【にじゅういち日】

紬「いよいよ今日だね」

憂「今日の朝、純ちゃんが騒いでました」

紬「あれ、純ちゃんは信じてないんでしょ?」

憂「ぎりぎりになると、ほんのちょっとだけ怖くなるんだと思います」

紬「ほんの少しだけ、世界が滅びて欲しいと思ってるのかしら」

憂「そうかもしれません。でも、埃をとったら綺麗な純ちゃんに戻ると思います」

紬「なんのこと?」

憂「なんでもないです」

紬「そっかぁ‥‥」

憂「今日はお菓子をもってきたんです」

紬「これは‥‥飴かしら?」

憂「檸檬味の飴です」

紬「こういうのも作れるんだ」

憂「作ってもあんまり意味ないですけど」

紬「どうして?」

憂「市販のものより美味しく作るのは無理なので」

紬「食べていい?」

憂「はい」

紬「甘酸っぱい」

憂「檸檬だから」

紬「今キスしたら甘酸っぱいね」

憂「舌も入れるんですか?」

紬「嫌?」

憂「いやです」

紬「じゃあ普通のキスだけ」

チュ

憂「‥‥‥‥ちゅぷ‥‥ちゅぱ‥‥」

紬「‥‥っ、う、憂ちゃん?」

憂「舌を入れられるのは嫌なので、自分から入れてみました」

紬「あなた、ほんとうに憂ちゃん?」

憂「変ですか?」

紬「うん」

憂「私は素直な良い子じゃないといけませんか」

紬「‥‥そうね。唯ちゃんの前ではそうあって欲しいわ」

憂「やっぱり紬さんは少し意地悪です」

紬「そう?」

憂「弱いくせに」

紬「ごめんね。弱虫で」

憂「いいです。だから一緒にいられるんです」

紬「そうかしら」

憂「はい」

紬「今日、どうしよっか」

憂「ここで集まれませんか」

紬「部室?」

憂「はい」

紬「うん。大丈夫だと思う」

憂「じゃあふたまるぜろぜろにここで」

紬「12分でいいの?」

憂「12分だからいいんです」

紬「そっかぁ」

憂「そうです」

紬「じゃあ、また夜に」

憂「はい」



憂「あっ」

紬「どうしたの?」

憂「恋人同士がさよならする時は、キスするんです」


ふたまるまるまる

紬「曇り空ねぇ」

憂「そうですね」

紬「星を見ながらせかいのめつぼうを待つのも悪くないと思ったのだけど」

憂「いい趣味ですね」

紬「そう」

憂「はい」

紬「褒め言葉として受け取っておくね」

憂「それは駄目です」

紬「憂ちゃんがいじめる‥‥」

憂「紬さんがいじめてほしそうにしてるからいけないんです」

紬「じゃあ我慢する‥‥」

憂「‥‥ぷ」

紬「あと6分」

憂「滅びますよね?」

紬「ほろびるわけないじゃん」

憂「あっ、裏切りましたね」

紬「いけなかった?」

憂「裏切ったらハリセンボンです」

紬「ぷくー」

憂「もうその手にはノリません」パン

紬「あ痛っ」

憂「せかいがほろびなかったらどうしよう」

紬「どうしようもないんじゃない」

憂「そうですね」

紬「憂ちゃんは死ねないもんね」

憂「‥‥」

紬「私も死ねないから。だから生きてくよ」

憂「それしか、ありませんよね」

紬「あと、1分」

憂「紬さん」

紬「なぁに」

憂「馬鹿な遊びに付き合ってもらい、ありがとうございます」

紬「どういたしまして」

憂「たまに会いに行ってもいいですか?」

紬「来てくれないと泣くから」

憂「そうですか」


ふたまるひとにい

憂「‥‥」

紬「‥‥」

憂「‥‥」

紬「‥‥」

憂「‥‥」

紬「‥‥」

憂「‥‥」

紬「‥‥」

憂「‥‥」

紬「滅びなかったね」

憂「そうですね‥‥」

紬「残念ね」

憂「残念です」

紬「そうだね」

憂「本当に残念がってます?」

紬「どうだと思う?」

憂「わかりません」

紬「憂ちゃんにもわからないことあるんだ」

憂「なんでもできるわけじゃないですから」

紬「そっかぁ」

憂「そうです」

紬「じゃあそろそろ帰りましょうか」

憂「はい‥‥」

紬「唯ちゃんも心配しているだろうし」

憂「はい‥‥」

紬「憂ちゃん、さようなら」

憂「さようなら‥‥」




紬「あっ!」

憂「どうかしました?」

紬「忘れ物をしていたの」

憂「忘れ物、ですか?」

紬「ええ、とても大事な忘れ物」

憂「いったい何を‥‥?」

紬「恋人同士がさよならする時は、キスをするんでしょ」

憂「え」


チュ



めつぼうっ!





おまけ
【にじゅうさん日】

紬「ねぇねぇ憂ちゃん。ニュースよニュース」

憂「どうしました? ‥‥もしかして」

紬「ええ、そうなの」

憂「紬さん‥‥私死にたくないです。せっかく――」

紬「なんの話?」

憂「え、せかいがほろびるんじゃ」

紬「そうじゃなくて、世界が新たな時代に突入したの」

憂「どういうことですか?」

紬「マヤの予言にはね、世界は滅びるんじゃなくて、第五の時代が終わり、第六の時代に突入するという解釈もあるの」

憂「知ってます。でも、第六の時代って‥‥」

紬「このケータイの画面を見て」

憂「えっと‥‥インドで初の同性生殖成功?」

紬「きっとマヤの予言はこれを指し示していたのよ」

憂「‥‥そんな馬鹿なこと」

紬「ないと言い切れる?」

憂「‥‥あるかも」

紬「ね、でしょ」

憂「私と紬さんの赤ちゃん‥‥」

紬「き、気が早いね」

憂「私達、もう結婚できる年齢ですよ」

紬「そうだけど‥‥私たちの赤ちゃんかぁ‥‥どんな感じだろ」

憂「きっとこんな感じです」


紬「あらあらまあまあ」


おしまいっ!





最終更新:2012年12月22日 00:38