文化祭の日
私は夢にまでみた校舎を見上げた。
本当なら、私はこの校舎に居たと思うと、
胸が痛い話だった。
憂達は14時からライブみたいだ。
それまで時間でも費やすか。
さわこ「猫耳が似合いそうな子発見!!」
なんだあの先生は。
生徒を追いかけ回してる
生徒も満更でもない笑顔で逃走している。
何か感慨深い、あの子が私かもしれなかったから
おしとやか且つ明るい学校。空想上の学校が実在したようだった
女「そろそろライブだよ~」
女「いこいこ!」
校内放送が流れ、人々は講堂に流れていく
私もその流れに乗り、講堂に行く。
大にぎわいのようだった。
HTTと書かれた服を手渡され、それを着る
HTT一色の講堂は彼女たちを待ちわびているようだった。
そして、そのライブが始まるほんの前。
一件の電話がかかってきた。
憂「ごはんはおかず!」
~むしろごはんがおかずだよ~
ナンデヤネン!
憂「え~…次で最後の曲です」
ザワザワ
憂「聞いてください」
憂「Y&I!」
…………
……
…
唯「はい、わかりましたお義母さん」
義母「じゃあ、お願いね。」
唯「はい、荷物は纏めときます。」
唯「…はい、…はい…」
憂「ただいまー!」
返答はない。
憂「お姉ちゃん?」
静寂
憂「これは……」
置き手紙と食事。
豪華な食事は一人分しかなかった。
憂(私は違和感を覚えた)
嫌な嫌な想像に発展した直後、私は階段を駆け上がる。
最悪を想像した。
わからない、最近のお姉ちゃんが
唯「憂……?」
彼女は段ボールに包まれた部屋で横になりながらそう問いかける。
憂「お姉ちゃん……」
安堵感と共に、段ボールに目が映る
唯「憂の足音はわかりやすいね…」
唯「憂しかこの部屋に来ないからかもしれないけどね」
彼女は虚ろな笑みを溢す
憂「お姉ちゃん…どうしたの?」
ピンクの壁紙は無くなり、段ボールとベッドしかない
いきなりの変貌した部屋に、私は状況がのみこめていない
………
……
…
女「ーーー低下!ーー投与を」
女2「先生を呼んで!早くー!」
言葉の断片が耳から脳に伝わる。
男「親御さんとご親族の方ははやく!」
「ーーーっ!」
「ーーーー!!」
叫び声が私の耳に届く。
異常を示す音が、霞んで行く
憂「なんで…私がお母さんに言って」
唯「憂……?無駄だよ、私のお母さんじゃないもん」
憂「………?」
唯「私と憂とは」
唯「血、繋がってないんだ。」
唯「腹違いの子なんだ。」
憂「……?」
私は、よくわからなかった。
いや、理解したくなかったのかもしれない。
唯「ごめんね、それで、本当のお母さんにの所にーー」
なにを言ってるんだろう、お姉ちゃん
唯「私、今の生活じゃなくなるの嫌なんだ。」
お姉ちゃんは窓縁に腰をかける。
唯「私は、楽しかったんだよ」
唯「リストラになってなかったお父さん」
唯「夫婦の仲が睦まじかった頃の母さん」
唯「あの頃は楽しかったな……」
[心拍数低下ー!AEDを!]
私はお姉ちゃんの変化に気付いていなかったのかもしれない。
唯「二人で昔は料理してたよね…」
お姉ちゃんは私の身代わりをしていたのか。
唯「お父さん、蒸発しちゃったんだよ…」
唯「憂だけは引き取るってさ」
[危険です!早くご親族を!]
ICUの中に何人かの人が入っていく。
声が遠い。よく聞こえないよ
……
………
唯「私ね、嫌なんだ。憂と離れるの」
憂「お姉ちゃん!ダメ!」
唯「ごめんね、さよなら」
彼女は窓縁から腰を上げ手を離そうとした。
咄嗟に私が掴む。
衿に触れた指はするっと滑り、彼女の行動も虚しく
「お姉ちゃん!!起きて!お姉ちゃん!」
さっきの憂とは違う、もう一人の憂
でも遅かったのかもしれない、
私は宙に……
ふわりと風に流された身体は、道路際に流されていく
晴れのち曇り、
太陽は光を遮り出す
風に浮遊する身体はコンクリート……
ではなく、人に思いっきり衝突した…
???「痛っ!ハッ…空から人が!?」
???「やばい!やばい!どうしよ律ちゃん!」
律「こりゃあビックリって…憂ちゃんのお姉さん!?」
???「え、そなの?知り合い?」
澪「ああ、料理が上手い子で…」
???「そうなんだ~私とは正反対だね!」
???「じゃなくてどうしよ~」
律「落ち着けよ…唯」
[戻って!お姉ちゃん!、戻って来て!お姉ちゃん!]
誰かに抱きしめられながら、私は空をぼんやり見つめてる。
私は気が付いたみたいだ。ここはまた別の世界なんじゃ…と。
私を抱きしめてたのは、"私"だったから。
気が遠くなりながらも、"私"は私に話しかけている。
かなり彼女は心配しているようだ。
ごめんね"私"
私が奪ってたね、役目
……
…
…
憂「戻って来て!!」
梓「先輩……!死なないで!」
律「許さないぞ…唯!死ぬな!死ぬな!」
ムギ「さいとう!どうにかして!」
澪「死ぬな………!死ぬな……!」
両親「唯!死んだらダメだ!唯!」
医者「心拍数が……まずい…」
必死の呼びかけ
最善を尽くすと言い残した医者
私は理解した。この世界を。
私の脳がつくった別の世界。
そこに私が来てしまったのだろう。
平行世界に同じ人間が二人居る事により
バランスが取れなくなっていた。
[戻って!お姉ちゃん!!]
微かに動く唇で"私"にいう
こっちの憂に謝らないと
唯「妹、平沢…憂に謝っておいて……」
"私"「……わかってるよ。だから、貴女は帰らないと」
唯「………うん、ありがとう、唯」
……
…
医者「凄い……心拍数安定、全てが安定だ!」
異常音は収まり、いくらか鎮静した頃、私は目を開けた。
帰ってきたんだ。
憂「お姉ちゃん!」
私に抱きつく妹。私はそっと彼女を抱きしめ「ありがとう、ごめん」
と呟く。
私は妹の大切さを身に沁みて感じながら
そっと眠りについた
……
…
憂「なんで!あんな事したの!!」
唯「いやあ……」
もう一つの世界
憂「もぅ……っ!」
唯(私は何をしたのか知らないけど)
唯「ごめんね……」
あの後、いきなり私は自室に居た。
救急車に乗っていたはずなのに
みんなに聞いても知らないらしい
でも私と憂は知っている
憂「あれ……?」
自室の段ボール箱が消え去っていく
おそらく来た記憶、事実が消えていくのだろう
私は一人しかいない。
おそらくもう一人の私は間違って来てしまったのかもしれない、
ともあれ、
憂「ごはん作るよ~」
唯「お!アイス~アイス~」
パラレルワールド
私たちは私たちだ。
世界は平行に存在している。
人はそのうちの一世界しか行けないのだ。
唯「私のU&I聞いた?」
憂「良かったよ~私も部活入ろうかな~」
唯「是非是非!」
完
憂ちゃん、お誕生日おめでとう
お付き合いいただきありがとうございました。
最終更新:2013年02月22日 22:25