律『もしもーし?』

澪「もしもし」

律『どしたー』

澪「うん。今なにしてた?」

律『マンガ読んでた』

澪「そっか」

律『うん。で、なに』

澪「べつに。用がなきゃ電話しちゃいけないのか?」

律『私の恋人かーおまえは』

澪「へへ」

律『照れんな照れんな……』



律『いいよ』

澪「うん?」

律『べつに、このマンガもう何回も読んでるしさ。相手してやるよ』

澪「そっか、そっか」

律『うん』

澪「つまり暇だったってことか」

律『おい』

澪「いいじゃん」

律『切ーるーぞー』

澪「わ、待ってよ律」

律『はいはい』



律『で?』

澪「うん」

律『用がないっつっても話題くらいないのかよ?』

澪「あ」

律『……"あ"って』

澪「あ、いやいや、ちがう、違う。ある、あるぞ、話題」

律『ふーん……?』

澪「今日さ、映画観に行ったんだ」

律『今日?ああ、昨日ね』

澪「細かいこと言うな。まあ月曜日にさ」

律『へー。なに観たの』

澪「ほら、あれのあれ」

律『あー、あれのあれね。どうだった?』

澪「それがさあ律……」

律『あー』

澪「ぜんぜん面白くなかった」

律『だろうなー。CM観たときからそんな気してた』

澪「な、つ、つまんなそうって知ってたなら言ってよ」

律『いや、澪があれ観に行くとか思わなかったし……え、ていうかなに、誰と行ったの?』

澪「うん?ひとりで」

律『ひとり!』

澪「みんな予定合わないっていうからさ。でもきょ……昨日は私なにもすることなくて暇だったんだよ。だから」

律『いやいや。誘えよ。私を!』

澪「?こないだ律、金欠って」

律『あ。ま、まあそうなんだけど……』

澪「でねでね、律」

律『お、おう』

澪「雨だっただろ」

律『あー。そういえばそうじゃん、けっこうどざ降りだったけど、大丈夫だったか?』

澪「……だいじょぶじゃなかった」

律『あー……』

澪「帰りにコンビニ寄ってさ、入り口の傘立てに傘置いといたんだよ」

律『げ。まさか』

澪「……うん。なくなってた……」

律『悪いやつもいるんだなー……』

澪「飲み物買っただけなんだよ、3分も経たずに、なのにっ」

律『うわ、運わるいな』

澪「無駄遣いしないように、って、あんまりお金持っていかなかったんだ」

律『ん?え、ひょっとして澪』

澪「新しく傘買うお金もなくてさ……」

律『……傘差さずに帰ってきた?』

澪「……うん」

律『……』

澪「……」

律『……寒くなかった?』

澪「……寒かった」

律『辛くなかった?』

澪「……辛かった」

律『……泣きたく、ならなかった?』

澪「……なった」

律『そっか。……大変だったな』

澪「……うん」

律『お疲れさま、澪』

澪「……律ぅ」

律『うん。疲れたろ。今日はもう寝な』

澪「……やだ」

律『そばにいてやるから」

澪「……ほんとに?」

律「ほんとだよ。現にほら」

澪「あれ……律、なんで……?」

律「そばにいて欲しいって、澪がそう思ったんだろ。だからだよ」

澪「だ、だって、つい今さっきまで電話して」

律「ははは」

澪「なんだよそれ……」

律「いいからさ、もう寝なって。朝が来るまでは一緒にいるよ」

澪「じゃあ、朝が来たら……?」

律「そんときはゴハン食べて身支度して、んで学校に来い。そしたら逢える。また一緒」

澪「……ほんとだな」

律「ほんとだよ。いつものことじゃん」

澪「……そっか。そうだな」

律「うん。だからおやすみ、澪。また明日」

澪「ああ。また明日。おやすみ、律」




おわり



最終更新:2013年01月15日 21:55