・・・

澪「………」

澪「………」

澪「………」

澪「………」グスン

澪「………」

澪母「澪~田井中さんが来てるわよ?」

澪「………」

澪母「澪!ほら、起きなさい!田井中さんが学校のプリント届けに来てくれたわよ」

澪「う…うぅ…」

律「澪~?」カチャ

澪「律っ…」ガバッモグリ

律「おい隠れるなって…」

澪「グス…」

律「梓、よくなるってさ。もう少ししたら退院できるし、元の生活に戻れるんだ」

澪「!」

澪「そうか…」グス

律「だから、元気出せって…」

澪「うぅぅ…」グスングスン

律「なぁ、澪!」ガバッ

澪「うぅぅ…ぁ…りつぅ…」グチャ

律「うっ…なんて顔してんだ、顔洗ってこいよ」

澪「やだ…」モグリ

律「はぁ?おい澪!梓に会ってやるくらいしたらどうなんだ」

律「梓のやつ、ずっとお前に会いたがってるんだぞ」

澪「そんなはずないよ…私が梓をあんな目に遭わせたのに」

律「おい澪ぉ…なぁ!も~布団から出てこい!」

澪「やだもん…」

律「ったく!なぁ澪…あのな、梓はなぁ…」

澪「出てって…」

律「ぇ…」

澪「出てってよ…」

澪「一人にして」

律「おま…」

澪「はやく!!」

律「ぐ……」

律「はぁ~…」

律「いじけてないで、早く学校来いよ。みんな待ってるからな」

澪「………」

・・・
・・・・
・・・・・

澪「あずさ~?」ガラッ

梓「澪先輩!」

澪「元気になったかぁ~?」ニコニコ

梓「はい!もうすぐ退院できますよ!」

澪「そうか!それはよかったなぁ~!」

梓「澪先輩が来てくれて、うれしいです!」

澪「ははは、うれしい事言ってくれるなぁ!梓!」

梓「あはは」

澪「そうだ!今日は差し入れがあるんだ!」

梓「え?」

澪「ほぉら!お前の大好きな塩ラーメンだぞぉ!」ホカホカ

梓「え、わ…私まだそんな味が付いたもの食べられませんよ!」

澪「まぁまぁいいじゃないか!そんなこと言ってたら何にも食べられないぞぉ~?」

梓「え…澪…せんぱい?」

澪(やめろ)

澪「ほら!あーんして、あーん!私の手作りなんだぞ~?」ホカホカ

梓「ちょっ澪先輩!おかしいですよ!」

澪「麺延びちゃうぞ?ほーら食え!」ガボ

梓「むぐぅ!うぐぐぐ!」

澪(や め ろ!)

澪「美味しいか~?いっぱい食べろよ~?」

梓「やめるです!やめるです!むぐぐぐぐ!!」

澪「お腹いっぱい食べて、また私に笑ってみせてくれ!」

澪「ほれっほれっ!」

梓「んぐぅぅぅ!ブフッ!ゲホッ!」

梓「ゲホッ!や…やめてください…澪…先輩…」ポロポロ

澪「どうした梓?泣くなよ~せっかく美味しいラーメン作ってきてやったのにぃ~」

澪(や  め  ろ!)

澪「ほら、早く笑ってくれよ!ほらぁ!笑え!!!」

梓「んぶぶぶぅぅ~!むぐぐぐ!んぶぶぶじゅるじゅる!んふぅぅぅんんん~!」

澪(や  め  ろ!!)

梓「ぶぐぅ…ぶふふっ!がはっ!」

澪「笑えって言ってんだろぉぉぉぉ!!!」

澪(や  め  ろ!!!!)

梓「うぐぇ…ぐぶぶぶ………」

澪(や め ろ ぉ ぉ ぉ !!!!!!)

・・・・・
・・・・
・・・

澪「やめろぉ!!!」ガバッ

澪「ハァ…ハァ…」

澪「くぅぅ……うぅ…」

澪「……もう、やめてくれ」

澪「梓…ごめんよ…」ポロポロ

澪「………」

澪「………」

澪「………」

澪「ふふっ………くふふ。ははは」

澪「お腹すいたなぁ~♪」

・・・

澪「…」ズゾゾゾゾゾゾ!!!

澪「…」ズルズル!!

澪「…」ハムッズルズルズル!!!

