~~~~職員室~~~~
堀込「――おや、山中先生」
さわ子「……あら、堀込先生。まだいらしたんですか」
堀込「ええ。少し調べ物がありましてな」
さわ子「そうだったんですか」
堀込「山中先生もずいぶん遅くまで」
さわ子「私も少しやることがありまして」
堀込「そうですか」
さわこ「ええ」
堀込「……」
さわ子「……」
さわ子「……」
堀込「……」
さわ子(……き、気まずい)
さわ子(どうしよう、本当は明日やってもいいような仕事だし、もう帰ってもいいんだけど)
さわ子「……」
さわ子「……あっ、せ、先生?お茶でも淹れま――」
堀込「ああ、結構。間に合っとりますから」
さわ子「そ、そうですか……」
さわ子(いつの間にお茶なんか淹れてたのこの人……)
さわ子「ま、まだお仕事残ってらっしゃるんですか?」
堀込「ええ。小テストの採点があと2クラス分」
さわ子「そうですか……」
堀込「……ん」
さわ子「?どうかされました?」
堀込「いえ、赤ペンのインクが切れてしまったようで」
さわ子「あ、でしたら私の、どうぞ使ってください。私は予備も持ってますし……」
堀込「そうですか。すみませんね」
さわ子「いえ……」
堀込「……」
さわ子「……」
さわ子「……あ、あの」
堀込「?」
さわ子「よければ私、お手伝いしましょうか。1クラス分、私が――」
堀込「……」
さわ子「……」
堀込「……ふ」
さわ子「?」
堀込「――はは。バカ言うんじゃない。山中お前、自分の古文の成績がどうだったか、覚えとらんのか」
さわ子「え……」
堀込「お前の手を借りるほど老いぼれとらんわ。仕事が無いのならさっさと帰れい」
さわ子「……」
堀込「……なんだ、その顔は」
さわ子「……ふふ。いえ、なんでも。でも私ももうちょっとだけ残りますよ、先生」
堀込「ふん。勝手にしろ」
さわ子「でも先生、解答くれれば○×つけるくらい私にだってできますよ。古文の成績は関係ありません」
堀込「はン、生憎だがこれは論述形式の小テストでな。これという正解はないようなもんだ」
さわ子「そういえば昔から論述のテストばっかりでしたね、先生の授業って。古文なんか興味ないのに、そういうテスト、生徒は困るんですよ?」
堀込「減らず口は変わらんな、お前は。こういう問題に向き合うことで内容の理解を深められるんだ。黙っとけ」
さわ子「はーい」
堀込「……そうでなくともまだまだ子供だ、そんなやつに大事なテストの採点なぞ任せられんわ」
さわ子「……!」
堀込「だいたいなんだこのペンは……ちゃらちゃらしおって」
さわ子「……まだ」
堀込「……なんだ?」
さわ子「……まだ、子供ですか。私」
堀込「……」
さわ子「いつも先生に、"もっと大人になれ"って小言言われて、悔しいですし、自分でも大人にならなきゃと思って努力してるつもりです……」
堀込「……」
さわ子「……その努力が足りないのは分かってます。でも、」
堀込「山中」
さわ子「……はい」
堀込「お前、いくつになった?」
さわ子「え……」
堀込「これからどんどん、お前を子供扱いする人間も少なくなる。今のうちだと思っとけ」
さわ子「……」
堀込「お前に、こんな風に口利いてやれるのも――特別に"今日だけ"だ」
さわ子「――!」
堀込「明日からはもうせんぞ」
さわ子「……は、はい!」
さわ子「……それじゃあ私、そろそろ帰りますね」
堀込「そうか。気をつけて帰れよ」
さわ子「ええ――堀込先生もあまり遅くなられないようにしてくださいね」
堀込「はン、余計なお世話だ。では――お疲れ様です、山中先生」
さわ子「ええ。お先に失礼させて頂きます、先生」
堀込「……」
さわ子「――あ、それと先生!」
堀込「?何か?」
さわ子「いきなり女性に歳を聞くなんて、あんまりデリカシーないことしないでくださいよっ!」
堀込「ん、んなっ――!」
さわ子「それじゃ、お先ですっ!」
堀込「……」
堀込「ふ、ふん……本当は聞かんでも、歳くらい覚えとるわい……!」
おわり
学校の先生ってちょっと不思議な存在ですよね、第二の父親的な
さわちゃんにとって堀込先生も苦手なだけじゃない存在であればいいな
ともあれちょっと遅くなったけどさわちゃん誕生日おめでとう。
それではまた
最終更新:2013年02月01日 00:42