澪「あれは小学校の修学旅行で奈良公園へ行ったときのこと」
澪「当時からやんちゃな律が無理矢理鹿に乗ろうとして振り落とされた挙句
後ろ足で蹴られたっていう」
澪「それを見てから、乗れそうな動物でも乗るのって怖いというものを刷り込まれたんだ」
律「私の恥ずかしい話かよ!」
唯「りっちゃん恥ずかし~」
律「うっせうっせ!」
梓「チッ」
律「澪の恥ずかしい話じゃなかったからってあからさまに舌打ちするなよな!」
澪「その後しこたま先生に叱られたよな」
澪「鹿に乗って叱られる律」
律「面白くねーから!」
澪「まぁ、その叱った先生は生徒の母親との不倫がバレて2年前にクビになったらしいけど」
律「別にその情報はいらないだろ!」
澪「そんな律は今度馬にも乗って同じような事になっちゃえばいいよ」
律「馬と鹿で馬鹿ってか! 上手くねぇよ!」
澪「バカな律」
唯「あ! 重複してる!」
律「してねーし!」
紬「って、話してる間にロンドン・アイに着いたわ」
梓「見事な場面転換です、ムギ先輩」
紬「うふふ、ありがと」
律「結構無理矢理じゃん……」
澪「じゃあ、私はここでみんなの荷物番やってるから」
唯「え~、なんで~」
律「せっかく来たんだし、澪も一緒に乗ろうぜ」
澪「いや、いいよ私は、いいよ私は」
澪「観覧車なんか危ないって。絶対怪我するから」
律「な、なんで?」
澪「絶対ゴンドラ外れて下に落ちるから!」
律「外れないって! ってかそんなことになったら怪我じゃ済まないだろ!?」
澪「国内で温泉旅行の方が良かったんじゃね~のかな~」
律「そんなことね~んじゃね~のかな~」
澪「もう私は寝てたいよ、ホテルに帰って寝てたい」
律「いや、そんなこと言わずにさ」
澪「どうせ私たちの番になって乗り込もうとしたら
定員になっちゃってなぜか私だけが違うゴンドラに乗せられるんだろ」
律「そんなことないだろ」
澪「そして、違うゴンドラにひとり乗せられた私は
屈強なジョンブルたちに好奇の目で見られる」
澪「そのあとはお察しの通り、回る観覧車の中で輪姦されるんだ」
澪「ベッカムみたいな素敵な男どもに
『へっへっへ、俺のビックベンはどうだ』
とか言われながら」
澪「そして私は
『私のクイーンエリザベス号の処女航海はまだ先よ!』
と訴えかけるも、もはや男たちは聞く耳を持たない」
澪「そんなロンドン・アイ内で行われる行為に愛なんてものは存在しないんだ」
澪「ロンドン怖い……」
律「お前が怖いわ」
… … …
澪「って感じでロンドンの卒業旅行を楽しんできたわけなんだけど」
律「あのさ」
澪「え? なに?」
律「もう教室ライブが始まって20分くらい経つのに
卒業旅行の話ばっかりでまだ1曲もやってないんだけど」
律「しかもその話の内容も散々だし」
澪「いや、みんなも私たちの卒業旅行の話聞きたいかなって思ってさ」
律「だとしても、もっと話すべきことがあるだろ」
律「野外ライブの話とか」
澪「いや、ライブは話なんかで聞くよりも実際の演奏の方がいいだろ?」
律「なにちょっとカッコイイこと言ってんだよ
だったら、さっさと始めろよ」
澪「わかってるって」