澪「…」ムシャムシャムシャ!!

店主「お嬢ちゃん!いい喰いっぷりだねぇ!!」

澪「…」ドボドボドボ

店主「お、おい…お嬢ちゃんそんなに醤油入れたら体に悪いよ!?」

澪「…」ゴクゴクゴクゴク

澪「ぷはぁ~」ゴトン

店主「あ、あ~あ~…」

澪「ごちそうさま」チャリン

澪(なんだこれ?ラーメンってこんなにマズかったけ?)

澪(もっとウマいラーメン屋はないのか?ったく)

・・・

澪「…」ズゾッ!ズゾゾゾゾゾゾゾ!!

澪「…」ズルズルズルズルズル!!!!

澪「…」ムッシャムッシャ!

澪「…」ドボドボドボドボ

澪「…」ゴクゴクゴクゴク

澪(味が薄いなぁ…)

澪「…」ドボドボドボドボドボ

澪「…」ゴクゴクゴクゴクゴキュ!

澪「…」ドボドボドボドボドボ

澪「…」ドボドボドボドボドボ

澪「…」ドボドボドボドボドボ

澪「…」ドボドボドボドボドボ

澪「…」ドボドボドボドボドボ

・・・

律(今日も澪は来なかったなぁ)

律(さすがに学校休み過ぎだ…今日はビシッと言ってやらないと)

律「ん?あれって…」

澪「あ~ここも味薄い」

律「澪!」

澪「あ、律。よぉ」

律「澪、何してんだよこんなところで!」

澪「え?ラーメン食べてる」

律「ラーメン食べてるって……ん?なんだその手に持ってるの…」

澪「あぁ醤油だよ。ったくどこもかしこもラーメンの味を全然わかってない…」ブツブツ

律「ぇ…な、なぁ…澪しゃん…?」

澪「次だ次~。あーもう醤油飲んだ方が早いか」グビグビグビグビグビ

律「!?ばっ、バカ!!何やってるんだ!!」

澪「………」グビグビグビグビグビ

律「ちょ!やめろよ!!」ガバッ

澪「あ、何すんだ!返せ!」ググ

律「んなもん飲んだらどうなると思ってんだぁ!」グググ

澪「あぁ~?律には関係な…うごぉ!?」

律「吐け!出せ!!ほらぁ!!」グリグリ

澪「や、あめおぉぼぼぼ!!」

律「吐け!全部吐け!」ジュブジュブ

澪「うぶ!おげぇ!おおおおろろろろろろろ!!!」ドチャッ!ビチャビチャ

澪「おえぇぇ!おぼぼぼぼぼぼぼぼぼぼろろろろろろ!」ビチャチャチャチャ

律「いったいどんだけラーメン食べてたんだよぉ!」ポロポロ

律「醤油で真っ黒じゃないかぁ!なにバカな事してんだよぉ~澪ぉ!死にたいのか!」グスン

澪「おろろろろろ!ぶっ!ゲホッ!」ビチャッ!ビチャッ!

