直「はい、中野先輩もご存知でしょう?」

梓「さすがに今時それくらい知ってるけど…それがどうしたの?」

菫「はい、実は……」

直「平沢先輩が感染しちゃいまして」


憂「オネエチャーン」ガガガ



梓「!?」



梓「……なに? ふざけてるの?」

菫「ふ、ふざけてなんていません! 大真面目です!」

直「その通りです」

菫「憂先輩はこんなに苦しんでいるんですよ!?」


憂「オネエチャーン」ガリガリ


梓(……いや、信じろってほうが無理があると思うんだけど)

  「っていうか苦しんでるの? これ」


梓「そもそも憂は人間だし……」

直「中野先輩、人間だというのは何処を指して言っているのでしょうか。肉体でしょうか」

梓「え? うん、まぁ、全部…?」

直「ネットの発達したこの時代、コミュニケーションサイトでは人間と大差ない会話をするプログラムもありますし、ゲームでは人間の代わりにレベルを上げてくれるプログラムもあります」

菫「あ、そういうのbotって言うんでしょ?」

直「うん。で、話は戻りますがそんな時代で中野先輩は平沢先輩の何処を指して人間だというのでしょうか。
  肉体を持っている、それ以外の面では人間とロボットの区別なんてつきにくいこの時代で! プログラムが会話し、働き、人の代替品として職務を全うしているこの時代でっ!!」

梓「え、えーと……その……」

菫「直ちゃん、落ち着いて」

直「……っと、すみません、中野先輩。熱くなりすぎました。……でも、私の説に証拠があるわけではないですが、その可能性も考慮してくれると助かります」

梓「う、うん、わかったよ……」

  (ずいぶん本気だなぁ、憂も徹底してるし)


憂「ジュンチャーン」ギギギ


梓「そういえば純の姿が見えないけど」

菫「そ、そういえば見てませんね」

梓(怪しい)

直「中野先輩、鈴木先輩のことなんかより平沢先輩の問題のほうが大事でしょう!?」

梓「それは私も否定しきれないけど、けっこうひどいね直」

菫(否定しきれないあたり梓先輩もなかなか……)


憂「オネエチャーン」ガッガッガッ


梓(ま、気が済むまで乗ってあげますか。それも先輩の務めでしょう!)フンス

  「で、直、どうすれば憂は治ると思う?」

直「ウイルスチェックをして原因となるファイルを取り除くのが基本にして確実なんですけど…」

梓「ふむふむ」

菫「少なくとも体は人間の憂先輩にそんなこと出来ないじゃないですか」

梓「うんうん」

直「というわけで手詰まりです」

梓(ずさんな設定だなぁ)


憂「ジュンチャーン」ガガッ



直「とりあえず現状、平沢先輩はプログラムがエラーを吐き続けている状態です」

梓「冷静に考えたらそれウイルスっていうかバグっただけじゃ――」


憂「梓ちゃんの今日の下着は上下ともに白」


梓「!?」

直「おや、ウイルスによって平沢先輩の中に保存されているデータが外部にバラまかれているようです」

梓「何それ!?」

直「とりあえず今すぐLANケーブルを抜いたほうがいいですね」

菫「でも憂先輩は無線接続だよ?」

直「詰みましたね」

梓「諦め早いよ! モデムの電源を落とそうよ!」


憂「梓ちゃんのお尻にはまだ蒙古班が」


梓「うわーうわーうわー!!」



憂「オネエチャーン」ピーガー


直「とりあえず落ち着いたようですね」

梓「……あのね憂、いくら憂でもこれ以上の悪ふざけは――」

菫「だ、だめですよ梓先輩! 的確な処置をしないと傷が広がるばかりです!」

梓「む……」

直「元凶を取り除く、これが一番大切なんですよ、何事においても」

梓(どうせ元凶は純でしょ……)

菫「とりあえず、一旦落ち着きましょう。お茶淹れますね」

梓「……わかった」ガタ


菫「…はい、どうぞ」コトッ

梓「ありがと」

菫「どういたしまして。直ちゃんも」コトッ

直「」カタカタ

菫「うん」

梓(どんな会話してるんだろう……)ズズッ

憂「」スッ コト

梓「あ、お菓子」ヒョイパク

菫「あっ!? ダメです梓先輩!!!」

梓「ん? どうしたのすみrなにこれ辛ッッッッ!?」ブフォェェエ


直「中身のわからない怪しい添付ファイルはまずスキャンをしましょう。お姉さんとの約束だ」


梓「酷い目に遭った……」

菫「大丈夫ですか…?」

梓「まぁ腐っても憂のお菓子、言うほど酷くはないんだけど。ショックのほうが大きいと言うか…」

直「それほどのコンピューターウイルスということです」

梓「そろそろ心が折れそう……」


憂「オネエチャーンオネエチャーンオネエチャーンオネエチャーンジュンチャーンジュンチャーンスミーレチャーンナオチャーンスミーr」ガガガ


梓「今度は何!?」

直「これは……ブラウザクラッシャー!」

梓「それってウイルスじゃなくてHTMLとかスクリプトじゃなかったっけ?」

直「こまけぇこたぁいいんだよ」


憂「ナオチャーンオネエチャーンスミーレチャーンジュンチャーンオネーチャーンオネーチャーンジュンチャーンスミーレチャーンスミーレチャーンナオチャーンオネエチャーンナオチャーンオネエチャーンスミーレチャーンジュンチャーンオネーチャーンオネーチャーンジュンチャーンスミーレチャーンスミーレチャーンナオチャーンオネエチャーン」ガガガガガガガ


