―――
和「こんなところに呼び出してどうしたの?」

唯「和ちゃん…」

和「なぁに?」

唯「ねぇ、和ちゃん」

和「どうしたの?」

唯「えっと…ねぇ」

和「うん?」

唯「うんと…」

和「唯、まだ生徒会の仕事が残っているのだけど…」

唯「ま、待って!!」

唯「和ちゃん。私和ちゃんのことが好き!!!!!!!」

和「私のことが好きって、唯、正気?」

唯「うん」

和「…悪いことを言わないからやめておきなさい」

唯「どうして?」

和「だってもうすぐ別々の大学になっちゃうじゃない」

和「遠距離恋愛なんて…辛いだけだわ」

唯「そんなことないっ」

唯「和ちゃんと付き合えるなら距離なんて…全然関係ないよ!」

和「…どうしてそう言えるの?」

唯「だってだって、和ちゃんはずっと私のことを見守ってくれて」

唯「いつだって傍にいてくれたんだよ」

和「それ、全然理由になってないわ」

唯「ふえ~ん」

和「…唯。もう…困った子ねぇ」ダキ

唯「和ちゃん…?」

和「よしよし。もうっ…これくらいで泣いちゃ駄目よ」

唯「…うん」

和「はぁ…」

唯「えへへ~」

和「唯?」

唯「やっぱり和ちゃんは優しいなって」

和「…優しいだけよ」

唯「優しいだけじゃないよ、和ちゃんは生徒会長として凄く頑張ってたじゃん」

唯「私、和ちゃんがいなかったら、こうやって楽しく生活できてる自信ないよ」

和「逆よ、唯。あなたが居てくれたから、私は生徒会に入ろうと思えたの」

唯「…?」

和「唯のおかげで誰かに頼られる喜びを知ったの。だから生徒会」

唯「そうなの?」

和「ええ、そうなの」

和「唯、高校に入ってからとってもよく笑うようになったでしょ」

和「それはね、きっと全部軽音部のみんなのおかげ」

和「私にはできなかったことをあの四人はいとも容易く成し遂げてしまうの」

和「だからね。私なんかに構わなくていいから」

和「そっちのほうが唯は幸せになれると思うから」

唯「…むー」

和「唯?」

唯「和ちゃん全然わかってない」

和「えっ」

唯「確かに高校に入ってからすっごく楽しいけど」

唯「和ちゃんと過ごした子供の頃だって、とっても楽しかったんだから!」

和「…気を遣わなくていいわよ」

唯「本当だもん」

唯「高校生活がケーキだとすると、子供の頃はカレーライスかな」

唯「どっちが美味しいとかじゃなくて、どっちも大好きだから」

和「高校生活がケーキだなんて、餌付けされたのね…」

唯「餌付けじゃないよ!」

唯「と、とにかく! 私は和ちゃんと一緒の時間が大好きだから」

和「…うん」

唯「私と付き合って欲しいって思うんだ」

和「唯の気持ちは嬉しいのだけど、やっぱり…」

唯「どうして?」

和「だって違う大学になっちゃうでしょ…」

唯「頑張って会いに行くから!」

和「私と一緒にいても代わり映えしないだろうし…」

唯「そんなことないっ! 和ちゃんとは一緒にいるだけで楽しいもん」

唯「それにね…キスとか、その先のこともしたいし…//」

和「//」

和「こ、こほん。それにメガネだし…」

唯「とっても似合ってるよ」

和「//」

唯「和ちゃん。どれだけ理由を探しても無駄なんだから」

唯「だって私は和ちゃんのことがだいだいだーい好きなんだもん」

和「…」

唯「和ちゃん?」

和「私はね、ずっと悔しかったの」

和「軽音部に入ってよく笑うようになった唯を見て」

和「自分が無力だって思い知らされた気がして…」

和「それならいっそ自分のほうから離れていけば……なんて思ったりして」

和「……私、たぶん唯が思っているような子じゃないのよ」

和「弱虫だし、そんなんにしっかりものでもない」

和「考え直すうちなら今のうちだよ」

和「本当に、私でいいの?」

唯「…うん。和ちゃんだからいいの」

和「唯…」

チュ

唯「和ちゃん、膝枕してもらっていい?」

和「ええ」

唯「あっ、生徒会の仕事は…」

和「今日だけは特別」

唯「そっかぁ……」

和「……」

唯「……zzz」

和「寝ちゃった」

和「しばらく休ませてあげましょう」



―――
数時間後
和「唯、起きて、唯」

和「まったく起きない…」

和「背負って帰るしかないのかしら!?」



―――
紬「まさか唯ちゃん抜きで和ちゃんの誕生日パーティーをすることになるなんて…」

澪「背負われてきた唯がまったく起きなかったからなぁ」

紬「和ちゃんの膝の上で、とっても幸せそうにしてたね」

澪「告白って緊張するからなぁ。疲れてたんじゃないか」

紬「そうなの?」

澪「…うん」

紬「…」

澪「してみたい、なんて思ってないよね?」

紬「…ちょっとだけ」

澪「ムギは誰にも告白したら駄目だぞ。ずっと私のことを好きじゃないと駄目だから」

紬「は~い」

澪「…ちょっとだけ不安」

紬「うふふふ」

澪「まぁ、付き合えたのはいいんだけど、あの二人変わりすぎじゃないか?」

紬「そうね。一日中和ちゃんが唯ちゃんにべったりだもの」

澪「和があんな風に豹変するなんて思ってなかったよ」

紬「私も」

澪「しかも留学に一緒に行かないかって誘ってるみたいだ」

紬「えっ、唯ちゃんも留学するの?」

澪「2ヶ月ぐらいの短期留学らしいけどね」

紬「あっ、それなら私も行きたい!!」

澪「そう言うと思ってパンフレットもらってきたよ」

紬「澪ちゃんも一緒に行ってくれるの?」

澪「ムギが行くなら」

紬「それじゃあ一緒にバイトしないとね!」

澪「あぁ」



―――
和「唯、これから生徒会の引継ぎ業務があるのだけど、付き合ってくれる?」

唯「もちろん!」

和「…ふふふ」

唯「…えへへ」

和「………幸せ」

唯「何か言った?」

和「うん。幸せって言ったの」

唯「和ちゃんって甘えん坊サンだよね」

和「こんな私は嫌い?」

唯「ううん。知ってたから」

唯「私は和ちゃんが甘えん坊さんだって、最初から知ってたから」


おしまいっ!





最終更新:2012年12月27日 20:42