澪「じゃあ1曲目は五月雨20ラブです」
澪「この曲は本当だったら学園祭で演奏するはずだったんだけど
どういう訳か唯が作詞した曲を2曲ともやることになって」
澪「なんか見えざる力で抹殺されかかった私の五月雨20ラブなんだけど
今回晴れて日の目を見る運びとなりまして」
澪「この詞の意味としては恋に臆病な女の子の揺れ動く気持ちを私なりに表現してみました」
澪「曲のテーマは『SEXは二十歳を過ぎてから』です。それでは聞いてくだ……」
律「いやいや! 待て待て!」
澪「なんだよ」
律「え? マジでそんな歌なの?」
澪「そうだけど」
律「え~……。なんかさ、なんていうか、ちょっとショックだわ……」
澪「うっそだよ」
律「な、なんだよ~、冗談かよ~。ビックリさせんなよ~」
澪「本当のところはせめて二十歳までは処女でいようという奥ゆかしい女性の決意を……」
律「一緒だよ! ちょっと言い方変えただけじゃん!」
澪「まぁ、あっちのホテルでは律が私のベッドに入ってきて
危うく貞操を奪われかけたわけですけど」
律「お、お前がひとりじゃ寂しくて寝れないとか言ったからだろ!」
澪「でも、まさかマッサージと称してあんなことするなんて思わなかったし……」
律「ばっ! バカ! こんなところでそんなこと言うなよ!」
澪「私そういうのじゃないですからぁ!」
梓 ピクッ
澪「んん~? どうしたんだ梓」
澪「もしかしたら唯先輩は私の事を……
とかいうような変な勘違いをしてしまったって顔してるぞ」
梓「いえ……別に……」
澪「それじゃあ、ここでブリティッシュジョークをひとつ」
律「歌始まれよ!」
澪「ちゃんとこのあとで歌うから」
律「絶対だぞ」
澪「ある日、後輩の梓がこう言ったのさ」
澪「も~! たまにはお茶の前に練習しましょうよ! って」
澪「だから私はこう言ってやったのさ」
澪「ん~。まぁそうだな。たまにはな」
澪「ってね」
律「普通の話!?」
澪「そしたら唯がこう言ったのさ」
律「あ、まだ続いてたのね」
澪「あずにゃんの方が先輩みたいだね」
澪「ってね」
澪「さっ、それでは聞いてください。五月雨20ラブ」
律「ジョークどこ行った!?」
アカネ「な、なんか音楽性変わったのかな……」
エリ「音楽性って言うよりも芸風かな……」
アキヨ(これや! ウチが求めてたもんは全部このバンドにあるで!)
… … …
唯「じゃあ、次で最後の曲です」
唯「聴いてください。U&I!」
唯「キミがいないと何もできないよ~♪」
和(ふふっ。唯ったらあんなにはしゃいじゃって)
和(ほらほら、そんなに飛び跳ねてたらスカート捲れ……)
和「!?」パシャパシャパシャパシャ!!
和(ふぅ……。机を舞台にしてちょっと高くしたのが功を奏したわね)
姫子「あとで一枚ちょうだい」
(訳・真鍋氏~真鍋氏~www拙者にもユイタンのパンチラ写真恵んじくり~www)
和「オッケー」
(訳・フヒヒwww立花氏~お主も好きよのぉ~wwwww)
慶子「なんか意外と真鍋さんと立花さんって仲良いよね」
信代「どっちも唯の保護者って感じ」
潮「大人だよね」
唯「思いよ~ 届け~♪」
ガチャ!!
