感謝してるんだよ」

澪「どうして?」

紬「澪ちゃんがいなくて、唯ちゃんとりっちゃんと私がノリだけで行動したらどうなると思う?」

澪「それは……困ったことになるかな」

紬「うん。澪ちゃんがいなかったら、私が澪ちゃんみたいに立ち回らないといけないと思うの」

澪「まぁ、そうか…」

紬「そうしなくていいのは全部澪ちゃんのおかげ」

紬「澪ちゃんがいるから私はやりたいことをやれるんだよ」

澪「……」

紬「高校に入ってから本当に楽しいんだ」

紬「それは澪ちゃんがいてくれるから」

紬「澪ちゃんがいなかったら、きっとこんなに楽しい日々は送れなかったと思う」

紬「だからね」

紬「澪ちゃんにはどれだけ感謝してもしきれないぐらい」

紬「本当に、本当に、ありがとうって思ってるの」

澪「……ムギ」

紬「それにね……」

澪「ん?」

紬「や、やっぱり言わないでおく。これは関係ないことだから」

澪「そう言われると余計気になるよ」

紬「ひみつだから」

澪「お、教えてよ」

紬「やーだっ」

澪「そんなこと言うと、こうだぞ」ムギュ

紬「み、澪ちゃん//」

澪「話してくれるまで離さないから」

紬「澪ちゃん……困るよ」

澪(正直、ムギがこれほど私に感謝しているなんて意外だった)

澪(アノマロカリスが海老の仲間であることと同じぐらい意外だった)

澪(だからかな……)

澪(ムギが考えてることを全部知りたいと思ってしまったんだ)

澪(強引に誰かに抱きついたのはこれが初めてだと思う)

澪(ムギに泣きつくことは沢山あったけど)

澪(それから私たちは星空の下でじゃれ合った)

澪(肌寒い夜だったけど、ムギに抱きついてたおかげであったかだった)

澪(10分だったか20分だったかすると、ようやくムギが降参した)

澪(ムギは……きっと茹で上がった海老みたいに真っ赤な顔をしていたんだと思う)

澪(暗くてよくわからなかったけど……)

澪(ムギはあの夜、茹で上がったアノマロカリスみたいな顔をして、こう言ったんだ)


紬「澪ちゃん。私――――」


>ばいとさき!

澪「いらっしゃいませー、って、え?」

唯「あそびにきたよー」

梓「澪先輩がメイド服を着ていると聞いて」

紬「みんな遊びにきてくれたのね」

律「おう」

梓「やっぱり澪先輩にはメイド服が似合いますねぇ」

唯「ムギちゃんも似合ってるよー」

澪「そ、そうか?」

紬「あらあら、嬉しいわ。それでご注文は――」


>きゃくせき!

律「なぁ、唯。あの二人」

唯「うん。手を繋いでたね」

律「ちょっと意外だな」

唯「そうだねぇ」

梓「私はそれほど意外だと思いませんけど」


おしまいっ!




最終更新:2012年11月24日 21:38