唯「えっ?うん」

唯「ぜんぜん違うけど……」

梓「本当は?」

唯「本当に」

梓「あっ、I のほうでしたか?」

唯「愛もないよ」

梓「私向けの詩ですよね?」

唯「ぜんぜん」

梓「もしかして Uも I も私のことですか?」

唯「ちゃんちゃらおかしいよ」

梓「どれほど私のこと大好きなんですか、まったく」

唯「ちょっ、落ち着いて」

唯「一回離れて」

梓「私はいつでも冷静沈着ですよ」 ハァハァ

唯「顔も離して」

梓「つまり U&I は私への告白ソングと捉えても過言ではないですね?」

唯「過言だよ」


梓「キミがいないと何もできないよ」

梓「キミのごはんが食べたいよ」

唯「うん」

梓「もしキミが帰ってきたら とびっきりの笑顔で抱きつくよ!」

唯「急に歌い出さないで」

梓「これはもう完全に私に向けた歌じゃないですか!」

唯「違うんだってば」

梓「キミがいないと謝れないよ!」

梓「キミの声が聞きたいよ!」

梓「ああもう!いじらしい!」

梓「はっきり告白してくれたらいいのに!」

梓「可愛いなあちくしょう!!」

唯「叫び出さないで」

唯「告白ってなに」

梓「キミの笑顔が見れれば それだけでいいんだよ!!」

唯「できればそんな笑顔を見たくなかったよ……」



梓「キミが~ そばにぃ~ いるだけでぇ~」 ジャンガ ジャンガ

唯「あずにゃんさあ」

梓「いつもぉ~ 勇気ぃ~」

唯「いつになったら音程が落ち着くの?」

梓「ほっといてください」

唯「この気持ちを伝えたいよ って思って」

梓「サビに入った途端に伝えなくてもいいじゃないですか……」

唯「まずは君に伝えなくちゃ って思って」

梓「笑わないで どうか聴いて……」 ジャラン

唯「ごめん、そこまで落ち込むなんて」

梓「……アレンジです」

唯「うん」

梓「U&I ~ゆいあずバージョン~ です」

唯「うん」

唯「いま私参加してなかったけどね」


唯「あのね、すごく言いづらいんだけど」

梓「あっはい、私も唯先輩のことがずっと」

唯「そういう話じゃないから」

梓「………」

唯「キス顔もやめて」

梓「ちぇっ」

唯「まずさ、Uにも I にもあずにゃん要素が入ってないよね」

梓「あずにゃん」

唯「?」

梓「AZ 『U』 NYAN!」

唯「なんでそこからUを取ると思ったの」

梓「私の中心だから……?」

唯「真ん中じゃなくない?」

梓「AZUSA」

唯「……じゃあ I は?」

梓「愛」

梓「つまり私を愛してるってメッセージで……」

唯「なんかもうキミの胸に届く自信がなくなってきた」

梓「唯先輩……」

唯「いま絶対キスする雰囲気じゃないでしょ」

唯「やめて」

唯「やめろ!!」


梓「ベロチューで思い出したんですけど」

唯「してないけどね!?」

梓「よく見ると、タイトルにアルファベットのUみたいなのがありますね」

唯「よく見なくてもUだよ」

梓「まず、Uをユーと読んで唯先輩が示されていますよね」

唯「そうそう」

梓「ただ、アナグラムとカエサル式暗号を用いて16進数表記で示すと……」

唯「あっ、えっ? 待って、ちょっと待って」

梓「そしてここの部分を縦読みすると 『あずにゃん・愛してる・付き合って』 となります」

唯「なるの?」

梓「なるんです」

唯「だまされないからね」

梓「だって解読できるんですもん」

唯「言い方だけ可愛くされても」

梓「こりゃあもう後輩との交際宣言じゃないですか」 ヒュゥ

梓「運命はエンドレス!」

唯「こじつけにも程があるよ」

梓「まさかこんなメッセージが隠されていたとは」

唯「私も思わなかったよ」

梓「きっと潜在意識の中に私が居るんですよ」

唯「そのまま潜んでていいのに……」

梓「じゃあ私は唯先輩にとって何なんですか!?」

梓「都合の良い肉便器ですか!?」

唯「あらゆる意味で都合が悪いよ」


梓「UI ってもしかしてユーザーインターフェースの事ですか?」

唯「??」

梓「あれですよ、ユーザーが機器と情報をやり取りするための装置や仕組みで」

唯「なんで私がそういう装置の詩を書いてきたと思ったの」

梓「ゲームのメニュー画面や体力ゲージなんかもUIっていうんですよ」

唯「うん」

梓「それらを通してユーザーが得られる経験のことをUXと言います」

唯「そうなんだ」

梓「私というUIで唯先輩がまだ知らない経験をしてみましょう」

梓「服を脱いでください」

唯「最初から最後まで意味が分からなかったよ」

梓「インターフェースとは接触面という意味も持っているんですよ」

唯「うん」

梓「ちょっとだけ触っていいですか?」

唯「近寄らないで」

梓「ちょっとだけですから」

唯「インターフェイス!!」 バチン

梓「ぶっ!?」

梓「フェースってそっちの意味じゃなくて」

唯「フェイス!!」 バチン

梓「顔面!」


梓「じゃあ何なんですか、UIって」

梓「ウザい妹……?」

唯「うざいのは後輩のほうかな」