堀込「ここで俺登場!」
さわ子「私も居るわよ!」
梓「せ、先生!?」
律「やばっ!?」
澪「ちょっと演奏ストップストップ!」
堀込「続けてもいいぞ。こいつのバンドに比べたら可愛いもんだ」
さわ子「恐縮です」
律「先生のお許しも出たことだし、続けるか」
澪「そういう問題じゃない」
紬「いったいどういうことなの?」
澪「この空間には今まで女性しかいなかったんだ」
澪「だからこんな短いスカートでどれだけ飛び跳ねてパンチラしようが
まぁ、同性だしいっかってなってた」
澪「でも、あとで和のカメラは没収します」
和・姫子「!?」
澪「しかしその均衡も男である堀込先生が来たことで破られてしまった」
澪「とくに曲のフィニッシュは激しくなりがちだしパンチラどころじゃ済まない」
澪「律なんてそんなこととは関係なしにもうずっと見えっぱなしだ」
律「うっ……。そう言われれば……」
梓「確かに。男の人に見られるのはちょっと……」
さわ子「安心なさい。堀込先生は男にしか興味がないから」
堀込「恐縮です」
律「そっちのが問題だ」
… … …
唯「さぁ、あとはあずにゃんの歌を完成させるだけだよ」
澪「だけって、それが一番大事なことだろ」
紬「そうだ、メロディが出来たの」
唯「聞かせて~」
紬「うん」
唯「……」
唯「!?」
律「ど、どうした!?」
唯「ちょっと聴いてみてよ」
澪「よし」
律「どれどれ」
澪律「……」
澪「こ、これはすごいぞ!」
律「ああ、すっごい演歌だな」
唯「さすがムギちゃん!」
澪「私たちが求めていたものはこれだよ!」
紬「すごく頑張ったの。そう言ってもらえると嬉しいわ」
律「え? いいの? 本当にこれでいくの?」
澪「逆に律はどういうのだったらいいんだよ」
律「いや、もっと真面目ってか、梓への贈り物なんだから真剣にした方がいいっていうか」
律「別に演歌がふざけてるとかそういう事じゃなくて
だけど、ちょっと私たちがやるのは違うかなって」
紬「りっちゃんは梓ちゃんに感動して欲しいとか?」
律「そうそう! 今まであんまり真剣に練習しなかったからさ
最後くらい超真面目にして泣かせちゃうくらいのものにしたいよな~って」
澪「はぁ……。相変わらず律はバカだな」
唯「重複してる!」
律「だからしてないって」
澪「感動させていったいどうしたいんだよ」
律「いや、やっぱ最後くらいはいいとこ見せたいじゃん」
澪「普段はおちゃらけてて、いざ最後ってときだけ真剣にやって
結果やっぱり先輩たちは凄い! って思わせたいってことか?」
澪「そんなのはヤクザの手口だぞ」
律「そう言われると返す言葉もございません……」
紬「人の道を踏み外しちゃいけないわ!」
唯「親が泣いてるよ!」
律「そこまでじゃないだろ!」
澪「私たちは私たちらしくいくのがいいんだよ」
律「演歌はどう考えても私たちらしくないけどな」
澪「その心意気がだよ」
律「よくわかんないけど、もう面倒臭いからそれで納得するよ」
卒業式当日
唯「あずにゃん、こっちにおいで」
梓「いったい今から何が始まるんですか?」
澪「実は梓のために曲を作ったんだ」
梓「え。本当ですか!?」
紬「梓ちゃんのことを想って一生懸命作ったの」
澪「それでは聞いてくれ」
澪「ファイナル紅茶」
澪「お前のことは 今日で忘れよぉ~」
澪「部室でひとり 黄昏てよぉ~」
澪「まな板見てると 思い出す~」
澪「おんまぁ~えのぉ~ ペッタリしたパイオツをぉ~」
澪「これを飲んだら卒業」
澪「アッサムのミルクで終わるよ」
澪「ファイナル~ 紅茶ぁぁぁぁ~♪」
梓「……」
律(梓……なんかごめん……)
紬「20万円のことは 今日で忘れよぉ~」
紬「楽器屋でまけた 20万円忘れよぉ~」
紬「20万円あれば 何でも買えた~」
紬「20万円の~ ペッタリした色んなお菓子をぉ~」