澪「うぶっ!ケホッ!ケホッ!」

律「ハァ…ハァ…手ぇゲロだらけだよまったく…」

澪「はぁ…はぁ…ハァ…」グデッ

律「このぉ」ガシッ

律「澪!!」ポロポロ

律「いつまでいじけてんだ!見損なったぞ!!」パシンッ

澪「痛っ!」ドタッ

律「梓はなぁ!お前に会いたがってんだよぉ!」

律「他でもないお前にだ!またお前と一緒にラーメン食べるために頑張ってんだよ!!」

律「またお前と一緒にラーメン食べながら笑いたがってるんだよぉ!!!」

律「お前に笑顔を見せるために、お前がいつ会いに来てもいいように!泣くのだって我慢してるんだ!」

律「なのにお前はいつまでもズルズルズルズルと!!!」

律「梓は身体は弱いかもしれないけど、心は澪の何十倍も強いぞ!」

澪「うっ…グスッ…ぅ…」ポロポロ

律「泣くな!」ガシッ

律「澪、もうこの際お前には罪が無かったなんて言わない」

律「でも、誰だって失敗する事はあるだろ?」

律「ちょっとはしゃぎ過ぎただけだろ?」

律「このつまらない日常の繰り返しに飽き飽きしてたんだろ?」

律「その日常から少し逃れたかっただけなんだろ?」

澪「なくない…」ボソッ

律「あぁ?」

澪「つまらなくなんかなかったよ!」ポロポロ

澪「みんなと勉強して、お喋りして、バンドして…なにもかも最高だったさ…」

澪「でも、ちょっと足りなかったんだ……」

澪「心のどこかで寂しく感じでたんだ!」

澪「あと、なにかほんのちょっとあれば…」

澪「けど、そのほんのちょっとが欲張りだったんだ!!」

澪「こんなに充実してるのに、それでも飽き足らず…私は梓を連れまわして、無理させて…大切な後輩を…あんな目に遭わせて…」

澪「欲望に逆らえず、調子に乗った報いだよ!」

澪「自分の欲望のために、私は後輩の…梓の人生を奪いかけたんだぞ!」

澪「もう私に普通の生活をする資格なんかないんだ!!」

律「………っ!」

律「………こ…」

律「………このぉ!」

律「バカ澪!!」ガシ

澪「うぐ!」

律「お前は与えられる事しか考えてない!自分の事しか考えていない!求める事しか考えてない!」

律「ハァ…ハァ…!」

律「お前は!梓から“元気”をもらってたんだろ!?」

律「ラーメン食べて、一緒に笑って…幸せにさせてもらってたんだろ!?」

律「その梓が今大変だって時に、お前がいてやらないでどうすんだ!」

律「梓は!澪に誘われてめちゃくちゃ喜んでたんじゃないのか!?」

律「私は見てたぞ!!澪とよくラーメンを食べてるって話してた時の梓の顔!!」

律「あんなに嬉しそうに答えてたじゃないか!?お前とラーメンを食べるのが嬉しくてしかたなかったんじゃないのか!?」

律「ラーメンが好きなんじゃない!梓は、お前が好きなんだよ!!」

律「お前だから!澪だから!あんなに笑顔になれるんだよ!」

律「そんな事にも気づいてやれなかったのか?お前は!!」

律「そんな後輩が倒れた時、自分はどうすべきかもわからないのか!?お前は梓に何も与えてやれないのか!?」

律「お前は、先輩失格だ!!」パチンッ

澪「………」ズキズキ

澪「………ふっ」

澪「………ふふふ」

律「?」

澪「…わたしは幸せだ。今、本当に」

律「な、なにを…!」

澪「こんな真剣に怒ってくれる。こんな私のためにおもいっきり殴ってくれる…こんな親友を持てて…」

律「澪…」

澪「ほんと、律の言う通りだ。私は求める事しか考えてなかった…」

澪「今もそうだ。私は律にこうやって怒られる事を求めてた…自分からは何も行動できず、ただ何かを待ってた…」

澪「私は、後輩の気持ちなんか全然考えてやれない……独りよがりな、ダメな先輩だ」

律「………」

澪「私は…梓のために何も…なにも…」ポロポロ

律「澪…」ポロポロ


梓『澪先輩…ありがとうございます』


澪「はは…ははは…こんな簡単な事なのに、どうして私は気付かなかったんだろうな…」

澪「後輩の梓は私のために頑張って笑顔でいてくれているっていうのに…」

澪「バカだったよ…ホント」

澪「今分かったよ…」

澪「やっと、やっと気づけたよ…私」

律「澪ぉ!」グスン

澪「う…うぅぅぅぅ」ポロポロ

澪「あ、ありがとうりづぅぅぅ!」

澪「うっ…ぅ…」グスン

律「澪…」ゴシゴシ

律「いいか、澪…」

律「お前が梓に会うまで、放課後ティータイムは活動中止だ」

律「絶対に梓に会って、先輩らしい所を見せるんだ!」

律「お前と梓が笑顔で部室に戻ってきたらまたティータイムを始めよう」

律「私たちはいつまでも待ってるからな」

律「今度はお前が梓の心の支えになってやる番だ。わかったな?」

澪「わ、わかった!」グスン

澪「ありがとう…律…」ポロポロ

律「あーもうだから泣くなってぇ~の」ヨシヨシ

律「ほら、立て!」

澪「うぅ…」

律「ほら、行くぞ!ついてこい!」

澪「え…どこに…?」

律「ラーメン食べに行くぞ」

澪「へ…?」


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最終更新:2013年02月13日 01:05