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憂「……ずっと、紬さんは私のこと好きじゃないと思ってました」

紬「そうなの?」

憂「はい。一度も好きだって言ってくれませんでしたし」

紬「そうだっけ?」

憂「そうです」

憂「だからキスしようって言ってくれたとき、凄く嬉しかったんです」

憂「紬さんが私のこと好きだったんだ、ってわかって」

紬「そうだったんだ……」

憂「だからそのキスが、私を説得するための口実だと思ったら悔しくなっちゃって」

憂「飛び出してしまったんです」

紬「でもあのキスは……」

憂「好きだからしてくれたんですよね」

紬「//」

憂「紬さん?」

紬「な、なんでもないよ」

憂「照れてます?」

紬「……うん//」

憂「紬さん、かわいいです」

紬「そ、そんなことない//」

憂「照れてる紬さんかわいいです」

紬「もうっ……」

紬「でも憂ちゃんがそんなこと考えてたなんて……」

憂「そんなこと?」

紬「私が憂ちゃんのこと好きじゃない、って」

憂「はい……」

紬「いつもかわいいって言ってるのに」

憂「紬さん誰にでもかわいいって言います」

紬「沢山かわいいって言うのは、憂ちゃんにだけよ」

憂「そうなんですか?」

紬「私には憂ちゃんが世界で一番かわいく見えるもの」

憂「世界で一番だなんて//」

紬「それにね、好きだって言ってないのは憂ちゃんもでしょ」

憂「えっ」

紬「憂ちゃんから好きだって言ってもらったこと、まだないよ」

憂「でもボタンもらいました」

紬「好きだとは言われてない」

憂「付き合いたいの? って聞かれた時、頷きました」

紬「好きだとは言われてない」

憂「……」

紬「……」

憂「紬さん……」

紬「……うん」

憂「好きです」

紬「私も憂ちゃんのことが好き」

憂「お姉ちゃんよりも?」

紬「もちろん」

憂「それじゃあキスしてください」

紬「ええ」


憂(私と紬さんは二度目のキスをしました)

憂(二人の気持ちを確かめた上でのキス)

憂(一度目とどちらが良かったか聞かれると困りますが……)

憂(どちらも私にとって大切な思い出になりました)


紬「あっ、そうだ。憂ちゃんにプレゼントがあるの」

憂「プレゼント?」

紬「これ」

憂「JRの切符入れ?」

紬「開いてみて」

憂「ひかりの回数券?」

紬「ええ、バイト代で買ったの」

憂「そんな……こんな高価なもの」

紬「やっぱり私思うの。高校生の憂ちゃんがバイトをしすぎるのは良くないって」

紬「唯ちゃんは気にすること無いって言ってたけど、やっぱり私はそう思えない」

紬「だからね。会うためにかかるお金を私に出させて」

憂「……」

紬「ね」

憂「紬さん」

紬「なぁに」

憂「心がいっぱいです」

紬「そう」

憂「抱きしめてもいいですか」

紬「いいけど、横になっていい?」

憂「……?」

紬「昨日から寝てないからもう限界なの」


憂(紬さんは私の布団に潜り込んできました)

憂(私が紬さんを抱きしめると、そのまま眠りはじめました)

憂(紬さんの優しい匂いに包まれていると、眠くなってきて)

憂(いつの間にか私も眠ってしまいました)

憂(その時、とってもステキな夢を見ました)

憂(私は白いドレスを着ていて……)

憂(紬さんもお揃いの白いドレスを着ていて……)

憂(ふたりはとっても幸せそうで……)

憂(お姉ちゃんと和ちゃん、軽音部のみんなも祝福してくれて……)

憂(……とっても幸せな、いつまでも見ていたい夢でした)


憂(でも、夢は夢です)

憂(やがて二人は目を覚まし、紬さんは遠い街へ帰ってしまいました)



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憂(次の金曜日、私はいつものように新幹線に乗って紬さんに会いに行きました)

憂(2時間15分、私は紬さんのことだけ考えて過ごします)

憂(あの時のことを想い出したり、これからのことを考えたりしていたら、時間はあっという間に過ぎてしまいましたが)

憂(紬さんの下宿に着き、鍵を開けようとすると後ろから声をかけられました)



紬「憂ちゃん!」

憂「紬さん!」

憂「どうして……もしかして講義を」

紬「ううん。走ってきたの」

憂「走ってって……」

紬「憂ちゃんに早くあいたかったから、ね」

憂「//」

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憂「紬さん、ひとつ聞きたいことがあるんです」

紬「なぁに?」

憂「紬さんはどうして私のことを好きになったんですか?」

紬「憂ちゃん!」

憂「はい」

紬「講義で疲れて帰ってくると御飯を用意してくれる子がいるのよ」

紬「しかもその子は良く気が効いて」

紬「ちょっとさみしがりやで」

紬「とっても優しくて」

紬「私のことを好きだって言ってくれるの」

紬「好きにならない理由なんて、あるわけないじゃない」

憂「//」

紬「こんなにかわいいし」ギュ

憂「もうっ……//」

紬「あっ、ちょっと話は変わるんだけど、いいかな」

憂「なんですか」

紬「バイトはちゃんとやめた?」

憂「週一回に減らしました」

紬「う~ん。それくらいならいいかなぁー」

憂「はい。それくらいは多めにみてください」

紬「そうだね」

憂「そうです!」

紬「でもバイトを続けるなんて、何か買いたいものでもあるの?」

憂「はい」

紬「なになに、教えてっ!」

憂「教えません」

紬「ねぇ、教えてって!」

憂「教えません」

紬「憂ちゃんのいじわる~」

憂「ふふふ」

憂(お金がたまったら教えてあげます)

憂(だって私達、もう結婚できる年齢だから)




おしまいっ!




最終更新:2012年12月24日 01:31