菫「これ以上は危険です! なんか壊れそうですよ!!」

梓「ど、どうすれば…?」

直「まぁ、ただ単にウインドウ開くだけのブラクラならエクスプローラのプロセスを強制終了すればそれだけで済むこともあるんですけどね」

菫「つ、つまり?」

直「口を塞げばいいんじゃない?」

梓「適当だー!」



憂「」モゴモゴ

梓(……口がモゴモゴ動いてて押さえてる手が気持ち悪い……)

直「そのうち落ち着くでしょう」

菫「梓先輩、頑張って!」

梓「うん……」

  (もはや何がしたいのかわからない……)



梓「……あ」

直「どうしました?」

梓「ん、いや、些細なことなんだけど」

菫「はい」

梓「……なんで憂、私の名前は呼ばないのかなぁ、って」

直「ふむ、それはたしかに不思議ですよね。私はてっきりそればかりになるかと思ってたんです」

菫「言われてみれば妙な話ですね」

梓「別に、そんな大したことじゃないんだけどね……」

  (……なんか、悔しいけど)


憂「………」



直「そろそろ落ち着いた頃でしょうか?」

梓「手を放してみようか」


憂「………」


菫「大丈夫そうですね」

直「さて、どうすれば治るのか――」


憂「アズサチャン」


梓「え?」

菫「?」


憂「アズサチャンダイスキ」


梓「!?」


直「……ふむ、ついに平沢先輩の個人情報が流出してしまいましたか」カタカタ

菫「……直ちゃん、今だけは記録取るの禁止」

直「ぐぬぬ」

菫「クレジットカードの番号並みに重要な情報だよ!」

直「はい」ハンセイ


梓「って、ちょ、えぇっ!? どうしよう、え、どうすればいいの!?」アタフタ

直「中野先輩もバグった」

菫「ど、どうすれば……」

純「ふふふ、ついに私の出番のようだね!」バーン

菫「あっ、鈴木先輩!」


純「梓! 憂が感染しているコンピューター憂ルスはトロイの木馬! 部外者の私たちが割って入ったら馬に蹴られて死んでしまう!!」

直(これが言いたかっただけですね)

菫(これが言いたかっただけかなぁ)

純「だから当事者の梓が素直な気持ちをぶつけないと解決しない! いいや、それでしか解決しないんだ!!」

梓「純……わかった、私やってみるよ!」

純「よし!」

梓「だから出てって」

純「はい」

直「はい」

菫「はい」



憂「アズサチャンダイスキ」


梓(……んー、正直、どうせ純の発案の悪ふざけ…に見せかけた告白後押し大作戦!みたいなノリなんだろうけど)

  (ここまで来たら、それを指摘するのは野暮ってものだよね)

  (それより大事なのは、私の気持ち。私は……憂のことをどう思っているのかな)


憂「アズサチャンダイスキ」


梓(……名前を呼ばれて、大好きと言われて、嬉しい。それが答えだよね……)

  「……憂っ」

憂「アズサチャン」

梓「……憂の中のウイルス、駆除してあげる。受け取って! これが私の答え《アンチウイルスソフト》だよ!」


チュッ


憂「……梓ちゃん///」

梓「……憂。私の気持ち《ソフトウェア》、インストールできた?」

憂「……うん。大丈夫、ちゃんと常駐してるよ」

梓「そっか///」

憂「うん///」

梓「……ねぇ、憂。私にも憂のアンチウイルスソフト、くれないかな」

憂「梓ちゃんのとはメーカー違うかもしれないけど、いい?」

梓「いいよ。ちゃんとした正規品で、スタートアップに登録できれば、それで」

憂「…アンチウイルスソフトだけじゃなくて、ファイアウォールもちゃんとオンにしてくれないとヤだよ?」

梓「大丈夫だよ。憂が毎日、ウイルスチェックしてくれれば」

憂「うん、毎日してあげる。からだの隅から隅まで、完全スキャンしてあげるから」

梓「私もアップデート、欠かさないようにするから。これから二人でずっと一緒にウイルス撲滅しよ?」

憂「……うんっ!///」


終われ糞スレ





最終更新:2013年02月20日 21:24