紬「これを淹れたら卒業」
紬「アッサムのミルクで終わりよ」
紬「ファイナル~ 紅茶ぁぁぁぁ~♪」
梓「……」
唯「……」
律(唯も黙っちゃったよ……)
律(でも、まぁ、あとはアウトロでこの曲も終わりだし)
澪「あれ? これダージリンだな」
律「?」
澪「なぁ、ムギ。これダージリンなんだけど。私アッサム頼んだよね?」
紬「あ、ごめんなさい。すぐアッサムに替えるわ」
律(おいおい……寸劇が入るとか聞いてないし……)
澪「いや、もう飲んじゃったからいいよ」
紬「ううん。すぐ替えるわ」
澪「あ、じゃあ替えて」
紬「ちょっと時間かかっちゃうけど」
澪「なんで? すぐ替えるって言ったよね? なんで急に時間かかるって言ったの」
紬「ごめんなさい。ぼーっとしちゃって」
紬「今朝、眉毛の手入れしてたものだから……」
澪「知らないよ、関係ないじゃないか眉毛の手入れしてたとか」
澪「あと全然太いままだし」
紬「ごめんなさい。お詫びと言ってはなんだけど、これ」
澪「なにこれ?」
紬「私の力でも開けるのに苦労したバームクーヘン」
澪「無理だよ。ムギであれだけ苦労したんなら、私だったら絶対に開けらんないよ」
唯「やっほ~! お茶しにきたよ~」
律(唯も参加してるってことは、知らなかったのは私だけかよ……)
紬「あ、唯ちゃん。今日で卒業だしそろそろ楽器代返してもらいたいんだけど」
唯「あ、なんか急用思い出しちゃった。じゃ~ね~」
澪「なんか随分慌ててたな」
紬「そうね~」
澪「貯金ゼロだな」
紬「貯金ゼロ、でしょうね」
澪「返す気もゼロだな」
紬「返す気もゼロ、でしょうね」
澪「あのさ」
紬「なに?」
澪「はやくアッサム作ってくんないかな
返す気ゼロでしょうね、とか繰り返さなくていいから」
紬「すぐ作るわ。本当にごめんなさい」
紬「ファァァァイナルゥゥゥゥ紅茶ぁぁぁぁぁぁぁ~」
梓「……」
律(や、やっと終わった……)
律「あの、梓。なんかさ、後半あんまり梓関係なくってごめんな」
律「てか、前半もちょっとどうかと思うんだけど……」
梓「うぅっ……」グスン
律「おいおい! お前らがこんな変な歌作っちゃったから泣いちゃったぞ!」
梓「ありがとうございます!」
梓「なんか最近先輩たちがコソコソと私に隠れて何かしてるって思ってたんですけど」
梓「まさかこんな素晴らしい歌を作っていただなんて思わなくて」
梓「私ったらもしかしたら本当に留年しちゃったのかもとか疑っちゃって」
梓「本当に嬉しいです!」
律「え? こんなんでよかったの?」
梓「はい! すごく感動しちゃいました!」
律「まぁ、梓がそう言うなら別にいいんだけどさ」
梓「いつもはダラダラしていた先輩たちが私のために最後の最後で
いいところを見せてくれる」
梓「やっぱり先輩方は凄いです!」
澪「まぁ、最後くらいはいいとこ見せないとな」
律「まんまとヤクザの手口にはまっちゃったよ……」
梓「必ず新学期からは沢山部員を集めて、皆さんの意志を継ぎます」
紬「がんばってね、梓ちゃん」
唯「あずにゃんならできるよ!」
梓「そして、律先輩のような立派な部長になります!」
律「そ、そう? 立派だなんて、梓も見る目があるな!」
梓「そして律先輩よりも、もっと立派な部長になってもっと軽音部を大きくしてやるです!」
律「言ったな~、こいつぅ~」
梓「えへへ」
律「梓がその意気なら安心だな」
梓「はい! 任せて下さい!」
律「ああ! 軽音部は任せたぞ!」
梓「って言っといて~」
律「ん?」
梓「新学年からは私がジャズ研に」
梓「転部する~♪」
律「……」
澪「まぁ、今後どうするかはあくまで梓の自由だからな」
唯「自由って素晴らしいよね」
紬「私も、自由に憧れちゃうわ」
律「廃部かよっ!」
おしまい
最終更新:2013年01月06日 01:55