梓「アンインストール?」

唯「アンインストールしたいのも軽音部の後輩かな」

梓「売れ残り & 行き遅れ?」

唯「そんな詞を書いてきたらさわちゃん先生に絞め殺されるでしょ」

梓「ウェディング・インポッシブル (不可能婚礼) 」

唯「だから殺されるってば」

梓「自虐ネタみたいにすれば大丈夫ですって」

唯「どう解釈したら自虐的な歌詞に見えるの」

梓「結婚は無理だから一生面倒みてね、みたいな……」

唯「ウェディングも U じゃないし」

梓「うどん & いか天」

唯「おいしそう」

梓「アルティメット・インドカレー!」

唯「辛そう!」

梓「ウーバーイーツ」

唯「イーツはEだよ」

梓「ウェザーニュース・インフォメーション……」

唯「ウェザーはWだよ」

梓「憂だってWiiじゃないですか」

唯「憂はUです」

梓「生まれ変わって唯先輩の ・ 妹になりたい」

唯「それもうあずにゃんの願望じゃん」

梓「アンダーヘア!陰毛!」

唯「うるさいなぁ & いいかげんにしてよ」

梓「U&I !!」



梓「じゃあユニクロ……」

梓「ええと、ユニバーサル……ユーフォニアム……」

唯「もういいよ、無理しなくて」

梓「もうちょっと考えさせてください」

梓「唯先輩の書いた詩をちゃんと理解したいんです」

梓「少しでも唯先輩と分かり合いたいんです」

唯「あずにゃん……」

梓「唯先輩……!」

唯「いま大喜利ネタに付き合ってあげるほどヒマじゃないんだよ」

梓「キスは?」

唯「しません」

梓「さっきまでいい雰囲気だったのに……」

唯「最初から最悪だったけど……」

梓「そもそも、どうして英単語で唯先輩にツッコミを受けなきゃいけないんですか!」 ダァン

唯「このタイミングでそこにキレるの?」

梓「だって唯先輩に英語の知識で負けるなんて」

唯「そりゃ英単語も覚え始めるよ、受験生だし」

唯「ていうか私ってそんなに頭悪いイメージだったの?」

梓「どうせ突っ込むなら別のところに突っ込んでくださいよ!」

梓「脱ぎますから!」 バサッ

唯「ゴメン 今は気づいたよ」

唯「(頭が)当り前じゃないことに……」



唯「人がマジメに書いてきた詩を次から次へと汚していかないでください」

梓「私を汚してください」

唯「いいからパンツはいて」

梓「あっ、でも (U) ( I ) って書くとあれですよね」

梓「男性器と女性器に見えますよね」

唯「私の話聞いてた?」

梓「形がもうそのままじゃないですか」

唯「どういう生き方したらそういう感性が発達するの?」

梓「絶対音感みたいなものですよ」

唯「生まれつきなの?」

梓[違うんですよ、唯先輩が書いた詩への理解を深めようと思って」

唯「変な方向に深読みしないで」

梓「じゃあ逆に聞きますけど、一体誰に向けた詩だって言うんですか」

梓「逆に私ですか?」

唯「だから憂だってば」

唯「逆もへったくれもないよ」

梓「本当に?」

梓「絶対の自信を持ってそう言い切れるんですか!?」

唯「書いたの私だからね?」

梓「まあ普通に考えたら憂に向けた詩にも見えますけど」

唯「普通に考えてもらえますか」

梓「たしかに U・I で憂と読めなくもないです」

唯「憂とも読むんだよ」

梓「歌詞を見ると、ずっと一緒に暮らしていたような表現も見受けられます」

唯「書いてきたときに説明したよね」

唯「いなくなってみて初めて大切だったことに気づく、みたいな気持ちを……」

梓「それが私のことなんですね?」

唯「えっ、書いた本人が否定してるのに何で認めないの?」

梓「なんでって……」



梓「キミが…そばに…いるだけでぇ……」 ジャラン

唯「あずにゃん、ギターは上手いのになんで歌がちょっとアレなの」

梓「アレってなんですか、もう!」

唯「そこはこんな感じでさ」

唯「キミが そばにいるだけで~」 ジャラン



   心の深いところに入り込んで共鳴していく、
   今の気持ちを表すフレーズたち。

   私に向けられた言葉じゃなくても、
   この詩には私の気持ちが詰まっていたんです。



梓「キミが、そばに、いることを……」 ジャラン

唯「当たり前に~ 思ってた~」 ジャラン



   あなたがいなかったら、きっと何もなかった。

   バンドに入ったことも。
   2人きりで歌う時間も。
   この胸の痛みも。



唯「ありったけの ありがとう~」

梓「……歌に、乗せて~ 届けたい~」

唯「この気持ちは ずっとずっと~」

梓「忘れないよぉー」



   私にとっての 『 U&I 』 は、

   「生まれて初めて」 の 「愛しい気持ち」 だったんです。



唯「あずにゃん」

梓「はい」

唯「帰ろっか」

梓「はい」

唯「あとパンツはいて」

梓「はい!」






おわれ


うまいオチが思い浮かばず

いっそのこと逃げ出しました

( U&I )



最終更新:2021年09月22日 11:47