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誕生日――。
そう、今日は私の誕生日だった。
声を大にして言う事でも無いから、別に特に誰にも伝えてない。
今日登校する時に唯達に軽く祝ってもらったくらいだし、それで十分満足だった。
放課後、部室で軽いパーティーをやってくれるとも言ってたしさ。
それだけでも凄く嬉しかったのに、和も憶えていてくれたなんて――。
突然のサプライズに胸がドキドキしちゃう……。


「ありがとう、の……」


「あっ」


感動で掠れた声を出そうした瞬間、和が小さな声を上げて私から視線を逸らした。
勿論、何かを誤魔化そうとしたわけじゃない。
和の視線を辿ってみると、いつの間にか雲の合間から青空が顔を覗かせていた。
雨が止んだんだ。
青空が見えている――。

雨が嫌いなわけじゃないし、むしろ好きな方だけど、でも――。
折角の誕生日なんだし、やっぱり晴れていた方が嬉しいな。
私の心まで何だか晴れ渡ってるみたい。

それにしても気持ち良い空だよな。
こういう空の事は何て言えばいいんだろう。


群青――?


紺碧――?


蒼穹――?


いや、どれも今の私の気持ちとは違うな……。
もっと今私が感じている気持ちに相応しい言葉は――。










「綺麗な青空ね」










和が私より先に言って私は吹き出してしまう。
「どうしたの?」と和が首を傾げて、私は「何でもないよ」と応じる。
お互いの大切な物を話し合っている内に考えた方も似通って来たのかな。
気取った言葉は必要ない。
これが私と和の素直な感情。

不思議だよな……。
私も、同じ事を考えていた所だったんだ――。

私には友達が居る――。
大切な物を分かり合えて、同じ物を見ていられる友達が居る――。
でも、もうそれだけじゃ、満足出来ないよ、和――。


今こそ勇気を出さなきゃ、って私は思った。
ずっと怖くて近付けられなかった私と和の距離。
大切な友達ではあったけれど、それ以上近付く勇気は持てなかった。
でも、今日くらい、勇気を出してもいいじゃないか。
今日は私の誕生日なんだから。
一つ年上の私になれた日なんだから――。

私は深呼吸してから、晴れ渡る空の中、虹を探してみる。
雨上がりだし、一本くらい虹が架かっててもおかしくないと思ったから。
虹の橋が架かっていたら嬉しいな、って思ったから。

でも、残念だけど、青空の中に虹を見つける事は出来なかった。
よく探せば何処かにあったのかもしれないけど、
少なくとも軽く見渡した限りじゃ見つからなかった。
逆にそれでよかった。
たまたま架かった虹に勇気を貰うなんて、それはきっと和に失礼な事だ。
私は私自身で勇気を持てなきゃいけない。
持たなきゃいけないんだ。

雨が上がり、青空が世界を包んでいる。
だったら今度は――






私が自分で和との間に見えない虹の橋を架ければいいだけだ――






最後の深呼吸。
私はもう一度、和の手を握り締め、真剣な表情で和の瞳を見つめた。
今こそ私は私と和の距離をもっと縮める。
今こそが、虹を渡る時なんだ。


「お祝いしてくれてありがとう、和。
親友から祝ってもらえるなんて、すっごく嬉しいよ、和」


「当たり前でしょ、澪。
これでも私は澪の親友なんだもの。
これからもよろしくね、澪。
もうすぐ三年生になるけど、また同じクラスだといいわね」


「ああ、そうだといいよな――」


二人で顔を合わせて、また笑う。
青空みたい晴れ渡る笑顔で。
最高の笑顔で。




十七回目の誕生日、
こうして私は、最高の『親友』を手に入れたんだ――!




追伸。

ちなみに和が用意してくれていた誕生日プレゼントは、
400ページを超える分厚い星座図鑑の三冊セットでした。
いや、確かに星座が好きだとは前に話したけどさ……。

でも、折角だし、これで勉強して、いつか二人で天体観測に行けたらいいな。



これにて完結です。





最終更新:2013年01月15日 01:48