律「……はぁ、はぁ……」
なーにやってんだろうな、私。
いろんな意味で。
何でこんな寒い夜に全力疾走してんだろ。車出してくればよかったのに。
何で澪の…誕生日、すっかり忘れてたんだろうな。
んで、何で今私走ってんだろうな。
律(なんとか、日付変わる前に間に合うか……ひぃ、運動不足が響くぜ~ぃ)
大学出てもう何年も経つ。
みんなとは離れ離れになってしまったけど、でも最初の2年ぐらいはそれぞれの誕生日に無理矢理集まったりしてたもんだ。
その後何年かは、直接会えないにしてもプレゼント贈るなり、電話やメールするなり、何かは必ずしてた。
でも、ついに今年……あーあ、何だってよりによって澪の誕生日忘れちゃうかなぁ。
他のメンツのはちゃんと覚えててメール送ってたのにさ。
近しい存在すぎて逆に忘れちゃいました~、ってか?
思い出したのがつい30分前。冷や汗かいたぜ……
んで何を血迷ったか、そのまま家を飛び出してきちまった。
メールすればよかったじゃん……てかもうちょっと厚着してくりゃよかった……そもそも何で車じゃなくて徒歩で……
律(ま、幸い澪んちは割と近いからな。走っていけると思っちゃったんだろう)
誰に言い訳してんだかって感じだけど……。
澪が一人暮らししてる家は偶然にも私と近い。っても、こうやって30分近く走ってやっと着くぐらいの距離なんだが。
正直動転してたんだな~。忘れちゃってたことに。
別に澪と仲悪くなったわけじゃない。疎遠になるつもりもない。
だんだんあいつのことも過去の人になって……なんてやだし。
じゃーなんで忘れてたんだよ! あ~あ馬鹿だな、私。
まさにそのこと自体が、澪と疎遠になってきてることの証明じゃんか。
それが許せなかったんだな、多分。だからなんつーかそれの埋め合わせというか、謝罪の意志というか……
そんな感じでモヤモヤして、なんとなく自ら出向かないといけない気分になっちゃったんだな。
律「はぁ、はぁ……着いた……」
こんなに疲れるとは思ってなかった……歳だな……
てか澪の奴起きてんのか……? 電話してみるか。
律「み~おしゃん、起きてますかー、ピポパっと」
律「……あ、澪?」
『……どうした?』
律「えーっと、今暇?」
『え、まぁ暇っちゃ暇だけど……』
律「んじゃ家おじゃましていい?」
『今から?』
律「そ。てか今家の前にいるんだけど」
『はぁ!? ……ちょっと待ってて、空けるから』
……はは、そりゃ驚くわな。
てか誕生日忘れてたこと気にしてたりするんだろうか……今まで澪のは忘れたことなかったからわかんないな……
澪「……何やってんだ、律。入りなよ」
律「お、お~……サンキュ」
家ん中、あったけ~……
澪「……どうしたんだ? 何かあったのか?」
ま、そりゃ当然の反応ですわ。
突然こんな夜中にしかも徒歩で現れたら……
でもまぁ、せっかく間に合ったんだから目的は果たさないとな。
律「えーっと……澪、誕生日おめでとな」
澪「……は?」
こ、これも当然の反応ですわな……
てか澪の奴、あからさまに怪しんでるな。
ま、恥ずかしいけど正直に話すしかないか……
澪「えっと……何しに来たんだ?」
律「澪の誕生日を祝いに来た」
澪「……律、からかってるのか?」
律「違うって! まぁ突然来て悪かったよ……てか澪の誕生日すっかり忘れててゴメン」
澪「ああ、別にいいって……」
律「よくなぁーいっ!!」
澪「うわ!? ちょ、ちょっと律、夜中に大声出すな!」
律「あー、すまん……」
澪「どうしたんだ律、おかしいぞ?」
律「いやぁ、あのな……もうこの際正直に言うぞ」
澪「う……うん」
律「澪の誕生日すっかり忘れててさっき気づいたからいてもたってもいられなくなって走ってきた! プレゼントはないっ! すまん!!このとーり!!!」
澪「律……?」
律「でもな、澪! 忘れられたからって、別にいいなんてナシだぞ? その、なんつーか……ソエンになってもいいみたいなこと言うなよ、寂しいじゃんか」
澪「……ぷっ」
律「な、何がおかしい~!!」
澪「なんだよ律、私のこと一人じゃ生きていけないだろって散々バカにしたくせに……寂しがりなのは律のほうじゃないか」
律「う……」
澪「ふふ。ありがとな、律。まぁ、忘れられてたのはアレだけど……」
律「返す言葉もございません」
澪「でもここまで走ってくるなんてな。バカとしか言いようがない」
律「う、うるせ~……」
澪「寒かっただろ。まったく……」
そんなこんなで澪に抱きしめられた。
あーもう頭ん中ぐちゃぐちゃだ……ホント今日の私どうかしてるわ。澪にからかわれるなんて……
まぁいいや、あったかいし。
とりあえず来年は忘れないようにしとこ……
忘れないように、もっと遊ぶようにしよ。
おわりです
即興などやるもんじゃないと痛感した次第である。キャラが迷子
澪ちゃんおめでとうございました!
最終更新:2013年01月16日 04:14