P164
つまり、文体というものがもしあるとするなら、それは非常に感覚的なもので、読み手が個々に感じるところの「作家の個性である」。そこに描かれている世界ではなく、その世界を見せてくれるシステムの存在感なのだ。具体的にこれと示せるものではなく、全体から仄かに感じることしかできない。作家にしてみればこれを広く意図的にコントロールすることは難しい。だからこそ、気にするな、気にしてもしかたがない、という結論にもなる。
P167
本になった自作を読むこともない。‥自分の経験なのだから覚えているし、また覚えていることだけが本質なのだと信じている。表現されたものは経験の描写であり、また装飾でしかない。
最終更新:2011年08月30日 11:45